FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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水質調査(水採取)

 列車に乗り、駅弁をモグモグと食べながら、車内で夜を明かして、翌日に目的地──ハルジオンに着いた。

 

 

「つ〜い〜たーーー!!」

 

 

 列車から降りるとまず私はグーっと背伸びした。長時間列車の中にいた為か、私の体はパキパキと骨がなる。

 

 

「さってと、帰るときのリュウへのお土産はどうしようかなー」

 

 

 街に着いて、私がまずしなくちゃいけないことは、お留守番をしているリュウへのお土産を決めることだった。

 駅内を物色をするのに邪魔な重いバックをベンチに放置するためベンチを探す。エルザが見たら不用心だと怒られそうだけど、ずっと持ってると重くて肩がこるし、貴重品はコートに突っ込んでるからバックにはロクなものは入れてない。だから例え盗まれても問題はない。

 ベンチを見つけて、私はバックを放り投げた。

 

 

「にゃ゛!?」

「…………“にゃ゛”?」

 

 

 バックがベンチに衝突すると、バックから鳴き声が聞こえた。思わずベンチにあるバックを凝視する。

 

 

「………………」

「………………」

 

 

 私とバックの中にいるものとの間で奇妙な沈黙が起こる。

 まさか、いや、まさか……!私は恐る恐るバックの蓋を開ける。

 

 

「………………」

「にゃ……にゃー!」

 

 

 バックを開けるとそこには白猫が入っていた。白猫は此方を見るとビクッと体を震わせたが、すぐに開き直り尻尾をピーンと立てて元気よく鳴く。

 

 

「………………」

 

 

 何も言わず私はバックの蓋を閉めて、バックを肩に背負った。私は何も見てません。イナイイナイ、ナカニネコナンテイナカッタ。

 

 

「にゃ゛!にゃー!?にゃんにゃー!!」

 

 

 もぞもぞと肩にかけているバックが動いている気がしないでもないけど。きっと気のせいだね、うん。私は蓋を抑え続ける。そして荷物配達をしてくれるところを探す。

 

 

「すみませーん。この荷物をマグノリアの『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)ってギルドに送ってもらえませんか?」

「に〜や〜あ〜!!」

「嬢ちゃん、うちは生き物の配達は請け負ってねーぞ」

 

 

 もぞもぞと動き、にゃーにゃーと鳴き声がするバックを見て、配達のおじさんは受け取りを拒否した。

 

 

「生き物なんていません。いるのは約束破ってバックの中に入り込んだ密航者です」

「それは生き物だろ嬢ちゃん」

「んにゃんのー!!!」

 

 

 バタバタと暴れるバックを抱え込んで抑えつける。今、中にいるものと私とでちょっとした攻防が起こっていた。

 

 

「往生際が悪いよ“リュウ”!!大人しく強制送還さ・れ・な・さ・い!」

「にゃあああああ!!」

「いや、だから送らないって」

 

 

 バックの中にいたのは白猫に【変化】したリュウだった。一生の不覚だ、バックの中に入り込んでたのに気づかなかった。なんか重いなとは思ったのに!!

 

 

「ぬおー!お願いおじさん、私がこの子を押さえつけている間になんか密閉性のある箱を!!今のうちにこの子を入れるんだ!!」

「だーかーらーうちは生き物の配達はやってないって!それにそんな箱に入れたらすぐ空気がなくなっちまってその子死んじまうぞ」

「はぁ!?リュウを死なせないでよ!」

「無茶言うな!?」

「にーにゃ!!」

「ぐ!?」

 

 

 バックを体全体で抱え込んでたら、みぞうちに一発食らった。その痛みで遂に私はバックを手放した。

 

 

「にゃにゃー!」

「おおー」

 

 

 宙を舞うバックからリュウは飛び出る。そしてくるりと宙を回転し、私の頭(定位置)に着地した。おじさんはリュウの身軽さに拍手を送った。

 

