あと原作やったのが五、六年前とかなりうろ覚えなので、間違いがあるかもしれませんが、あまり気にしないでください。
カーテン越しに刺した日差しに、ゆっくりと意識が覚醒する。
「ん……………………朝?」
ぼんやりと開いた視界に映るのは見慣れない天井。
「…………えっと、どこだっけ」
そうしてゆっくりと、昨日はポケモンセンターに泊まったのだということを思い出す。
ゆっくりと、寝ぼけ眼をこすり、そうして腕を布団の中に戻そうとして。
むにゅ、と手の甲に当たる柔らかさ。
「…………やぁ…………」
そして耳元で聞こえた自分の元とは違う声。
「……………………あれ?」
まだ眠気を引きずって重い頭を動かし、振り向く。
そこに、少女がいた。
寝返りを打った際に見えた肩は露出していて、来ているTシャツのサイズが合ってないのだろう、ことが見て取れた。
年の頃は十三か、四と言ったところ。つまり、自分と同じくらいか。
頬にはらはらとかかるのは腰まで伸びた蒼っぽい髪。
そして髪色に反するように蒸気した頬と、そして綺麗な桜色の唇。
眠っているからか、目を閉じているが、一度開かれればそこにある綺麗な深い蒼の色を僕は知っていた。
つまり、隣にラピスが寝ていた。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
たっぷりと沈黙を保ったまま、硬直する。
寝起きに、あまりにも唐突過ぎた展開に、頭が追いつかず、思考がフリーズする。
まさに寝起きドッキリ、なんてくだらないジョークが浮かんだところで。
「っ!??!!?!!」
声にもならない声で、ベッドから跳び起きた。
「…………すぅ…………すぅ…………」
「~~~~~~~~~!!!」
そしてそんな状況にも関わらず、全く動じず目を覚まさないラピスに、何か言いたいが、言っても意味がないことを理解し。
「……………………はぁ」
結局またため息が出る。
何かもう、朝からどっと疲れた。
* * *
「ポケモンバトル?」
朝食の席(ポケモンセンターが提供するトレーナーなら格安で利用できる食堂)で、ふとラピスが呟いた一言に思わず問い返す。
曰く、ポケモンバトルがしてみたい。
そんな自身の問いに、ラピスが頷く。
「うん、だって私、トレーナー…………なんだよね? でもバトルをした記憶が無いから、どんんものか忘れちゃって」
そう言われてみれば、あの船上でバトルしていたのは僕だけで、彼女は一度も戦っていない。
ジョウトとホウエンを繋ぐ客船はいくつかあるが、そのほとんどがトレーナー同士が戦うための施設、設備が揃っている。
それは一週間と言う長旅の中でトレーナーたちが腕を錆びつかせないようにするための配慮であり、そのバトルを見て旅の娯楽とする他の乗客のためである。
狭い船内である、見て回るだけならば一日で事足りる。だからこそ、トレーナーたちは施設へと集い、バトルの腕を磨く。逆にそう言う短期的に多くのバトルをこなす修行のような目的を持ったトレーナーたちも着たりするし、派手なバトルで乗客たちは大いに盛り上がる。このバトルを見るためだけに高速船を止めてこちらの客船に乗る乗客もいる。
まあつまりそう言った客を狙った客船側の営業戦略的な一面があるのかもしれないが、こちらからしたらそのあたりはどうでもいい話だ。
ラピスを拾ったのは、船旅初日の夜である。
その日からずっと一緒にいたが、そもそもトレーナーであることが発覚したのが五日目くらいだったはずなので、期間的にそれほど余裕が無かったのもあるかもしれない。
「うーん、バトルですか…………まあ、問題ありませんよ」
僕はトレーナーではあるが、いわゆるエリートトレーナーたちと違ってポケモンバトルを専攻にしているわけではない。バトルよりも、どちらかと言うと補助をメインにしている部分があり、さほど育成も進んでいない。
なのでバトルにしてもそれほど積極的にやるつもりも無いのだが、まあラピスがそう言うのなら一度くらいは良いかもしれない。
もしかすると、トレーナーである彼女にとって何か記憶を取り戻す切欠になるかもしれないし。
ただまあ、その前に。
「それ、全部食べからですけどね」
机の上に並べられた皿、皿、皿、皿、皿、皿、皿皿皿皿皿皿。
ところ狭しと並べられた料理の盛られた皿に辟易した声でそう呟くと。
「もっちろん」
一息に料理を平らげていくラピスを見て。
「……………………うわぁ」
見ているだけで胸焼けしそうだった。
* * *
