ミウたんは独り上手である
いつも独りで居る事が多かったからだ
幼い頃から友達と呼べる存在は極めて少なかった
理由はいろいろあろう
可愛すぎる容姿が妬まれたのかもしれないし、遠足や運動会の時に同級生達がビニールシートの上で楽しそうにお弁当を食べている様を、涙を浮かべながら眺めている姿が侮蔑されていたのかもしれない
物心ついた時から家族は父親だけ
その父親も週末はお仕事で不在の事が多かった
必然的にミウたんは独りの時間の過ごし方に長けていった
ミウたん自身、独りを寂しいとも辛いとも思わなかった
無理もない
幸せを知らない物が自身の不幸に気付く事は無いのだ
今年も独りのお正月を過ごすミウたん
独りであってもお正月の雰囲気は味わいたい
御節のつもりか、蒲鉾と伊達巻が数切れ入ったスカスカの重箱と、雑煮をイメージしたワンタンスープをテーブルに並べて、ミウたんの独り新年会が幕を上げる
途中、自分が自分に送った独り年賀状披露と、自分で自分に送る独りお年玉授与式を経て、宴会はクライマックスイベントを迎える
独り双六…
ミウたんの独りお正月の定番行事
これをやらねば正月気分が得られない
独りで双六など出来るか! 愛の溢れる環境に生まれ育った者にはそう叫ぶだろう
だがミウたんにとって双六とは独りでやる物なのである
ミウたんの双六は世間のスタンダードとはやや異なる
独りでプレイするそれは、当然、あがりまでのスピードを競う物ではない
ミウたんの双六は、一マス一マス進んで行き、そのマスに記されたミッションをこなしていく物なのである
勿論、そのミッションはミウたんが考えた物ではあるが、双六のマップは大量に用意され、その都度ガチ抽選で選択されるのだ
その為、ミウたんも常に新鮮な雰囲気で楽しめるのだ
ミウたんはこの双六の事を、凄い双六、略して『すごスロ』と呼んでいる
厳冬の外気とさして変わらぬ、刺すような冷気が支配するリビングで、今年もすごスゴは開幕した
白い息を吐きながら、段ボール箱からマップをガチ抽選するミウたん
選ばれた汚く小さな文字が綴られた一本道のマップを、ミウたんの分身ペットボトルキャップが進んで行く…
最初のイベントマス『職安』…
このすごスロの楽しみ方の一つに職業の概念がある
自分の職業によって、その後のマップ箱が変わりイベントも変化していくのだ
「う~~ん…」
こけし職人、みかん農家、造船業、的屋…
バラエティー溢れる職業の中からミウたんが選んだ職業は、やはりこけし職人だった
やはり最初は本業から攻めよう
改めてこけし職人となったミウたんは、次のイベントマスに進む
『商売』… 一時間以内にこけしを三本売れれば50G
すごスロの大きな特徴に、そのイベントが現実社会にリンクするという点がある
独りでプレイするすごスゴは、全てを脳内で補完しては簡単に終わってしまう
イベントの指示を実際に行う事で
「私、今、凄い楽しい事をやってる!」
感がなんとか出て来るのだ
早速、自信作のこけしを数本、風呂敷に包んで大通りに向かうミウたん
正月気分真っ只中の、浮かれテンションにある市井の人々
ミウたんはそんな人々に片っ端から声を掛け、こけしセールスをしていく
だが、これまでの縁日ですら一本も売れた事のないミウたんのこけしは、結局今日も 一本も売れなかった
イベント失敗… 0G…
ミウたんはチラシの裏に収支を記すと、次のイベントマスにキャップを進めていく
『バトル』… 憎いアイツを打ち負かしたら300G
その文字は震えていた
記憶は無いが、この字を記した時の自分は激しい怒りに震えていたのだろう
自分をそこまで怒らせる人間は、奴しかいない!
ミウたんはピンクミウたん号に飛び乗ると、初売りセールに賑わうしまむらにやって来た
「な、なによ! 生意気ね!」
突如目の前に立ち塞がったミウたんに、アミヤは不快そうな声をあげる
彼女の手には初売りセールで格安250円のキャミソールが握られていた
「あ~た~し~の~」
突如、ミウたんはそのキャミソールを渾身の力で引っ張る
『ビリビリッ』
瞬く間に安物のキャミソールはボロボロの化学繊維の切れ端に姿を変えた
「大勝利~!」
茫然と立ち尽くすアミヤを残し、どこかにVサインをしながらミウたんはしまむらを後にした
300Gゲット
ミウたんは次のマップをガチ抽選する