「思っていた以上に厄介な事態だった……」
何故か島にいたナツに、なんでガルナ島にいるのか移動しながら話を聞く。
その内容はなかなかに衝撃的だった。
どうやらナツは私たちがクエストに向かった夜、勝手に二階に上がり、勝手にS級クエストの依頼を持ち出して、ハッピーだけではなく、ルーシィや連れ戻しにきたグレイすら巻き込んで勝手にS級クエストを受けたそうで……何やってるんだ皆。
それが“悪魔に変化する呪いを解くため紫の月を破壊してほしい”って依頼だったそうだ。
もちろん月なんて破壊できるわけもなく(ナツは破壊するつもりだったようだけど)、呪いの原因を探っていたら彼らはグレイの師匠が氷漬けにして封印した悪魔──デリオラを発見した。
そしてそのデリオラを【
やっぱり思っていた以上に厄介だった……
「シエルとリュウはどうしたんだ?」
「別の依頼で島に入ったらそーなんして島をぐるぐるしてたの!」
「なんだ迷子かよ」
「迷子じゃなくて遭難だし!あとリュウは猫のふ……りはもういいや、普通に喋っていいよ」
「りゅ!りょーかい!」
リュウがまた喋ったけど、ナツたちもいることだしこのまま普通に喋ってもらおう。
お互いの事情説明が終わった頃には遺跡の前までたどり着いた。
「よし!じゃあ始めっぞ!」
「食べるぞー!」
「食べ!?いや食べていいか……私も頑張るぞー!」
そして移動中にナツから聞かされた作戦に私たちも手伝うことにし、武器を構えた。
「情けない……残ったのはおまえだけか」
「おおーん」
遺跡の内部には霊帝と呼ばれている男──リオンと猫耳の男──トビーがいた。
リオンは遺跡の中にあった王座のような椅子に座り、トビーを見下ろした。その冷たい視線にトビーは思わず身震いをする。
リオンは村を滅ぼせと命令し、帰ってきたのがトビーだけでという事実に落胆の色を見せる。
「『
「俺が自爆ったのは内緒の方向で頼みます」
「これではデリオラの復活も危ういかもしれませんな」
自分が出るしかないか、リオンがそう思っていると、ある人物が現れた。
一週間前、どこからか話を嗅ぎつけ、協力者となった得体の知れない者。
「いたのかザルティ」
「今宵……月の魔力は全て注がれデリオラが復活する。しかし、【
「くだらん……最初から俺が手を下せばよかっただけの事」
「おおーん面目無い……」
「相手はあの“
どこかで見ていたのか、それとも聞いていたのかザルティは“
「相変わらず情報が早いな。だが、俺には勝てん、ウルをも超える氷の刃にはな」
「それはそれは、頼もしい限りですな。では私めも久しぶりに参戦しますかな」
「お前も戦えたのかよ!?」
ザルティが戦っている姿を見たことがないトビーはザルティの言葉に驚く。
「はい、“
「“
「フン、不気味な奴だ……!」
事の始まりは小さな揺れだった。それが呼び水となったのか小さな揺れは大きな揺れへとすぐに変化する。
ズゴオオオオオン!!!ゴゴゴゴゴォォ!!と轟音を立てながら遺跡はその形を崩していく。
「遺跡が崩れ……」
トビーは遺跡に押しつぶされると思い、目を積むる。
しかし、遺跡は崩れなかった。揺れが収まり、トビーは恐々と目を開けるそこでトビーが見た遺跡の形は──
「いや……傾いたぁ!?」
──遺跡は傾いていた。
「早速やってくれましたな。ほれ……下にいますぞ」
地震にも動じず終始無言だったザルティは先ほどの騒ぎで崩れた床から見えた犯人達を指差した。
「普段知らねぇ内に壊れていることはよくあっけど、壊そうと思ってやると結構大変なんだな」
「結構大変といいながら殆どの柱を倒したのはすごいけどね……」
私は数本だよ、倒せた柱。私はナツの規格外のパワーに呆れた。
「リュウも頑張ったー!柱一本丸々食べたー!」
「うん、リュウも頑張ったねー」
猫のまんまのリュウが飛び跳ねながら、私に褒めてもらえるのを待っていたので私は腕を広げてリュウを迎え入れる。
リュウは自分の担当した柱を責任持って丸ごと食べ尽くした。うん、自分のお仕事をちゃんとできた偉い子は褒めてあげないとねー。
「貴様ら……なんの真似だ……」
「建物曲がったろ?これで月の光は地下の悪魔に当たんねーぞ」
「御用だ!御用だー!」
「素直に復活を諦めて、成敗されろ!!」
私たちは頭上にいる男達を見上げ、睨みつけた。
「『
「駄目だ!何がどうなったのか全然わかんね!!」
「この遺跡を傾かせたようですな。遺跡を支える支柱を半分ほど破壊し傾かせたことで月の光をデリオラまで届かせない作戦でしょう」
猫耳の男は私たちのしたことを理解できていないようだったが、仮面の男は違った。
仮面の男はナツが立てた作戦を理解し、説明する。
「見かけによらずキレ者でございますな」
「ごちゃごちゃうるせえよ!シエル、そっちは任せた!」
「任された!」
「りゅ!りょーかい!」
仮面の男は見かけによらず頭を使ったナツに感心する。私はその様子に若干失礼だなーと感じたがナツは気にせず足に炎を纏わせた。
そしてナツは、足から炎を噴出させて先ほどの崩れた天井の穴から悪い奴らがいる場所へと飛び上がる。
私は飛び上がったナツを敬礼して見送った。
さてと、あっちはナツに任せて私は私の仕事をやらないと。私はナツから言われた場所へ向かった。
「あった!あれがナツの言ってた穴!!」
遺跡の中を走り回って漸くナツが言ってたデリオラがいる地下に繋がる大穴を見つけ出した。なかなか見つけられずぐるぐる遺跡を巡り巡って完全に遠回りをしてしまった。……入り口に近かったんだ。
ナツの馬鹿ーもうちょっと分かりやすい言い方はなかったの。石像がいっぱいある場所ってどこだ!石像なんてそこらかしこにあったよ!!
