FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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エルザ

「も~~本当にひどかったんだから!!」

「大変だったね~」

 

 

 リュウから分けられたショートケーキを口にしながらルーシィは叫ぶ。(ちなみにリュウの目の前にはまだホールで3個分残っている)

 私とリュウはケーキを食べながら、ルーシィがナツに巻き込まれて受けた依頼の愚痴を聞いていた。

 

 

「しかもそこではブスって言われるしー!!」

「りゅ!?女の子にそれはひどい!!ルーシィ今度言われたらリュウに言ってね!そんな奴頭から丸かじりして食べるんだから!!」

「食べるの!?」

「リュウ、おなか壊すから止めなさい」

「止める理由がおかしい!!」

 

 

 ルーシィから見れば明らかにおかしい会話にルーシィはつっこむ。しかし、私たちからしてみれば全くおかしくない。だってリュウはなんでも食べる雑食の竜だもん。

 

 

「そういえばシエル達はいつもなんの依頼を受けてるの?」

「んー?盗賊退治や遺跡の調査とか薬草の採取とか結構広く依頼を受けてるかな……」

 

 

 ルーシィに聞かれ私は今まで受けてきた依頼を思い返す。盗賊も倒したり遺跡も調査したり薬草の採取をしたりした。考えてみると結構統一性がなかったんだね。あ、そうだ。忘れちゃいけない依頼があった。

 

 

「それとリュウが手伝うようになってから探し物の依頼を受けるようになったかな」

「探し物?」

「そ、リュウは食べた魔力を記憶して辿ることができるの。持ち主の魔力を少し食べさせてもらって、その魔力の残り香を辿って探し物をするんだ」

「ものを探すのはリュウ大得意なの!」

 

 

 何でも探せるから巷では私たちは“もの探シスターズ”と呼ばれてるとか呼ばれてないとか。正直なんてダサい名前だと心の底からそう思う。

 

 

「依頼って色々あるのねー」

「色々あるのです!ルーシィもいっぱい依頼受けて得意な依頼を見つけようよ!」

「う~んどうしようかしら……」

「あら、ルーシィ。受けたい依頼があったら私に言ってね、今はマスターいないから」

「あれ?本当だ」

 

 

 ルーシィはミラの言葉でたった今マスターがいないことに気づく。……小さいから今まで気がつかなかったのかな。

 

 

「定例会があるからしばらくいないのよ」

「定例会?」

「地方のギルドマスターたちが集って定期報告をする会よ、評議会とは違うんだけど……う~ん言葉で説明するのはちょっと難しいかも……リーダス、光筆貸してくれる?」

「ウィ」

 

 

 ミラはリーダスから空中に文字が書ける光筆を借り、魔法界の組織図を説明していく。魔法界で一番偉い、犯罪を犯した魔導士を裁く評議会。その下の各地方ギルド同士の意思伝達と私たちを纏めるギルドマスター。

 ミラはルーシィと“リュウ”に分かりやすく説明して……ん?ちょっと待って。

 

 

「知らなかったなぁー」

「リュウもー」

「リュウー?私、2年前にこれを教えた気がするんだけど……」

 

 

 ミラの説明に感心しているリュウに、おかしいと思い問いかける。私、リュウが依頼を手伝う前に丁寧に説明したはず。

 

 

「りゅ?忘れちゃった……ごめんなさい」

 

 

 眉を下げ、申し訳なさそうにリュウは謝る。

 

 

「も~じゃあ、今度はちゃんと覚えるんだよー」

「りゅ!頑張る!」

 

 

 そんなに素直に謝られちゃったら怒るにに怒れないじゃないか。私はしんみりするリュウの頭を撫でる。

 

 

「甘い!!甘すぎるよシエル!!」

「え、何言ってるのルーシィ!姉が妹に甘くて何が悪い!!」

「ダメだこのシスコン!」

 

 

