崖の縁のミウたん   作:新六毛

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光の国のワンダラー (3)

「こ~こ~」

細く暗い迷路の様な通路に面した小さな一室

其処が二人に与えられた居住スペースだった

同じ様な個室が幾つも並び、それぞれに幼女達が居住していた

恐らく此がここを根城とする彼女達の標準的住居なのだろう

地下の世界は暗いが寒くは無く、快適だった

だが何より、同じ仲間か大勢で暮らす環境に、二人のテンションは上がっていた

近所の住人と簡単な挨拶を交わすと、夕食として与えられたシュークリームを頬張り、二人はたちまち夢の中へと落ちていった…

 

明くる日からラムネ達の秘密地下組織での活動が始まった

「倒したら直ぐに刺すにゃん!」

午前中は道場で戦闘員としての訓練

鬼教官のプリシラから戦闘の極意を叩き込まれる

「捌いたら直ぐ干します…」

午後は生産活動

鯵の開き工房に配属された二人は熟練工ティナの指導の下、貴重な資金源の製造に忙殺された

瞬く間に数日が過ぎ、漸く此処での暮らしに馴れた頃、遂にその時はやってきた

 

 

 

まだ夜も明けきらぬ早朝

産廃場の一角、搬入搬出の車が出入りする広い空き地に、夥しい数の幼女達が集まっていた

その数、実に数百体

白い息が、恰も狼煙の様に立ち登る…

そこには、あのラムネ達の姿もあった

皆、奥の一点を見詰め、主役の登場を今や遅しと待ちわびる

何処かでざわめきが起こり、其が漣の様に全体に伝播した

空き地にの奥、堆く積まれたガラクタの上に隻眼のプリシラが姿を表したのはその時だった

幼女達はそれぞれが手にした武器を高く掲げ、歓声を上げる

プリシラは右手を上げて其を制した

ピタリと静まり帰る幼女達

プリシラのカリスマと統率力は絶頂の域に達していた

プリシラは周囲を見回すと、静かな口調で語り始めた

「諸君…… 先ずは諸君に感謝の言葉を送りたいにゃん…

よくぞこのプリシラを信じて此処までついて来てくれたにゃん…

夜明け供に、戦いは始まるにゃん… 決して楽な戦いではないにゃん…

恐らく、ここにいる勇士達の多くは、明日の朝日は拝めないにゃん…

逸れでも、この戦いは決して無意味な物ではないにゃん!

今日の夜明けは、我々野良幼女の夜明けにゃん!

今日流す血は明日と言う日の呼び水にゃん!

プリシラは皆と供に戦える事を誇りに思うにゃん!

プリシラはこの命を、野良幼女の明日に捧げるにゃん!!」

その時、プリシラの背後から朝日が射し込み、辺りを照らし出した

恰も後光の如く…

万雷の拍手と歓声が辺りを包む

近所の住民達は異変に気付いたかも知れない

だが最早恐れる事はない 戦いは始まったのだ!

「諸君! プリシラは今此処に、野良幼女の独立をブゲラッ!!」

「「!!!!!」」

その言葉を言い終える事なく、プリシラの身体は宙に舞った

 

『キュィィィィィィ!!』

 

と同時にガラクタの山の頂きから、ピンクミウたん号が飛び込んできた

耳をつんざく悲鳴と絶叫

人形の様に撥ね飛ばされる幼女達

空き地を縦横無尽に蹂躙し、動く物が無くなった頃、漸くピンクミウたん号は搬出口から姿を消して行った

 

ポツリと立ち尽くす二つの影

運良く難を逃れたラムネ達だった

ラムネ達は震える足取りで、隻眼プリシラ の元へ向かった

既にプリシラは虫の息だった

逸れでもラムネ達はプリシラを抱き抱え、必死に身体を擦る

プリシラはうっすらと目を開けて、小さく呟いた

「……これで ……これで……良かったんだ…… にゃん………」

そう言うとガックリと頭を落とし、それっきり動かなくなった

ラムネ達はその日から3日を掛けて、仲間達の亡骸を丁重に葬っていったのだった…

 

 

 

 

警視庁は28日、飲酒運転と轢き逃げの容疑で東京都の自称こけし職人 、須内ミウ容疑者(18)を逮捕した

須内容疑者は逮捕前日、19時頃から漫画喫茶や自販機などでビールやカクテル等を飲み、酩酊状態で車を運転

横断歩道を横断中の会社員男性を跳ね負傷させ、そのまま逃走

途中、緊急配備のパトカーとカーチェイスを繰り広げ、民家のブロック塀や電柱、産廃処分場の柵等を破壊して更に逃走

現場から約3キロ離れた側溝に転落した所を取り押さえられ、飲酒運転と轢き逃げの容疑で緊急逮捕した

尚、須内容疑者は無保険で車検も切れていたとの事

 

 

 

一時の自堕落な享楽に身を委ね、取り返しのつかない人身事故を起こしたミウたん

その贖罪の人生が幕を開けるが、それは又、別の物語である…

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