 

「にゃ〜!」

「……はーなーれーなーさーいー!!」

「にゃ!?う〜〜〜〜!!!!」

「痛たたたたたたたたた!?リュウ!爪立てるのと噛み付くのは卑怯だと私は思うな!!」

 

 

 私はリュウの首根っこを掴み、自分の頭から引き剥がそうとする。しかし、リュウは爪を立て、頭に噛みつき、意地でも私の頭から離れようとしなかった。

 帰ってもらいたい私と連れてってもらいたいリュウ。お互いが必死になりながら数分の格闘が続いたのだった。

 

 

「いい加減連れてってやれよ嬢ちゃん、その子はそこまでしてでも着いてきたかったんだろ?あとそろそろ店の前から退いてくれないか」

 

 

 私たちの悪戦苦闘を見ていたおじさんは呆れながら言った。

 

 

「……そうだね、リュウが着いてきたいのはよーく理解した。だ・け・ど!!それとこれとは別問題!例えリュウでも!許せないことがある!!」

 

 

 そうだ。例えリュウでも許すわけにはいかない。私はリュウを信じてお願いしたんだ。

 

 

「お留守番しててってお願いしたでしょ!約束破る悪い子を連ーれーてーけーまーせーん!!」

「にゃーにゃにゃーにゃーにゃーにゃー!!」

 

 

 リュウを引き剥がそうとするが、リュウは私の頭にしがみつきながら必死に首を振る。

 

 

「まさかこの期に及んで“うん”とは言ってないって言うつもり!?」

「にゃ!」

「そりゃ“猫”は“うん”とはいえねぇな」

「おじさんは黙ってて!嘘ついてもダメだよ!ちゃんと約束──」

 

 

 

──だから、待ってて。私が帰ったらおかえりって出迎えて欲しいな。

──りゅ、うぅ。

 

 

 

「…………いや、してなかったね」

「してなかったのか!?」

 

 

 そう言えば、リュウは唸るだけで頷いてなかった。約束したのはエルザだった。それでか、それでついてきたのか。

 勝手についてきたことには怒りたいけど、約束破った判定はしないでおこう。

 

 

「よーしわかった。強制送還は考えよう」

「にゃー!」

「それで考え直すって結構甘いな嬢ちゃん」

 

 

 私の言葉にリュウは上機嫌に鳴いた。正直な話、とっても可愛くて抱きしめたくはなるんだけど、そこは心を鬼にする。

 

 

「ただし!!」

 

 

 


 

 

 

「リュウ、ちゃんとそこにいてね。勝手に出ちゃダメだよ」

「りゅー!」

「……猫のフリ」

「りっ!……にゃー!」

「大丈夫かな……」

 

 

 不安になりながらリュックキャリーの蓋を閉めて、背負った。

 私がリュウに連れてくための条件として出したのは二つ。

 “猫のフリを続ける事”と“キャリーの中から出ない事”……この二つを守ればリュウを連れて行く。

 リュウは二つ返事で了承した。上機嫌にいつも通り鳴いたから今度こそ大丈夫なはず。

 私は早速リュックキャリーを買って、中に白猫状態のリュウを入れた。さっき猫のフリを忘れてたけど、そこは聞かなかったことしよう。私はお姉ちゃんだしね、一度くらいの失敗には目を瞑り、耳を塞ごう。

 

 

「さてと、それじゃ今回のお仕事を説明しまーす。どうせ、さっきの依頼人さんのお話、リュウは聞いてないでしょ」

「にゃー!」

「そこ、元気よく返さない。全くしょうがないなー今回の依頼は“水質調査”だよ」

 

 

 依頼人さんから話を聞いたときはリュウは私の頭の上に乗っていたけど、やっぱり話を聞いてなかったようだ。しょうがないので私が受けた依頼を説明することにする、

 

 

