FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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後始末

 「よっこらしょっと!!」

 

 

 力一杯振りかぶり、看板を勢いよく地面に突き刺す。看板がきっちり地面に刺さっていることを確認して、私たちは黄色いヘルメットを被りチャキーンとポーズをとった。

 

 

「シエルとー?」

「リュウのー!」

「「バクバク残骸処理屋さん、はっじめっるよー!!」」

「なんか始まった!?」

 

 

 マスターの【妖精の法律(フェアリーロウ)】によって、ファントムのマスターであったジョゼは倒された。

 重体だったマスターがあの土壇場で復活したのは、どうやらミストガンが頑張ったおかげらしい。

 マスターの魔力をかき集めて、そのついでにファントムの支部も全部潰してと知らないところで大活躍だったらしいけど……かっこつけもほどほどにしてほしい。あのディスコミュニケーション不審シャイお節介マスク変態ロリコン非常識かっこつけ野郎が……今時一匹狼ははやらないよ。

 こっちも向こうもボロボロになってすべてが終わったと思ったら評議院の人たちが私たちを取り囲んだ、すぐにみんな連れてかれて事情聴取で一週間拘束してきた。

 それにしても評議院の人たちひどいんだよ。解放したと思ったら後始末は自分たちでやれとかいいだすし、どう考えてもひどい。これだから頭の硬い連中は……

 しょうがないから今自分たちで壊されたギルドを建築し直しているところだ。

 主に私たちは前のギルドの残骸および向こうのギルドの残骸処理を担当している。

 

 

「というわけで使えない木材とか家具とか向こうのギルドの残骸とか全部持ってきて!リュウが全部食べちゃうから!」

「食べるよー!」

「おおー任せたぞ二人とも。でも考えたら残骸を処理する(食べる)のはリュウだけだろ。シエルはあんまり必要なくないか?」

「なんだとー!経営者を馬鹿にするなー!私だって残骸から使える部分を切りとったり、リュウに残骸をもってきたりする仕事があるよ!」

 

 

 私をちゃかしてきたマカオにうがーっと怒った。

 失礼しちゃうねまったく……私にはご飯(残骸)を作りそしてリュウの元に届けるという重大なお仕事があるんだから。アイムノット無職!ノット役立たず!

 私は【疾風のごとく】を手に持ち、残骸を浮かび上がらせた。シュパッと使える部分を切り出す。できあがった木材と石材は置き場に積み上げ、残りはリュウの元へ運ぶ。

 

 

「というわけで~じゃんじゃん持ってちゃって!」

「シエルー半分俺に積んでくれ!!一気に運ぶんだ!」

「えーいいけど……それ以上積んで運べるの?」

「なめるな!」

 

 

 既に大量に大きな木材を背負っているナツだけど、ナツは木材の追加を要求してきた。なんだか既に歩きづらそうだ一気に運べてもノロノロしてたら意味ないと思うんだけど。

 これ以上木材を積むのなんだかものすごく不安。でも本人はやる気みたいだし……まあ、もしかしたら運べるかもしれないしやるだけやらしてみよう。

 ナツの要望通りナツが背負っていた木材の上にさらに木材を積み上げた。

 

 

「お~も~て~え~!」

「リタイア宣言早いよ」

 

 

 木材置き場から数歩歩いてナツが根を上げた。早いよ。

 

 

「一度にそんなに持つからだよ。馬鹿じゃねえのか」

「ははっ!おめえは軟弱だから、それが限界なんだろうなぁ!!」

 

 

 ナツの姿を見てグレイは呆れた。

 グレイの言うとおり今回はナツが考えなしすぎた。だからグレイを煽るのはちょっと馬鹿じゃないかなと思う。

 

 

「ああ!?俺がその気になればてめえの倍はいけるっての!シエル!!」

 

 

 一本一本確実に木材を運んでいたグレイはナツの煽りを受けて私に木材を要求した。

 別にのらなくてもいいんじゃないかな。

 後、別にいいんだけどさー、二人は私をなんだと思っているんだろう。クレーン車か何かと思っているのかな

 

 

