先行して情報収集に出た青葉を除く全員が、いつものリビングに集まった。
それは、王女護衛の話のためだった。
「オーボンヌには後発でつく予定だ。北天騎士団が先行して道中の安全を確保してくれるンだとさ!」
江風のそんな言葉から、話が始まる。
「傭兵の僕らは、殿かい?」
「いや、どうも違うみたいだ。今日の最終打ち合わせじゃ、ルザリアからくる親衛隊と一緒に王女の直衛だそうだ。北天騎士団は前後を固めるって話になった。」
いかにもおかしな話である。
普段なら北天騎士団で固めるはずの直衛を、あろうことか傭兵業のものに任せる。
異常な状態である。
ざわつくラムザ達を見て、江風は一つため息をついてから話を続ける。
「・・・っても、理由はわかるンだがな。」
「どういうこと?」
「五十鈴さんよ、今は何が起ころうとしてる?」
江風からの質問に、五十鈴は少し考えたが、どうやらすぐに答えにたどり着いたようだった。
「・・・南天騎士団、ってこと?」
「え?え?どういうこと?」
「村雨は覚えてる?風車小屋でウィーグラフが言ってたこと。」
村雨は唸りながら考え込む。そしてすぐに思い出した。
「二人の獅子が争うってことね!」
「そうなンだ。北天騎士団は事実上ラーグ公の軍、対する南天騎士団はゴルターナ公の軍。そんな白獅子と黒獅子が後継者争いをしようとしてる最中の王女護衛だ。これがきっかけで始まらないともかぎらンしな。」
江風はそこで一度言葉を切り、全員を見渡す。
「出発は明朝だ。総員起こしやるから覚悟しとけよ!」
おー!っと、みんなの声が重なる。江風はそんな様子に満足しながら解散させる。
その後、ワイワイと騒ぎ出した艦娘たちに気づかれないようそっと抜け出し、外へと出た。
そんな様子を知っていたのか、外に出てすぐ、目の前に忍者が現れる。
「・・・まさかあンたが来るとは思わなかったよ・・・川内さんよぉ。」
「私も、まさかこんな任務に就くなんて思わなかったよ。」
忍者―川内は肩をすくめてため息をつく。
「ま、私はいいんだけどね。那珂は那珂でこの世界を自分なりに満喫してるみたいだし、神通に至っては文字通り侍になっちゃったし。私も元の世界でさんざん忍者忍者言われて、その通りのジョブについちゃったし。」
けらけらと笑う川内に対して、江風は少しも油断していない。
それもそのはず。
油断しているように見えてその実、川内に決定的な隙は全く無かった。
逆に少しでも気を緩めれば、江風がやられかねないほど、江風にとってはプレッシャーを感じていた。
「で、私の雇い主からの任務、伝えに来たよ。」
「・・・明日から忙しくなるンだ。その任務は受けられ――――」
「明日からの任務に関することだよ。」
川内からの言葉に、江風はぴくりと反応する。
江風自身の警戒レベルを限界以上に引き上げ、周りに誰かいないかを探る。
そして、当然目の前にいる川内にも、警戒を怠らない。
「そんなに警戒しなくてもいいよ。報酬はきちんと前金付きで用意してあるしね。」
そうして、どこからか取り出した小さい麻袋を江風に投げ渡す。
中身が多々入ったその袋を開けてみると、多数の金貨―ギルが入っていた。
「それが前金。ちなみに、受けてくれると話は早くなるけど?」
江風がギルを一つかみし、そしてそのすべてが本物だと判断した江風は、麻袋を握ったまま、川内に向き直った。
「わかった。話を聞こう。」
フォボハム平原から出発したラムザ達は、そのままオーボンヌ修道院へと向かう。
すでに北天騎士団が厳戒態勢を敷いているのか、はたまた大規模な掃討作戦を行ったのか、道中は極めて平和だった。
貿易都市ドーターで必要な買い物を一通り済ませ、オーボンヌ修道院へと向かう。
ドーターからは距離はほとんど離れておらず、半日程度でたどり着ける距離だった。
「よーしついたぞ。全員降りろよー。」
江風がそう叫び、全員が馬車から降りる。
そんなとき、修道院の入り口の扉が開き、中からかなりの歳だとわかる男性が出てくる。
「おぉ、あなたたちは今回オヴェリア様をお守りいただく騎士様ですかな?」
「騎士ではないけど・・・まあ、そうだ。今回王女の直衛を任されたものだ。王女と親衛隊に挨拶がしたいンだが、どこにいるんだい?」
「オヴェリア様は今湯浴みをされているので少し時間がかかりますな。親衛隊でしたら、中で警護に関しての話し合いをされている最中ですので、すぐに挨拶ができましょう。」
男性は両開きの扉を前回になるまで開け、一行を招き入れた。
中に入ると広いエントランス、その奥にはグレバドス教会の崇拝するモニュメントが大きく立っていた。
どうやら、この扉は少し高く、2階の位置に当たるようで、モニュメントはここから見た1階層したに根元があるようだった。
その目の前には、騎士が3人おり、一目見るだけでただものではない雰囲気を察知できる。
そのうちの一人が、江風たちに気が付いたようで、江風たちのほうを振り向く。
と、その顔を見たお互いが、驚きの声を上げた。
「なンだって・・・!?」
「どうしてお前たちが・・・っ」
その騎士は江風たちの前へと駆けてくる。
「提督まで・・・ずいぶんと久しぶりだな。」
その騎士―長門が嬉しそうに言った。
chapter2が始まらない・・・
はい、そんなわけで長門さんの登場です。
ああ、忍者は案の定川内でした。
一部のキャラを変更しました。