 ルーシィはあまりにも簡単に許したシエルにそれはおかしいと言ったが。シエル(シスコン)には何を言っても無駄だった。

 

 

「もういいやシエル(シスコン)は放っておこう……それにしてもギルド同士にも繋がりがあったのね」

「ギルド同士の連携は大切なのよ」

 

 

 ミラもルーシィも二人のことは気にしないことにした。慣れているミラはともかく、新人のルーシィもそんな行動をとるとは中々の適応力である。

 そんなルーシィの背後から忍び寄る影が一つ。

 

 

「これをおそまつにしてると……ね」

「黒い奴らが来るぞおおおおお!!」

「ひいいいいいいい!?」

 

 

 その影はナツだった。ルーシィはナツの大声に驚き、椅子から崩れ落ちかけるが何とか持ち直す。

 

 

「うひゃひゃひゃひゃっ!!何ビビってんだよ!!

「もぉ!驚かさないでよ!」

「ビビリルーシィ略してビリィーだね」

「なんかすぐ破れそうな名前だね」

「それか電撃ビリビリしそうな名前だ」

「変な略称つけんな!」

 

 

 ハッピーが付けたあだ名の感想をリュウと私が言うが、ルーシィは気に入らなかったようだ。

 

 

「でも黒い奴らは本当にいるのよ。連盟に属さないギルドを闇ギルドって呼んでるの」

「あいつ等法律無視だからおっかねーんだ」

「じゃあ、いつかアンタにもスカウト来そうね」

 

 

 ルーシィはナツに闇ギルドからスカウトが来そうだと言う、まあ毎度のごとく器物、建物破損させてるからそれは最もな言葉だ。

 正直『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)の皆にもスカウト……いや『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)自体闇ギルドになるんじゃないかとひやひやする問題を起こしているわけですが。

 

 

「てめぇかこのヤロォ!!」

「文句あっかおぉ!?」

 

 

 皆が起こした問題で物思いにふけっていたらいつの間にかグレイとナツが喧嘩をしていた、何があったし。

 そしてグレイは相変わらずパンツ一丁、正直リュウの教育に支障が出るからやめてほしんだけど。

 

 

「君って本当にキレイだよね」

 

 

 そこのロキ(チャラ男)、アンタもね。何か知らないけどロキがルーシィを口説いていた。うん、月並みな言葉だけど、本当にいつか彼は刺されると思います。

 そんなこんないつも通りの日常を過ごしていたら、今の『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)の空気をぶち壊す言葉がリュウの口から告げられた。

 

 

「りゅ?おねーちゃん“エルザが帰ってくる”!」

「「「「「何!!!?」」」」」

 

 

 リュウの言葉にギルドの皆は騒然となる。……正直そこまで怖がらなくてもいいと思うのに、いや怖いのは認めるけど。

 恐怖に慄く皆とは違い、私はエルザが帰ってくることがうれしかった。うふふ……今度はどんな稽古をしてもらおうかなー!

 

 

「リュウ!あとどれくらいだ!あとどれくらいでエルザが帰ってくる!?」

「りゅー?後1分!!」

「「「「「もっと早く言えーーーーー!!!?」」」」」

 

 

 グレイはエルザが帰ってくるまでのタイムリミットを聞く。私同様、エルザを怖いと認識してないリュウはにっこりとエルザが帰ってくる1分後に帰ってることを告げた。あまりの時間のなさに皆が叫ぶ。

 わーわーとみんなが騒いでいるとズドンと大きな音がした。

 皆して音の鳴るほうへ振り向く、そこには巨大な何かを背負った人間のシルエット、ズシンズシンと音をたてながらギルドへ入る者がいた。

 

 

「今、戻った。マスターはおられるか?」

「お帰り、マスターは定例会よ」

「そうか」

 

 

 綺麗なスカーレット色の長髪、そして鎧を纏った女性。『妖精女王』(ティターニア)エルザ・スカーレットが帰ってきた。エルザは抱えていた巨大な角を下す。

 

 

「え、エルザさんそのバカでかいのは何ですかい?」

「りゅ!私が食べてもいい!?」

「ダメだ、これは討伐した魔物の角に地元の者が飾りを施してくれたのだ。綺麗だったのでここへの土産にしようと思ったのだ……食べ物じゃないぞ、リュウ」

「りゅーー」

「膨れてもだめだ」

 

 

 リュウはエルザが持って帰ってきた角が食べたかったようだがエルザに止められる。ああもう、そのふくれっ面も可愛いよリュウ!!