「変に意地張らないで一本一本確実に運びなよー」

「いいから渡せ!こいつの鼻を明かしてやる!」

 

 

 一応宥めてはみたけれどこれは無理そうだ、しょうがないグレイの要望を叶えるとするか。私はグレイから言われた本数の木材をグレイに背負わせた。

 

 

「ど……どうだ……」

「おおーー」

 

 

 グレイが立った。そしてグレイが歩いたよ。正直木材背負ってすぐに倒れると思ったからその状態から数歩歩いたことに素直に拍手する。

 ナツはちょっとつまらなそうな顔をしていた。

 

 

「ん?……うわ!?」

「あ、崩れた」

「見たかハッピー!シエル!なっさけねーなー!!」

 

 

 何かに気をとられグレイはバランスを崩してそのまま木材の下敷きとなる。それを見たナツは大笑いした。全く事の発端が何笑ってるんだか。これは少しお仕置きが必要なようだね。

 

 

「リュウー!」

「りゅー?」

 

 

 私が呼ぶとリュウは食べていたものをその場に置き、トテトテと私の元までやってきた。食べカスが口の周りについていたのでハンカチを取り出して口の周りを拭いてあげる。リュウは嬉しそうに喉を鳴らす。

 

 

「どーしたの?」

「リュウ。ナツ(アレ)味見していいよ」

 

 

 リュウの頭を片手で撫でながら、私は未だ大笑いしているナツを指さす。

 

 

「りゅ!いいの?」

「うん、好きなだけガブッと味見しなさい」

「りゅー!」

 

 

 私の言葉にリュウは顔をパァっと明るくさせる。そしてそのままルンルン気分でナツ達の元に駆け寄った。

 

 

「ナツー!」

「どうした?リュウ」

「いっただっきまーーーす!」

「いっでえええええええ!!!!?」

 

 

 ガブリとリュウはナツの頭に思いっきりかぶりついた。ナツの悲鳴がこの場に木霊した。言っといてなんだけどやっぱり痛そうだなーうん。

 

 

「痛そー」

「いやお前……けしかけといてそれはない」

「お前達!遊んでないで働かんか!」

 

 

 そんなこんなふざけていたらエルザに怒られてしまったのだった。

 

 

 


 

 

 

「ぐえー腹減った……」

「リュウもー」

 

 

 お腹がすいたナツとリュウの二人はぐてーと地に伏す。

 

 

「おい、ナツはともかくリュウはさっきから食べっぱなしだろ」

「あんなのリュウにとっては腹一分目だよ!わんこ残骸もう一丁!」

「いつか食べ過ぎで腹壊すぞお前」

 

 

 自分たちのギルドの残骸とファントムのギルドをすべて食べてもなお、まだ食べ足りないともの申すリュウにグレイは呆れた様子で突っ込みをいれる。

 食べ盛りだからね、しょうがないね。

 

 

「皆……」

「ああ、ロキ……ってどうしたの!顔色悪いよ!?」

 

 

 声を掛けられて振り向くとそこには顔色が悪いロキがいてギョッとした。慌ててロキに駆け寄る。

 一体どんな重労働をすれば死人みたいな顔色になるんだ……

 

 

「いやちょっとね……ルーシィに渡しておいてもらえるかな」

「これって星霊門の鍵!」

 

 

 ロキから渡されたものはルーシィが持っていた星霊門の鍵だった。

 確かファントムに攫われたときになくしたって言ってた物だ。

 

 

「お前まさか、今まで見ねえと思ったがそれをずっと探してたのか!?」

「えぇ!?」

「はは、フェミニストはつらいね……」

「りゅー。もの探シスターズに任せてくれれば一発だったよー!」

「ものさが……うん。言ってくれれば手伝ったのに水くさい」

 

 

 もの探シスターズ……うん、本当にその名前はちょっとばかし不満あるんだけどまあいいや。

 それよりも問題はロキが一人で今まで鍵を探してた事だ。本当に水くさい。あのディスコミュニケーション野郎と同じかっこつけかな?

