──彼女は、ずっと生きていた。
その身を氷に変えても、グレイの闇を封じるために。
ずっと、ずーっと“生きていた”。
だから、彼女は知っている。
リオンが自分を超えるために、悪魔を解き放とうとしているのも、
彼女がリオンを利用して、悪魔を解き放とうとしているのも、
グレイがまだ……過去に囚われているのも、
彼女は知っている。
だけど氷となって生きている彼女には、グレイ達を叱り飛ばすことはできない。
ずっとずっと見てるだけだった。
それは、とても辛かったと思う。悲しかったと思う。悔しかったと思う。
──だから、決めた。
「オオオオオオオオオオオ!!」
その光景をグレイは呆然と見つめた。
「(ウル……)」
足下に溜まる
「グレイいたのか!こうなったらやるしかねえ!あいつぶっ飛ばすぞ!」
「ナツ!」
グレイに気づいたナツが、デリオラをこの場で自分たちが倒すと決めた。
「お前ら……には、無理だ……デリオラは……俺が倒す」
「リオン!?」
「オメーの方が無理だよ引っ込んでろ!」
リオンがボロボロの身体を引きずり地面を這いながら現れた。その姿を見たナツはリオンの身を案じて引っ込んでるように言う。
しかし、今のリオンには目の前のデリオラしか見えていない。ナツの言葉は届かなかった。
「あの……ウルが唯一勝てなかった怪物……今、俺がこの手で……」
師を超える。師が唯一倒せなかった
「俺は今……アンタを!」
「もういいよリオン」
グレイがリオンの肩を軽く押す。それだけでリオンは倒れ込んだ。
「後は俺に任せろ。デリオラは俺が封じる!!」
グレイはデリオラの前に立ち、両手を交差させて前に突き出す。その姿を見てリオンは叫ぶ。
「
「これしかねえんだ、いま奴を止められっいでぇ!?」
「だーめー!!」
魔法を放つのに集中して無防備なグレイのアタマにかぶりつく。
ブッソーなジコギセーセーシンを出してたのでとりあえず頭がぶっとした。そしてそのまま地面に押さえつけた。
ジコギセーダメゼッタイ!!お姉ちゃんも言ってたよ!
「リュウ、良くやった。そのまま噛みついて倒しとけ」
「うー」
「な、リュウだと!?どけ!!邪魔だお前ら!」
倒されたグレイの横を通り過ぎ、今度はナツがデリオラの前に出た。
グレイは自分に覆いかぶさる白豹が“リュウ”である事に驚くが、それよりもデリオラを封印する為二人を退かそうとする。
「断る。俺もリュウも、死んで欲しくねえから止めるのに。俺たちの言葉は届かないのか?」
「ナツ……リュウ……」
デリオラが腕を張り上げ、ナツに向けて振り下ろそうとする。
「俺は最後まで諦めねえぞ!!」
「避けろおお!!」
ナツはデリオラに向けて攻撃を繰り出そうと拳に炎を纏う。グレイはナツに避けろと叫んだ。
しかし、ピタリとデリオラの動きが止まった。
「え?」
デリオラの腕が折れて取れた。
「な!」
デリオラの身体中にピキピキとヒビが入る。
「なんだぁ!?」
ボロボロとヒビが入った箇所からデリオラの身体は割れて、崩れていく。
その光景を彼らは呆然と見ていた
「まさか……デリオラは、すでに死んで……」
すでにデリオラという形は無くなった。そこにあるのはデリオラだった欠片と
「十年間、ウルの氷の中で命を徐々に奪われ……俺達はその最期の瞬間を見ているというのか……」
リオンは拳を地面に叩きつける。その目には涙が流れていた。
「敵わない……俺にはウルを超えられない」
『確かに、片手での造形を続ける限りはいつまでたっても超えられないな』
「えっ……」
リオンは顔を上げる。そして自分を叱咤した“声の主”に驚きの表情を見せた。それはグレイも同じだった。
「「ウル!?」」
「グレイの師匠!?」
そこにいたのは自分達の師匠だった。
──彼女は十年間ずっと一人で生きて悪魔と戦っていた。
だから、最期くらい自分の言葉を伝えたってバチは当たらないと思う。
自分の生きた証を遺したっていいと思う。
「なんで……氷は全部溶けて……」
『言っておくが生き返ったわけじゃない。私がお前達に見えているのは、この子のお陰だ』
「りゅー!」
ウルが私の頭を撫でる。その手は冷たいけど暖かい。うん、一肌脱いだ甲斐があった!けど疲れたから帰ったらご飯食べたい!
魔力を食べないで外に集まるのいっぱい集中しないといけないからやっぱ苦手。
「リュウのお陰?」
『ああ、この子が流れる水の中から私の魔力を掻き集めて私の形にしてくれた。水の私が海に流れるまで数分しか時間はないが……それだけあれば伝えられる』
「ウル……」
『リオン、私を超えるならもっと世界を見て知ることだ。……後、片手の造形を止めること』
「…………ああ」
『グレイ、お前の闇は私が滅した。
……もう、前に進めるな?』
「…………はい。ありがとうございます……師匠」
グレイは涙を流しながら、でもしっかりと目の前のウルから目を逸らさずに言った。
それを見たウルは安心したのか笑みをこぼす。
『私はこれから海へと流れていく、だが、私は生きてずっと見守っている』
ウルの姿が薄れていく、ウルの
『だから二人とも……もう、喧嘩をするなよ』
その言葉を最後にウルの姿は消えた。
これが、ウルが弟子達に遺した最期の言葉だった。