崖の縁のミウたん   作:新六毛

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ミウたんにできる事 (1)

人里離れた山奥の、更に奥のずっと奥…

今はもう誰の記憶にも残っていない、小さな廃村がある

朽果てた藁葺き屋根の家が数件

それらを結んでいた村道は、背丈程もある深い雑草に覆われていた

最後の村人が姿を消したのは、もうどの位前の事だったか…

今はただ緩やかな時の流れが、小川のせせらぎと共に静かに時節を移ろわせて行くのみ……

 

の筈だった

 

 

 

『ぽんぽこぽこぽん、ぽこぽこぽん…』

 

 

 

 

何処からともなく聞こえてきた、その余りにもふざけた調べが、清寥とした廃村の空気を掻き乱す

 

「にんげんさんの匂いがするよ」

 

ヒメムカシの穂先が揺れる

 

「にんげんさんが帰って来るよ」

 

セイタカアワダチソウの茂みが擦れ合う

 

廃された筈のその村で、確かに聞こえた人の声…

一陣の風が吹き抜け、雑草の原にに波紋を描くと、何者か達の気配は消え、再びそこは先刻までの静寂を取り戻した

 

 

 

 

 

「サッポロ一番、やっぱりベースはこれよね!」

ミウたんは手にした"サッポロ一番"と印字された袋麺の空袋を振って見せる

シャカシャカと軽い摩擦音を空袋が奏でる

「ミウ、そいつで一体、何袋分あるんでぃ?」

「これで八袋分かなぁ?」

「おいおい、随分手間が掛かるんだな」

「そうでもないわ サッポロ一番は日本で一番ありふれた袋麺なのよ だいたい何処の公園のゴミ箱にも一つ位はあるわ(ミウたん談) それにサッポロ一番は加工がおざなりだから、砕け易くてお溢れにもありつけ易いのよ(ミウたん談)」

「ミウは相変わらず食い物に関しては博識だぜぇい」

夜の戸張の降りた河川敷 サラサラと流れ行く水の足音だけが木霊する

葦原の開けた一角、小さな焚き火を囲む三つの影…

懐かしいこの場所で、懐かしい顔に会いたくて、ミウたんは遥々やって来たのだ

「味の決めてはやっぱり… やっぱりチキンラーメン!」

ミウたんは後ろに置いた南京袋から、新たに空袋を取り出す

「チキンラーメンは人気が無いから(ミウたん談)なかなか手に入らないんだけど、麺自体に味付けがしてあるから袋滓麺には欠かせないわ」

そう言うと"チキンラーメン"とプリントされた縞模様の袋を傾ける

パラパラと乾麺の欠片がサッポロ一番の袋の中に溢れ落ちる

「さ・ら・に… 今日は私からコレを差し入れよ!」

得意気に鼻の穴を広げてミウたんが次に取り出したのは"味塩コショウ"

それを二種類の乾麺の欠片が混ざりあったサッポロ一番の袋に一振りする

「ミウは気が利くでぃ そいつは獲物の調理にも役立つんでぃ」

「でしょ!? そう思って二人の分、買って来たんだ」

「なんだ、結局金を使わせちまったじゃねーか」

「そんな水臭い事言わないの!」

ミウたんは焚き火に掛けられた空き缶を軍手で掴む

そして湯気の立つ中身を空袋にゆっくりと注いでいく

ミウたんが編み出した簡易食【袋滓麺】

今夜はそれを、河川敷に暮らす二人への御披露目を兼ねてミウたんが振る舞う

なんと言っても元手が掛からないこの料理はフリーランサーである二人には嬉しい筈だ

気に入って貰えたら嬉しい…

そんな思いでミウたんは、袋の中身を箸代わりの椿の枝でかき混ぜる

袋の中から小生意気にも一端のラーメンの匂いが漂う

「よし、出来たわよ!」

「旨そうじゃねーか」

「ラーメンなんて十年振り位でぃ!」

ミウたんはふやけて柔らかくなった麺を、皿代わりの空袋に取り分ける

 

「「いっただきま〜す!!」」

 

