東方夕凪録   作:汐入 那月

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どうも鐳波です。
今回も比較的早い更新だと僕は思います。
今回は相当詰め込みましたがこれからまた相当詰め込むかと思います()
とりあえずお楽しみください!


タルタロスとティタノマキアとその脱出

朝起きるとメイドに跨られ首にナイフを突き付けられている

 

「これは何の真似だ」

シャドーはメイドを蹴り飛ばすとタバコを吸う

 

「貴方は誰ですか、この部屋はシャドー様のお部屋です」

 

「俺はシャドーだ。これは人間の姿だ」

メイドは驚き頭を下げる

 

「とりあえず自分の職務に戻れ」

シャドーは着物からいつもの服に着替えリビングへと移動する

ソファにドカッと座ると海波が訝しげな様子でシャドーをまじまじと見る

 

「...シャドーだ。皆分からないのか?」

 

「えっシャドー?だってシャドーって女の子みたいな顔してるし...」

 

「やはりそれか。何であんな容姿になっちまったんだ...人間の頃と大違いじゃないか...」

シャドーはタバコを咥えると立ち上がり図書館へ続く魔法陣に向かいながら火をつける

 

「シャドーか、どうした」

 

「いや、刀剣の指南書辺りが目当てで来たんだが...あるか?」

 

「ない事は無いが...ならまずは私の修行を受けろ」

レイラが立ち上がりこちらに歩いてくる

 

「なんかいい方法でも?」

 

「あぁ、少し良いのを思いついてな」

レイラの転移魔術で庭まで飛ぶ

 

「そうだなぁ...少し刀を貸せ」

 

「え~...し、仕方ない」

シャドーが渋々妖刀を渡すとレイラは鞘から引き抜き横払いで勢いよく木に刀を打ち付けると幹の真ん中で刃が止まり、切れた場所は綺麗に元通りになっている

 

「...は?」

 

「これを引き抜け」

 

「そんなの簡単d...」

シャドーが力任せに引き抜こうとすると刀はびくともせず幹に刺さり、シャドーは苦笑する

 

「そんな力任せにやってもできんぞ」

レイラは庭の椅子に座りメイドに紅茶を入れるように命じている

シャドーは何か閃いたように手を打ち刀身に妖力を流す

するとレイラは紅茶を飲んでいる途中にせき込む

 

「これが正解なのか...?」

そのまま引き抜こうとすると少し動いた気がするが一瞬でさっきよりも堅くなっている気がする

 

「全く違うな...」

レイラは奥で胸をなで下ろしていた

 

【我鬼転生、弐之妖炎】

シャドーは周りから妖力を集め自分を中心に爆発させるとシャドーからは赤黒い妖力の癪気が炎のようにたゆたっている

 

「ふぅ...」

シャドーは深く息を吐くと地面が深く広範囲に抉れるほどの妖力を出しながら柄を掴み引き抜こうとする

それを見て含み笑いをするレイラ

 

「あっはっはっは!いやぁ期待通りに動いてくれて嬉しいよシャドー。それはただ妖力を馬鹿みたいに出すだけじゃ取れないよ」

レイラが笑いを堪えた震え声でそう言う

 

「それは妖力を刀に流しながら引き抜くと取れるのさ、こんな風に」

レイラが妖力を刀に流しながら引き抜こうとすると腰が抜けたようにその場に座り込む

 

「ぷふっ...先生も出来てないじゃないか」

 

「お、お前こんな燃費の悪い刀使ってたのか!?っていうか今私の妖力を根こそぎ喰っていったぞ!?」

 

「当たり前だろう。そいつは妖刀だ。しかも我儘な奴が中に入ってる。しかし妖力を中に流して引き抜く...」

シャドーは柄を掴み妖力を流そうとするが上手くいかず妖力が外に漏れだす

 

「それじゃだめだ。体の中に留めながら一点に流し込むのだ。放出するのとはまた別だ」

 

「汐波月...その太刀筋は水のようにしなやかであり、大瀑布の如く荒々しくもある、この性質を活用できないものか...」

シャドーは指をパチッと鳴らす

 

「先生、この庭に結界を張ってくれ」

 

「分かった」

レイラが魔法陣を展開し結界を張る

シャドーが足を開き腰を深く落とし柄を頭の上に来るように構えまっすぐ前を向き目を瞑り体の中の妖力の流れを感じ取る。そして赤黒い妖力が波打ち始め、1分弱渦巻く

そしてシャドーは勢い良く刀を引き抜く

 

「ふぅ、コツを掴むのに時間を要したな...」

 

「ねぇちょっと、シャドー?今の仕打ちは何かしら!?自分に懐いたからって乱暴にし過ぎじゃないかしら!?」

いきなり汐波月が人の姿になりシャドーの肩を掴み涙目で揺すってくる

 

「...お前俺に懐いてたの?」

 

「は、はぁ!?そ、そんなわけないじゃない!なんで私があんたのこと隙にならなきゃいけないのよバカ!」

 

惚気(のろけ)は要らん、シャドーお疲れ」

 

「ありがとう。でも惚気てるのは先生の方だろ?俺は彼女とかは居ないぞ」

 

「う、うるさい!そもそもはお前の弟が私になびいてきたのが元だろう!?」

 

「でもあいつが子供の頃から随分と親しかったよなぁ?」

シャドーはゲスな笑みを浮かべると汐波月の首に腕を掛けタバコを吸う

 

「だっ、黙れ!わ、私はもう戻るっ。お前はもう少し外で修行でもしていろ!!」

レイラは顔を真っ赤にして紅魔楼の中に入る

 

「かっかっか、してやったり。汐、俺は散歩するがお前も来るか?」

 

「私はあんたの刀だから。何処でも一緒に行くわよ」

 

