大会日市内の市立第三中学校で・・・
市立第三中学は市立で唯一の50mプールであったために毎年市中大が開催される伝統の場所になっているのである。
屋外のプールサイドにはそれぞれ日差し避けのテントが各中学立てている。
この大会は市立の六つの中学と私立の三つの中学、合計九つの中学が参加している。
開会式・・・
「あれって一中のタートルじゃないか?」
「本当だ、青山選手の後輩か。一中の時代も終わりだな。」
そう開会式で他中の話し声が聞こえてくる。
川村は肩身が狭い思いでいた。
「大丈夫っすよ!時太郎先輩は一年前とは比べ物にならないっすから。」
「お、おう。そうだな。」
海中に励まされ平常心に返った。
川村は一年の時に出た競泳大会はすべてビリだった。
だから『タートル』という不名誉なあだ名がついていた。
川村(青山先輩、俺の逆転劇を皆に見せてやりますよ!)
開会式の最後に、
『男子自由形50m予選、女子自由形50m予選の方は召集所まで来てください。』
と大会関係者が音響メガホンでうながした。
一旦一中のテントに戻って川村と黒川は中に水着を着ていたために脱いですぐに行く準備をした。
「時太郎、緑ちゃん。頑張って!」
「はい!」
「おう!」
「行くぞ、黒川。」
川村と黒川は召集所に行った。
「海中君も行っといたら?次平100だよ。」
と競泳プログラム表を見ながら川端は言った。
「まじっすか!やべ!!俺着替えに行かなきゃ。」
海中は急いで召集所に近い三中の男子更衣室に行った。
「結ちゃん、私も背泳ぎあるから、荷物見といてくれる?」
「分かりました。私は中に着てるんで時間気にせずゆっくり着替えてくださいね。」
白川は淡々とした口調で言った。
「結ちゃん、ありがとう。」
召集所で・・・
「頑張れよ、黒川。練習通り泳げば自分に似合った結果がついてくるぞ。」
「でも先輩去年全大会ビリだったんすよね?」
黒川は苦笑いしながら言った。
「まあな、だがあれが俺の全力だったからな、今年も俺は自分に恥じない結果を出そうと思っている。」
黒川は去年川村が全部大会でビリだったが、恥じてないことを初めて知り驚いた。
「女子自由形50m予選一組の人は言いに来てください。」
と関係者が言い放った。
「ほら、呼ばれてるぞ。頑張れよ。」
「は、はい!」
召集所で座って周りを見た。
鍛えた肉体からみんな二年や三年と上級生に見える。
黒川(ダメだ、ダメだ。私しっかり!!)
「それでは自由形50m予選一組の人、コースへ。」
黒川は自分の泳ぐコースに行った。
『女子自由形50m予選一組、位置について』
黒川は初めて味わう大会の雰囲気に緊張しつつ、飛び込み台に立った。
飛び込み台に立ったとき、自分の赤い水着のラインを触った。
これは黒川なりのルーティーンである。
『用ー意!』
パンとスタートの合図と同時に一斉に飛び込んだ。
初めて一種目泳ぎきった時達成感があった。
すぐに召集所にいる川村に黒川は報告しに行った。
「先輩~一組で六人中五番目でした。」
「心配するな!お前はまだ一年じゃないか。これからだよ。」
黒川は一旦テントに戻った。
「緑、よくがんばったじゃん!」
「本当、緑ちゃんは少し成長したわね。次は私の出る種目だから行ってくるね。あと応援お願いね~。」
『男子自由形50m予選一組、位置について』
白川と黒川は次の種目まで時間があったので観戦していた。
「あれ、川村先輩は?」
一組の男子自由形50mに川村の姿はなかった。
「二組じゃない。」
そう言って白川は競泳プログラム表を黒川に見せた。
「あ、本当だ。」
『組』は数字が高いほど、事前タイムがよかったということである。
「あれ?タートルは?」
「見当たらないな。一組常連の亀は今年は遊泳しなのか!」
川村は他中からかなりバカにされているよであった。
『続きまして男子自由形50m予選二組、位置について』
そこにはほぼ真ん中のコースで炎の柄のショートスパッツ型の水着を着た川村が飛び込もうとしていた。
「二組!あのタートルが?」
「うそだろ!しかも五番目のコースだぞ!」
他中は驚いていた。
黒川・白川「GO!GO!一中!GO!GO!川村!!」
部長だったから思わず声に出して黒川と白川はコールした。
『用ー意・・・』
パンと音が鳴った。
5m地点・・・
川村(畜生!腹打ちした!)
