崖の縁のミウたん   作:新六毛

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ら苦さな多y也? (3)

もっと他に思う事があるだろうに、この期に及んで尚、盛りのついた牝猫の様に男の品定めを優先するミウたん

「どうして僕が君の言葉を理解出来たかって?」

「え… あ、うん… はい」

曖昧な反応しか見せないミウたんに気を使っているのか、男が切り出した

「僕も君と同じ『あちら側』の人間なんだ」

 

 

 

男の車が郊外のマンションに着くまで、ミウたんは自分の身に起きた異変のあらましと疑問を男に語り、それに対する回答を得ていた

曰く、この世界とミウたんの住む世界は、平行世界という重なりあいながらも互いに干渉出来ない、別次元の世界である事

ミウたんは何らかの弾みで次元の狭間に迷い込み、こちらの世界に迷い込んでしまった事

ミウたんの世界とこちらの世界は、文字や言葉以外は殆ど同じ構成である事

ミウたんの世界ではこちら側の存在は知られていないが、こちら側からはミウたんの世界の存在を理解している事

時折、ミウたんの様にこちら側に迷い込んで来る者がいる事

そしてその者達は研究材料として捕らえられ、永遠に施設に監禁される事

自分はその施設を脱し、ミウたんの様な迷い人が、あちら側に帰る手助けをしている事…

にわかには信じられない話だが、ミウたんが今日体験した不思議は、彼の説明で全て納得出来る

ミウたんも遂に彼の言葉を信じ、自分が異世界に迷い込んでしまった事実を受け入れるのだった

「さぁ、急いで! 直ぐにこの場所は見つかる」

男の声に促され、その古いコンクリート造りのマンションの階段を登って行く

四階の突き当たり、男は周囲を確認するとミウたんをドアの奥へと誘った

(初対面の男の人の部屋に入るなんて、私… ダ・イ・タ・ン!)

異世界に迷い込んだ事は認めても、未だ盛る事はやめない牝豚ミウたん

そこは簡易ベッドと段ボールが数個転がるだけの殺風景な部屋だった

(あのベッドの上で… 抱かれるのね…!)

元の世界に戻るという願望より、卑猥な妄想を膨らませる事に必死の色情魔ミウたん

「君がこの世界に来る直前の行動を説明してくれ、そこに必ずヒントがある」

「……………えっ…? ……は、はい!」

鼻の穴を広げてエロ妄想に浸っていたミウたんは、その言葉に我に帰る

そうだ、私は元の世界に戻る為に此処に来たのだ

何はともあれ、まずは自分の居るべき場所に戻るのだ

ミウたんはあの違和感に襲われた時をを思い出す…

「えっと… お買い物してて… あの… その… おトイレに行って… 戻って来たら……」

「それだ!」

黙って聞いていた男が呟いた

「この世界に迷い込む者達は何れも、日常の中の非日常が切っ掛けとなっている

君もそのトイレで何時もと違う何かを経験した筈だ!」

「い、何時もと違う経験って言われても… 」

「元の世界に戻るには、それを再体験する必要がある! 再体験出来れば必ず帰れる!」

ミウたんは思考を巡らせた あの時体験した何時もと違う事…

「あぁ…… 」

「思い出した?」

まさか… いや、でもそれしか… ミウたんの脳裏に浮かんだ一つの答え…

「何があった? 教えてくれ?」

「………………」

言えない… 言える訳がない!

こんなイケメンに… カキフライを万引きして、個室でパクついたなんて…

何もかも嫌になって、とても惨めになって、わんわん泣き晴らしたなんて…!

ミウたんは赤面して俯いてしまう

「…………ゴホンッ」

そんなミウたんの様子に、流石に男も自分のデリカシーの無さを恥じた

トイレの中での非日常

いくら非常事態といえ、うら若き乙女に聞くべき質問ではなかった

男は黙ってトイレを指差した

「……ここで、再現出来るかい?」

「!! ……こ、ここで ……再現!?」

二人の間を気まずい沈黙が流れる…

その時だった

 

『ドン! ドン! ドン!』

 

何者かが激しくマンションのドアを叩く

「「!!」」

男が玄関に駆けよりドアスコープを覗く

「奴らが来た! 時間が無い! 直ぐに再現するんだ!」

そう叫ぶと、リビングの簡易ベッドを玄関に運び、急拵えのバリケードを築く

「急いで! 奴らは出来るだけ食い止める!」

立ち尽くすミウたんに男が叫ぶ!