「そうか、じゃあ行こう」

シャドーは歩いて森を抜け人里まで向かう

人里に着く頃には日がすっかり真上に昇っていた

そしてシャドーは迷いなく妖刀を作った本人の元へ向かう

 

「あれ、シャドーさん...とお連れの方ですか?」

 

「何言ってやがる、お前が造った刀だよ」

 

「えっ...もう妖刀の心を開かせたんですか!?」

 

「まぁ、そうなるのか?どうなんだ?汐」

 

「今更聞く?今しっかり着いてきてる時点でしっかりあんたの物だって自覚はあるわよ」

 

「らしいぞ」

 

「きゃ~いいですねぇ」

少女は頬に両手を当てきゃっきゃと嬉しそうに跳ねている

 

「それより...前来た時よりも妖力が濃くなってるな...何をしている?」

シャドーの目がキッと鋭くなる

 

「...前お話しそびれましたが、今からしっかり話します。上がってください」

 

「分かった」

シャドーはタバコの火を消し携帯灰皿に入れ上がると居間に通される

居間に入ると無精ひげを生やした厳つい60歳後半あたりに見える老人が厳しい表情で座っている

 

「...貴方が娘の鍛えし刀の持ち主ですかな?」

男性は落ち着いた口調でそう問うてくる

 

「いかにも。俺が依頼した」

 

「使い心地は如何ですかな...」

 

「いや、本当に素晴らしい出来だ。妖刀がまさか武甕槌の斬撃に耐えられるとは思わなかった」

 

「なっ、それは真ですか!?」

老人が目を見開き身を乗り出す

 

「本当だ。自己紹介がまだだったな、俺はシャドーエッジ・スカーレット。妖王であり大和の神々の裏の支配者だ」

 

「そうでしたか...ではこの子が造る刀なのですがな。これがまた特異な物ばかりを造ってしまうのです」

 

「ふむ...それはある意味厳しいな。ではこの店に売っている普通の刀は?」

 

「それは私が造った物です」

老人が答える

 

「ふむ...ならばこの娘、俺の専属鍛冶屋にしては頂けないだろうか?もちろん造ってもらった際には代金を払おう、それと材料も俺が持って来よう。冶金なら神に伝手があるし俺自身冶金は得意な方だ」

 

「...娘を役立てて頂けるなら本望です」

老人は目から涙を流し頭を下げてくる

 

「よほどその娘の将来が心配だったと見えるが...何か理由でも?」

 

「えっと...私、実は親がいないんです。私を生んで母は死に、父は暗殺されました」

 

「そうか、ならついでにお前の身も守ってやらないと、か。大切な鍛冶職人を殺されては国が廃る」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「さて、そろそろ名を聞かせてもらってもいいか?」

 

「あ、すいません!私鍛冶楣(かじのき) 夏目です」

 

「ほう、爺さんが名付け親だな?」

 

「そ、そうです」

 

「安直だがいい名だ。誇ると良い。あ、それと一つ要望があってきたんだ」

 

「なんです?」

 

「今着ている服の腰に妖刀を提げたくてな」、こんな感じの物を作っていただきたい」

シャドーは内ポケットから一つのスケッチを見せる

 

「ふむ...これは夏目にやらせた方が良さそうですな。元より夏目はこういう細工が好きでしてな」

 

「ふむ、じゃあ頼んだ」

 

「わかりました!」

夏目はスケッチを受け取りすぐに工程を考え設計図を書き、作業に移る

それから小一時間が経つと夏目はスケッチとほぼ同じ形の物を持ってきた

 

「ふむ、随分いい出来だ。ありがとう」

シャドーは金塊を床に置く

 

「代金はこいつで勘弁してくれ。俺はそろそろ帰るよ、行くぞ汐」

 

「は~い」

シャドーたちは人里を出て森の中をふらついていると金色の髪に白いブラウスに青いサスペンダーを着た本を抱えた少女を見かける

 

「おい、ガキがこんなところで何している」

 

「自分の家に帰るのがダメなのかしら?」

 

「は?こんな所に家があるはずが...」

 

「あるわよ、こっち来て!」

少女は大きな本を抱えて走りだす

少女の後を追っていくと立派な屋敷が建っている

 

「本当に、あったんだなぁ」

シャドーは顎を撫で意外そうに屋敷を見る

 

「ただいま~!」

少女は大きな声でそう言うと扉を開けて中に入る

すると奥から白銀色の髪に赤いローブと言った服装で左上で髪を結ったサイドテールになっている女性が出てくる

 

「おかえりなさいアリスちゃん!その方はお客様?」

 

「あぁ、恐らく客だ」

シャドーはタバコを吸いながらそう答える

 

「私は神綺よ、そしてあの娘がアリス。貴方は?」

 

「シャドーエッジ・スカーレット、妖王と言えば分かるか?」

 

「妖王ってあの、妖王?百鬼夜行とかの...」

 

「それだ。しかし子供が森の中危険だと思っていたが...そうでもないらしい。そのガキ、上がってからどのくらいだ」

 

「そうですね...17年くらいでしょうか?」

 

「ふむ、随分な新米だな。アリス、もしお前がこれを読めるようになったら活用しろ。神綺は絶対に使い方を教えるな」

シャドーはコートの金具に留めてあるとても分厚い魔導書を一冊アリスに渡す

 

「魔導書...?」

 

「あぁ、そいつは俺が創った中でも相当レベルの低い物だ、すべて習得してもそこまで危険な者にはなり得まい。俺はこれで失礼する、縁があったらまた会おう」

シャドーは玄関から外に出て森の中でも一段魔素が濃い場所まで行き倒木に座ってる

 

 

「ここで何するの?」

 

「修行だよ、魔素が強ければ魔法は撃ち易いが魔法以外は苦にしかならない。つまり体に負荷のある状態でどれほど動けるかって話だ」

 

「ふぅん...私は見てればいい?」

 

