村雨が目を覚ますかなり前
雪山のログハウス風の家で、江風たちに助けてもらったラムザ達は、これからのことを話すべく江風たちと話をしようとした。
「それは話すべきだけどよぉ、その前に風呂にでもはいンな。外は冷えただろう?」
朝霜がそう言って入浴を促す。
「ここはもともと温泉が出てた施設でした。なので大浴場もありますし、ちょっとした個人用の浴槽もあります。司令が何かを気にしなくてもいいですよ?」
霧島がそういうと、大浴場と浴室まで案内を始める。それにラムザ以外はついていく。
「・・・なンだい?いかないのか?」
「その前に聞いていいかな?」
ラムザがほかの艦娘たちが大浴場に行くために離れたのを見計らって、江風に話しかける。
「んー、さすがに司令相手でも3サイズはおしえれな――――」
「何人?」
おどけているように言っていた江風が、そのラムザの言葉によってそんな態度を改める。
頭をぽりぽりとかいて、ラムザから目線を外す。
そしてため息を一つ吐き、肩をすくめる。
「・・・言わなくちゃいけないかい?」
改めてラムザを向き合った江風は、その眼光を鋭いものにしていた。
それは明らかな強者の眼光。生半可な戦場を潜り抜けた程度では持ちえない眼光であった。
そんな眼光を突きつけられれば、どんな艦娘でも震え上がるだろう。
「うん、少なくとも僕は知っておきたいな。」
だが、ラムザは特にひるんだ様子もなく、いつも通りの口調で返した。
そんな様子に毒気を抜かれたのか、江風がきょとんとした顔でラムザを見つめる。
そしてすぐにうれしそうな顔をする。
「いやー、やっぱうちの司令は大物だねぇ・・・たいていの奴は一睨みですくむやつばっかりだってのにさ!」
「いや、本質は江風なんだから、それを怖がったら逆に失礼でしょ?」
「ははっ、いやー元の世界で司令に会ってほんとによかったぜ!」
そんな他愛もない話をしている中でも、ついにラムザのプレッシャーが江風に降り注ぐ。
話題をそらしてごまかそうにも、それが無理だとわかった江風は、ひとしきり笑った後、ため息を一つ吐く。
「・・・正確な数なんてわかンねーな。五十年戦争末期じゃあ、罠を設置してすたこらさっさなんでざらだたしな。」
「自分の手では・・・?」
「もちろんある。手を汚さずに生きていけるほど、この世界は優しくなかったンよ・・・」
江風は、近くにあった椅子に腰かける。ラムザもそれに習い、朝霜の近くの椅子に腰かける。
「この世界、最初に来たときはすでに大きな戦争中だった。あたいはたまたま艦隊で一緒の行動してた霧島の姐さんと出会うまでは、ずっと1人だったンさ。」
ぽつぽつと、江風が話始める。
「艤装があればしばらくは何もしなくても生きて行けたかもしれンけどさ、艤装はこの世界で目覚めたときにはすでになくなってた。」
「当然、艤装の補助がないあたいらは人間と変わらない。」
「動けば疲れるし腹も空く。けど、食い扶持のないあたいはとにかく何でもやるしかなかった。」
「一番簡単だったのは傭兵さ。剣もって敵を切って生き残れば、それだけでかなり稼げたからな。」
「当然、あたいも最初は罪悪感があった。」
「けど、今のあたいにはもうそれはない。生きるために傭兵っていう仕事をこなすだけだ。」
そんな江風の独白めいた話を、ラムザはじっと聞いていた。
「・・・ねえ、江風。」
「なんだい?司令。」
「僕も、その傭兵業に・・・ううん、江風の仲間になっていいかな?」
そんな突然の表明に、江風は過去最大級の驚愕を覚えた。
「・・・何を言ってるのか、わかってンのか?」
「言ってることはわかってるよ。何をするかは多少ならわかるけど、すべてわかってるわけじゃない。でも、江風が辛そうにしてるのはわかるよ。」
「・・・」
「僕は、この世界でようやくみんなと一緒の位置で戦えるんだ。だから、そんなつらいことも一緒に背負って、江風にももっと笑っててほしいんだ。」
「あたいならもうたくさん笑ってるぜ?」
「表面上だけの笑顔なんて、僕が見破れないとでも思った?」
そうして、江風は黙り込んでしまった。
ラムザは立ち上がり、江風の目の前に立つと、江風の頭を撫で始めた。
「なっ・・・なにしてん・・・」
「いいから。」
江風は、霧島が案内から戻ってくるまで、ラムザに頭を撫でられ続けたのだった。
一部のキャラを修正しました。