 

 

「それよりお前たちまた問題ばかり起こしているようだな。マスターが許しても私が許さんぞ」

 

 

 そんな風に思っていたらものすっごい嫌な気配が私を襲う。あ、これなんかダメな奴だ。

 

 

「シエル!リュウを甘やかし過ぎだ!」

「で、でも妹を甘やかすのは姉の役目だよ!!?」

 

 

 エルザの言葉を私は否定する。周りの人間から“なんと命知らずなこと”を、と視線を感じるが、妹を甘やかすのだけは私は譲れない。

 

 

「妹がダメなことをしたら叱るのも姉の役目だろう!!シスコン(妹想い)も度が過ぎればそれは害悪だ!!」

「それはまったくもってその通りです!!」

「(シスコンが負けた!?)」

 

 

 エルザの言葉が急所に当たった。効果は抜群だった。崩れ落ちる私だがエルザの注意は私だけでは終わらない。

 

 

「カナ、なんという格好で飲んでいる。ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸い殻が落ちているぞ。ナブ、相変わらず依頼版(リクエストボード)の前をウロウロしているのか?仕事をしろ──」

 

 

 エルザのマシンガン説教は止まらない。ようやく止まったころには私を含め何人ものギルドのメンバーが崩れ落ちていた。

 

 

「──全く、世話が焼けるな……今日のところは何も言わずにおいてやろう」

「ふ、風紀委員か何かで?」

「エルザだよ」

 

 

 エルザの様子に風紀委員の印象を抱いたルーシィは正直に口にする。

 

 

「ところでナツとグレイはいるか?」

「あい」

 

 

 エルザの問いかけにハッピーはすぐさまナツたちを差し出した。

 

 

「や、やあ……エルザ、お、オレたち今日も……なか、仲良くやってるぜ……」

「あい」

「ナツがハッピーみたいになったー!?」

 

 

 そこにはがっしりと肩を組み脂汗をだらだらと流すグレイとナツがいた。(+ナツはハッピー化)

 

 

「そうか……親友なら時には喧嘩することもあるだろう……しかし私はそうやって仲良くしているところを見るのが好きだぞ」

「あ、いや……いつも言ってるけど親友ってわけじゃ……」

「あい」

「こ、こんなナツ見たことがないわ!!?」

「ナツもグレイもエルザが怖いのよ」

 

 

 ミラはルーシィにナツとグレイがコテンパンに怒られた過去を話す。

 そう、彼らにはエルザに逆らえない一種のトラウマがある。具体的に言うとナツは喧嘩を挑んで、グレイは半裸で歩いてるところを見つかって、ついでにロキは口説いて半殺しにされた。

 

 

「二人とも仲がよさそうでよかった、実は二人に頼みたいことがある。本来ならマスターの指示を仰ぐところなんだが……早期解決が望ましいと私が判断した。二人の力を貸してほしい、ついてきてくれるな」

「え!?」

「はい!?」

 

 

 エルザの言葉にギルドの皆は騒然とする。何でも一人でこなしてしまうエルザが人の助けを借りることなどそうない。

 ギルド内があわただしくなるがエルザは踵を返し、ギルドから出て行った。

 

 

 


 

 

 

──マグノリア駅

 

 

「何でエルザみてーな化け物がオレたちの力を借りてえんだよ」

「知らねえよ、つーか助けならオレ一人で十分なんだよ」

 

 