「今から反復横飛びと言う物をやる。こんな感じだ」

シャドーが実際にやってみせる

 

「これを本気でやるから一秒で何回できたかを測ってくれ」

そう言いながらシャドーは結界を張り始める

 

「地形再生の結界?なんで?」

 

「言ったろ、本気出すんだよ」

 

【我鬼転生、弐拾終焉(しゅうえん)舞ヰ(まい)

シャドーからは微かに赤黒い衝撃波が放たれ森全てが吹き飛び地面が岩盤が見えるまで抉れ、シャドーには炎の様に赤黒い癪気が揺らめぎ、渦巻いている

 

「せ~のっ!」

汐波月が掛け声をかけるが、シャドーは動いたようには見えない

 

「えっと...動いた?」

 

「動いたが...見えなかったか?」

 

「う、うん」

 

「じゃあもう一回やるからしっかり見ててくれ」

シャドーは深く息を吸う

 

「せ~のっ」

今度はしっかり目に見えた

 

「えっと...1億...くらい?多くてよく分かんない」

 

「ふむ、大体この状態で光速あたりか...よし、通常に戻るか。汐、刀になってくれ」

シャドーは20個の封印を掛け直し妖刀を掴む

 

「さて...森を元に戻したら帰り際に誰か斬るか」

シャドーが結界を解くと抉れた地面と森が元に戻る

そしてそのまま森を出て刀を振り回しながら帰り道を歩いて行くと紫色の髪でゆったりとしたネグリジェを着た女性を見かけるがこちらに気づかずに奥へと言ってしまう

 

「あれは...バイオレット・ノーレッジとか言う奴だったはず...」

 

 

「何事もなく、着いてしまった。汐、戻っていいぞ」

妖刀は白い煙を上げながら女性の体になる

 

「何も居なかったわね~」

汐波月は伸びをすると紅魔楼の中に入る

 

「ただいま」

シャドーはタバコを咥え火をつけながら中に入りすぐにリビングのソファに座る

 

「おかえりシャドーくん~」

アザトースがソファを覆う様にのしかかってくる

 

「アザトースか...なんだよ、何か用か?」

 

「シャドーくんさ、何時になるか分からないけど旅の準備しようかなぁとか思ってない?」

 

「よくわかったな、俺が20億辺りになったら旅に出ようかと思う」

 

「ふぅん...どーせ止めても行くだろうから何も言わないけどなるべく早く帰ってきてね?この事はもうみんなに話して説得もしてるからさ」

そう言うアザトースの目は子を心配する母のような目だった

 

「お前は本当に俺の母親みたいだな、心配するな。多分俺は負けることは無い、今の俺に勝てる奴なんてなかなか居ないだろう」

そう言った途端に大きな地震が起きる

そして次にレイラが転移魔術でリビングにやってくる

 

「シャドー、緊急事態だ。今の衝撃に神力が感じられた」

 

「つまりは神々の暴行って訳か。さしずめ俺の抹殺あたりだろう、グレイとヴラディミールをここに待機させておけ。そして俺が負けたとしても手を出すな、恐らく俺を連れて行くだけだ」

 

「そ、それでも重大な事じゃないか!」

アザトースが声を荒げる

 

「俺を連れて行けば基本的には何もしないだろう。俺は不死だ、何されても大体は死なない。俺が生きるのはお前たちを助けるためだ、お前らが助けに来て危険な目に合ったら本末転倒だろ?頼むから俺の生きる意味を汚さないでくれ。汐!...多勢に無勢の大戦争の始まりだ」

汐波月はシャドーの隣まで走るとシャドーと共に外まで歩き、紅魔楼を覆う結界を解く

 

「おい、お前たちの狙いは俺だろう?家は壊すんじゃない」

 

「なんだ、随分と簡単に出てくるんだな。妖王とか名乗ってる辺り傲慢で高圧的な奴だと思ってたんだが...」

ゴツい鎧に身を包み大きな盾と大きな剣を持った赤髪の男が大きな声でそう言う

そしてその男の隣には聖騎士の様な鎧に鮮やかな緑色の髪の女が大きく丸いバックラーと呼ばれる類の盾と槍を持ちシャドーを蔑むような目を向けていた

 

「妖王ってのは妖全てを納得させる力が必要だ。そんなひ弱そうな奴には務まらないさ」

 

「と言う割には隣に女を侍らせてるじゃないか」

 

「こいつは俺の刀だ。それにお前だって隣に愛人を侍らせているじゃないか。お前はアレス、そして隣の女はアテネだろう?お前たちはもうオリンポス十二神にはなったのか?」

 

「お前...どこまで知っている」

 

「さぁ?どこまでだろうな。しかし、お前たちがオリンポス十二神になっていたのだったらもうティタノマキアは終わったのか」

 

「そこまで知っているのか、俺らの事を知ってるのは恐らくこれから不利になるんだろうな?」

 

「やるか?やるんなら別の場所にしてくれ、それとも俺が創るか?」

 

「それでいい」

 

「分かった、少し待て」

シャドーは紅魔楼の中に入りレイラとグレイを呼ぶ

 

「お前達、今からあいつらと戦う戦場を作る、後に魔界として残すつもりだからほぼ全部の魔力を俺に注いでくれ」

 

「分かった、任せてくれ」

 

「多すぎて死ぬなよ?」

レイラとグレイは一瞬力むとシャドーの背中に手を置く

そしてシャドーは空間の壁を爪で切り裂き中に物凄い量の魔力を放出する

それが一時間すると魔力をほとんど使い果たしたのかグレイが倒れレイラはその30分後に倒れる

 

「ありがとう、少し世界を形作ってくる」

シャドーはその空間の壁の奥に入り地球のように大きな球体の中に魔力を集めそれを分解し魔素に変えその球体の中に充満させ魔素により陸地、火山、荒れ地、草原、無人の村、海、山、人々や生き物を創造する