「ゼェ……ハァ……」
「お姉ちゃん大丈夫?」
「だ、だいじょぶ」
今の今まで走り回ってたので、立ち止まるとその疲れが一気にどっときた。頭の上に乗っていたリュウがこちらを心配してくれたので安心させるようにリュウの頭を撫でる。
大穴の前で私はゼェハァ言いながら呼吸を整える。どうでもいいけど……お腹すいたな、そう言えば今日のお昼食べてないや。これが終わったら皆と美味しいもの食べに行こう。
【疾風のごとく】を手に持ち、私は覚悟を決める。
「ポップ、ステップ、ジャンピングー!!」
私はナツ達が遺跡を探索した時に開けた大穴に飛び込んだ──
「──っ!?が!!?」
「りゅ!?」
──はずだった。
私がジャンプして飛び込んだ瞬間、床が復活して大穴が塞がった。
それは突然でなんの反応もできず私はまず膝を思いっきり床にぶつけた。その反動で顔面も床にぶつける。膝と顔面の痛みに私はゴロンゴロンとその場をのたうち回った。
リュウがそんな私を見てパニックになったのかオタオタする。
「いだあああああぁぁぁ!!!?」
「おねちゃ!?し、死なないでおねーちゃーん!!」
その場をのたうち回り、何とか痛みを逃す。いだい……思いっきりぶつけた。泣きたい。でもお姉ちゃんだから泣くのは我慢する。
こちらを心配そうに見つめるリュウを見て私は泣きそうになるのを頑張って堪えた。そして頑張って立ち上がった。
「だ、大丈夫死なない、私頑張る」
「りゅー……」
「というか今何が起こったの?」
痛みで頭が追いつかない。何が起こった。私は大穴が塞がったことしか把握できてないよ。痛みに顔をしかめながらも何が起こったのかを把握するため私は辺りを見渡す。そして気がついた。
「遺跡が真っ直ぐになってる?」
傾いていたはずの遺跡が元のように真っ直ぐになっていた。まさかと思い柱に目を向けると私達が壊したはずの柱が一本を除き元どおりに戻っていた。
「え、なにこの無駄にハイテクな自己再生能力持ちの遺跡!」
それは反則じゃないの!と足踏みをしなから私は遺跡に怒る。
アレか?『
いや、今はそんなことはどうでもいい、それよりもまずいことがある。遺跡が元どおりになったということは──
「【
何がキーで遺跡が元に戻ったのかは分からないけど、このままでは【
もう一度柱を壊す……のは無理だ。ナツがいるからあの短時間で柱が壊せたのであって、私たちじゃ時間がかかりすぎる。
今から柱を壊すよりは私たちは当初の予定通りに。遺跡が戻るまでにそれなりに時間があった。今壊してもすぐには元に戻らないはず。
「リュウ、頭に乗って!!」
「りゅー!」
そうと決まれば私は【疾風のごとく】の他に琥珀の装飾がついた槍──【母なる大地】を手に持つ。リュウが私の頭の上に乗ったのを確認して私は構えた。
「“怖れ、敬え、そして抗え、これは母の慈悲である”【
私は先ほど大穴があった付近に槍を突き刺し床を揺らした……とはいっても、私の力では遺跡全体を揺らすことはできない。私が揺らせるのは精々突き刺した槍の周囲3メートル弱だ。でもそれでいい。
「あ、抜け落ちた!」
「今度こそ行くよ!」
これくらいの地震で床が抜け落ちるほどこの遺跡は古い。今度はさっきと違い穴が塞がる気配はない。これ幸いと私は穴へ飛び降り、風を纏って地下へ急降下する。
地下へとたどり着くとさっき床ごと落ちていった【母なる大地】を見つけたので回収した。
「ここがナツが言ってた氷漬けのデリオラがいる地下か」
「早くデリオラを移動させちゃお!」
「そうだね、思わぬところで時間をかけちゃったし」
ナツが考えた作戦はこうだ。
1.遺跡を傾けて【
2.ナツが悪い奴らを倒す。
3.私たちはデリオラの氷を移動させて悪者の手に行かないようにする。
4.ナツがデリオラを壊す。