弾んだ声が河川敷に響く

「旨いっ!」

「懐かしい味でぃ!」

二人の反応は上々だ

だがミウたんは椿の枝に絡めた滓麺を掲げると、黙ってそれを見詰めていた

「どうしたんでぃ、ミウ?」

その声にミウたんはうっとりした表情で答える

「ほら、こうして夜空の星々に照らして見ると、スープを纏った麺がキラキラ輝いて… まるで宝石の首飾りみたい……」

遥か白鳥座の方角に向けられた滓麺は、コクーン星雲の電離水素が放つ淡い薄紅色と、デネブとアルビレオの目映い輝きに彩られて、さながら大宇宙に浮かぶペアシェイプのネックレスの様だった

「ミウはあの頃とちっとも変わらねぇな」

三人の底抜けに明るい笑い声が穏やかな川の流れに伝って、広大な葦原に広がっていく…

 

川辺を縄張りにする、フリーランサーのハンター達…

そのハンターギルドの重鎮、インチキべらんめぇ口調が特徴の元花火職人ドンさん

ゲンさんの相棒、大きな体駆の持ち主、元大工のゲンさん

そして自称こけしアーティストの統失持ち、ミウたん…

それぞれが止むに止まれぬ訳あって流れ着いた川辺の土手…

短くはあるが同じ時を過ごした三人…

時に大きな猪と格闘し、時に不良中学生と対峙した

日常の中の非日常を好んで生きるミウたんにとっても、この川原で過ごした数週間の思い出は、かけがえの無い大切な宝物だった

ミウたんにとって此処は紛れもない第三の故郷ななだ

川を跨ぐ産業道路の大橋の橋梁 行き交う車のタイヤが唸り声を響かせる

今、その袂のドンさんの塒で、藁枕を並べ横になる三人…

その姿は紛れもなく、一つ屋根の下に暮らす《家族》の姿だった

 

「明日はミウの力を借りて久々の大物を狙うんでぃ」

「狩りなんて久しぶり〜 楽しみだわ〜」

「おいミウ… 遊び半分で事に当たれば大きなツケを払う事になるぞ」

「分かってるわよ〜 でもまたみんなと一緒に狩りに行けるなんて、まるで夢みたい……」

数ヶ月ぶりに《帰郷》を果たし《娘》に対し、ドンとゲンは大物狩りを提案した

狩りは自給自足を是とするハンター達にとって生活の礎である

時に協力し、時に競い合い、そうして三人を結び付けたのも狩りであった

ターゲットは最近この河川に住み着いたクロコダイル…

何処から逃げ出したのか、おおよそ五メートルもの全長を誇る大物

狡猾で狂暴な性格のそれは、既に河原のフリーランサーを幾人もその胃袋に納め、討伐に向かった腕利き達を何人も帰らぬ存在にしていた

ドンとゲンも、この大物のとの対峙の時が近づいている事を感じていた

河原でのフリーランサー暮らしを続ける為には避ける事のできない戦いであった

そんな時に姿を現した、嘗てのギルメンであるミウたん…

宿命の時を感じるのも無理は無かった

何故を危険な戦場に《愛娘》を引ふき連れて行くのか…

堅気に生きる者達の常識に照らせば、それは狂気の沙汰以外の何物でもないだろう

だが河原に生きるハンター達にとっては、狩りとは生きる事そのものなのである

娘を歓待する宴の肴を得る為、何より明日を生きる糧を得る為、彼らは躊躇なくミウたんに加勢を求めたのだった

 

 

 

「ミウよ… 寝ちまったのかでぃ……」

鈴虫と鳴き声と微かな寝息が、アスファルトを擦るタイヤの音の合間に聞こえて来る

ドンは橋桁の底を眺めながら続けた

「ミウよ… おめぇはもう、ここに来ちゃならね〜でぃ……」

一陣の風が土手の青草を撫でて川を渡っていく

「おめぇには未来があるんでぃ… 俺達とは住むべき世界が違うんでぃ……」

「……スゥ…… ……スゥ……」

傍らに眠るミウたんは静かな寝息で答える

ドンは構わず続ける

「おめぇが本当に狩らなきゃいけねぇ相手は… ドスファンゴでもクロコダイルでもねぇ… 早くいい男を射止めて、女の幸せを手に入れるんでぃ…… 明日の獲物で開く宴が… 別れの盃代わりでぃ……」