そしてまた空間の裂け目を創り幻想郷へ戻りアレスの所へ戻る

 

「ふぅ...少し時間がかかったが大丈夫だ。行こう」

シャドーは魔界に繋がる扉を創り、アレスとアテナの後に中に入り中から扉を壊す

 

「罠か!?」

アレスが驚き振り向いてシャドーに剣を振るうが、シャドーはそれを人差し指と中指で挟んで止める

 

「違う、帰るときはちゃんとまた創って外に返すから。あれがあると誰でも中に入れるから危険だろ?関係ない奴が入ってきて誤って死んだらどうするんだ、お前責任とれるのか?」

 

「わ、悪かった、そう責めないでくれ」

 

「さて...ここは魔界なわけだが...そこの荒野にしよう。誰も居ないはずだ」

シャドー達は荒野に下り対峙する

 

「...行くぞアテナ」

アテナは素早くシャドーの後ろに回り込むと槍を突き刺すがそこにシャドーの姿は無かった

 

「遅いぞアテナ。俺はまだ封印を一つも解いてないんだが?」

シャドーはアテナの後ろで束ねていた髪を(ほど)き、コートを下に来ているセーター生地のTシャツと共に七分袖辺りまで折っている

 

「あまり舐めた戦いをするなよ妖怪」

アテネは雷光の如く素早く動きシャドーに猛攻を仕掛けるがそれは全ていなされてしまう

 

「舐めた戦いをするなと言えども...お前たちがこれじゃ話にならないよなぁ?寧ろもっと楽しませてくれ」

シャドーがそう言うと先ほどまで何もしてこなかったアレスが物凄い速さで斬りかかってくる

 

「いいだろう、俺がお前に本気を出させてやろう」

シャドーはそれでも落ち着いた様子でその斬撃を上から靴で踏みアレスの大剣を下に押しのけ顔を蹴ろうとすると盾で防がれるが衝撃は抑えきれなかったようで少しよろめきシャドーは姿が消え残像が残る程の速さでアレスの背中に回り拳を背の中心にねじ込む

アレスはそれに唾液を吐き、せき込む

 

「おいおい、それじゃあ全く本気を出せんぞ!俺を倒したいならゼウスを出したらどうだ!?」

後ろからアテネが槍を立てシャドーに突進してきていたが汐波月を地面に突き刺しアテネの顔を容赦なく蹴り飛ばす

 

「男は女に手を出すとき一瞬なりとも戸惑いを見せる...が俺は違う。俺はもう人間ではないし、人間の心は無くした」

 

「...妖怪風情に本気を出すのは些か不本意ではあるが、これは不味い。アテナ、本気で行くぞ」

 

「...仕方ない」

アレスからは赤いオーラ、アテネからは金色(こんじき)のオーラが溢れ出る

 

「ふむ、まずは様子見か」

 

【我鬼転生、壱之禍灯(まがつひ)

少々舐めすぎかとも思ったが、様子見だ。これでいい

シャドーはアレスに向かって下から上に斬りあげてからサマーソルトキックを喰らわせ、宙に浮いてる状態でアテネに回し蹴りを繰り出すが足を掴まれ槍で腹を射抜かれ吐血する

 

「ふむ、見た目通り聖なる武器ってことか」

 

【我鬼転生、伍之瀑氷(ばくひょう)

シャドーはアテナを蹴り飛ばし、妖刀の刃を下に向けまっすぐに立て頭に手を置き目を瞑り妖力を流す

刀身はほんのり赤くなり元の刀身の色と相まって紫色に見え、それがまた禍々しい雰囲気を醸し出している

アレスが落雷のように盾を構えながら突進してくる

それを刀で受け、盾を水圧を交えながら切りアレスの頭を蹴り髪を掴み高く跳び地面に投げつけアレスの真上に落ち背中を足で抉る

それでもアレスは立ち上がり盾を投げ捨てると剣の柄を両手で持ち重々しく振り回してくるがそれを刀でいなし続ける

 

「力任せに振り過ぎだ、それでも神かお前」

シャドーはしびれを切らしたように跳び様にアレスの顔に回し蹴りを入れると妖刀の峰で頭を殴る...が、攻撃を加えたのは自分のはずなのに何故か自分が宙を舞い、吐血している

 

「っ...かはっ」

よろめきながらも体制を整えようとするが続けてアテナの槍撃を喰らい激痛が全身に走り顔を歪ませる

 

「俺はな、あいつらを守るためにお前らみたいな...偽善者に負ける訳にはいかないんだよ」

 

【我鬼転生、拾参之妖絶】

シャドーがそう言うと魔界の大気が震え魔素同士が衝突し爆発が起き、火山は噴火し荒野には砂嵐が吹き荒れる

そしてシャドーは紅い妖力に渦巻かれ刀を構えている

 

「さぁ、俺にやられる覚悟はできたか?」

その場から消えたと錯覚するほどの速さで動き、アレスの兜を叩き割り。アテネの鎧を拳で砕く

そして二人の頭を掴み、腕を横に大きく伸ばし二回転してから額を勢いよくぶつける

それに二人は額を抑え、目尻に涙を浮かべている

 

「バカみたいな攻撃だが...効果は絶大だ」

シャドーはそう言いながら妖力で紡いだ鎖でアレスの四肢を縛りアテナも同様にする

 

「はい、お疲れさま。とりあえずお前ら後でオリンポスの場所教えろ」

 

「簡単に吐くと思うのか?」

アレスが粋がった様に言う

 

「吐かせる」

シャドーがキッと睨むとアレスはそれ以上は何も言わなかった

そして二人の頭を掴み魔界を出る扉を潜り紅魔楼へ戻る

 

「アザトース、海波!この二人の手当てをしてくれ」

シャドーはアレスとアテナに纏わりつく鎖を解き床に置く

 

