春、別れと出会いの季節。なんてのが定番な始まりだろう。実際は別れってのはすぐ忘れてしますものだ。思い出として残るのは出会い。それの上書きが青春ってやつだ。
「で、だよ。いろはさん、あなた今何杯目?」
「いち、に、さん…5杯目?」
「7杯目な。飲みすぎるとまた吐くぞ」
そんな季節に、新歓コンパなどには参加せず2人だけで飲んでる俺達なのだ。ちなみに場所は"あの"居酒屋だ。そう、俺といろはが再会した酒場だ。
「ペース早すぎだ。後は水でも飲んどけ」
「え~嫌ですよ~。すいませ~ん、生1つ」
「は~い、生1つですね。生1つ入りました~!」
俺は元々酒に強くはないため飲まない。3杯弱がいつもの感じだ。お付き合いで飲めるくらいあれば大丈夫だとどこかで教えられたから、それだけは必要だ。
「お待ちどうさまです!」
「いろは、それ最後な」
「ちぇ~仕方ないですね」
唇を尖らせてるのに少しドキッとしたのは内緒だ。
それにしても懐かしいな。もう1年も前に来たのか。あれから1度も来てないんだよな。
「はぁ、また吐くのは勘弁だ」
「吐きませんよ~そ・れ・と・も・せんぱいが介抱してくれます?」
「嫌だよめんどくさい…なんて言えないんだろ」
「あはは~よく分かってるじゃないですかせんぱい」
「というかいい加減せんぱいっての直せよ」
お互いに名前で呼ぶって言ったはずなのだが、人前ではするくせに2人きりだとせんぱいだ。わざとやってると分かってるんだが、あれはズルイな。しっくりとし過ぎるしな、せんぱいっての。
「よ~し飲み終わったな。勘定済ませて行くぞ」
「えぇ~早いですよ」
「店で吐かれるのは嫌なんだよ」
そう言うと渋々と立ち上がり着いてきた。こうして見てるとドラクエの勇者気分だな。見た目は別として気分だけ。
***
「ほら、吐きませんでしたよ!」
「あ~はいはい偉いでちゅね~」
「後でアイス奢って下さいね」
「ひでぇな」
今、俺達は公園に来ている。"あの"公園だ。吐きかけのいろはを連れ込んだ救世主の公園だ。
「にしても懐かしいですねぇ~」
「そうだな。この公園も1年ぶりか」
「出会いの場所ですね」
「再会な。それなら居酒屋だろ」
不意にいろはが止まり、袖を引っ張ってくる。後ろを向くとそこには満開の夜桜があった。今年は季節通りに咲いたのか地面も花びらの絨毯状態だった。
「ちょうどこの場所ですね。せんぱいが私の胸を揉んだの」
「そこ?そこなのかよ。いや、その節は悪かったと思ってるよ」
悪かったとは思ってるさ。ただ悪かったって思いよりふにふにしたのはすごく気持ち良かったなと。その思いの方が強かったのだ。許して下さい。
「せんぱい、手」
「手がなんだよ」
「手を繋いで下さい!」
分かりにくいな。手だけで伝わるか?彼女いない歴=年齢だった俺には分かんないに決まってるだろ。そんな事あったら
「せんぱい、ここ来年も来ましょうね。再来年も、その後も」
「そんなに気に入ったか?確かに桜は綺麗だけど」
「だってここですよ?私達が始まったの」
始まったか…確かに俺は本物から逃げていたから時が止まったままだったし止めておくつもりだった。でも、ここから再び動き始めた、いや、ちゃんと動き始めたのは確かだ。
「そうだな。来れるなら来てもいいのかもな」
「せんぱい…せんぱいしてないですけどいいんですか?」
「バカにしてる?バカにしてるよな」
「だってせんぱいからそこを引いたら何も…」
「残るし!残るって信じてるし!」
公園をぐるっと1周した俺達は駅へと向かって歩き始める。明日から大事な用事があるのだ。早急にかつ静かに進めなきゃならない用件。それは、とある提案から始まったことだ。
「いい所あるかな~」
「何がですか?」
「なんでもない」
そう、1度は断った提案。それは同棲だ。そのための家を探さないといけない。2人とも住んでる部屋はあまり大きくは無い。それに一緒に暮らすなら少し大きめの方が良いだろ。って事だから不動産屋に朝から行かなきゃならんのだ。ちゃんと喋れるか不安だけどね。
どうも。このお話はですね、元々春に出す為にタイミングを調整してたりしたので遅れました。本当にすいませんでした。
桜並木、隅田川のやつが綺麗でここがいいなって安易な考えと、俺ガイルの八色書きたいという私欲で書き始めたこの小説も一旦は最終回です。日間ランキング17位になった時は1人ではしゃいだりしてました。
ですが、活動報告で聞いてみたところ少しですが続きが読みたいという方がおられたので書いてみようかと。時系列的にはここから5年ほど先だと思ってください。
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