 

 

「そ、それより……ルーシィはどこにいるかな?」

「家じゃないか?」

「多分家だ」

「りゅー、ギルド周辺にルーシィの気配がないから買い物とかしてなければ多分家!」

 

 

 ナツとグレイとリュウはルーシィが多分まだ家にいると答えた。

 

 

「せっかくだから鍵返すついでに遊びに行こうぜ!」

「それ本当についで?」

 

 

 ナツの場合、鍵を返すのがついでで遊びに行くのが本命だと思う。

 

 

「まあ、ちょっと心配だしな、いい案じゃねえか?」

「ロキも一緒に行こうよ」

「僕は行かないよ……知ってるだろ?星霊魔導士には嫌な思い出が……」

「そっか、ルーシィはルーシィなのにな」

 

 

 私たちはロキも一緒に行こうと誘うが、ロキは星霊魔導士には嫌な思い出があるからと断った。

 ロキがここまで女の子に近づくのをいやがるなんて珍しい。そりゃ星霊魔導士と何かがあったって事は聞いたけど……それにしてもこれは異常だ。仲間(ルーシィ)を“ルーシィ”として見ずに、“星霊魔導士”として見てる。そんなことをする人じゃないのに。

 

 

「貴様らどこに行くつもりだ!!働けぇ!!!」

「やべっ!」

 

 

 各々の持ち場から離れようとしていたのがエルザにバレた。

 怒るエルザを見て日頃怒られているナツの行動は素早かった。

 

 

「逃げるぞハッピー!」

「あい!」

「てめ!空飛ぶのはずりぃぞ!!」

「またんかーーーー!!!!」

 

 

 ナツはハッピーの手を借り、空へと逃げる。一歩遅れてグレイが追いかける。そして逃げていった彼らをエルザは追いかけた。

 というか──

 

 

「皆!待ってって!!星霊門の鍵は私が持ってるんだよ!?」

 

 

 とっさの判断が出来なくて皆について行けなかった。

 このまま後は皆に任せたいところだけど。ルーシィに返さなきゃいけない星霊門の鍵は私が持っている。

 ……追いかけるか、一応この前ルーシィの家にお邪魔したから大体の場所は分かるし。私だってルーシィが心配だもん。

 

 

「………………」

「リュウ?行くよー!」

「りゅー!ちょっと待って!」

 

 

 これ以上置いていかれないよう、すぐにナツ達を追いかけようとしたが、リュウはロキを見つめたまま動こうとしなかった。そしてリュウはロキに近づき、その手に触れようとする。

 

 

「大丈夫だ」

「りゅー……」

 

 

 しかしロキはその手を拒絶した。

 

 

「ロキ?」

「魔力が空になったわけじゃないさ魔力はいらないよ。そんなに心配しないでも大丈夫だ。それよりも……早く行かないと本当に置いてかれるんじゃないか?」

「そうだった!リュウ行こう!」

 

 

 少しだけ後ろ髪を引かれる気持ちもあるけど、本人が必要ないと言っているならこちらが出来ることはない。

 子供じゃないんだし、そこら辺の体調管理は大丈夫だと信じよう。皆もいるから無理に働かせようとしないはず。

 私はナツ達を追いかけた。

 

 

「………………」

 

 

 シエルがナツ達を追いかけた後も、珍しくリュウはシエルを追いかけなかった。彼女は何かを言いたそうな様子でロキを見つめる。

 

 

「僕のことは気にするな。お互い様だろう」

「……りゅー」

 

 

 


 

 

 

「ルーシィ元気かー!」

「おじゃましまーす!」

「しまーす!」

 

 

 勝手知ったる仲間の家、私たちはルーシィの家に、勝手にお邪魔した。でも、そこに目当ての人物はいなかった。私たちは頸を傾げる。

 

 

「出かけているようだな」

「買いものかな?」

 

 

 一体どこに出かけているのかと考えを張り巡らせるが答えはいっこうに思いつかなかった。そんな中、ハッピーとリュウは部屋の中を探し回る。

 

 

「ルーシィどこ~?」

「ハッピー、戸棚にはいないと思うよ?りゅ!?」

「うわぁ!」

「あー」

 