「俺は、少し出かけなければならない」

シャドーは何か怪しげな思いを秘めながらまた魔界へと戻る

 

 

「さて、そろそろ出てきたらどうだ」

シャドーはタバコを吸って魔法陣を開くとそこから黒い(もや)が広がり大きな龍を形作る

 

「なんだ、感づいてやがったのか」

 

「当たり前だ、ここに来てからなにか違和感を感じてたんだが...魔界の魔素に()てられて俺の魔力と妖力の加護が出てくるとはな」

 

「俺が何者かはある程度理解できてるみたいだな、なら話が早い。俺ァ、ゼネラル・ダークネス、お前の闇のよって魔界で実体化した魔物だ。純粋な強さでは俺の方が上だ」

 

「そうか。で、俺に何か用があるんだろ?」

 

「用と言うよりも提案だ。お前が困ったときにでも俺を呼び出す、そして俺はそいつを好きなだけ叩きのめす、お前は敵を倒せて俺は暴れられてすっきりと一石二鳥だ」

シャドーは少し考えてから声を発する

 

「よし、いいだろう。ただ条件が何個か。とりあえず戦闘はお前に任せよう、ただ連携はしっかり取ってほしい」

 

「あぁ、約束しよう」

 

「じゃあ契約だな」

シャドーとゼネラルは指の腹を斬り、互いの拳を全力で打ち付ける

 

「じゃあ、近々絶対にお前の力を借りることがある。相手は神々だから気を引き締めてくれ」

 

「任せろ」

ゼネラルはグッドサインをすると空間が捻じれるように消える

シャドーは紅魔楼に戻ると疲れたようにソファに腰かける

 

 

「アザトース、二人はどんな感じだ」

シャドーは咳き込み吐血してからそう尋ねる

 

「結構大人しいねえ、負けてショックなのかな?」

アザトースはシャドーの隣に座り頭を撫でる

 

「あいつらが動けるようになったらすぐにオリンポスに行って元凶を叩いてくる。下手すると俺が負けるかも知れないが...絶対に助けに来ないでくれ、お前たちは、偽りの物でも平和に過ごしてくれ」

 

「うん...その為にシャドーくんは強くなったんだもんね」

アザトースが抱き締めてくる

 

「俺が捕らわれても...グレイやヴラディミールが居るから大丈夫だとも思う」

シャドーがアザトースを引きはがし立ち上がるとアレスとアテナがリビングにやってくる

 

「もう動けるようだな、じゃあ行くぞ」

 

「あぁ、こっちだ」

それから二時間ほど真上に飛び、何か世界の壁を感じる

 

 

「...この奥か」

 

「そうだ、お前にこれを開けることが出来るなら...入れてやる」

 

「そんなこと言える立場なのか?」

シャドーはキッと睨みつけてから指でなぞると人一人通れるほどの穴が生まれる

それを潜ると神聖とでも言うのだろうか、そのような雰囲気が漂っていて非常に気分が悪い

 

「さて、あの大きな山だな」

シャドーが踏み込み地面を蹴ると瞬時に音速を越え速度を上げるたびに衝撃波が生まれる

風が当たる感触を楽しむのも束の間、もう着いてしまった

近くで見ると遠くで見た景色とは違い山に見えたのは山と一緒になっている神殿の集まりだった

そして上るための階段があった

 

「確か十二神の初めはディオニュソスだったか...酒関連だったな」

シャドーはタバコを咥え火をつけながら階段を上り始める

デュオニュソスは下界で酒でも造っているのか神殿には居ないようで何もなかった

 

「そして...ヘスティアは、炉から離れられないとか言ってた割には居るじゃないか」

 

「ゼウスに今日侵入者が来るから戻ってこいって言われたんだけど...君っぽいね」

 

「まぁ、間違いじゃない...が、少し違う。俺はお前らを二度と俺に歯向かえないよう叩きのめしに来た」

シャドーは余裕そうに含み笑い、肘を抱える

 

「そう、正直私は戦闘なんてあまりできないから...先行ってくれる?」

 

「手出ししないならそれに越したことは無い。俺だって好きでやってるんじゃないんだ」

 

「じゃあ何でやるの?」

 

「俺は...いや、妖王はな。舐められたらお終いなんだよ。そして舐められた俺のせいで仲間が傷ついてしまうのは...絶対にいけない。そんなことはあってはいけないんだ。だから俺は最強になるべく力を求めるし、喧嘩を売ってきた奴には制裁を加え恐怖を植え付ける」

 

「ふぅん...臆病なんだね、でもそこまで張りつめて考えなくてもいいんじゃないの?」

 

「お前には分からないさ。俺は人間の頃一つの家族の父だった、そして子がもうすぐ生まれるであろう時期に...嫁の前で俺は事故に遭い、死んだ。もう二度と目の前で大切な人を失ったりはしたくない...」

 

「でも、それは君で言う敵も一緒でしょ?相手を同じ目に遭わせちゃいけないとか思わないの?」

 

「思わないな。人、妖、神。皆何かを共有することはできない、限りあるものは奪わなければ手に入らない。俺は弟子の考えに乗り幻想郷なんて物を創ったが...結局は妖怪だって人の恐怖やそれこそ人肉を食わなければ生きていくなんてできない。表面上は仲良くやっているようだが...そんなのは偽りであり真髄を見ると非情な事で溢れている」

ヘスティアはそれを黙って聞いてくれる。まるで慈愛に満ちた母のように

 

「...話し過ぎた」

シャドーはタバコの火を掌に押し付けて消し、灰皿に入れると立ち上がり歩き出す

 

「話を聞いてくれてありがとう、次に会うときは敵でないと嬉しいんだが」

そう言うと翼を広げ二つの神殿を越え三つ目の神殿に足をつけ神殿の中に入ると熱気を感じ中にはいくつもの武具が飾られていて、シャドーは品定めするように一つ一つを念入りに見ては溜め息を吐く

