FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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関係ない

 あの子を拾い、どれほどの時が経っただろう。

 

 

 当てもなく、ただ一つの目標を胸に、何度一人の夜を過ごしただろう。

 

 

 あの日、私は星を見た。

 

 

 きらきらと流れる五つの星。

 

 

「──────────────────」

 

 

 ──あの日、私は流星に何を“願った”?

 

 


 

 

「りゅーん……あっち!」

「OKそっちか、邪魔だコラァ!!」

 

 

 私がリュウを背負い、リュウがナツの魔力を辿り、指さす方向へ私達はまっすぐ進む。

 馬鹿野郎のアジトなんて木っ端微塵に粉砕する心構えで障害物(壁や天井)をぶちこわし、まっすぐ(最短距離を)進む。

 私を含め器物損壊は妖精の尻尾の得意技だ。

 

 

「これが……妖精の尻尾」

「いや、私までこうだと思わないでほしいんだけど……」

 

 

 途中ルーシィは自分は違うとぼそっと呟いたけど納得いかないよ。割と最近ルーシィも妖精の尻尾に染まっていると思うよ。

 

 

「リュウ!次は!」

「あっち!りゅー……ん!戦闘の気配!多分カクカクと猫の人と戦ってる!」

「戦ってるって……」

 

 

 カクカクはカジノでナツの口に鈍玉をぶち込んだ奴だと思うけど、猫の人は覚えがない。

 あの時、カクカクと一緒にいたもう一人は私を島で遭難させまくった諸悪の根源だし……というか猫の人は猫なの?人なの?

 

 

「ウォーリーとミリアーナか!」

「くそ間に合わなかったか!」

 

 

 どうやらリュウの説明でエルザはカクカクと猫の人が分かったようだった。

 シモンは間に合わず三人が衝突してしまったことを嘆く。

 

 

「止められねえのか!」

「無理だ!あいつら二人とも通信を遮断してやがる。直接止めるしか方法は──」

「みなさんようこそ。楽園の塔へ」

 

 

 突然、聞き覚えのある声が至るところから発せられた。

 

 

「何だこの口は!?」

「気持ち悪!!」

「……ジェラールだ。塔全体に聞こえるように話している」

「……っち」

「お姉ちゃん?」

 

 

 塔の至る所から口が現れ、一斉にしゃべり出す。

 床の口の一つを思いっきり踏みつけるとすぐに口は消えた、しかしすぐ隣に新しい口が現れる。……わざわざ隣に生やすとは良い度胸してる。

 

 

「俺はジェラール、この塔の支配者だ。互いの駒はそろった。そろそろ始めようじゃないか──楽園ゲームを」

 

 

 皆が困惑する中、ジェラールがゲームの説明を始める。

 ジェラールはエルザを生け贄にして、ゼレフを復活させたい。

 私達は、ジェラールを止めたい。

 つまり、ゼレフが復活し楽園への扉が開けばジェラールの勝ち。それを阻止できればこちらの勝ち。

 勝手に人の仲間を生贄にするこっちの神経を逆なでする狂ったルール説明で、それだけでも苛つくのにジェラールはそれだけじゃ面白くないと宣った。

 

 

「こちらは“四人”の戦士を配置する」

「四人の戦士?」

「そこを突破できなければ俺にはたどり着けん。つまりは四対九のバトルロワイアル」

 

 

 シモンはジェラールが発した四人の戦士に思い当たる者がいなかったのか疑問符を浮かべていた。

 ジェラールは四人を倒さなければ自分まではたどり着けないと腹が立つくらい自信満々に言ってくる。ものすごく腹が立つゲームだけど勝利条件は分かった。ものすごく長ったらしいルール説明だったけど。とにかく四人の戦士とジェラールをぶっ倒せば万事解決だ。そう馬鹿野郎(ジェラール)さえぶん殴れば。

 

 