産業道路を行く長距離トラックが響かせたけたたましいクラクションで、ドンさんの言葉の最後は掻き消された

 

 

 

河原に流れ着いた竹と蛸糸で自作した短弓

それが彼女が"Mー16"と呼ぶ、ミウたんの得物である

「よぉ〜し!」

弦を指で弾いて久しぶりの感触を確かめるミウたん

このMー16から繰り出す必殺のスナイプショットで、嘗ては "河原のハイエナ娘" の異名を轟かせたものだ

「そろそろ仕掛けるでぃ!」

リーダードンの掛け声で一同は朝霧に霞む丸石畳に一歩を踏み出す

川面を渡るひんやりと張り詰めた空気が肌に心地良い

多くは語らずともその手筈は皆、身体で理解できている

昔と同じ、ゲンが煽って、ミウが反らして、ドンが仕留める…

まさに板に付いたコンビネーション

大きく川幅が広がり流れが澱む葦原の手前、ドンは立ち止まり二人に目配せする

黙って頷き、それぞれの持ち場に向かう

無言で朝霧の中に姿を消して行く各々の後ろ姿は、まさに歴戦の兵とも言うべき風格を漂わせていた

 

ドンは得物の三尺手筒に五寸玉を仕込む

尿から作った硝石、煙草の吸殻、薪の消し炭で拵えた強烈な一発

こいつで葦原から追い立てられてくる獲物に必殺の一撃を食らわすのだ

昔取った杵柄 仕掛け花火のドンは、この大川の畔で尚健在である

 

昔取った杵柄ならゲンも負けてはいない

ぶちかましのゲンの異名の象徴、得物の大木槌は大木の切り株を連想させる

今、その大木槌の柄を握り、静々と葦原を掻き分けるゲン

やがて開けた視線の先、川岸に堆く積み上がった丸石の小山見えた

間違いない…

ゲンはそこから漏れる禍々しいオーラを感じ取ると、その小山の頂きに大木槌を振り上げる

「フンッ!!」

気合いと共に降り下ろしたそれは火花と衝撃音を残し、一抱えもある丸石達を四方に飛び散らす

大きなな黒い影が矢の様な速度で川の中に飛び込んだ

巨大な波飛沫と波紋が川辺に広がる

百戦錬磨のゲンもその余りの威圧感に、冷たい汗が背中を流れて行くのを感じた

「ミウ……!」

例えようの無い胸騒ぎがゲンの胸を締め付けた

 

飛沫を打つ音がミウたんの耳にも届いた

(大きい…!)

元ハンターとしての経験が、ミウたんの脳内に警鐘を鳴らす

ニセアカシアの木陰に身を潜ませたミウたんは、緊張に震える手でMー16の弦に笹竹の矢を番える

どんな凶大な生物にも必ず弱点はある

そこを見極め、確実に突けるか…

戦いは肝は常にシンプル、それがミウたんの学んだハンターの極意だ

倒す必要はない

ゲンさんが煽った獲物を、ドンさんの元に反らせばよいのだ

 

『ガボッ』

 

何かが水面を打つ音がした

次いで湿った川縁の泥を踏み締める音がする

奴が来た…!

ミウたんは覚悟を決めて木陰から身を乗り出す

 

「うしょぉぉぉぉっ!?」

 

思わず上げたミウたんの悲鳴は裏返る

デカイ…! デカ過ぎる!

それはミウたんの記憶にある、水族館で見たそれとは桁違いの化け物だった

 

(こんなの勝てる訳ないでしょょょっ!?)