 

「なに溜め息を吐いてるんだ、俺の造った武器が気に喰わねぇのか?」

 

「その通りだよ、人間に負けるとは...やはりここの神は腑抜けか。大和の神を見習え、お前達よりよっぽどマシだ」

 

「おっと、ここの侮辱は許さねぇぞ」

 

「ほう、簡単に背後を取られるようなお前がそんなことを言えるのか?」

シャドーはいつの間にかヘパイストスの背後に回って怒気を孕んだ声でそう言い妖刀の切先を向けていた

 

「殺すのか?」

 

「まさか。殺したいところだが...お前らを殺すと後々面倒になる」

シャドーは一瞬でヘパイストスを瀕死にしてアルテミスの神殿へと入る

いきなり矢が飛んでくるがシャドーに当たるやすぐに塵となる

 

「アレスとアテナは貴方を倒し損ねましたか」

 

「あんな雑魚を寄こされると俺としても困るんだがね」

シャドーが片目だけ開きニヤッと笑い妖刀の柄に手を掛けると弓で射抜かれそうになるがその頃にはもう刃を抜き刀身で守っていた

 

虚勇【イミテーションカリバーン(偽りの勝利の剣)

灰色の光が妖刀の刀身に纏いシャドーはアルテミスの目の前まで詰め寄るが瞬間移動で真後ろに回り妖刀で背中を刺し貫通させる

アルテミスは前に歩き体から刀を抜くと矢を放つ

シャドーは不意を突かれ右目を射抜かれる

 

「ほう、お前は他の奴らより骨がありそうだ」

目に刺さった矢を引き抜き髪を一本抜き刀を立て頭から切先までピンと張り、矢を射る

シャドーの血により矢じりが赤く輝くその矢は目にも止まらぬ速さでアルテミスの体に当たる

 

「これくらい...!?」

次の瞬間アルテミスの全身から赤い何かの結晶が棘となり突き出る

 

「俺の血で作られた武器は全ての生物の体液に溶け出し全身を巡ると自動的に鋭い棘を形作り、結晶化をするんだ」

シャドーはそう呟くと指を鳴らしその結晶を爆裂させる

 

「仕返しはいつでも受けてやる」

そう言うと神殿を出てゼウスの神殿まで飛んでいく

 

 

「もう来たのか、随分と早い」

ゼウスはシャドーに背を向け長く白いひげをいじっている

 

「つまらない事ばかりしてるじゃないかゼウス」

 

「つまらないとは失礼な。世界の救済だよ、お前が存在するだけでこの世は穢れていく。キリスト教を壊滅させたのはお前のミスだ。それさえしなければ私もこんなことはしなかったんだがなぁ」

 

「ふん、魔族ではない関係のない人間を殺してもお咎めなしとは良い身分だな」

シャドーは妖刀を引き抜き様に妖力を乗せた居合いを放つが、ゼウスはそれを人差し指で弾き飛ばす

 

「ゼネラル、お前の出番だ」

シャドーの影から壁を突き破る様に登場したゼネラルはゼウスに向かって勢いよく拳を放つがゼウスはそれを受け止め、投げ飛ばす

 

【我鬼転生、弐拾之終焉(しゅうえん)舞ヰ(まい)

シャドーからは微かに赤黒い衝撃波が放たれ、炎の様に赤黒い癪気が揺らめぎ渦巻いている

その場から消えるように走りゼウスの前で姿を消し、ゼウスのこめかみをつま先で蹴り飛ばし、吹き飛んだ先にいたゼネラルに殴られ地面に叩きつけられる

しかしそれでもさほど痛みを感じてる様子は無く、立ち上がると雷を飛ばしてくる

シャドーはそれをかわす

 

(のろ)い攻撃だな、そんなんじゃ俺は倒せんぞ」

走り出そうとすると足が持ち上がらない

下を見ると先程の雷が足元に飛びそれが粘土か何かの粘り気のある物質に変化し凝固したのだろう

その粘質の物体は相当硬く、ぐにぐに動く癖に引き抜こうとすると岩よりも固くなる

 

「片栗粉を溶いた水の様な感じか...」

シャドーは自身の妖気で熱を創り粘質の物体の水分を抜く

すると予想道理、粉へとなった

しかし次の瞬間後頭部に強い衝撃を喰らいシャドーは気絶する

最後に聞こえた言葉は『タルタロス』と言う言葉だった

 

 

「お...て...おき...おき、て...起きて!!」

声と共に体を揺すられシャドーは目を覚ます

 

「くっ...どのくらい気を失っていた?」

 

「分からない...ここ何処かもわからないし」

辺りを見回すと黒い霧に包まれた荒野で遠くにはとても薄く青みがかった金属で造られた巨大な壁が見える

 

「気を失うときにタルタロスと言う単語を聞いたが...ここがそのタルタロスなのか。昔にネット検索でどんなものか聞いたことはあるが...壁だけ間違っているな、あれは青銅ではなくオリハルコンだ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ、ここから出るのはあの中にある門を潜らなければならない...さてどうしたものか...」

シャドーがそう考えあぐねていると後ろからいきなり蹴られる

 

「何だ!?」

シャドーが振り向くと大勢の巨人が居てその一人がシャドーを蹴ったのだ

 

「新しく入れられた奴か。私はクロノスだ、名前を教えてくれ」

 

「ふん、ティタノマキアの首謀者か。俺はシャドーエッジ・スカーレット、妖の王だ」

 

「大層な奴がここに入れられたもんだ」

 

「嫌味なら他所でやってくれ、俺はさっさとここを出てゼウスをボコボコにしないといけないんだ」

 

「ほう、ならまずは私達ティターン族を倒してからにしろ。それくらいできないとゼウスには勝てないはずだ」

 

