崖の縁のミウたん   作:新六毛

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未来の今頃 (2)

「ここかな~?」

手紙に同封された地図に指定された撮影場所

そこは郊外にひっそりと寂れた姿を晒す、閉鎖された小さな遊園地の跡地だった

(こんな所に遊園地があったんだ…)

ミウたんは錆付いた柵門の片側をゆっくりと押し開く

掠れた金属音が静寂の中に響く

園内は外見以上に荒廃が進んでいた

コーヒーカップの色は褪せ、メリーゴーランドの白馬は錆の涙を流す

今は動かぬ観覧車が長い影を落とすカートコースでは、至る所で生い茂る雑草が枯れた亡骸を晒していた

曾ては喧騒に包まれていたであろう面影が、より一層寂寥感を醸し出していた

外気の寒さが一段と身に染みる気がして、ミウたんは思わず身震いした

それでも寸劇の撮影なら適した場所なのかも知れない

ミウたんは気合いを入れ直すと、スタッフを探して奥へと進んで行った

 

ジェットコースターのレールに群れるカラスの一団が、ミウたんの気配を察して一斉に飛び立った

(誰も居ない……)

先程から全く人の気配がしない それは廃園なのだから当然だ

ただ、最近人が立ち入った痕跡すら無いのだ

不安になったミウたんは連絡を取るべくスマホを起動させるが、生憎圏外だった

(一度電波の拾える所まで戻ろう…)

踵を返し、目印の観覧車目掛けて小走りに駆けて行く

 

「須内さん…? 須内ミウさんですか…?」

「!!」

空中ブランコの脇を過ぎた時、不意に背後から声を掛けられた

見ればミウたんより幾らか年上に見える、綺麗な女性が立っていた

「お待ちしておりました… さぁ どうぞ此方へ… 皆さんもお待ちかねですよ…」

そう言うと、背後に聳える洋館に右手を向けた

「お化け… 屋敷…?」

最早案内も無いが、恐らくはそんな施設だったのであろう

「申し遅れました… 私、相沢アカネと申します… 」

笑顔で語り掛けるアカネ

だが、ミウたんは何故か彼女の表情に暗い影があるのを感じた

アカネの案内に従い洋館の扉を潜る

「さぁ 此方へ… 細やかながら一席設けさせて頂きました」

「!?… 一席? いや、あの… 私、寸劇の撮影に呼ばれて…」

「存じて居りますよ… でも、お疲れでしょう… 先ずはお寛ぎに…」

状況が飲み込めず、目をしば叩かせるミウたん

幾ら先輩の紹介とは言え、何でこんなVIP待遇なのか?

(これはひょっとして… 土壇場でパンツ… だけじゃなく… おっぱいを見せろ… 的な…!?)

流石のミウたんも、見ず知らずの人達の前でおっぱいを見せるのは…

ミウたんの嫌な予感は、案内されたパーティールームで確信へと変わる

『パン! パン! パパン!』

入室と同時に鳴り響くクラッカー

瀟酒な部屋の中央に鎮座する巨大なテーブルには、テレビでしか見た事が無い様な豪華料理が所狭しと並べられている

「「ミウさん、ようこそ燦憊(さんぱい)館へ!!」」

そのテーブルを囲む十数人の男女が、凛とした声でミウたんを歓迎する

寸劇の出演者だろうか、皆きちんと正装した美男美女ばかり

これはおっぱい所の騒ぎじゃないな… 下手したら全裸だな…

周りのハイテンションとは対照的に、額に黒線を走らすミウたん

流石に10万で全裸は… パンツまでなら5万でもいいけど…

どの様な状況下でも下衆い算盤勘定は忘れないミウたんに、アカネは真紅の漣を湛えるワイングラスを進める

「ウェルカム・ドリンクです… 一杯位良いでしょ…?」

そう言うと、お茶目にウインクして見せる

「あ、あの… 私… おっぱいは見せられません… ごめんなさい!」

こういう事はキッパリと断った方が良い

安い女に見られてたまるか! ミウたんは言うべき時は言う女なのだ!

静まり返る室内… 此で悪態をつかれるなら直ぐに帰ろう

だが、室内に木霊したのは悪態ではなく、爆笑の渦だった

「ふふ… ミウさんって面白いのね…」

アカネにワイングラスを渡されたミウたんの顔が紅潮する

勘違いなのか…? このもてなしに裏が無いと言うのか…?

「それでは、ミウさんの燦憊会への入会を祝して…… 乾杯!」

「「乾杯~~~!!」」

 

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