Steal Art Online   作:バンバンブー

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取り敢えず、思い付いたから投稿
次の更新は一切未定


プロローグ

 夜闇に囲まれた草原。その一画にある背の高いネコジャラシのような植物の茂みの中に人の姿があった。小柄ではあるが、体格からしてその人物が男だということは分かる。しかし、茂みの深い陰と濃鼠(こいねず)のフードを目深にかぶっているせいで顔は識別できそうにない。

 

 しばらく男が浅い呼吸で茂みに潜んでいると、どこからか低い笑い声が聞こえてきた。笑い声は複数あり、全員が愉快そうに顔を歪めている。その頭上には、煌々と光るオレンジ色のカーソルが浮かんでいた。

 

「……来た」

 

 笑い声を上げる男たちを視界に収めた男は、音を立てないように静かに起き上ると膝を屈めていつでも飛び掛かれる姿勢をとった。狙いは言わずもがな、視界に収めた男たちである。

 

 自分たちが狙われていることなど露も知らない男たちは、あまりに無防備に茂みの前を通り過ぎようとする。

 

 その瞬間、茂みに隠れていた男が飛び出した。右手に鼠色の閃光を灯しながら一息で一番後ろを歩いていた男の直ぐ横を通り過ぎる。その間に、フード男はオレンジカーソルの男の腰に佩かれている片手曲刀に触れた。

 

 刹那の拮抗のあと、夜の草原にパキン、という幽かな破裂音が響く。その頃には、腰に佩かれていた片手曲刀は、既にオレンジカーソルの男の腰から離れてフード男の右手に移動した後だった。

 

「片手曲刀《クレセントネイル》。確かに返して貰いました」

 

 呆然とする男とたちを尻目に、フード男が一方的にそう告げる。そして、フード男が片手曲刀を自分のアイテムストレージに収納したところで、男たちはようやく我に返った。

 

「て、テメエ! なにしやがるッ!」

 

「何、と言われましも、ただ奪われたものを取り返しに来ただけです」

 

激高するオレンジカーソルの男に、フード男は極当たり前の事を話すように淡々と答える。

 

「ああ? それは俺が今日こいつらに協力してもらってドロップしたレア装備だぞ? さっさと返しやがれ!」

 

「ドロップしたのは貴方じゃないでしょう。貴方はただ、今晩の依頼主がドロップしたこれを脅して奪い取っただけです」

 

 そう言ってフード男は男たちを一瞥すると、もう用はないとばかりに男たちに背を向けて走り出した。

 

「待ちやがれ!」

 

 男たちは慌ててフード男を追いかけるが、その差が縮まることは無い。数分もしないうちに、男たちは遮るもののない草原でフード男の姿を見失うことになった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 明朝。未だ薄暗い第一層《はじまりの街》の裏道の一画に、一人のプレイヤーの姿があった。中学生くらいの少年で、良く言えば優しそうな、悪く言えば気弱そうな印象を受ける顔立ちをしている。身軽な布系装備を着用しておりダメージディーラーであることが見て取れるが、そんな彼の商売道具である武器が見当たらなかった。

 

「お持たせ致しました」

 

「わっ!?」

 

 突然、少年の背後から丁寧な口調で声が掛けられる。驚きつつも少年が振り返ると、そこには濃鼠色のフードを目深にかぶったプレイヤーの姿があった。その姿は薄暗い街に溶けているかのようにおぼろげで、本当に目の前にプレイヤーがいるのか疑ってしまうほどであった。

 

 しかし、フード男の手に握られた一振りの片手曲刀を見て、少年は目の前のプレイヤーが確かに存在していることを確信した。

 

「依頼の品は、こちらのクレセントネイルで間違いはありませんね?」

 

「はい!」

 

嬉しそうにハキハキと答える少年に、フード男は口元に笑みを浮かべるとその手に持ったクレセントネイルを手渡す。受け取った少年は、それを大事そうに抱えてから自分の腰に差した。

 

「それでは、これで依頼は完了ですね。またのご利用の無い事をお祈りしています」

 

「あの、ありがとうございました!」

 

フード男はそう独特な文句を口にすると、頭を下げる少年に一礼をして薄暗い街の中へと消えていった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

ここは、仮想現実で作られたゲームの世界。名前を《ソードアート・オンライン》。通称《SAO》。

 

浮遊城アインクラッドを舞台とし、プレイヤーのレベルとスキルと装備を駆使して用意された百の階層全ての攻略を目指すアクションオンラインゲームである。

 

しかし、今はそれだけでは無い。現在のこのゲームは、仮想現実のヒットポイントと現実世界の自分の命がリンクしたデスゲームの舞台となっている。

 

プレイヤー達は生き残るために、ある者は安全地帯である街に引き篭もり、ある者は剣士や職人としてゲーム攻略のために力を付け、ある者は犯罪に手を染め人々から有益なアイテム等を奪い日々を過ごしている。

 

その中に、ある特別なスキルに目覚めたプレイヤーがいた。

 

一般的に、ユニークスキルと称されるそのプレイヤーの持つ力の名前は《強奪》。文字通り、他人の持つ装備やアイテム、この世界の通貨である《コル》を無理やり奪い取り自分のものとするスキルである。

 

現実の世界であっても犯罪に当たり、尚且つ装備やアイテムがフィールドでの生命線となるSAOにおいて、そのプレイヤーの持つ《強奪》スキルは誰からも忌避されるものである事は想像に難くない。

 

しかし、そのようなスキルを持っていながら、そのプレイヤーは爪弾きにされる事はなかった。それどころか、一部のプレイヤーからは英雄視される事もあった。

 

何故なら、そのプレイヤーは《強奪》スキルを盗み返す(・・・・)時にしかプレイヤーに使う事が無かったからだ。

 

古今東西、どこでも語られる事のある義賊のような行いに、《強奪》スキルの所有者はひそかに憧れていたのだ。

 

所有者の名前は《スクエア》。現在、19歳になる、義賊の真似事を楽しむプレイヤーである。

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