「父親と同様去勢してやろうか?汐」

汐波月は瞬時に刀になりシャドーは飛び跳ねるように次々巨人たちを倒していく

しかしその圧倒的な数に押される

タルタロス内で起きたティタノマキアは40億年続く

 

 

「はぁ...はぁ...後はお前最後だぞクロノス」

 

「ここまでやるとは思ってもみなかった...素晴らしい、そうだな...褒美にアダマスで作られた鎌を与えよう」

そう言うとクロノスは自分の持っている鎌をシャドーに差し出す

 

「ほう、気前がいいな。じゃあ遠慮なく...」

シャドーは鎌を受け取った瞬間クロノスの男根を刈り取る

 

「自分だけ生き延びようとは流石考えることが下衆だな。だがだからこそ神と言うものだ、そして人間は神のそう言うところを強く受け継いだんだろうなぁ?」

シャドーは鎌に付いた血を振り払うと次に首を刈り取り肩に担ぐとタバコを吸って壁の中に入る

 

「怪人カムペー...やはりいたか、悪いが通してもらうぞ」

シャドーはタルタロスの闇を体内に取り込むとカムペーの目を見つめ一瞬の記憶を消し門を通る

 

「40億年ぶりの地上か...地形も変わってるはずだ幻想郷の場所も分からない...旅でもするか。世界地図は覚えてたはずだ、ゼウスを倒した後にでもフランスに行くか」

道なりに歩いていくとゼウスたちと戦った神殿が見えてくる

シャドーは一瞬で頂上まで行きゼウスの神殿の中に入る

 

「久しぶりだな、ゼウス」

 

「なっ...貴様なぜここに居る!?」

 

「なぜ?出てきたからに決まってるだろう?お前の仕業でティターン族と戦う破目になったけどな、おかげで40億年もかかってしまった...」

シャドーは封印も解かずに動き出しゼウスの目の前まで来ると脳天を妖力の圧だけでぶち抜く

 

「これに懲りたら二度と俺らに手を出すんじゃない」

シャドーは神殿から飛び降り顕界へ戻りフランスへ降りると人間になる

 

 

「こんなとこに来てどうするの?」

 

「久しぶりに来たくてな」

シャドーは昔の記憶を頼りに決まった道を通りとある路地裏へ入る

すると多くの子供や成人した男女がボロボロの布切れを着て座りその前には長いコートにシルクハットをかぶった男がいて、シャドーを見るや驚く

 

「間淵さん!?生きてたんですか!?で、でもこの前確かに葬式が...!」

 

「ほう、ここは俺が生きてた世界線なのか...。落ち着けアドルフ、確かに俺は間淵だがちょっと違う。それにまだ時ではない、俺のことは内密にしろ。それより今日は用があるんだ」

 

「は、はぁ...何でしょう...?」

 

「一人奴隷が欲しい、これから少し旅をしようと思ってね」

 

「そうですか、ではこいつなんかどうでしょう?屈強な体ですから壁にも使えて荷物持ちなどにも使えます」

 

「ふむ、悪いな。少し選ばせてくれ」

シャドーは品定めをするように奴隷たちを見るがその中に古傷だらけで感情を失ったかのような少女が目につく

 

「アドルフ、あの少女をくれ。いくらだ?」

 

「間淵さんには色々お世話になったので代金はいいですが...あんなのでいいんですか?荷物持ちにも使えないし、使えるとしたら性処理ですよ?」

 

「俺は今まで生きてきて少し情が移りやすくなったのかも知れん。まぁ、その先は詮索するな」

 

「はい...了解しました、ではまたいつか会う日まで...」

アドルフは愛想よく笑い頭を下げる

そしてシャドーはその少女について来いと顎をしゃくる

それからはとある飲食店に入り適当な場所に座る

 

「さて、まずはお前の名前を聞かせてくれ」

 

「初めまして、アリア・メラニーと申します、買い取ってくれてありがとうございます。力仕事はそこまで出来ませんが、雑用なら出来ると思います。ただ...前のご主人様は私を痛めつけ悲鳴を聞くのが一番の使い道だと言っていました」

 

「ふむ、お前はそうされたいのか?」

シャドーは手を組みそこに顎を乗せてそう言う

 

「え?」

アリアは戸惑っているようだった、こういったことは聞かれたことが無いのだろう

 

「だからお前はそうされて嬉しいのかと聞いている。俺は吸血鬼だ、そんなことをしでもしたら一秒と持たずに死ぬぞ。そもそも俺はお前を保護するという目的で買い取った」

 

「な、なぜ...です?奴隷なんて雑用などしか使い道が無くて人間と同等にはなれないのに...」

 

「お前の前の主人がどれほどのクズだったかは聞かないでおくが...お前は奴隷だが人間だ。だからこそ普通に買う場合は相当の値打ちが付く」

 

「は、はぁ...」

少女はもう頭がついて来れてないといった様子だった

 

「とりあえず、俺が主人の時だけでも自分が道具だと思うのはやめろ。そんなことよりお前、絶対まともな食事をしていないだろう?好きな物を食え。汐も同じだ、俺は少しトイレに行ってくる」

シャドーはそう言うとトイレに行き吸血鬼に姿を戻してから元の席に戻る

 

「これが俺の本当の姿だ、女と間違えられるが。正真正銘の男だ」

 

「んでさシャドー、これからどうするの?」

 

「まずアリアの服を買ってから武器屋に行く、少々欲しい武器があってな」

 

「お嫁さんだっけ?その人は?」

 

「あぁ、それなんだがな。アドルフの話を聞く限り俺が死んだのはつい最近らしい。ならあと4、5年はほっといてもいいんじゃないかなって感じだ」

その時アリアはメニューを見ていた

思考を覗くとカルボナーラが食べたいようだった

シャドーは店員を呼ぶとカルボナーラ、ショートケーキ、コーヒーを頼む

10分ほどして頼んだものが運ばれてきてシャドー達はそれに手を付ける

 