「にゃにゃ?」

「最近魚が漁れる量が少なくなってるんだって、だから原因を調べるためにここら辺の水を調査してほしいって依頼。まあ、調査といっても私たちが調べるんじゃなくて、私たちはここからガルナ島までの水を取ってきて渡せばいいの」

「にゃー……にゃ?」

 

 

 依頼を説明していたら後ろに背負っているリュウの気配がだんだんと変わっていく。どうやら、ようやく“気がついたようだ“。

 

 

「というわけで……海に出るよ!」

「に゛っ!!?にゃあああ!?」

 

 

 用意された船に乗り、私はそう宣言した。私の宣言にリュウは叫び声をあげ、キャリーの中で暴れ出した。

 おーこうなると予想して高いリュックキャリーを買ってよかった。全然揺れない。

 突然リュウがこうなったのは訳がある。リュウはなんの理由もなしに暴れる子じゃないもん。そう、リュウは──

 

 

「ちなみに、私がリュウにお留守番を頼んだのはこれが理由です。“カナヅチの子”を海に連れてくなんて酷いことしたくなかったんだけど。まあ、本人が行きたいって言ったならしょうがないよね!!」

 

 

──カナヅチなのだ。正確には泳げない……と言うより水に触れるのが嫌なのだ。だから、もしかしたら泳げるかも知れないけれど。リュウと過ごした七年間、私はリュウが自分から水の中に入ったことを見たことない。ちなみにお風呂もシャワーもダメだ、頑張れば入るけど、それまでは逃げ回る。

 

 

「にゃー!!にー!やー!」

「リュ〜ウ〜?約束したよね?キャリーから出ないって、帰りたいって言うなら止めないけど……」

「っ!……にゃー!」

 

 

 キャリーから出ようとするリュウに先ほど約束した内容を言う。ピタリとリュウは暴れるのをやめて行儀よくキャリーに収まった。

 

 

「よろしい。けど安心していいよリュウ、そのキャリーは耐水も撥水も抜群だから、自分から開けようとしない限り中に水は入らないよ」

「りゅにゃー!!」

「ちょっと鳴き声が怪しかったけど……まあいいや。じゃ、行こっか!」

「にゃー!」

 

 

 


 

 

 

──ハルジオンとガルナ島の中間地点

 

 

 

「採取採取っと!」

「ににゃー」

 

 

 海の水を掬い、用意してくれた入れ物に入れる。まずは一つ目。

 

 

「リュウ、そこでちょっと待っててね。深海の水も取らないと」

「なー」

「ついでに美味しそうなのとってくるね」

 

 

 荷物とリュウが入ったキャリーを船に置き、水の属性を持つ槍──【人魚の冠】を取り出して私は海に飛び込んだ。水を纏い、魚のようにスイスイと泳いで海の底へ進んで行く。

 海中の煌びやかな景色を綺麗だとは思うけど、そんなことは気にせず沈んてく。

 指定された地点の水を採取して私は浮上する、そのついでに高級な美味しい貝を見つけたのでついでにとる。ウニもいたからついでにとる。

 

 

「ぷはぁ!ただいま!」

「にゃにゃー」

「貝とウニ見つけたー!ガルナ島で食べよう!今回は間違いなくどっかの誰かさんの邪魔は入らないと思うし!」

「にゃー」

 

 

 船に上がった私をリュウが出迎えてくれた。とった貝とウニを船の上に広げる。今度はミストガンの妨害は入らないと思うし、ガルナ島に着いたら食べよう。

 

 

 


 

 

 

「これで六つ目と……うーん、もう大分日が沈んできたし、ガルナ島に行こうか」

 

 

 六つ目となる水を採取して私は日の傾き具合を見る。もうかなり日は沈んでいた。

 この装備で夜の海を航海するのはやめといた方がいいと思うし、そろそろ、ガルナ島で一泊した方が良さそうだ。

 ガルナ島にいって、島の水を採取して、一泊して帰りにまた途中の海水を採取をしよう。

 

 