しかし川村は圧倒的なバタ足と水かきでビリからごぼう抜きでトップでゴールし決勝に残った。
「まじかよ・・・あの亀野郎が二組ぶっちぎりだと・・・」
「ミュータントだ・・・まさにミュータントタートルだ。」
他の中学の選手も一年前と別人の川村に驚いていた。
川村が召集所に戻ると・・・
「さすが、時太郎先輩!俺も自由形100mの対決楽しみにしてますよ!!」
「時太郎、あんた本当に一年前鉄鎚だったの?」
川端は笑いながら言った。
「俺はまだまだ満足してない・・・」
川村はテントに戻って行った。
「先輩!!!すごかったすね!もう無双ですよ!む・そ・う!!!」
「先輩。私も一中の名前に恥じないように頑張ります。」
白川は黒川と違い冷静であった。
白川は召集所に行った。
「先輩!一緒に海中君のこと応援しましょうよ!」
「そうだな、あいつは平泳ぎもなかなか速いからな。」
召集所では・・・
「川端先輩、緊張しますね・・・」
海中は顔が青白くなっていた。
「でも海中君なら大丈夫じゃない。上級生に劣ってないわよ。」
「それでも・・・」
「これは結ちゃんに良い所見せるチャンスじゃない。」
と小声で海中に言った。
「え?何がですか。」
海中はしらを切った。
「あなたが白川さんのこと好きなの部員みんな知ってるわよ。」
「え?白川さんも?」
「結ちゃんはどうかな~」
すると召集所に白川が来た。
「先輩、それに海中君。二人で何話してるんですか?」
「ちょっとお手洗いに・・・」
海中は逃げるように男子トイレに行った。
海中が用を足した後、手を洗っているときである。
「智、お前が中学で水泳部に入るとは思ってなかったぜ。」
「え?なんで俺の事を・・・」
横を見るとかつて同じスイミングスクールで切磋琢磨していた海下透であった。
「透!お前引っ越したんじゃなかったのか!!」
「ああ、平の決勝で会おうぜ。」
海下はそう言ってトイレを去った。
「男子平泳ぎ100m一組の人は言いに来てください。」
海中は言いに行き、海下の姿があった。
「透、お前同じ一組だろ?」
海中は当然の様に確認した。
「いや、俺は三組だぞ。」
「え。」
「平泳ぎ100m予選一組の人はコースへ。」
と関係者は言ったが海中は聞いていなかった。
「海中、呼ばれてるぞ。」
海下の余裕の態度に海中は静かなる恐怖を覚えていた。
「あれ、海中だけいないな。」
「本当ですね!」
川村と黒川は心配していた。
海中は我に返り、自分のコースに向かった。
『位置について、用ー意』パンと音が鳴った。
海中は少し遅れて飛び込んだ。
結果は五人中三番目で決勝にはいけなかった。
召集所に戻ると・・・
「仕方ないよ。」
「結ちゃんの言う通り、仕方ない!」
川端はそう言って海中の背中を叩いた。
「そ、そうですよね。」
海中はテントに戻った。
「お疲れ、まだまだ!あと三年あるからな。」
「そうだよ、私より順位高いし、自由形もあるから。」
川村と黒川は励ました。
海中は頷き、観戦した。
『続きまして平泳ぎ100m予選三組、位置について』
そこには海下の姿が見えた。
『用意』パンと音が鳴り、泳者たちが一斉に飛び込んだ。
海下は六人中三番目であったが決勝に出れるタイムだった。
海中は再び召集所に向かった。
「おい、お前は○○大学付属中学に特待で入学したんじゃなかったのか?」
海中は喧嘩腰で海下に言った。
「お前こそ、俺に平泳ぎで負けて辞めたんじゃなかったのか。」
「なんだと!!」
一年生が喧嘩になるのを他中の上級生の生徒が止めた。
白川と川端は海中を保護した。
「悪いけど、海中君任すね!」
「はい、頑張ってくださーい。」
川端は背泳ぎ100mに出るために召集所で用意をしていた。
「あの人となんかあった?」
白川は海下の体操服の上を見て、私立鯨ヶ丘中学だと分かった。
「悪いな白川さん、チームメイトがこれじゃあ不安だろ?」
「私でよければ話聞くよ。」
すると海中はヤンキーらしくない口調で話し始めた。
「俺は中学に上がる前、そう小6の時。市では一番早かった。だが唯一平泳ぎだけ海下にはかなわなかった。」
「平泳ぎだけ?」
「うん、そして海下は平だけを六年間極めて○○大付属中から特待として誘われたんだ。でもあの様子じゃあなんか起こして取り消しになったんだろう。俺と海下はやんちゃで有名だったからな。シャチとファーストフロッガーて呼ばれて腫物扱いだったよ・・・」