 

朝日を浴びて黒光りする重厚な鱗…

無数に飛び出す、小刀の様に鋭く尖った牙…

金属質の鉤爪を備えた太い四肢が、濡れた大地に深い足跡を残す…

まさに恐竜、まさに怪獣…

"死の予感"

その鈍い光を湛えた肉食獣の双瞼と視線を混じり合わせた時、ミウたんは小学三年生の夏にカツオノエボシの群れに飛び込んだ時以来となるそれを感じた

 

化け物の一歩は予想外に速かった

「ひっ!?」

獲物にならんとしているのは間違いなく己の方だった

激しく大地を踏み鳴らしながら、化け物はミウたんとの距離をギュンと詰める

「いゃぁぁぁぁぁぁんっ!!」

半年に及ぶシャバ生活がミウたんのハンターとしての魂を曇らせていたのも事実だろう

だが相手が悪過ぎるのもまた事実だった

渾身の逃走は懸命な判断と言わざるを得なかった

「うわぁぁぁぁっっっ!!」

闘争心の放棄は恐慌を生み、無様な被捕食者としての姿を河姿原に晒す

だがしかし、化け物の力強い足音は瞬く間にミウたんの背後に迫る

クロコダイルはミウたんの想像の遥か上を行く健脚だった

(もうダメ~~~!!)

身体中の穴から様々な体液を噴出しながら、ミウたんは次の瞬間には己の臀部を捉えるであろう化け物の牙を想像して、その激痛に身構えた

(お母しゃん! お父しゃん! しぇん輩! 麗羅たん! ゲンしゃん! ドンしゃん!)

丸石に足を取られ、壮大に転けるミウたん

そのまま頭を抱え丸くなり、愛する者達の名を心で連呼した

 

「…………?」

 

痛撃は訪れ無かった

直近にまで迫ったかに思えた怪物の足音、それはミウたんの背後から急速に遠ざかる

(た、助かったの!?)

顔を上げ振り向くミウたん

確かに彼方の笹竹の原を猛スピードで掻き分ける、漆黒の怪物の横面が見えた

 

「ふぅぅぅぅぅ…………」

 

まさに風船から空気が抜ける様に肺の中の二酸化炭素を吐き出すミウたん

「ほぇぇ 生きとる…」

両手を宙空に捧げ、尚も五体が満足である奇跡を噛み締める

緊張と共に身体の力が抜け、そのまま丸石畳に倒れ込む……ミウたんの視線先に、戦慄の光景……化け物がミウたんを見逃した理由が飛び込んでくる

 

「!!」

 

化け物は気紛れを起こした訳では無かった

その漆黒の岩弾が向かう先、笹原の開けた先に座り込む、セーラー服の少女!

「に、逃げて!!」

ミウたんは思わず絶叫した

この狡猾な化け物は、より確実に仕留められる獲物として、ターゲットをミウたんから彼女に切り替えたのだ

そしてその化け物の判断には本能的な裏付けがあったのだ

腰が抜けたかの様に、迫り来る化け物を凝視しながらも逃げ様としない少女

否、実際には身を捩り逃げ様としていた

化け物から遅れる事数瞬、それが叶わぬ理由をミウたんも漸く理解した

彼女の右足を捉えて離さぬ蔦草の輪

フリーランサーが仕掛けた、小型動物捕獲用の罠

それが河原に彼女の死へのプレリュードを響かせていたのだ

 

ミウたんは飛んだ

 

葦原を撫でる疾風の如く、その身体は化け物の後を追った

恐怖は無かった

少女を救おうとする気持ちでも無かった

偽善では無い 無意識だったのだ

否、厳密に言えばそれは…… ハンターの本能だった!

 

「そこねっ!!」

 

勢い良く地面を蹴り、大きな跳躍を見せたミウたんは、その最頂点でMー16の弦を弾く

無駄の無い一連の動きの中で番えられていた竹の矢は、今まさに少女の柔らかな太ももに牙を突き立てんと大顎を広げた化け物の右目に吸い込まれる

 

『ヴォォォォォッッッ』

 

