FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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まだだ、まだエタらんよ!!
あまり話しは進んでないけど!


お残しは許しません

「――――――――――っ!!!」

「ちょーこーまーかーとー!すばしっこいなイノシシ!」

 

 

 枝から枝へと飛び乗り、彼女は自分よりはるかに大きいイノシシ(標的)を追いかける。イノシシはでかい図体のわりにすばしっこく、シエルは中々決定打を与えられずにいた。このままではらちが明かないと判断したシエルは【疾風のごとく】に風を纏わせ、イノシシの進路方向に投げつけた。

 

 

「【蜂のように刺す】!!」

「――――――――――っ!!」

「!!」

 

 

 槍は風を纏い、一直線に突き進む。そのままイノシシを貫くかと思えた槍は、危険を察知したイノシシが進行方向を変えることで、左の牙を切断するだけとなった。

 

 

「うげ……野生のくせに勘が……いや、野生だから勘がいいのか。で・も・ね?……“残念、計算通りだ”」

 

 

 うまくいったと、シエルはニヤリと笑う。そう、あれは当たればもうけと投げた槍、別に避けられてもよかった。“誘導する”ことが、シエルの目的だった。

 なにせ逃げた先(そこ)にいるのは──

 

 

「りゅーーー!」

「――――――――っ!?」

 

 

 リュウ()なのだから。気配を消し草陰から飛び出たリュウ(竜状態)は一瞬のうちにイノシシの喉元を食いちぎった。イノシシは声なき悲鳴を上げ、絶命する。

 この世はまさに弱肉強食、(絶対強者)が君臨するなんとも世知辛い世の中なのだ。シエルが獲物を追い込み、最後にリュウが止めを刺す。これが、シエル達の“狩り”だった。

 

 

「ふぅ……中々に手こずった。ま!私とリュウにかかればこんなのちょちょいのちょいだけどね!リュウ!村長さんにイノシシをみせ……」

 

 

 シエルは投げた槍を回収し、リュウとイノシシに目を向ける。そこで彼女は目を見開いた。

 

 

「アグ!ウ~~……りゅ!ア~」

「リュ、リュウ!?まだ食べないで!それ証拠だから!!めっ!だよ、めっ!」

 

 

 リュウは仕留めたイノシシの体を食いちぎり、モグモグと食べていた。証拠を食べているリュウを、シエルは慌てて止めた。

 

 

 


 

 

 

 あの後、私たちは仕留めたイノシシを村人に見せ、(リュウが食いちぎった個所は分からないように抉り取ってから)お金を受け取った。お金と一緒にもらったイノシシは、思っていたより大きくて、全部をギルドまで持って帰るのは流石に無理だと判断した。ということで、持って帰る分を切り取ってから、ちょうどいいところにキャンプを作って、イノシシの丸焼きを作成している。【紅蓮の炎】のおかげでいつでもどこでも炎が出せるからよかったよ。

 

 

「いやー楽しかったねー」

「りゅ!りゅ!」

 

 

 私の言葉に、膝の上にいる小さな竜はコクンコクンと頷いてくれた。今、リュウは魔力の消費を少しでも抑えるため、本来の姿でいてもらっている。普通なら竜状態でいるのは危険だけど……ここは森の奥深く、普通に考えて人は寄り付かない。それに人避けの魔法をかけたから、もし人がいても、ここに寄ってくることはない。竜状態でも問題なっしんぐなのです。

 

 

「りゅ~う~」

「ま~だだよ。リュウは生でも食べれるだろうけど、私は生じゃ食べれないもん」

 

 

 今までさんざんトカゲやらカエルやら食べてはきたけど、流石に生肉を食べるのは無理です。もし食べれたとしても、お腹を壊します。

 

 

「う~……」

「リュウ、そっちのお肉を食べたら、夕飯の牡丹鍋はありません」

「りゅ!?」

 

 

 リュウが持ち帰る予定のお肉をじーっと見つめていたから、釘を刺す。うん、やっぱり食べるつもりだったか。

 

 

「…………………」

 

 

 つぶらな瞳でこちらを見つめるリュウにチクチクと心が痛い。で、でもここは心を鬼にしなきゃ。夕飯がなくなる!!