「そ… そんな! 貴方は… 貴方はどうなるの!?」

「僕の事は心配するな! それより急いで! 君に頼みがある!」

 

『ドーン! ドーン! ドーン!』

 

ドアに何かが激しくぶつかる

その度に金属が軋み歪む音が響く

「急いで!」

男はドアに立て掛けた簡易ベッドを押さえ込む

最早時間が無い事を理解したミウたんは、意を決してトイレに飛び込む

(……再現 ……出来るの?)

便座の蓋を上げ、腰を下ろす

追手おってが迫るイケメンの部屋のトイレ…

極度の緊張の複合に加え、数字間前に食した油物の影響か、ミウたんの下腹部が不気味な音を響かせ始めた

鈍痛に耐えながら、ミウたんはあの時の再現を試みる

カキフライなど存在しないので、せめて身振りだけ…

スカートからパックを取り出し、指でラップ穴を開け、摘まんで口に入れ…

 

(旨い…!)

 

……何やってんだろ、私…………

 

「もし… 元の世界に戻れたら… 君に頼みたい事がある…」

トイレのドアの向こうから激しい打撃音と共に男の声が聞こえる

「僕には… 妹が一人居る… 君が戻れたら… 妹に… 僕は世界を放浪する旅をしてると伝えて欲しい… そして… いつか必ず帰ると伝えてくれ!」

 

『ギュルルルルル~~』

 

ミウたんの下腹部が大きな異音を上げる

痛い… と思った途端、強烈な刺し込みが襲い始める

ミウたんの顔は真っ赤に染まり、額には玉の様な汗が浮かぶ

(が… 我慢出来ない……!)

ミウたんは一旦立ち上がると、パンティを降ろして再び便座に腰掛けた

「ふふ… 実は… 自分がこの世界に迷い込んだ切っ掛けが分からないんだ… 滑稽だろ…… でも、必ず見つけ出す…… 僕の名は… 聖夜… 妹の名は……」

 

『ドドン!』

 

何かが崩れる音がして、またあの意味不明な怒号が響く!

何人もの足音が部屋の中に なだれ込んで来る!

(こ、怖いよ~! 神様~~!!)

パニック、恐怖、腹痛… ミウたんは襲い来る三重苦に震えが止まらなかった

トイレのドアノブがクルクル回り、次いで凄まじい衝撃でドア全体が揺さぶられる!

「やだやだぁっ!! 駄目ぇ!! 今、あけちゃダメェェェェッ!!」

トイレのドアが激しく軋む! 戸板に亀裂が入る!

「どうしてなのぉぉぉっ!? どうして何処に行ってもこんな目にあうのぉぉぉっ!?」

迫る恐怖にミウたんが悲鳴と嗚咽を響かせた

「お客様! お客様!」

ドアの外で誰かが叫んでいる! 怖い! 助けて! 神様! お母さん!

「お客様! 大丈夫ですか!? お客様!」

 

 

 

「……お客様!? ……大丈夫!?」

その声にミウたんは我に帰った

(あれ… ちゃんと聞こえる… 私をお客様って… 心配してる…? この雰囲気は!)

「お客様… ドアを開けさせて頂きます!」

「ま、待って!」

ミウたんは慌て立ち上がると、パンティを履き直す

帰って来たんだ…! ミウたんは胸に手を当てて大きなため息をついた

 

恐る恐るトイレのドアを開けると、外には店員と救急隊員が心配そうな顔で立っていた

そのエプロンの文字も、名札の名前も、ヘルメットの署名も、しっかり読めた

ミウたんは安堵の唸り声をあげてその場にしゃがみ込むのだった

 

 

 

 

『ゴ~~ン』

 

テレビモニターの中では除夜の鐘が響く

ミウたんは毛布にくるまりながら、ぼんやりとそれを眺めていた

夢だったのだろうか… 今日体験した不思議な世界…

「トイレで気を失った様ですね…」

搬送された病院での診断はそれだった

肉体的、精神的に疲れが溜まったのが原因との事で、点滴をしただけで帰された

(異世界なんて、有るわけないよね…)

ミウたんは新年を迎えた事を確認すると、ミカンの最後の一房を口に放り込んでベッドに潜り込んだ

「……聖夜………」

そう呟くと、ミウたんの右手はパンティの中に滑りみ、左手は小さな乳首をまさぐる

(あ~~ぁ どうせ夢なら、あの簡易ベッドで…… )

新年早々、初独り姫事に耽るミウたん

あの世界での頼まれ事など快楽の彼方に沈んでいた

 

そして、イオンモールの新年初売りに景品目当てで並んだミウたんは、そのままカキフライの件で警備員室にしょっぴかれるのだった

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