「雪、ですね」
「ねぇ、俺、お家に帰っちゃだめ?」
新年早々雪など、運が無いな~。睡眠も数時間取り、いざ、初詣となったら雪が降り始めたのだ。今年も俺は不運な1年なのかな…
「ほ~ら、せんぱい。早く行かないと余計に混みますよ?」
「ん、悪い。今行く」
すれ違いざまにさり気なくいろはの手を引く。握った瞬間はビクッとなったが、その後はギュッと握りしめてきた。
神社に行くのだが、余り遠くは無い。最寄り駅から2つ程先にある。
「せんぱい、見事に大混雑ですけど、大丈夫ですか?」
「ほんとに大丈夫じゃない奴はそんな受け答え出来ねぇよ」
「大丈夫なんですね。もう、素直じゃないな~」
「お前に言われたらお終いだよ」
全く、いつに無くテンションが高い。理由は、あれだ。2年参りの時に同棲について考えてやると言ったからだ。そこからずっと顔がゆるんでいるのである。当の本人は気づいてないんだろうけどな。
「あ~せんぱいおみくじやりましょうよ、おみくじ!」
「えっ、嫌だよ。どうせ今年も凶だろうから」
「それは逆に凄くないですか?」
凄いも何もそれが俺の当たり前だしな。逆に大吉とか大凶とか出せる人の方が凄い気がする。大凶とかは当てられる気がしないでも無いが…
「あっ、私、大吉でした!」
「俺は……末吉か」
「凶からほんの少しだけレベルアップしましたね。これも私のお陰ですね!」
「はいはい、そうだな」
にしても、ここ数年の凶地獄から抜け出せたか。去年よりはほんの少しだけいい年って事が。そうすると、結構いい年じゃね?
「せんぱい、お守りですよ!」
「うん、そうだね。そんな目で見ても買わないよ?」
「せんぱいの、ケチ」
「節約家と言ってくれ」
全く、人をなんだと思ってるんだ。金づるとでも思ってるのか?えっ?人の事言えないだって?俺は俺。いろははいろはなんだよ。
「安産のお守りでも買っておこうかな」
「お前子供いるの?そういう行為したことないなに?」
「せんぱい、お腹の中にせんぱいの子がいるんですよ。私はまだ処女なのに!」
「はいはい、そうだね」
「…そんな目で見ないでください。孕んじゃいますよ?」
「何を言ってるんだか。ほら、お参りに行くぞ」
2人で並んで鐘の元に行って鳴らす。何を願うか。それは、必然的に決まっていた。俺が楽をして生きていけるようにってのと、いろはが幸せでいられますようにだ。
去年は一切そんな事は考えなかったんだけどな~。人はほんの数ヶ月で成長するんですね。成長期って凄い!
「せんぱ~い。寝てから反応が薄いですよ?何かエッチな夢でも見て目が合わせられないとかですか?」
「お前なぁ…」
眠気が俺を苛立たせたのか、壁と俺でいろはを挟んだ状態になっていまた。いわゆる壁ドンだ。それに対していろはは─
「せんぱい、人前で処女を奪うんですか?酷い事するんですか?エロ同人みたいに。エロ同人みたいに!」
「変な事を言うな。帰りになんか買ってやるから」
「…仕方ありませんね」
間はなんだ。怖いな。自分で言ったけど怖いな。本当に顔が青ざめそうだよ。目も腐っちゃいそう。元々腐ってるとかは言わないで。八幡の精神に"いてつくはどう"が来そうだから。
「今年も頑張りますか!」
「せんぱいにしてはいい事を言いますね!」
「色々余計だ」
今年はどうなるんだかな。俺には分かんないよ。
更新が2週間ほど遅れました。ごめんなさい。ただ、書く気力が出なかったのと、初詣のアイデアが浮かばなかったのです。
一応予定としてあと3話でこのSS終了の予定です。その事などについて活動報告に載せておきたいと思うので読んで貰えると嬉しいです。