「最後に一つ、特別ルールを説明しておこう。評議院が衛星魔法陣(サテライトスクエア)でここを攻撃してくる可能性がある。全てを消滅させる究極の破壊魔法【エーテリオン】だ」

「!!?」

 

 

 ジェラールの特別ルールに皆、目を見開いた。

 爆心地のあらゆる全てを消失させる究極の破壊魔法【エーテリオン】。私もその存在は知っている。こんな小さな島、簡単に消滅させることが出来る魔法。

 そんなものが落とされたらこの塔にいる奴は全員──

 

 

「残り時間は不明。しかし【エーテリオン】の落ちる時、それは全員の死。勝者なきゲームオーバーを意味する」

「全員の死って……」

「何考えてるのよ……自分が死ぬかもしれない状況でゲームなんて……」

「……狂ってる」

 

 

 狂ってる。自分が死ぬかもしれないのに、ジェラールはそれすらもゲームのルールとして組み込んだ。

 まともな精神をしているのなら、そんな馬鹿なこと出来るわけがない。

 

 

「【エーテリオン】だと?ありえん!だって──」

 

 

 何かをエルザは言おうとした。でもその言葉は不自然に途切れた。

 何事かと皆がエルザの方へ振り向くと、ショウがエルザをカードの中に閉じ込めていた。

 

 

「ショウ!お前何を!」

「姉さんには指一本触れさせない。ジェラールは俺が倒す!!」

「よせ!一人じゃ無理だ!」

 

 

 ショウはそのままシモンの静止を振り切り、何処か──いや、ジェラールの元へ走り出す。

 ああ、走り出したい気持ちは十分に“理解”できる。アイツの表情は様々な感情でごちゃ混ぜになっていた。ジェラールへの憎しみで衝動に駆られるのも無理はない。

 だけど──

 

 

「エルザのカードをわざわざ馬鹿野郎(ジェラール)の元に持ってくな馬鹿!」

 

 

 百歩譲ればエルザをカードに封じるのは許せるよ。何だかんだエルザも先走っちゃいそうだし!

 けど、そのカードを持ったまま敵に突貫する普通!?まだそれをこっちに渡してくれたら見直したのに!

 馬鹿?馬鹿なの!?いや、アイツ馬鹿だった!

 頭に血が登ってたとしても援護できないよあの馬鹿!

 馬鹿が起こした事件に、頭の中でモヤモヤしてたものが一気に吹っ飛んだ。

 うだうだ考えてる時間は無い。切り替えろ。とにかく、今はあっちの暴走馬鹿を止めないと。

 

 

「リュウ!!」

「りゅー!わかった!!」

「待てお前ら!」

 

 

 私が声をかけるとすぐにリュウは理解して、ぐっと抱きつく力を強め、さらに魔力を渡してくれた。借りた魔力で速さを底上げしてくれる【疾風のごとく】を持ち、風を身に纏う。

 馬鹿を追いかけようとする私を、グレイが止めようとしたけども、リュウの魔力を貰った今の私には遅すぎる。

 私を捕まえようとしたグレイの手は空をかき、私は一足お先に馬鹿を追いかけた。

 

 


 

 

 塔の最上部、そこにいるのはジェラールとジェラールが用意した四人の戦士

 

 

「おいおい【エーテリオン】だって!聞いてねえぞジェラール!」

 

 

 ロック風の男は今初めて知ったルールに声を荒げた。

 

 

「ヴィダルダスはんは臆したのどすか?」

 

 

 花魁風の女がクスリと問いかける。

 

 

「まさか!逆さ逆!!リバーーース!最高にハイってやつだ!!こんな危ねー仕事を俺は待ってたんだぜーー!!」

 

 

 不満はないとヴィダルダスは狂ったように笑いただす。

 

 

「ホーホホウ」

 

 

 梟頭の男はわれ関せずと不動でその場に立っていた。

 

 

「坊主も大変だな!こんな奴が“兄貴”だなんて!」

「うるさい、さっさと行ってこい。雇われたお前らとは違って、俺は全部知ったうえでここにいる」

 