「それが食いたかったんだろう?食え。汐は...むしろそれだけでいいのか?」

 

「私はそこまで食事を必要としないし...それよりシャドーはどうなのさ」

 

「俺は後でアリアの血を吸わせてもらう」

 

「もしかしてそのために奴隷買ったの?」

シャドーをジト目で見つめる汐波月

 

「まぁそれもある」

シャドーは何食わぬ顔でコーヒーを啜る

食事を終えると、次に婦人服店へ入る

 

「失礼とかそんなのは考えずに好きなのを選べ、遠慮したらそれこそ咎め物だ」

アリアは純白のブラウス、黒いロングスカート、そしてブラウスの襟につけるのであろう青いリボンを持ってくる

 

「済まない、これを買いたいんだが」

シャドーはそれを受け取りレジへ通す

店員がアリアを訝しげに見つめハッとするがシャドーは代金を倍にして払うと店員はこちらを見据え頷いてくる

 

「それと...ここで着ていきたいから少し試着室を貸りていく」

シャドーは服とスカート、リボンの変化を消すとアリアを試着室に入れ服などを渡す

 

「あ、お前下着は与えられてるか?」

 

「いえ、そのような物は...」

 

「そうか」

シャドーは汐のスカートをめくり、服の裾を持ち上げ下着を見るとそれのサイズを合わせた色違いを創りアリアに渡す

 

「着れるか?」

 

「はい、大丈夫です」

アリアが着替え終ると次に武器屋に向かう

 

「アサシンブレードはあるか?」

 

「あぁ、ちょうどいいのが仕入れられたんだ。強化セラミックの物だ、買うかい?」

 

「あぁ、少し貸してもらえるか?」

店主はそれを渡し、シャドーはそれを腕につけ色々動作を確認した後店主の後ろに回り込み首元に刃を出す

 

「ふむ、良い代物だ」

シャドーは値札に書かれていた代金をアサシンブレードについていた値札と共に机に置くと一度外して外に出る

そして誰も通らないような路地裏でコートの下に来ているTシャツの上にアサシンブレードをつける

 

「これからどうするのですか...?」

 

「そうだな、これからルーマニアに行こうと思うんだ。あそこには吸血鬼が要るとか魔女がいるとよく言われてるんだ」

 

「吸血鬼とかに用があるの?」

 

「いや、これは俺の単なる興味だ。魔女がどれほどの物なのか、ね」

 

「あ、あの...そこにはどうやって行くんですか...?」

 

「飛べば早いんだが...この世界だとなんか違う物を見つけるとすぐ広まるからな。普通に飛行機でアンリ・コアンダ国際空港までいく。まぁ、今日は明日発のチケットを予約するだけだ。たしかフランスにうちのギャングの支部があったはずだ。そこに泊まろう」

シャドー達は空港に行きチケットの予約手続きを済ませると、途中で人間になりパリにあるとても大きいビルの様な建物の門の前に移動する

 

 

「止まれ、何者だ」

 

「この顔に覚えはないのか?」

シャドーはタバコを吸いながらそう答える

すると奥から見覚えのある大きな男性が出てくる

 

「間淵...お前、生きてたのか?」

 

「服部さん、久しぶりです。一応生きてますけど、色々ややこしいんでとりあえず前の俺とは同じじゃないってことだけ理解してください」

 

「何か事情があると見える、分かった。じゃあ今日来た理由は何だ」

 

「俺は明日ルーマニアに発つんですが、今日の宿が無いんです。沙希に内密で一部屋を貸してくれると嬉しいんですが」

 

「分かった。すぐに手配しよう」

服部に案内され部屋に入る

 

 

「ねぇシャドー。あの人とシャドーの関係って何なの?随分と仲良さ気だったけど?」

 

「あの人は俺が尊敬してる人だ。俺がこのギャングに入りたての頃随分と世話になったんだ」

 

「シャドーここのギャングにいたの?」

 

「あぁ、あの人は今、俺の穴埋めをしてくれてるんだ。ここのボスの側近は俺だったんだが...俺が死んでしまってな」

 

「ふぅん...今はまだ戻らないの?」

 

「そうだな...まずは幻想郷に戻らないとな」

 

「そっか」

シャドー達は夜まで部屋の中で駄弁ったりして時間を潰し夜になり眠り、次の日の午前六時

 

 

「起きろアリア、汐」

 

「ん...おはよシャドー...」

 

「おはようございます、ご主人様」

 

「そのご主人様ってのはやめてくれ、シャドーと呼べ」

シャドーはタバコを咥え、火をつけながら頭を掻いてからそう言う

 

「ですが...」

アリアは困ったように言葉を探る

 

「じゃあ名前に様付ければいいんじゃない?それなら間を取れてるし、これでよくない?」

 

「まぁ、それならいいか...」

 

「じゃ、じゃあそれで」

アリアは相変わらず困っていたが一応は了承したようだ

 

「さて、空港に行くぞ」

シャドーは顎をしゃくり出ようとすると服部が通りかかる

 

「行くのか?」

 

「はい、お世話になりました。いつになるか分からないですけど、多分また戻ってきます。そのときはまたよろしくお願いします」

シャドーは頭を下げると空港へと行き、改札を通り席に座り離陸まで軽く眠る

それから一時間ほどすると離陸のアナウンスが流れる

 

「あ、アリア。飛び立つ前に少し食事をさせてくれ」

シャドーはアリアの首筋に歯を立て血を吸う

 

「そんな少しでいいんですか...?」

 

「これ以上吸うとお前が危険だからな」

 

「すいません...」

 

「謝るな、人間なんだから仕方がない」

それから事無くして飛行機は陸を離れる

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