まさに恐竜の咆哮

どんな強靭な生物にも必ずあるその弱点を見事に射抜かれ、今それは巨大な体駆を丸石畳にのたうち回す

だがミウたんのハンターとしての本能は、この戦いの決着がまだ先である事を察していた

この化け物をこの程度のダメージで倒せる筈がない…

鮮やかな前転で着地の衝撃をいなすと、その勢いのまま連続でんぐり返しで暴れる化け物の脇をすり抜ける

「んぎゃぴっ!」

途中、丸石の一つに後頭部を強かに打ち付けるがご愛嬌

そのまま化け物と、未だ恐怖に固まる少女の間に颯爽と割って入る

そして彼女を背中に庇いながら、ミウたんは凛々しく立ち上がった

先ずは化け物の標的を自分に戻さなければ…

ミウたんは再びMー16に矢を番える

動きを止め、冷静さを取り戻したかに見える化け物は、無事な右目に復讐の標的を確かに捉える

 

『ギュュォォォォォェッッッ!!』

 

向けられる強大な敵意

(ゴクリ……)

甦った筈のミウたんの闘争本能が再び揺らぐ

(や、やっぱり怖い…!)

余りに巨大な補殺者の前に、ミウたんの番える竹矢は絶望的な迄に非力に思えた

ミウたんは腰を低くすると一度矢を外し、空いた手で地面を撫でる

(あった…)

少女を拘束する蔦草の罠 それが結ばれた棒切れを握り、渾身の力で引き抜く

まさに火事場の馬鹿力 地面に刺された棒切れはズリズリと姿を現す

「逃げて!」

ミウたんは背中越しに叫ぶ

何はともあれ彼女を逃がさなければ行動の自由も儘ならない

背後で少女の動く気配がする それと同時に化け物も動いた

獲物を逃がさんとする本能か、電光石火の勢いでミウたん達との間を詰める

(は、早い!!)

そのスピードはミウたんの想像を越えていた

必死に矢を番えるが…

(間に合わない!)

化け物はその大顎を広げてミウたんに襲い懸かる

唾液に濡れた長い牙が朝日を浴びてギラギラと輝く

今度こそ終わった…

ミウたんはスローモーションの様なその光景を目に焼き付けていた

 

『パァァァァァン!!』

 

その時、響く乾いた炸裂音が河原に響いた

大顎を広げた目の前の化け物が、小さく飛び跳ねた様に見えた

同時に熱気を帯びた風がミウたんの頬を撫で、続いて火薬の匂いがミウたんの鼻を擽った

 

「ドン… さん…!!」

 

その姿は見えずとも、ミウたんの脳裏には、煙吹く得物の手筒花火を抱え仁王立ちするドンさんの姿が浮かんでいた

次の瞬間、化け物はくるりと背を向け猛突を開始する

予想通りその背中は煤け、鱗が禿げ落ち、血が滲んでいた

そしてその向かう先には、ミウたんの予想通り色褪せた法被姿のドンさんの姿が…

 

(助…… かった……)

 

ミウたんの身体から再度、へなへなと緊張と力が抜けて行く

背後から浴びせられた強烈一撃に逆上し、復讐せんと猛突する化け物…

だが、ミウたんはドンさんの身を案じる事は無かった

戦いは終わった

フォーメーション2…

ミウたんが釣って、ドンさんが煽って…

 

笹原から飛び出た影が、ドンさんとの距離を詰める化け物に飛び掛かる

 

「フンッ!」

 

大木槌の懇親の一撃、それは見事に化け物の脳天を粉砕する

 

…ゲンさんが仕留めた

 

 

 

「ふぅ… 間一髪って所だったでぃ?」

「大丈夫か、ミウ? いくら何でも無謀だぞ!」

「ホントでぃ! あれ程独り善がりな戦いはするなと言った筈でぃ!」

それぞれの得物を撫でながら、二人はへたり込むミウたんの元に歩み寄る

「で、でも… あの子を見殺しになんて出来ないよ!」

確かに無謀だったかも知れない

だがミウたんに自責の念は無かった

「「……あの子」でぃ?」

互いの顔を見合わせる、ドンとゲン

「ここで罠に掛かってた女の子よ!」

ミウたんは背後を振り返る

だが、その広い河川敷に三人の他に人影は無かった

「………………」

あの状況である

逃げて、と言われて全力で逃げたのだろう

別にお礼など欲しくはない

あの子が無事だった

それだけでミウたんの心には、ハンターとしてのえもいわれぬ充足感が広がっていったのだった

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