FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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最弱

 【疾風のごとく】を背負い右手にグレイ、左手にエルフマンを掴んで私たちはファントムのギルドへ向かう。

 何度かこちらに気づいた【幽兵】が落とそうと攻撃を仕掛けてくることがあったがその度にカナ達が援護してくれたから比較的楽に侵入できた。

 大人二人は結構重いけど。正直ちょっと痩せてほしいな二人とも。それか自分で飛んでほしいな二人とも。

 

 

 


 

 

 

「情けねぇなナツさんよ」

「漢なら乗り物なんぞ逆に酔わせてやれ!」

「今度ポーリュシカに酔い止めの薬作ってもらう?多分無駄になると思うけど」

 

 

 そもそも気軽に作ってくれるかもわからないけどね。ポーリュシカ、けが人にはまだいつもより比較的甘いけど。ナツみたいな健康体には厳しいし。

 

 

「お前らも来てたのか!」

 

 

 ギルドについたとたん壁が動くわ傾くわでえらい目に遭った。なんとかナツを見つけたと思ったら、乗り物酔いでダウンしてピンチになってるし、世話がやけるんだから全く。まあ、ジュピターを壊せたのはいいけど。

 さて、ナツと合流できたのはいいけど、そうなると外がどうなっているかが気になる。さっきまでガタンゴトンすごかったし。

 

 

「オイラ、外の様子見てくる!」

「待って私も行く!」

 

 

 ナツが開けた大穴から外に出て、見えた光景に私とハッピーは目を見開いた。

 

 

「きょ、巨人!?さっきまでアメンボだったよね!」

 

 

 外に出ると今までアメンボだったギルドが巨人に変形していた。なにこれかっこい……げふんげふん、えと、えーと……なんかずるいぞ!

 

 

「見てシエル、あの巨人、魔法陣書いてる!」

「何このハイスペックギルド!?書いてるのは……っ!」

 

 

 ハッピーが巨人が書いている魔法陣を指さす、その事実に驚きながらも私は魔法陣を見て、一瞬言葉を失う。

 巨人が書こうとしている魔法陣に見覚えがあった。

 

 

【煉獄破砕】(アビスブレイク)!」

 

 

 こっそりギルドの書庫に忍び込んで読んだ。絶対に見るなと言われた本に書いてあった禁忌魔法。でも──

 

 

「このサイズはやばい!ギルドだけじゃなくてカルディア大聖堂まで消し飛ばされる!!」

「ええ!?早くナツ達に知らせないと!!」

 

 

 巨人が放とうとしている魔法に気づいた私達は大慌てでナツ達の元へ戻った。

 

 

「大変だよ!ギルドが巨人になって魔法陣を書いているんだ!」

「嘘つけ!」

「こんな状況で嘘なんかつかないよ!そこまで私空気読めなくないもん!書いてる魔法は禁忌魔法の【煉獄破砕】(アビスブレイク)!大きさからしてカルディア大聖堂まで消し飛ばされる!」

「カルディア大聖堂までって……町の半分じゃねぇか!!」

「そんな魔法ありえねえだろ!」

 

 

 ナツ達の元に戻り、外の状況を伝える。しかしナツ達は半信半疑でこちらの言うことがうまく伝わっていないようだった。

 まあ、急に向こうのギルドが立ち上がって魔法陣書き始めましたなんて話、私もその光景を直接見てなかったら、この状況で何冗談言ってるんだろこの人、とか思ってた自信はあるけど。

 けど、【煉獄破砕】(アビスブレイク)の危険性が伝わってないのはまずい。あーもうもどかしい!

 

 

「それがありえるの!ギルドの書庫の禁忌魔法ばっか書かれてる閲覧禁止の本に書いてあったもん!」

「おい待て。その魔法を知ってるって事はお前……マスターの許可なしにその閲覧禁止の本を見たのか?」

「あ……」

「………………」

 

 

 しまった。慌てすぎて言っちゃいけないことまで話しちゃった。周りの男どもは信じられない馬鹿を見る目で私を見る。

 やばいやばいやばい!!色々とやばい!と、とにかく今は追求されるのはまずい!!

 

 

「と、とにかくその件は今はおいといて!今は魔法を止めないと本当にやばいんだって!」

 

 

 怒られている時間はない。そんなことをしてたら魔法陣が完成してしまう。

 

 

「ああそうだな。馬鹿(シエル)の言うことが本当なら、その魔法は本当にやばい代物だ。今は手分けしてこの動くギルドの動力源を探すんだ!!だがシエル!その件は後でマスターに言うからな!!」

「だよね!ごめんなさい!」

 

 

 でも、そのおかげでどんな魔法を放とうとしてるのか分かったからちょっとぐらいは大目に見てもらいたいなー(全然反省してない)

 グレイの言葉に私たちは手分けして動力源を探しに行った。

 

 

 


 

 

 

「やっぱり、リュウも連れてくるべきだった」

 