 

 

「そ、そんな目で見てもダメなものはダメ」

「りゅー」

 

 

 イノシシが食べれないと判断したリュウはふてくされて体を丸める。そしてペチペチと尻尾で抗議した。その姿に苦笑して、そっとリュウの頭をなでると、リュウはぐりぐりと頭をこすりつけてきた。

 

 

「りゅー……う!」

「うん、お腹すいたね。もう少し待っててねーこうしてシュパッと!」

 

 

 【疾風のごとく】を持ち、風を起こしてイノシシを持ちあげる。そのまま空中で切り刻んで私とリュウが食べる分を切り分けた。切り分けた分はお皿に乗っけた。

 

 

「はい、イノシシの丸焼き(三分の二)できあがり~リュウできたよ。どうぞ!」

「りゅ~~!りゅりゅりゅ~!」

 

 

 ぴょーんとリュウは私の膝の上からイノシシの肉に飛び乗る。そして齧り付いた。

 

 

「アグアグアグアグ」

「そんなに急いで食べて……喉をつまらせないでね」

「りゅー!」

 

 

 私はリュウがお肉に噛り付く姿をちょっとだけ観察して……そしてリュウの喰いっぷりに……ちょっとだけ呆れた。あんな小さい体で、自分の体積をはるかに上回るお肉を食べるんだもん、いつものことといえばいつものことだけど……一体どこに入ってるんだろう。リュウの食生活を思い返すが、どう思い返しても答えは見つからなかった。……私も食べよう、考えても答えは出ないし、リュウの喰いっぷりを見てたらお腹すいちゃった。

 

 

「いただきます」

 

 

 お皿に盛ったお肉をフォークで突き刺す。そしてそれを持ち上げて口に運ぼうとした──その時だった。

 

 

「あ……れ?」

 

 

 突然視界が歪む。私は持っていたフォークを落とし、頭を抱える。

 思考が定まらない。体がとてつもなく重い。意識が遠く、深く──沈んで──

 

 

「りゅーー!」

「――っ!?」

 

 

 痛み(リュウ)が私を夢から現実に引き戻した。リュウの行動に感謝し、私は“頭に噛みつかれたまま”【疾風のごとく】を取り出す。

 

 

「……ありがと、リュウ」

「りゅ!」

「なめた真似してくれるね……ぶっ飛ばす」

「!」

 

 

 感情のままに、“見えぬ敵”目がけて“風”を薙ぎ払う。風の刃は木々を切り倒しつづけたが、刃は何かに溶かされたように突如解けて消えた。

 

 

「……リュウ、噛みつ「やめるんだ……私が悪かった」……チッ」

 

 

 “敵”が素直にぶっ飛ばされるつもりはないと判断し、リュウに指示を出そうとしたときに両手を上げて奴は姿を現した。予想通りの人物に私は舌打ちをする。いきなり人を眠らせようとした行動に思うところがないわけではなかったけど……戦う意思のない人間をいたぶる趣味はなかったので、とりあえず槍を収める。しかし、不機嫌な態度を隠さずに、私はその人物を睨み付けた。

 

 

「……のっけからふざけたことするね “ミストガン”」

「りゅー」

 

 

 そこにいたのはマントそして覆面をつけた男。どこからどう見ても……いや言い直す、どう贔屓しようが万人が不審者と断言できる格好をしたその人物は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の男と言われている人物の一人……ミストガンだ。

 ……どうしてこのディスコミュニケーションが最強の男とか言われてるんだか……世の中訳が分からないよ。

 

 

「……エルザやナツと一緒ではないのか?」

「それは大丈夫、今回は私とリュウの二人で依頼を受けたの、そうじゃなきゃリュウはこっちの姿になれないよ」

「りゅー!」

 

