あてはない。
あてはなかった。
言われたとおりに逃げても、どうしようもないことは分かっていた。
村は焼かれた。戻っても何もない。
ちっぽけな私じゃ、何も出来ない。
ただあてもなく、前へ進む。
「…………………」
進むことに、意味はない。逃げることに、意味はない。
どんなに逃げても“ソレ”はすぐそこまで迫っていた。
「………………」
お兄ちゃんと別れて3日たった。約束したのに、お兄ちゃんは追ってこなかった。
分かっていた。分かっていたけれど、認める訳にはいかなかった。
「お兄ちゃんの……ばかやろう」
もう、限界だった。私はその場にうずくまる。
「ヒック……うぅ……ヒック……」
進むことを──逃げることを止めたとたん、止めていた涙があふれてきた。
もう嫌だ。
逃げることを止めれば、お兄ちゃんに会えるだろうか
“死ねば”そこにいけるだろうか。
“死”から逃げるのはもう疲れた。独りで逃げるのはもう嫌だ。だけど──
「独りぼっちは……さみしいよぉ……」
深い深い森の中、私は独り、たった独りでうずくまる。
そこには何もなくて、私はただ独りで泣いていた。
「せー」
「いー」
「れー」
「い!」
「「「星霊!?」」」
ロキの爆弾発言に私とナツとグレイは口をそろえて驚いた。
いきなり、ギルドを止めるって姿をくらましたとおもったら、ルーシィ連れて戻ってきてとんだ爆弾発言をされたんだけど。
いきなり「僕は星霊なんだ」って言ってきたんだけどこの色男。
何の前置きもなく、いきなり衝撃の真実明かされたんだけど。
「ロキは獅子宮の星霊よ」
「獅子ってアレだよね?大人になった猫!!」
「違うよハッピー!獅子はライオンさんだよ!ガオーって鳴くんだから!猫じゃないんだよ!」
ロキが獅子と知り、大きくなった猫が目の前にいると、ハッピーは目を輝かせる、そんなハッピーにライオンは猫とは違うことを説明する。
リュウ、別にライオンはガオーと鳴くからライオンってわけではないよ。ネコの仲間といえば仲間だろうけど、後で一緒に動物図鑑見ようねリュウ。
「でも、ロキはオイラと同じように普通に喋るよ」
「りゅ?あ、そっか。じゃあ、ロキはハッピーの親戚なの!?」
「そうだね」
「違うから!」
「そこの人騒がせな色星霊、人の妹に変なこと吹き込むの止めろ」
無責任に肯定するのは止めていただきたい。リュウは純粋なんだから。
あとリュウ、魔法は使っているけど自分だって人言を喋っていることを忘れないでね。本当は竜でしょあなた。
「ごめんごめん。ちょっと待ってくれないか?」
ロキはコートから人数分のチケットを取り出し、私たちに渡した。
「何これ?」
「もう人間界に長居することもないからね。ガールフレンド達を誘って行こうと思っていたリゾートホテルのチケットさ。君達には色々と世話になったし、迷惑もかけちゃったしね。あげるから行っておいでよ」
ロキから渡されたチケットに私たちは目の色を変える。
「リゾート!!」
「まじか!?」
「こんな高えホテル泊まったことねえ!!」
「わーい!」
「りゅー!リゾートホテルなら美味しい物出るかな?」
「そうだね一杯出るよ、しかも高級ホテルなら至れり尽くせりだよ!」
ロキのふとっぱらな行動に皆喜んだ。ああ、早く帰って旅行の支度をしないと!
「先にエルザにも渡しておいた。楽しんでおいで」
そう言い残して、ロキは星霊界に帰って行った。
「リゾートホテルだってよ!」
「早くいこーよ!美味しい物食べるの!!」
「あいー!」
「お前ら少しは落ち着けよ。こういうのはな、ちゃんと落ち着いて準備しねえと……」
「パンツ一丁のグレイが一番気が早いと思うよ。海パンのつもり?」
さっきまで服を着ていたはずのグレイは気がつけば、パンツ一丁となっていた。全くもって人のこと言えないね。
どれだけ泳ぐの楽しみにしているんだろう。
「うお!?いつの間に!?」
「というか皆、私たちだけじゃなくてエルザと相談して準備をしないと……」
「貴様等何モタモタしている置いて行かれたいのか?」
エルザを除いてはしゃいでいる私達にルーシィがまったをかけた。しかし当のエルザが準備万端で現れた!いや、用意早いよエルザ。
「用意はや!?」
「気がはええよ!!」
──そんなことがありまして。
「「うっみだーーーー!!」」
「お前達、ちゃんと準備運動をしないか!!」
皆と一緒にやってきました、アカネビーチ。私とナツは早速海に飛び込んだ。
エルザに怒られたけど、目の前に海があるのに飛び込まないなんて失礼にあたるね!