「にゃー!!」

「……島に行くってわかったら、途端に元気でたね」

「に゛っ!!?にゃー!!」

「えー人聞きの悪いこと言うなって?見て聞いたままの印象だしなー」

 

 

 声を荒げるリュウに、私はただ見て聞いたままの印象だったことを伝えた。だって、尻尾をピーンと立てて、物凄い上機嫌に返事返したし。

 さっきまでのリュウは、返事は返すけどテンションはだだ下がりの状態だったし。

 なんだって私はリュウのお姉ちゃん、どんなにリュウが隠そうとしても私には丸わかりです。

 

 

 


 

 

 

「着いたーー!」

「にゃーーー!」

「キャンプだー!」

「にゃにあーー!」

 

 

 ガルナ島に着くと、もうあたりは暗かった。

 私は早速森でテントを張ってキャンプの準備をする。島の水は朝起きたら取ろう。

 

 

「リュウ、出ていいよ」

「にゃ?に〜ゃ?」

 

 

 キャリーの蓋を開けると、リュウは首を傾げて外に出ていいのかと聞いた。

 

 

「島にいるときなら、キャリーから出て外を散歩してもいいよ。ずーっとその中にいると息がつまるでしょ?」

「にゃ……りゅー!!」

 

 

 私の言葉に喜んだリュウはキャリーから飛び出て、私の頭に飛び乗る。

 

 

「ただし、猫のフリは続行。人の姿になったり、竜に戻るのもなしだから」

「りゅにぁー!?……にゃー!」

「ダーメーそこだけは譲れないなー……そもそもその抗議は筋違いだと思うし」

 

 

 猫のフリを続けなきゃいけないことにリュウは抗議してきたが、そもそも自分から猫の姿になって着いてきたんだ。なら最後まで猫のフリは続けないと。

 

 

「に、にゃー……」

「分かってくれたようで良かったよ」

 

 

 ふてぶてしく頷いたリュウの頭を撫でる。竜や人の時とは違って今のリュウはとってもフワフワとした毛並みしていて手触りが心地よい。もう少しこの毛並みを堪能したいところではあるけど、それよりもまずはやらなきゃいけないことがある。

 

 

「にゃ〜」

「さてと……ご飯にしようか!」

「にゃー!!」

 

 

 私とリュウは早速とった貝とウニを調理(丸焼き)して、ご飯にするのだった。

 

 

 


 

 

 

「子供……と猫か」

 

 

 森の中で、彼女たちを見つけたのはただの偶然だった。ただ気晴らしに散策に出かけて、彼女たちがキャンプをしている姿を見つけただけだ。

 別に奴らの手助けをするつもりはない。だがあの人の為にも、“あの悪魔”の復活を邪魔される訳にはいかなかった。何が目的でこの島に来たのかは知らないが、不確定要素をそのままにしておく訳にはいかない。

 軽く脅かせばもうここには近寄らないだろう。少なくともここから出てってくれれば巻き込まれて邪魔になることはない。

 幻影魔法で姿と気配を隠しながら、俺は彼女たちに近づく。

 

 

「…………」

 

 

 しかし、彼女は屈託のない笑顔で猫に笑いかけているのを見て。途端に体は固まった。

 

 

──大丈夫だ、皆で外に出よう。

──うん!

 

 

 彼女の笑顔に忘れていた記憶が蘇る。彼女の笑顔と“あの二人の笑顔”が被る。

 

 

「兄さん……姉さん……」

 

 

 ……見たところ、あの悪魔の復活がここで行われているとは夢にも思ってない、というか知っていたらそんな呑気にキャンプをしているはずはないか。

 下手に手を出して痛い目見るより、無視した方がいいはずだと。今すぐ邪魔される心配はないと判断した俺はその場から離れる。

 あの笑顔を“もう一度崩す訳にはいかない”。

 何もせずに、俺はその場を立ち去った(何もできずに、俺はその場から逃げ去った)

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