 

 あたりを気にするミストガンにここには私とリュウしかいないことを教えた。

 

 

「エルザ達がいないとしても迂闊に戻らないほうがいい、いつどこで誰が見てるかわからない」

「人避けの魔法はかけてたでしょ」

「まだ未熟だったが……な、この程度、腕の立つ魔道士なら容易く解ける」

「この程度って言い方……めちゃくちゃ癪に障るなー」

「事実だ」

「事実だけども!」

 

 

 ミストガンのめちゃくちゃ癪に障る言い方に、私は腹を立てる。そりゃまあ……まだミストガンの域に達してないのは、自分でも理解しているけど……言い方ってものがあると思いまーす。

 ……エルザが槍を使った“戦闘技術”の師匠だとすれば、こいつは決して認めたくはないけど“魔法”の師匠。

まだまだ魔力が少ない私に、槍に込められた“魔力”と“属性”で戦う術を教えてくれた。けど!それで!注意を受け入れるかどうかは!全く!別の!問題!でして!というか!肝心なことをこの馬鹿は話してないんだけど!

 

 

「ああもう!じれったい!!言いたいことがあるならさっさと言って!まさか、未熟なことをわざわざ伝えに来たわけではないでしょ」

 

 

 人の未熟さを伝えるなら、わざわざ人を眠らすことはない。それ以外、何らかの理由で私たちを眠らせに来たと判断できる。というか私たちは、ご飯の時間を邪魔されて怒ってるんだ!ダメだしするために私たちのご飯タイムを邪魔することは許さないよ!

 

 

「……………」

「聞こえません!」

 

 

 ポツリと小さな声でミストガンは呟くが、マスクで声は籠って私まで届かなかった。もう一度聞き返す。

 

 

「……肉…………」

「なに?」

「……肉しかなかったから、野菜を置いて立ち去ろうと……」

「………………」

 

 

 ミストガンの言葉に、固まった私は悪くないと思います。用はあれか、私たちのお昼ご飯が肉だけだったから、野菜も食べろ!って伝えたくて現れたのか。驚いたとかそんなふうではなく……なんというか……その……えーっとほら、あれだよあれ……どうしてこのディスコミュニケーションが最強の男とか言われてるんだ……世の中訳が分からないよ。

 

 

「その行動に、私を眠らす必要性あった!?いつの間にか眠ってて目が覚めたら目の前に買った覚えのない野菜ってすっごく不気味だからね!?ディスコミュニケーション野郎とは常々思っていたけれど!シャイ?シャイなの!?シャイボーイかアンタは!!」

「……すまん」

「はぁ……あーもう、色々と馬鹿らしくなってきたーリュウー私もう疲れたよ。もうこんな奴ほっといてご飯食べよう」

「りゅー」

 

 

 色々と馬鹿らしくなった私はミストガンをほっといて中断していた食事を再開することにする。というかお腹減ったよ私。さっきから一口も食べてないもん。フォークは……さっき落としちゃったな、新しいの出すか。

 

 

「待つんだシエル、肉だけじゃ栄養が偏る。野菜も食べるんだ」

 

 

 ミストガンはこちらに野菜が大量に入った紙袋を差し出してくる。積み重なる野菜達の一番上にあったのは、私が大嫌いなピーマンだった。

 ……嫌がらせ?嫌がらせかなこれ。

 

 

「この期に及んでまだいうかこのディスコミュニケーション野郎、素直に受け取ると思ってるの?というかそれ以前に、これ見よがしに私の大嫌いなピーマンを見せつけてくる神経どうかしてないですかね」

「好き嫌いはダメだ、リュウのようになれ……とは言わないが、その野菜嫌いは直すべきだ」

「別に野菜なんか食べなくても人は成長できますートカゲとかカエルとか食べて生きてけますー」

「りゅーうー」

 

 

 ミストガンの押しつけがましいその善意に私たちは二人してふてくされる。……いや、正確にはふてくされているのは私だけ、リュウは私の真似をしているだけだ。ご飯が増えることにこの子が喜ばないはずはな……いや、持ってきたのがミストガンなら逆に突っぱねるか?