「リュウ!海だよ海!透明だよ!きれいだよ!しょっぱいよ!!」
「……りゅーん。お姉ちゃんリュウをおいて海で遊ぶんだー……りゅーん」
バシャバシャと波打ち際で跳ねてリュウを呼ぶが、リュウはふてくされてパラソルの影に座り込んでいた。
いや、ふてくされを通り越してめっちゃ恨めしい目つきで私を見ていた。
「くっ……やっぱり駄目か……」
「いや、当たり前だろ。カナヅチにいきなり海は色々と飛ばしすぎだぜ」
「りゅ!?違うもん!リュウはカナヅチじゃないもん!リュウはリュウだもん!ただ水に入ったら沈むだけだもん!」
「ぐっ……それをカナヅチっていうんだぞリュウ」
呼んだのは駄目元だったから来なかったことにダメージはない。けど恨めしい目で見られたことに、私のガラスのハートに傷がついた。かなしい。
グレイがカナヅチに無理をさせるなと言ってきたが、カナヅチ呼ばわりされたリュウはうがーっとグレイにのしかかった。どうやらカナヅチはリュウにとっても不名誉な称号らしかった。
この機会にリュウのカナヅチを克服でいればと思ったけれど、お風呂も駄目なのにいきなり海はハードルが高かったね、やっぱり洗面台から慣らすしかないか。
「りゅーん……もういいもん。リュウは砂で遊ぶ。海なんかには近寄らないもん。というわけで行ってらっしゃい!」
「遊ぶというか食べるの間違いじゃ……」
「砂って美味しいの?リュウ」
「りゅ、しょっぱくてジャリジャリして美味しいよ!」
「美味しいのかなそれ!?」
グレイから降りて。バケツに入れた砂をシャベルで口に掻き込みながら、リュウは皆を見送る。
どっからどう見ても遊ぶんじゃなくて砂を食べてるリュウにルーシィはツッコミをいれるがリュウは気にせずシャベルを噛み砕きながら砂を食べる。
砂を食べるリュウにハッピーが美味しいかと聞いてきた。リュウは素直に食レポするが残念ながらその食レポではルーシィの食欲をそそらなかったようだ……
「荷物番はリュウに任せろー!ジャリジャリ!!」
「いや、リュウだけをここに残すわけには行かない。子供が一人では危ないだろう」
「リュウ、もう子供じゃない。荷物番くらい一人で出来る」
エルザに子供扱いされたリュウは拗ねながら、一人でも大丈夫だと言ったが、それでもエルザは動かない。
これは駄目だと。私はすかさずサポートに入る。
「私も残るから大丈夫。私達がちゃんと責任もって荷物番するから皆は海で遊んで来なよ」
「しかし……」
「大丈夫。妹のことはお姉ちゃんに任せてほしいな!」
渋るエルザの背を押して、無理矢理遊びに向かわせる。いつも皆の面倒を見ているんだから、今日ぐらいエルザには息抜きして貰わないと。
いつまでもエルザにおんぶにだっこじゃ弟子として面目が立たないからね。
「……りゅーん。お姉ちゃんはナツ達と遊んでればいーんじゃないの」
拗ねたままのリュウはプイッと横を向く。その愛らしい姿に苦笑しながら両手を合わす。
「りゅー」
「ごめん、ごめんってリュウ。謝るからそんなにふくれないで。砂のギルド作るんでしょ?砂を固める海水汲んできただけで置いてったりはしてないって。だから私も砂遊びにいれてほしいな」
「……りゅ……ギルド作るんだよ」
ジーッと私がリュウを見つめていると、リュウはそっと持ってきたもう一組のバケツとシャベルを私に渡してくれた。私はそれを受け取り、リュウの隣に座る。
「うん。大きさは今までと同じ?」
「ううんもっと大きいの、夢の三階建てだよ」
「それはすごい。ご飯食べるところは今まで通り一階?」
「うん!でもお外でもご飯食べたい!庭作ろ!」
「いいね、どうせなら売店を外に作ってオープンカフェにしよう」
「後ね、後ね──」
各々アイデアを出しながら、思い思いのギルドを作っていく。
「う~ん……」
「りゅー……」
そして思いつくネタがつきた。