 

 ヴィダルダスは三人組とは少し離れた場所にいた少年に話しかける。

 話しかけられた少年は不快そうに顔をゆがめた。

 

 

 

「シモンとショウは裏切った。ウォーリーとミリアーナは“火竜”に撃退された。お前は奴らよりも役に立ってくれるな?」

「……はい、分かっています。俺は彼らとは違う」

 

 

 

 


 

 

「あの馬鹿どこ行った!!」

 

 

 すぐに追いつくと思ったけど、思いの外あの暴走馬鹿は早かった。ここまで一本道だったのに進んでも進んでも奴の姿は見えない。

 速さを強化している私が追い付かないなんてどんだけ速いんだあの馬鹿。

 

 

「りゅーん?……お姉ちゃん、ストップ」

「どうしたのリュウ?」

 

 

 背負っていたリュウが肩をタップしてきたので、立ち止まる。

 何があったのかとリュウの方を向くと、リュウはスンスンと鼻を利かせながら首をかしげていた。

 

 

「りゅ~う~う?」

「何か気になることがあるの?」

 

 

 背中から落ちるんじゃないかと思えるほど首を傾げるリュウに何が気になっているかを聞く。

 

 

「……上手く説明はできないけど、ここら一体にあの馬鹿の匂いはするの。でもね、なんというかね、違和感がある気がして」

「違和感?」

「りゅー……絵に、描いた餅?……を嗅いでるみたいというか、匂いはするのに……気持ち的にがっかりするというか」

「絵に描いた餅は嗅げないと思うけど……言いたいことは何となく伝わった」

 

 

 自分でも情報を整理しきれないのか、ところどころつっかえながらリュウは自分が思ったことを口にする。

 匂いはするのにがっかりする。ようは匂いだけで実態はない。なら手段は一つだ。

 

 

「……リュウ」

「う?」

「“ここら一体の匂いを吹き飛ばせ”」

「りゅ、了解です!耳は塞いでてね。

すぅ~~リュウの……雄叫び!!!(くおおおぉぉん!!!)

 

 

 リュウは空気を吸い込むと思いっきり雄叫びをあげた。

 おおー凄まじい大音響。言われたとおりに耳を塞ぎ、魔法で音を遮断しているのにガードを突き破ってリュウの声が聞こえてくる。

 でも耳がキーンとしたかいがあった。どうやらちゃんと“魔法”を吹き飛ばしてくれたようだ。

 

 

「……やっぱりお前か、諸悪の根源」

「はた迷惑な大声だね。人がせっせと仕込んだ魔法を無慈悲に全部吹き飛ばすなんて」

 

 

 目の前の風景が歪み、緑髪の少年(諸悪の根源)が現れた。

 やっぱり幻術で認識をゆがめられていた。一度ならず二度までも人を迷わせたなこいつ。

 

 

「君とは何度か会ったけど、改めて自己紹介をしよう。俺はフィル。ジェラール兄さんが用意した四人の戦士の一人」

「フィル?」

 

 

 その名に聞き覚えがあった。エルザとシモンが言っていた。あの馬鹿に騙されている一人。

 あの放送を聞いてるはずなのにどうしてここにいるのかは理解できないけど、騙されているというなら私に争う気はない。

 一度ならず二度までも人を迷わせたことについては事が終わったら熨斗つけて返してもらうけど。

 

 

「……あの馬鹿の放送、聞いてなかったの?あの馬鹿は楽園に連れてく気はなんてない。お前は騙されてたんだよ!」

「部外者が兄さんを愚弄するな!」

「っ!」

 

 

 騙されていたことを告げようとするが、目の前の奴は怒りをあらわにした。

 

 

 