 

 

「というかあなたに言われる筋合いはないしー」

「……そうか」

「…………うっ」

 

 

 こちらの言葉にミストガンはすごく落ち込んで、悲しそうな目で野菜を見つめる。その姿にどこからともなく罪悪感が湧いてきた。

 え、これ悪いの私?私かな?そろーっと頭の上に乗りっぱなしのリュウに視線を向ける。私の視線に気づいたリュウはくあーっと欠伸をするとぷいっと我関せずの態度をとる。そうだった……リュウはミストガンに関わるととたんに塩対応になるんだった。私がどうにかしないとダメかコレ。

 

 

「………………」

「………………」

「……あーもう!わかったよ!」

「!」

 

 

 沈黙に耐え切れず、口火を切ったのは私だった。

 

 

「その袋ちょうだい、野菜炒め作るから」

「ああ、ちゃんと残さず食べろよ「ただし!」!!」

 

 

 私はミストガンにズイッと詰め寄る。

 

 

「一緒に食べて」

「何……」

「一緒に!食べて!私たちだけじゃこの量は食べきれないです」

「……そうか?」

 

 

 ミストガンは私の言葉に疑問に思ったのか、リュウに視線を向ける。……いやまあ、リュウがいれば食べきれないってことはないと思うけど。きっとイノシシも野菜も全部食べると思うけど。

 

 

「いいから食・べ・ろ!ちょっきゅっぱで作るからそっちに腰かけといて!!」

 

 

 返事を聞かずに、リュウを下してさっさと料理に取り掛かる。料理と言っても持ってきたプライパンと残っていた炎で野菜と少々のイノシシ肉を炒める簡単な作業だけどさ。……あ、火力調整間違えた……肉と野菜焦げた……これくらいならいけるいける。

 

 

「だが……リュウは私がいないほうがいいんじゃないか?」

「……そんなことないよねーリュウ」

「りゅー?……りゅ」

 

 

 ミストガンはリュウを引き合いにしてこの場から去ろうとするが、そんな理由で私が立ち去るのを認めると思うか、馬鹿め。私の問いかけにリュウはふてくされて頷く、ミストガンをジトーっと見つめているが、何かをしようとすることはない。多分この機嫌の悪さはご飯を邪魔されたからだね。

 すぐに噛みついたりしないからまだ大丈夫。ご飯食べておなか一杯になれば機嫌も直るでしょう。

 

 

「いいって!」

「なら……お相伴に預かろうか」

 

 

 ミストガンはしょうがないとばかりに近くの岩に腰かけた。

 

 

「急ぎ過ぎて火力の調整を見誤るなよ」

「よ、余計な心配ですーちょっとの焦げはスパイスだから大丈夫ですー」

「……焦がしたのか」

「………………」

 

 

 ミストガンは完全に私が焦がしたと断言していた。いや、私が焦がしたんだけども。簡単な作業と高をくくって、焦がしたのがばれた。……どうしてそういうのは察しが聞くかなこのディスコミュニケーション野郎。

 

 

「……シエル、代わるか?」

「いらないし!大人しく安心して座ってて!!野菜炒めの一つや二つくらい私にもできるし!いざとなればポーリュシカの胃薬飲めば焦げなんかへっちゃらだし!」

「安心できる要素が一つもない気がするんだが……」

「くあ~~……」

 

 

 ミストガンの呟きなど気にせず、私は料理に取り掛かるのだった。

 

 

「わ!?フライパンが火吹いた!?」

「本当に大丈夫か!?」

 

 

・・・今日の昼ごはん(シエル)・・・

イノシシの丸焼き(部位足のみ)

スパイスをきかせてワインでフランベした野菜炒め~ポーリュシカ印の胃薬を添えて~

 

 

 

※お残しはリュウが美味しくいただきました。

 

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