「ファントムみたいに二足歩行にしようよー」
「いやアレはなー二番煎じになるからなー、あと流石に今から後付けで足を作るのは物理的に難しいよ」
アレはネタとしては先にやった者勝ちの一発ネタだ。一度やれば印象は固定される。後から違う者が同じ事をやってもただの物真似だ。
これが向こうのギルドを知る前ならともかく知った後じゃどう考えても影響を受けてしまう。
何か
うーんと腕を組んで悩んでいるとふと目の前の海を見て、一つアイデアが浮かんできた。
「よし、プールも付けよう。プールがあるギルドなんてどこにもないよ!」
「プールはいらない。そんなギルドどこにもないもん」
「えー」
私の提案に、リュウは即座に首を横に振った。いい案だと思ったのに。
まあ、しょうがない。カナヅチのリュウに聞いた私が悪かった。
「……何で。何で皆私を置いていくんだっ!私だって私だってやれるのに!」
シエルにとてつもなく巨大な壁が立ちはだかった。シエル一人の力ではどうにも出来ない壁に、シエルは打ちひしがれる。
その壁は──
「何でカジノで子供は遊んじゃいけないの!!!」
──単なる年齢制限だった。
「大人狡い。大人のくせに何遊びほうけてるの。遊ぶのは子供の特権だよ」
ビーチを十二分に堪能し、美味しいご飯も食べて、地下にあるカジノで遊ぶぞーってなったのはいい。
でも子供は駄目って私とリュウだけ門前払いされた。皆私達をキッズルームに置きざりにして、カジノに遊びに行っちゃうし。
ナツに着いていこうとしたハッピーも七歳だから子供だよって言ったら、猫には年齢制限ないって言っていうし。何この差別!何で人だけ年齢制限あるの!
「おねーちゃん!ここのフルーツジュース美味しい!
「そっかあ、うん。リュウが幸せそうなら別に良いんだけども」
「りゅ?」
門前払いされて怒り心頭の私と違い、リュウはキッズコーナーを満喫していた。……うん。リュウが幸せなら良いんだ。良いんだけども、さっき子供扱いされて拗ねてたよね。気づいて、遊び道具とか飲み物、食べ物無料とかわりと至れり尽くせりだけど、砂浜でのエルザ以上に子供扱いされてるよ私達。
まあ、そう言うところがかわいいけど!私の妹まじ天使!だれかカメラ持ってきて!この天使永久保存したい!
だけど!それとこれとは別問題!正確にはこれは私の意地の問題!
「やってやる、私だって大人の階段上るんだ!」
私だって、ポーカーやったり、ルーレットやったり、スロットやったりしたいもん。大人の階段上るんだもん。大人みたいに遊び尽くすんだもん。
そうと決まれば私のやることはただ一つ。
「リュウ。猫ちゃん」
「りゅ!……にゃーん!」
リュウはふわっふわの白猫に【変化】して、
猫の年齢を確認されないのはハッピーで実証済み。これでリュウの年齢制限はなくなった。後は私だけ。
槍を出さず、指をくるくると回転させる。
「
この魔法は便利だから何度も練習して槍なしで出来るようにした。姿を消したり、見た目を変えて人を騙くらかすくらいならちょちょいのちょいだ。……どっかの最弱の男には聞かなかったけど。
まあ、今回は騙くらかすのは一般人だし大丈夫、バレないバレない。
「じゃーん!これでどうかしら?」
「りゅー!!ミラそっくりだよ!」
ミラの姿でクルクルと回り、自分の姿におかしなところはないか確認する。うん、大丈夫。リュウのお墨付きも貰えたしいま、私の外見は完全にミラになってると断言できる。
カジノに入るだけなら姿を消せば良い。けど今回はカジノで遊びたい。
だから私は自分の見た目をミラに変えた。子供の私は止められたけど大人のミラなら門前払いを受けることはないはず。
よし、これで条件は全て揃った。やる事はたった一つ!
「よーし!大人の階段を上るぞこらー!」
「りゅー上るー」
カジノを遊び尽くす!