ポケモンセンターの敷地には、往々にしてポケモンバトルをすることのできる訓練施設のようなものが造られている。
ポケモンセンターがトレーナーたちの宿になるのは依然にも言った通りだが、それは言い代えればトレーナーたちの集まる場所であると言うことである。
目と目が合えばバトルの合図、なんて言葉が横行するほどトレーナーたちにとってポケモンバトルは日常的なものである。
当然ながら、ポケモンセンターに集まったトレーナーたちがおとなしくしているはずもなく、マナーが守れないトレーナーたちが暴れまわってポケモンセンターが一部建物が崩落したこともあるらしい。
そう言った経験も交え、センター側もきちんとトレーナーたちが
「ほとんど街の外ですね、これは」
さく、さく、と歩く度に音を鳴らす地面に落ちた落ち葉を踏みながら、センター側の用意した施設へと向かう。
「うへー…………まだ歩くのー? 私もう限界だよー」
いつもなら無駄に走り回って元気いっぱいなラピスだったが、今日はどうやらその元気も半減と言ったところらしい…………まあ。
「あんなにたくさん食べるからですよ」
と言うか、この華奢な体のどこにあれだけの量が入っているのだろうか。
まさか彼女の胃はマルノームの同レベルだとでも言うのだろうか。
少しだけ人体の神秘に戦慄しながら、さらに道なき道を進んでいき。
「ああ、ここですか」
街はずれの小高い丘の半ばにある施設にたどり着く。
外観はグラウンドを柵で囲っただけのような感じだが、まあポケモンバトルも激しくなってくると、一勝負で地面がデコボコになってしまうので、いっそ簡素なほうがトレーナーとしても気兼ねなくやれるので問題ないのかもしれない。
「と、言いますか…………もうここほとんど街の外ですよね、野生のポケモンがやってきそうですけど」
最早ここは121番道路の範囲内と言っていいだろう。街の外に出ると、野生のポケモンの生息域だ。
いつどこで出てくるかわかったものではない。とは言っても、旅をしていれば野生のポケモンに襲われることなど珍しくも無い。僕にとっても最早今更である。
柵の途中に作られた門を潜り、施設内へと入る。
どうやらあちらこちらでトレーナーたちがバトルをしているらしいが、壁で区切られていて様子は伺えない。逆にこちらの様子を見られることも無いようだが。
まあ流れ弾が飛んで来たりすると大変なことになるので、この辺の配慮は当然かもしれない。それに、手持ちのポケモンの情報を極力他人にばらしたくない、と言う人もいる。
だいたいそう言う類のトレーナーは、ポケモンリーグ入賞を本気で目指しているか、もしくは人には言えないような疚しいことをしているかのどちらかである。
残念ながら、ポケモンは人にとってあまりにも魅力的な力だ。悪事に転用する人間は、それこそ後を絶たない。まあだからと言って、ポケモン自体を否定する人と言うのはこれまで見たことが無いが。
仕切りの扉を閉める。天井は普通に抜けているが、まあ囲いがあるだけマシと言うものだろう。
中央には白い線が引いてある、そしてその少し離れた位置に、線を中心に対象になるように横線が一本ずつ。
僕がその片側に立つと、何も言わずともラピスがもう片側に立つ。
なんとなく、と言った感じのその様子に、恐らく手続き記憶…………無意識の領域で体が覚えているのだろう。
「それでは…………始めましょうか」
視線を合わせる、それだけで良い。トレーナー同士に言葉は要らない。
バトルに熱心でなくとも、バトルを覚えていないとも。
トレーナーなら本能で理解できる。
「頼みます…………ギィ!」
「行って…………ユキちゃん!」
互いにボールを投げる。
中央にて、僕のボールから放たれたのは一匹のヨーギラス。
あだ名はギィ、僕が子供のころからずっと一緒だった長年の相棒。
そして対するラピスのボールは………………………………。
「って、あれ?」
ポケモンが出てこない、と言うかそもそも。
「ボール、どこ行きました?」
中央に視線を集中させていたので気づかなかったが、よく見ればどこにもボールが無い。
「あ、あれ?」
苦笑いで誤魔化しているラピスを見つめ、再度口を開こうとしたその瞬間。
めぇ~~~、と聞き覚えのある鳴き声が響き。
ばきぃ、と外を囲う柵を突き破り、一匹のメリープが入ってくる。しかもよく見れば、その口にはモンスターボールが咥えられている。
「………………………………ラピス? まさかとは思いますが」
「…………えへへ、ちょっと力んじゃった」
この女、モンスターボールを全力投球で森に投げ捨てやがった!?