 

 動力源探しは難航した。どこを見ても動力源みたいな物がない。何ならジュピターの魔水晶(ラクリマ)が一番それっぽかった。リュウがいれば一発で分かっただけに連れてこれなかった事が結構痛い。

 あと、これだけ動き回っても人に会わないのはちょっと不思議。というかここまで会わないとちょっと狡い考えが頭をよぎってしまう。

 

 

 “もう、巨人(ギルド)壊した方が早いんじゃないかな?”……と。

 

 

 「いや、落ち着こう。落ち着け私。いくら何でもそう簡単にいくわけないって」

 

 

 そんな簡単にいかないだろうと。自分で自分に言い聞かせる。ギルド自体が巨大な魔道士になっているんだもん、それなりの対策はしているはず。

 でも、あの時エルザにバレて処分された(食べられた)爆弾魔水晶(ばくだんラクリマ)が惜しい……あれさえあれば至る所に設置してこのギルドぶっ壊してやるのに、リュウも正直に全部食べないで少しくらいは残してほしかったな。もう本当に素直なんだからリュウはそういうところが可愛いんだけども。

 

 

「いやでも……ここまで人がいないならいっそのこともう素手で壊すのもあり?」

「悲しい……」

「っ!!」

 

 

 もういっそのこと一人でギルドぶっ壊してやろうかと悶々と考えてたら、突然背後から聞き覚えのない声がした。

 

 

「誰だ!!」

 

 

 振り向きながら飛び退き【疾風のごとく】を構える。さっきまでなんの気配もなかったのに……

 

 

「小さき妖精の羽は朽ちて折れる……小さな希望は絶望の贄へと変わりゆく、我が名はアリア……エレメント4の頂点なり、妖精(小虫)駆除に推参しました」

「エレメント4……っ【悪戯妖精】(フェー・エスピエーグル)!」

 

 

 敵の正体が分かるやいなや私は魔法で自分の姿を隠す。動力源を探さなきゃいけないのに、エレメント4の頂点に立つ男とまともに戦う気はない。

 正直な話、自分の強さ(弱さ)は自分が一番分かってる。気はあまり進まないけど、三人の内、誰かを探して……

 

 

「私は悲しい……」

「きゃあ!?」

 

 

 姿を隠してナツ達を探しにこの場から逃げようとしたら、見えない何かに吹き飛ばされる。

 

 

「くっ!」

「悲しい……そのような拙い魔法で逃げ切れるとお思いですか」

「しまっ!」

「空域……【滅】」

 

 

 居場所がばれ、すぐに体制を立て直そうとする。しかし背後に立ったアリアの方が数倍早かった。

 

 

「がっ!?ああああああああああ!!?」

 

 

 アリアの魔法を受け、身体から魔力が抜けていくのを感じる。そして魔力をすべて抜き取られた私は地面に倒れ込んだ。

 

 

「まずは一人……」

 

 

 倒れた私を無視し、アリアは次の獲物を求めてその場から立ち去ろうとする。

 ……見向きもしないとはなめてくれる。いや包帯してるから見てるかどうかは知らないけど。マスターと違って私の魔力量はそんなに多くない。まだ体は動く。まだ、まだ!

 

 

──お姉ちゃん!

 

 

──ああ、リュウ。やっぱりあなたは優しい子だね。

 

 

「待て」

「……なに?」

 

 

 この場から立ち去ろうとしたアリアを魔力を吸い尽くされ倒れたはずのシエルが呼び止めた。倒したシエルに呼び止められたアリアは振り返る。

 

 

「マスターが受けた魔法はこれかー……そんな魔力が多いと言えない私でこのダメージ……うん、マスターならひとたまりもないや」

「……私は悲しい……まだ立ち上がるか」

「うん、立ち上がる、だって……このままじゃお姉ちゃんの面目丸つぶれだもん」

 

 

 魔力をすべて吸い尽くされたはずの“シエル”はその身に大量の魔力を宿しながらアリアを睨みつけた。

 

 

「空域……【絶】」

 

 

 アリアは立ち上がったシエルに再び魔法を放つ。シエルはその魔法をよけることもせず大きく口をあけた。

 

 

「イタダキマス」

「!!」

 

 

 放たれた魔法をシエルは吸い込み、すべてを食べた。

 

 

 ……まっず。アリアの魔法を食べて思った感想はその一言だった。

 いや、食べれないことはないけれど、進んで食べるのは本当に遠慮したい不味さ。これを食べるくらいならピーマンの方がまだマシなレベルの不味さ。吸い取られた魔力の代わりにはなるけどそれでも不味いものは不味い。正直吐きそう。

 

 

「私の魔法を……“食べた?”」

「お前の魔法は見えないだけ、そこにあるなら食べれるよ、不味いけど、今の私に食べれないものはない……」

 

 

