メダロット異界異聞戦記伝 作:隔離世テロル
魔人加藤憲保がトイレに駆け込んでから、康高はメダルについて考えていた。一枚はゴーレムに似た物、二枚目は龍に似たドラゴンらしき物、三枚目は鳥とドラゴンが合わさった様な物だった。
これのどこが怖いのやら、そう全く見当がつかなかった。何のヘンテツも無いこのメダルに、奴がおびえるだけの力が有るようには思えない。
退屈だった(考えを放棄した)ために、メダルを弾いたり、お手玉を始めようとするが、うまく手におさまらない。――何回か回し始めていたが――一枚が床に落ちようとした時だった。
魔人加藤がトイレから戻ってくると、康高がメダルを床に落とそうとしているのを見て、また胃腸が痛くなるのを感じた。
しかし、我慢をした。魔人は我慢をした。胃腸痛などものともせずに、駆けて駆けて限界を越えてスライディングキャッチをした。見ると顔面蒼白で悶えに悶えている。
「ぐぬぅ……ハァハァ。き、貴様ァー! うぐぅ……」
「おおスゴイスゴイ、良くできた良くできたね。えらいえらい、ぱちばちぱちぱち」
胃腸痛に悶えながらも、メダルをキャッチした事は称賛に値する。だが、あわてるほどの物でないように康高は思った。しかし、魔人加藤はそうではないらしく。顔を紫色の顔に染め、今までのうっ憤をぶちまけた。
「お、おのれ康高ァ! このメダルは――はうッ、丁重に扱わなければならない代物なのだ。本来は貴様自身が持つことさえも、おこがましいのだぞ! どうして、どうして貴様が……」
怒りだす魔人加藤のそれは、まさに名に恥じない迫力だった。康高は今更ながらその迫力にしり込みを……しなかった。ただ――へー何それ美味しいの? という顔をしていたが(興味が薄いとも言える)。いきなりプツリという音が康高のこめかみから聞こえた。
――異様な、異様な空気だった。魔人加藤が康高に目を向けると、背中にはドス黒いものが渦巻き始めていた。
「ハァ? コガマシイって言ウけどサ。俺は死にたくテ、死タクてくて飛ビ降りた。けど良く分からないまま、ここに連れて来ラれて、その上お前の尻ぬぐいをしろと? 笑わせル、コのクズ野郎!」
魔人は後悔した。――怒らせてはならなかったと――
魔人は認識した。――本当は誰が上の存在かと――
魔人は懺悔した。――神よこの者を止めてくれと――
ノッペリとしたマスクを着けたような、この笑顔は見るものを震えさせ、また後悔させた。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
康高は吹っ切れたかの様に殴り続けた。拳と顔などには返り血が飛び散った。
色々と怒りのボルテージが彼を突き動かす。メダルを丁重に扱えだとか、勝手な事ばかり言われ続けたからだ。不条理には不条理で、暴力には暴力を行う。
そこには先ほどまでの、罵る遊びなど微塵もなかった。これこそが一方的な蹂躙である。見よ! 彼こそが真の魔神である。慈悲などはそこには無く、破壊の権化となった。
得意の陰陽術を使う事すらできないほど殴られ、その度に魔人加藤の心は壊れていった。
今までは誰にも負けなかった。あの土御門にさえ負けなかったはずのこの魔人が……ここで完全に壊れてしまった。
「や、止めてくれ、本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」
魔人にとって、壊れた心の叫びだった。尊厳や人権などは捨てられた。真っ白な言葉だ。
「この俺を怒らせたんだ。覚悟は出来ていたはずだろ? ったくよ」
その言葉を聞いた魔人加藤は頭を深くすり付けた。魔人の威厳や姿などそこには無く、身震いをしながら康高のくつをナメ始める。
「ありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございます」
「ええぇ、またかよ。どうしてこんなことに!?」
驚きとともに、はぁ……っと深くため息を康高はついた。なぜこんなことになったのかは、からっきし覚えていなかったからだ。ブチギレた後はいつもこうだと、内心では達観していた(ちなみに自殺しようとした原因はこれもある)。
「まぁ良いんだけどさ、どうしてメダルが大事なの?」
「は、はい! あの三枚のメダルは、神が宿るメダロットのメダルなのです。その上、選ばれしものしか持つことしか出来ないレアメダルなのです」
「え、メダロット? 確かそれってアニメの中だけの話だよね。実在するわけ無いでしょ……?」
「いやそれがあり得る話なのです」
無いだろうと言う、康高の現実の解釈はこの際は置いておく。魔人加藤が言ったように、帝都を破壊した際の力が大き過ぎて、空間湾曲が発生。
空想上だと思われていたゲームや漫画やアニメの中の物体などが、時空の枠を超えて康高の世界に一つだけ隕石となって、軍事的な某国に飛来した(別の次元やパラレルワールドにも)。この中にはレアメダルが三枚入っていた。
某国がしばらくメダルを調べると、機密性が高いサーキット型情報端末であることが判明。各国がこぞって狙い、奪い奪われをくりかえしつつ最後には、遺伝子情報や因果律など必然が伴い康高の元に来たという。
そして続けざまに魔人加藤は言った。
「この三枚のレアメダルの名は、ラー、オベリスク、オシリスと呼ばれている。本来は名もなきファラオが持っていたカードなのです」
魔人加藤にとって、これは早急に正さなければならない問題だった。しかし体はすでに無い。だからこそ歪みを正してくれるだろうという、一途な希望を子孫である康高に託すしかなかった。
康高は決心した。つまらない人生だったが、ようやく楽しめそうだという希望や夢が康高の内にわいてきたからだった。
「よしやってやる!」
「真でございますか!? ならばこれを授けるとしましょう」
そう言ってポケットから三枚の札を取り出して呪文を唱えた。現れたのは三体でバハムート、メタビー、フェニックスのメダロットだった。
アニメや漫画の中の物が実際に、目の前に現れると感慨にふける。
「急急如律令と唱えると、式神札に戻したりメダロットを出す事が出来ますぞ、その上術式を変えればパーツを変えたり出来ます」
「へー面白そうだね」
「ただし、自分の力以上のパーツを着けようとすれば最悪爆死しますのでご注意を……」
このあとに実践をふまえた説明を色々された。
そしてナンヤカンヤあり、陰陽師としての知恵を手っ取り早く身に付けさせるために、康孝は知恵を頭の中に押し込まれると血の涙を流した。
「さて準備が整いましたのであなた様には、早々に旅立ってもらいます」
「分かっているよ。大丈夫大丈夫、バッチリ解決してくるよ。頭はまだ痛いけど」
この先、康高自身にどんな苦難が待ち受けるかまだ誰も知らない――。
プロローグ―完―
第1章 真・女神転生へ続く……。
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