ジークデン砦での攻防が終わり、私―高雄は歩きだしました。
「ディリータ・・・」
私は、あの危なげな雰囲気を出していた青年―ディリータを放っておけなかった。
妹が死に、貴族と平民という違いをまざまざと見せられたようなもの。
並みの精神では崩壊してもおかしくない衝撃だったはず。
・・・ですが、そんな暇はありませんでした。
砦が爆発し、その爆発が砦全体へと連鎖しはじめると、建物の崩壊はほとんど一瞬でした。
遥か上から降ってくる建物の瓦礫が、私とディリータをラムザ達とを引き離しました。
無理に戻ろうとしても、瓦礫の量は多くそのどれもが大きい。
排除しようにも、砦が爆発を続けているなかでは私の身も危うい。
そんなことを考えながらディリータのほうを向くと、相も変わらずティータを抱えたまま立ちすくんでいる。
「逃げますわ!そこにいると爆発に―――――」
「どこにだ?」
「っ!」
何気なく発したような一言。ですが、私はその一言ですくみかけてしまいました。
「平民というだけで奪われるのは、オレも同じだったんだ・・・ラムザといるから、とか貴族と同じ扱いを受けてるからと、オレが安心なんかしたから、ティータはっ・・・!」
ティータをぎゅっと抱きしめたディリータは、それでもなおその場を動こうとはしません。
「・・・だから、あなたはここで死ぬのですか?」
「ティータと一緒に逝くのも悪くない・・・これ以上、悲しまなくて済む・・・」
その顔を叩くのは、その言葉を聞いた瞬間でした。
気がついたら私はディリータの頬をひっぱたき、知らず知らずのうちに涙を流していました。
「っ!あなたはそんな弱いのですか!生きて・・・生きて妹の生きた証を立てようとか、そんなことを思わないのですか!こんな・・・こんな腐ったまま死んでいいのですか!『世界』に一矢報いようとは思わないのですか!」
私は、いつの間にかそんなことを叫んでいました。
「・・・どうすればいい?オレはどうすればよかったんだ!」
「それなら、道を示してあげようかしら?」
私たちの言い争いに、第三者が現れる。
「この間ぶりね、高雄。」
「矢矧、貴方っ・・・!」
私たちの前に現れたのは矢矧でした。矢矧はいつもの阿賀野型の制服ではなく、今は騎士風の甲冑などを着込んでいました。
「高雄にも用事はあるけど、今はそっちよりも優先するべきことがあるから、まってて。」
そういって矢矧は私から視線を外し、もう一人のほう―ディリータへ目を向けました。
「貴方、世界を変えたくはない?」
「・・・いきなり何を言っているんだ?」
ディリータはティータを守るように体をかぶせて矢矧をにらむ。
そんな眼光どこ吹く風と、矢矧は軽く話始める。
「高雄には言ったけど・・・この世界は大きな争いが始まるわ。確実に。そんな中、貴族たちが平民を守ると思う?騎士団だって人数には限度がある。戦いになれば優先すべきは平民ではなく自分の地位よ?」
「だからどうした?平民を守るために義勇兵でも募れってか?そんなもの、第二の骸騎士団が生まれるだけだろう?」
「ええ、そうね。でも、それは騎士団が切り捨てたから起こった出来事よ。なら、切り捨てないところが募る義勇兵はどうなると思う?」
「・・・何が言いたい?」
「簡単に言うわ。私たち神殿騎士団の仲間にならない?」
神殿騎士団
それはグレバドス教会が保持する騎士団の名前。
この世界で聞いてた話ですと、言ってしまえばただのお飾りの騎士団で、戦う力はないと思われていました。
ですが、今や無視できないほどの規模になっているとの話です。
北天騎士団や、ゴルターナ公が指揮する南天騎士団のほうが勢力は上ですが、まともにぶつかれば消耗は免れないと言われていますわ。
「・・・お前が神殿騎士だと?」
「ええ。そして私の主任務はスカウトよ。素質のありそうな人に声をかけて仲間を増やしていってるの。高雄も声をかけているんだけど・・・」
そこで矢矧はちらっと私を見ました。ですが、私が特になんの反応も示さないと察したのか、すぐにディリータのほうへ視線を戻します。
「まあ、それはいいわ。今、世界は王政というわかりやすい王の座を奪い合う争いに巻き込まれているの。この国を好きにできるのですし、まあ人は野心の塊だから暗躍や策謀が渦巻くのは仕方ないわ。でも、そんな一握りの人の思惑で、とばっちりを受ける人はどう思うかしらね。」
「・・・」
「ディリータ、私は貴族だから、平民だからと何か言うつもりはないわ。役に立ってくれるのなら誰だって歓迎よ。」
「オレが役に立つ・・・?」
「利用しないなんて保証はしないわ。誰だって有能な人を利用して自分で利益を受けようと思うもの。だから、お互いに利用し利用されましょ?そうして、世界をもっと均等にするのよ。」
「均等・・・」
「そうよ。貴方の妹のような子、まだ出したい?」
それっきり、ディリータは黙りこくってしまいました。
そして、矢矧は改めて私のほうを向きました。
「改めて聞くわ高雄。私たち神殿騎士団の仲間にならない?」
私はラムザ達と共に行きます。
そういえばすぐ終わることですのに、私はその言葉を発することはできませんでした。
アルガスの言葉、私はかなり思うところがあります。
人は生きることに関しては平等なのです。生き方に違いがあっても、そもそもの部分は同じなのです。
そう考えると、今の世界は歪んでいます。人が人らしく生きれないほどに。
「・・・いいだろう、オレはその誘いに乗ってやろう。」
「ディリータ!?」
私の思考を邪魔したのは、そんなディリータの宣言でした。
「意外ね。もう少し悩むかと思ったけど。」
「今更ラムザ達と同じところに戻れない。なら、別の道を進むしかないだろう。それがたとえ用意された道でもな。」
ディリータがそのまま砦の城壁出入り口へと向かって歩き出します。
ティータを弔ってくると言い残し、ジークデン砦の城壁の外へと消えました。
「・・・さて、高雄。貴方はどうするの?」
再度、矢矧が問いかけます。
ラムザの元へ戻れない
ディリータがどのような思いでそう言ったのかわかりませんが、何か決意のようなものをそこに感じました。
そんな決意など、私一人ではしたことがありません。いつも傍らにはラムザが―――――
「っ!」
そこまで思い至って、私はとあることに気づきます。
そしてそれは、私自身に対して後悔をさせるような気付きでした。
そして、意を決して口を開きます。
「矢矧、私は貴方の誘いに乗るわ。」
高雄視点。ちょっと自分にとっては挑戦的な書き方でした。
あ、明日はたぶん原稿を落とすと思います・・・日中の忙しさが今わかってるだけで死ねる勢いですから・・・