 

 ハッピーが戸棚を開けると中に入っていた大量の手紙が雪崩れ込んだ。ハッピーは手紙に埋もれ、リュウは手紙を頭から被る形となった。

 

 

「お前達、人の部屋を散らかすんじゃない」

「りゅーごめんなさい……」

「誰宛の手紙だこれ……」

 

 

 ナツは床に落ちた一通の手紙を開け中を確認する。

 

 

「“ママ……、あたしついに憧れの”」

「いや勝手に読むのは止めようよ」

 

 

 手紙を読み上げるナツにストップをいれる。

 人の家に勝手に入っている時点で若干今更感はあるけれど、流石に人のプライベートの手紙を読むのは止めよう。しかも音読。

 

 

「これ全部ママへの手紙か?」

 

 

 一通一通拾い上げ差出人を確認していたグレイは、この場にある手紙の全てがルーシィのお母さんへの手紙だと気づく。

 

 

「何で送ってねーんだ?」

「そりゃ家出中だからだろ」

「じゃあ何のために書いてるんだ?」

 

 

 ナツとグレイが手紙が差し出されなかった理由を考えている中、エルザがルーシィの机の前で固まっていることに気づいた。気になって私はエルザに近寄る。

 

 

「どうしたの?」

「これだ」

「これって……メモ?何々……え」

 

 

 エルザに見せられたメモの内容に私は目を疑った。

 

 

「どうした、それ?」

「ルーシィの書き置きだ……“家に帰る”だそうだ」

「「何ぃ!!?」」

 

 

 メモの内容を聞いたナツ達はそれぞれ驚きの声を上げる。

 

 

「帰るって何でだよ!!何考えてるんだあいつは!」

「そうだよ!相談もなしにひどいよ!」

 

 

 まさかあの時アレだけ言ったのにまだ一人で抱え込んでたなんて。やっぱもう二・三発チョップかましておけばよかった。あそこまで大事になったのはルーシィのせいじゃないっていうのに。

 

 

「まさかまだ責任を感じているのか?」

「わからん……とにかく急いで追うぞ!ルーシィの実家へ!」

 

 

 私たちはルーシィを連れ戻すため急いでルーシィの実家へ向かった。

 

 

 


 

 

 

 ──結論から言うとルーシィは『妖精の尻尾』(フィアリーテイル)から出ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 というかルーシィのメモの書き方が悪かった。

 

 

 

 

「母ちゃんの墓参り!?」

「そ」

 

 

 別にルーシィは責任とってギルドを辞めるとかではなくただお母さんのお墓参りで家に帰るといった意味であの書き置きを残したらしい。……紛らわしいよ。

 

 

「皆、心配掛けてごめんね」

「気にするな、早合点した私たちが悪い」

「でもあの書き方もわるいよー」

 

 

 あんなことがあった後“家に帰る”だけのメモがあったらそれはもう盛大に勘違いされてもおかしくないと思う。

 勝手に想像して早合点したのは私たちだけど!辞めるわけないって信じられなかったのも私たちだけど!

 うう……自分で自分に腹が立つ、数時間前の自分に腹が立つ。

 

 

「……ごめんねルーシィ」

「いいよ、あたしも紛らわしいことしたから、これ以上いいっこなし!ね!」

「……うん!」

「それにしてもでけー街だな」

「ねー自然も一杯あって見晴らしがいいし」

「ここは庭だよ。あの山の向こうまでがあたしん家」

 

 

 ルーシィは遠くに見える山を指さしその向こうまでが自分の家の敷地だと言った。

 ……いやいや、なにを宣いましたかこのお嬢様は。ルーシィの言葉に私たちは固まった。

 

 

「あれ?どうしたの皆?」

 

 

 私たちの様子を見てルーシィはどうしたのかと疑問符を浮かべる。その様子で分かる。ルーシィは嘘を言っていない。

 

 

「は?いや……は?」

 

 

 ルーシィの実家はものすごく広かった。そしてめっちゃ金持ちだった。それが今日一番の驚きだった。

 

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