 包帯で目を隠しているアリアには分からないだろうけど、今、私の身体には白銀の紋様が身体中に現れている。

 【竜の絆】(ル・リアン)、私とリュウの絆の証。この魔法が発動している今なら、リュウの力を借りている今なら、私は、いや、“私達は”こいつに負けない。

 

 

「今の私なら“分かる”。このギルドの動力源……いや、【煉獄破砕】(アビスブレイク)の要はエレメント4の貴方たちだね」

 

 

 目の前のこいつと外の魔法陣は繋がっている。普段の私にはさっぱり分からないけど、今なら、こいつと建物が繋がっていることが感覚で分かる。

 

 

「ええ、あなたの言うとおり、我らエレメント4はこのギルドと繋がっております。そして既に三人が倒されました。私を倒せばギルドは停止する」

「へーそこまで教えて大丈夫なの?」

 

 

 残るエレメントが目の前のこいつだけ。それはとってもいいことを聞いた。ナツ達はうまくやっているみたいだ。

 なら、やっぱり私も頑張らないと。

 

 

「私の魔法を受けて立てたことはたいしたものです。しかし奇跡は二度は起こらない、もう一度これを受けて立ち上がれますか、空域……【滅】」

 

 

 アリアは再び、私の魔力を吸い取ろうとする。……さっき私が言ったこと聞いてなかったのかな?それとも分かってなかったのかな?

 やること一緒だからさっさと学習してほしいんだけど。

 

 

「だーかーらーそこにあるなら“何だって食べれる”ってさっき私言ったよね?」

「なっ!?」

「見えなかろうが、そこにあるのは事実だもん。あるなら食べれる。それがリアルってやつだよね」

 

 

 再びアリアの魔法を食い破る。……やっぱ不味い。食べれないことはないけれど。まあ、今回ばかりはリュウを見習って好き嫌い言うのはなしにしよう。

 ……いや、ああ見えて実はリュウも結構好き嫌いはあるや。嫌いな物でも食べることができるだけだあの子。

 

 

「“ただの魔導士が私達にかなうわけがない”」

 

 

 エルザやナツみたいに近接戦闘(肉体言語)でこられちゃひとたまりもないけど、ただすごい魔法を放つ魔導士には“私達”は負けない。

 

 

「今までさんざんやられたから。今度は私の番」

 

 

 火を司る【紅蓮の炎】、風を司る【疾風のごとく】、水を司る【人魚の冠】、土を司る【母なる大地】、それぞれ四大元素の力を込めた槍を取り出した。

 いつもは一度に二つしか取り出せない槍も今の状態ならこの通り、簡単に四つ取り出せる。

 

 

「四大元素魔法の禁忌【煉獄破砕】(アビスブレイク)か……考えることは皆同じだね」

 

 

 四つの槍を天に掲げる。そしてそのまま四つの槍すべてに魔力を流し、槍に刻んでいた術式を起動させる。

 術式を起動させたことで魔法陣が空に浮かび上がる。きっとアリアには覚えがある魔法だと思う。

 

 

「この魔法陣は!?」

「私のモットー、やられる前でもやり返す!!【煉獄破砕】(アビスブレイク)!!」

 

 

 火・風・水・土……四大元素が交わった魔力を眼前の敵(アリア)に向けて放った。すべての色が混ざった黒はアリアを飲み込み吹き飛ばした。

 

 

「はあ……はあ……おなかすいた」

 

 

 襲いかかる倦怠感と空腹感に私は必死に抗う。この状態になるとめっちゃくちゃお腹空くのが難点だなぁ……ああ、お腹すいた。

 吹き飛ばされたアリアを見る。ボロボロで見るからに無事じゃないけど、跡形は残ってた。というか死んでない。普通に気絶しているだけだ。

 本来は対象を跡形もなく抹消させる魔法らしいけど、今の“私達”じゃ吹き飛ばすだけが限界か……なんというか頭にプチかミニってつけたほうがいいかもね。

 このままじゃ名前に偽りがありすぎる。

 

 

「エレメント4の頂点?笑わせるね……今のお前は目の前の子供(小虫)をなめきって、いたぶっていたぶって、本気を出す前に情けなく12歳と7歳の女の子達にぼろ負けした」

 

 

 お前みたいな男がマスターを倒した、なんてくだらなすぎて笑えるよ。

 そんな馬鹿でくだらない男にピッタリ合う称号なんて一つだけ。

 

 

「最弱の男に改名しろ」

 

 

 

 

 




 【竜の絆】(ル・リアン)
シエルとリュウの絆の魔法。
リュウの能力、魔力をシエルの身体に付加させる付加術(エンチャント)
この状態のシエルは身体能力の強化はもちろん、膨大な魔力に任せて通常時では使えなかった魔法を放てるようになる。
そして全ての魔法を食べて魔力に変換することができる。
ただし魔法を食べるだけなので、元々近接戦闘が得意なものには歯が立たない。
使用後にはシエルはとてつもない空腹感に襲われ、リュウは竜の姿に戻ってしまう。
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