何とも単純で分かりやすい計画である。そんな簡単な作戦だったのだがさっきのドタバタで大分時間を使ってしまったので私たちは急いデリオラの元に向かった。
「これが……デリオラ」
【
こいつが最初の仮面の少年が言ってたゼレフの悪魔……よくもまあこんなものを復活させようとしたよ。
「リュウこれを移動させるから魔力を頂戴」
「りゅ!分かった!!」
難しいことは後で考えよう。今はデリオラを動かすことが大事だ。
リュウから魔力を貰い、私はデリオラを動かそうとした。
「おやおや、それは困りますねぇ」
その時、背後から見知らぬ声が聞こえた。
「!誰っが!!?」
「ぎゃう!?」
急いで背後に振り向くが、その相手を確認する暇もなく、私の体はものすごい勢いで吹き飛ばされた。リュウは弾き飛ばされ、私は背中から思い切り 壁に叩きつけられ、息が止まった。
「っ!!!?ゲホッ!ゲホッ!」
「もうすぐ【
「っ誰だ!!」
何とか息を整え、私は自分を吹き飛ばした人物に睨みつける。
「私としたことが自己紹介がまだでしたな。私はザルティと申します。以後お見知りおきを……いや、知っていただく必要はありませんな、残念ですがここでさよならです」
ザルティが手をかざすと水晶玉が浮かび上がり、凄まじい勢いで水晶玉を飛ばした。
回避──は無理、防御を──
私は【母なる大地】で自分とザルティの間に地面をせり上げて土の壁を作った。
「無駄です」
「!?」
壁は突如崩れて消えた。やばっまともに食らう!衝撃に身を強張らせて、目を瞑る。
「……?」
衝撃はいつまでたっても来なかった。不思議に思い恐る恐る目を開けると目の前には水晶玉を口で受け止めた白豹がいた。
白豹は私を庇うように覆いかぶさる。
「リュウ!?」
「お姉ちゃんに怪我させたな……」
リュウは口で受け止めた水晶玉を噛み砕き、ザルティを睨みつける。グルルルルと唸り声が聞こえる。完全に頭に血が上ってる、このままだとやばい。
「リュウ、私は大丈夫。リュウが守ってくれたおかげだよ」
リュウを落ち着かせるため、リュウの体を撫でながら私は立ち上がろうとする。私が立ち上がりたいのを察したリュウは体の上から退いてくれた。
立ち上がりリュウの頭を撫でる。リュウは私に撫でられ今度は機嫌よくグルルルルと喉を鳴らす。
「賢い飼い猫に救われましたな」
「飼い猫じゃない、この子は妹だ。……リュウに救われたっていうのは認めるけど。一体何をやった?私は確かに壁を作った」
私は確かに地面をせり上げて土の壁を作った。それが突然そこに何も無かったかのように消えた。作り損ねはしていない、最初は確かにあったんだ。
「私、“
「時間を戻す?っまさか遺跡が元に戻ったのは」
時間を戻すという言葉が引っかかった。まさか遺跡が急に元に戻った原因は……
「月が出ますので私が元に戻させてもらいました」
「お前の仕業か……」
犯人はお前か。お前が私が床に衝突する原因を作ったのか。思い出したら思いっきりぶつけた膝と顔面が痛くなってきた。
「私はねぇ……どうしてもデリオラを復活させねばなりませんのですよ」
「そんなの知らないね。そんなこと言うならこっちだってお前らの邪魔が仕事だし……!」
「とりあえず燃えとけぇ!!」
「ナツ!!」
ザルティと睨み合いをしていたら横からナツがザルティに突撃してきた。ザルティは軽く飛び上がって避ける。
「なぜここがお分かりに?」
「俺は鼻がいいんだよ。ちなみにお前は女の香水の匂いだ」
「え、まさかこいつオネエ系?」
ナツの口から飛び出た衝撃の真実に私はある一つの答えにたどり着く。
「男性でも女性物の香水をつけることはありますぞ、オネエとか関係なしで」
「……すごい早口で否定したね」
私の答えにザルティはものすごい早口で否定したのだった。