「言っとくけど、あの三人と違って俺は騙されてない。俺は全てを知ったうえでここにいる。そう、すべてを知ったうえで俺はエルザ姉さんを生贄に捧げる」

「なっ……ふざけるな!全部知ってるならどっちが悪いかなんて分かってるでしょ!」

「俺には俺の事情がある。部外者が口を出すな」

「……ああそう。そうだね。確かに部外者が口を出すものじゃなかった」

 

 

 フィルの言うことは一理ある。何の関係もない、関係があるとしてもマイナスの方向しか持っていない私がこいつに口出す資格はなかった。

 

 

「だから手を出させてもらう!」

 

 

 口が出せないなら手しかない。その心意気で【疾風のごとく】を振り下ろす。

 先手必勝、一撃必殺。 流石にエルザの仲間を斬るのは気が引けたから、槍の平な面で奴の頂点をかち割るつもりで振り下ろした。

 

 

「いやー君が猪突猛進の猪で助かった」

「つ!?」

 

 

 フィルに振り下ろそうとした槍は途中で止まった。

 いや、槍だけじゃない。腕、足、胴体、全ての動きが取れなくなった。背負っていたリュウもその動きを止めていた。

 

 

「りゅー!うー!」

「お前、何をした!」

「俺の糸は特別製でね。流した魔力によってその硬度と粘度を変える」

 

 

 フィルは手を広げてシエルに見えるように細い糸を作り出す。

 

 

「君の妹が吹き飛ばすまで、この場には微力な魔力を流した糸が隅々まで張り巡らされていた、硬度なし粘度ありの体に纏わりつかせるのだけを考えた、一本一本はとてもとても弱い糸。だけど追加で魔力を流せば──」

 

 

 そう言って足元に落ちていた糸を一本拾い、魔力を流した。

 魔力を流された糸は、針のようになったり、ガムのようになったりと変幻自在に硬度と粘度を変える。

 

 

「──このとおり。硬度も粘度も俺の思うがまま」

 

 

 一通り説明して満足したのか、シエル達を拘束したフィルは立ち去ろうとする。

 

 

「待て!」

「待たないよ、そんな状態で邪魔はもうできないでしょ。俺の目的はエルザ姉さんただ一人。何も知らない、そしてなんの関係もない外野が入ってくるのはやめてくれないかな」

「──うるさい……」

 

 

 かろうじて動かせる左手で【紅蓮の炎】を取り出し、握りしめる。

 

 

「関係なくて悪かったなぁ!!!」

「あっつ!?……こいつ自分ごと!?」

 

 

 体にまとわりついた糸を自分たちごと燃やし、拘束を外す。私の白のコートに銀の衣が纏われる。

 火が自分にも燃え移りそうになったフィルは慌てて自分に繋がっていた糸を切る。

 

 

「りゅー!」

「ありがとうリュウ、“衣”貸してくれて助かった」

 

 

 リュウごと纏めて燃やしたけどリュウの火傷の心配はしていない。こんなチャチな魔法でリュウは火傷なんかにならない。

 私は多少火傷しても良いやの精神でいたけど、私が自分を燃やす前にリュウが【竜の衣(ドラゴンローブ)】を貸してくれたお陰で無傷だった。

 

 

「まだやるの?関係ないんだからさっさと帰って欲しいんだけど」

「言っとくけど、こっちはエルザ(仲間)を狙われてるの、仲間を狙われてすごすごと逃げ帰る人間なんて、妖精の尻尾にはいない」

 

 

 


 

 

 

 ああ、そうだ。

 

 ──(シエル)は“知らない”

 

 私が知ったのはたった今。それまで知ろうともしなかった。知る機会なんていつでもあったのに。

 

 ──(シエル)は“関係ない”

 

 彼らと私に関係は全くない。地獄を共有し、形はどうあれ繋がれた絆は彼らだけのもの。そこに私はいなかった。

 

 ──(シエル)に“資格はない”

 

 過去から、事実から、真実から、全てから逃げ続けた私に資格はない。

 

 どこまでもないないずくし、分かっていた。分かっていたんだよ。

 

 

 だけど、それでも、それでも私は──

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