崖の縁のミウたん   作:新六毛

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孤高の勇者 (1)

ミウたんは独り上手である

いつも独りで居る事が多かったからだ

幼い頃から友達と呼べる存在は極めて少なかった

理由はいろいろあろう

可愛すぎる容姿が妬まれたのかもしれないし、遠足や運動会の時に同級生達がビニールシートの上で楽しそうにお弁当を食べている様を、涙を浮かべながら眺めている姿が侮蔑されていたのかもしれない

物心ついた時から家族は父親だけ

その父親も週末はお仕事で不在の事が多かった

必然的にミウたんは独りの時間の過ごし方に長けていった

ミウたん自身、独りを寂しいとも辛いとも思わなかった

無理もない

幸せを知らない物が自身の不幸に気付く事は無いのだ

 

今年も独りのお正月を過ごすミウたん

独りであってもお正月の雰囲気は味わいたい

御節のつもりか、蒲鉾と伊達巻が数切れ入ったスカスカの重箱と、雑煮をイメージしたワンタンスープをテーブルに並べて、ミウたんの独り新年会が幕を上げる

途中、自分が自分に送った独り年賀状披露と、自分で自分に送る独りお年玉授与式を経て、宴会はクライマックスイベントを迎える

 

独り双六…

 

ミウたんの独りお正月の定番行事

これをやらねば正月気分が得られない

独りで双六など出来るか! 愛の溢れる環境に生まれ育った者にはそう叫ぶだろう

だがミウたんにとって双六とは独りでやる物なのである

ミウたんの双六は世間のスタンダードとはやや異なる

独りでプレイするそれは、当然、あがりまでのスピードを競う物ではない

ミウたんの双六は、一マス一マス進んで行き、そのマスに記されたミッションをこなしていく物なのである

勿論、そのミッションはミウたんが考えた物ではあるが、双六のマップは大量に用意され、その都度ガチ抽選で選択されるのだ

その為、ミウたんも常に新鮮な雰囲気で楽しめるのだ

ミウたんはこの双六の事を、凄い双六、略して『すごスロ』と呼んでいる

 

厳冬の外気とさして変わらぬ、刺すような冷気が支配するリビングで、今年もすごスゴは開幕した

白い息を吐きながら、段ボール箱からマップをガチ抽選するミウたん

選ばれた汚く小さな文字が綴られた一本道のマップを、ミウたんの分身ペットボトルキャップが進んで行く…

最初のイベントマス『職安』…

このすごスロの楽しみ方の一つに職業の概念がある

自分の職業によって、その後のマップ箱が変わりイベントも変化していくのだ

「う~~ん…」

こけし職人、みかん農家、造船業、的屋…

バラエティー溢れる職業の中からミウたんが選んだ職業は、やはりこけし職人だった

やはり最初は本業から攻めよう

改めてこけし職人となったミウたんは、次のイベントマスに進む

 

『商売』… 一時間以内にこけしを三本売れれば50G

 

すごスロの大きな特徴に、そのイベントが現実社会にリンクするという点がある

独りでプレイするすごスゴは、全てを脳内で補完しては簡単に終わってしまう

イベントの指示を実際に行う事で

「私、今、凄い楽しい事をやってる!」

感がなんとか出て来るのだ

早速、自信作のこけしを数本、風呂敷に包んで大通りに向かうミウたん

正月気分真っ只中の、浮かれテンションにある市井の人々

ミウたんはそんな人々に片っ端から声を掛け、こけしセールスをしていく

だが、これまでの縁日ですら一本も売れた事のないミウたんのこけしは、結局今日も 一本も売れなかった

イベント失敗… 0G…

ミウたんはチラシの裏に収支を記すと、次のイベントマスにキャップを進めていく

 

『バトル』… 憎いアイツを打ち負かしたら300G

 

その文字は震えていた

記憶は無いが、この字を記した時の自分は激しい怒りに震えていたのだろう

自分をそこまで怒らせる人間は、奴しかいない!

ミウたんはピンクミウたん号に飛び乗ると、初売りセールに賑わうしまむらにやって来た

「な、なによ! 生意気ね!」

突如目の前に立ち塞がったミウたんに、アミヤは不快そうな声をあげる

彼女の手には初売りセールで格安250円のキャミソールが握られていた

「あ~た~し~の~」

突如、ミウたんはそのキャミソールを渾身の力で引っ張る

『ビリビリッ』

瞬く間に安物のキャミソールはボロボロの化学繊維の切れ端に姿を変えた

「大勝利~!」

茫然と立ち尽くすアミヤを残し、どこかにVサインをしながらミウたんはしまむらを後にした

300Gゲット

ミウたんは次のマップをガチ抽選する

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