普段使わないような言葉遣いが思わず出てくるほど、驚愕する。
もしかしてそれほどバトルに慣れていないのだろうか、とかそんなことを思ってしまうほどのあり得なさぶりに、思わず戦慄する。
「ま、まあユキちゃんも戻ってきたし、勝負だよ!」
つう、とメリープが突き破った柵から視線を逸らしながらラピスが指を突き付けてくる。
まあポケモンバトルで施設が壊れるなどよくあることなので、大した問題にはならないだろう、注意くらいは受けるかもしれないが。
「はあ…………わかりました、では、行きますよ」
そうしてバトルが始まる。
* * *
改めて言うまでもないことかもしれないが。
ポケモンにはタイプと言うものがある。
例えば、ラピスのポケモン、メリープはでんきタイプ。
そして僕のポケモン、ヨーギラスならじめん、いわタイプ。
それぞれのタイプには得意なタイプと苦手なタイプがあり、特にその中でも、でんきとじめんと言うには最悪の相性と言っても過言ではない。
何せ、じめんタイプにはでんきタイプの技は一切効かないのだから。
つまり、この二匹に対決、どう考えたってヨーギラスのほうが有利…………なのだが。
「ギィ、いやなおと」
「ユキちゃん、なきごえ!」
トレーナーの言葉が飛び交う、そうしてポケモンたちがその言葉に従い、動きだす。
本来ならば。
「めぇ~!」
メリープのなきごえが響く、大してヨーギラスは動かない。
「ギィ!」
幼少の頃につけた彼のあだ名を叫ぶ。ヨーギラス…………ギィが一度こちらを振り返り。
ぷいっ、と顔を背けてしまう。
「って、何拗ねてるんですか!!」
一見ただの命令無視に見えるが、幼少の頃からの付き合いでだいたい分かる、何故かは知らないが拗ねている。
「ぐぎゃ~ぉ!」
僕に向かって抗議の視線を向けながら、声を上げるギィ。当たり前のことだが、何を言っているのかは理解できない、だがなんとなくイントネーションで僕が悪い、と言っているのは理解できる。
「僕何かしましたか?」
こういう時言葉が通じないのは不便である。
そうやってもたもたしていても相手は待ってくれないもので。
「チャンス、ユキちゃんたいあたり!」
「めぇ~!」
トレーナーの声に、意気揚々のメリープがヨーギラスにたいあたりする。
幸いいわタイプでもあるヨーギラスにはノーマルタイプの技であるたいあたりは通じにくくはあるが、それでもダメージは受ける。
けれどそれでもギィは動かない。まるでこちらが謝るまで何もしない、と言った様子でちらっ、ちらっとこちらに視線を送ってくる。
「ああもう、とにかく僕が悪かったから動いてください」
本当に悪かったって思ってる? と言った感じの視線でこちらを見てくるギィにこくりこくりと頷く。
「分かりましたよ、今度何か買ってあげます」
じゃあ何か誠意を見せて、と言った様子で口を尖らすギィにそう言うと。
「ぎゅぉ~♪」
やったね、と言った感じで声を弾ませながらギィがメリープへと視線をやり。
「ぐぎゃぁ~!!!」
咆哮と共にいわなだれ、を起こして攻撃する。
「めぇ~~~~~!」
巻き起こったいわなだれに、メリープが飲み込まれ、後には。
「ぐぎゅ~♪」
楽勝だぜ、と言った感じで喉を鳴らすギィと。
「めぇ~」
目をぐるぐると回しながら気絶するメリープだけが残った。
書いててヨーギラスが可愛くて仕方ない件。
まあレベル29のヨーギラスと、まだレベル13のメリープじゃこうなるわな(
因みにですが、ヨーギラスは♂、メリープは♀です。メロメロワンチャン(震え声