 駅内で睨みあう、ナツとグレイ。どうして二人はこうも喧嘩腰何だろうか。

 性格的には似たような感じだから息が合うときは合うと思うんだけど……あ、そう考えてたら喧嘩始めた。

 

 

「迷惑だから止めなさい!もおっ!! アンタたち何でそんなに仲が悪いのよ」

「何しに来たんだよ」

「頼まれたのよミラさんに!!私たちが仲を取り持ってあげてって!!ねえ!シエル!リュウ!二人もミラさんに言われたんだから手伝っ……」

 

 

 ルーシィは後ろにいる二人に振り返る。

 

 

「お姉ちゃん!リュウ、駅弁食べたい!!」

「いいよーお財布あげるから好きなの買っておいでー」

「遠足気分かそこの姉妹!!」

 

 

 ダメだ、常識人私しかいない。ルーシィはこの日ようやく悟った。

 自分一人で彼らを止めなければならない、必死に考えを巡らせると妙案を一つ思いついた。

 

 

「あ、エルザさん!」

「今日も仲良く行ってみよー」

「あいー!」

「ち、違うよエルザ!!これは甘やかしているわけじゃ!!」

 

 

 ルーシィの言葉に慌てて三人は取り繕ったり否定したりする。しかし勢いよく振り向いた先にエルザはいなかった。

 

 

「「「え」」」

「アハハ!これ面白いかも!」

「「騙したなテメェ!」」

「ひどいよルーシィ!!」

 

 

 そ、そんな……『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)唯一の常識人だと思っていたルーシィすらこんなことをしてしまうなんて。朱に交われば赤くなる……『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)に交わったことでルーシィの常識人オーラが薄れていったとでもいうの!?(自分たちのせいだとは露ほどにも思っていない)

 

 

「すまない……待たせたか」

「荷物、多!?」

 

 

 ルーシィの行動に地味にショックを受けていると大きな台車に大量の荷物を載せたエルザが現れる。

 

 

「お姉ちゃん!駅弁買ってきたー!」

「駅弁も多!!一つじゃないの!?」

 

 

 それに少し遅れて大量の駅弁を抱えたリュウも現れた。

 

 

「シエル、リュウどうしてここに……それに君は昨日『妖精の尻尾』(フェアリーテイル)にいたな」

「ちょっとミラに頼まれて同行することになったの、よろしくね!」

「よろしくね!」

 

 

 とにかくどうしてここにいるか理由をエルザに説明する。そして頭を下げると私の真似をしてリュウも頭を下げた。

 

 

「新人のルーシィといいます。私もミラさんに頼まれて同行することになりました、よろしくお願いします」

「私はエルザだよろしくな。そうか……今回は少々危険な橋を渡るかもしれないがシエルとリュウ、そして君の傭兵ゴリラを倒した活躍ぶりなら平気そうだな」

「危険!!?」

 

 

 エルザの言葉に、ルーシィはミラから頼まれたことを簡単に受けた自分に後悔する。

 

 

「ふん、何の用事か知らねぇが今回はついて行ってやる、条件付きでな」

「条件?言ってみろ」

 

 

 ナツの真剣な面構えにエルザは先を促す。

 

 

「帰ってきたらオレと勝負しろ。あの時とは違うんだ」

「お、オイ!早まるな!死にてえのか!?」

 

 

 ナツはエルザから視線をそらさずに真剣な面構えのまま言い放つ。そしてグレイは横でびくびくしていた。一応名誉のために言っておくと彼はナツを止めようとしたので、それだけは分かってほしい。

 

 

「確かにお前は成長した、私はいささか自信がないが……いいだろう受けて立つ」

 

 

 エルザはフッと笑みを零し、ナツとの勝負を受けた。

 

 

「おしっ!燃えてきたぁ!!やってやろうじゃねーか!!」

「……なーむー」

「リュウ早い。それはまだ早い」

 

 

 気合を入れるナツに向けてリュウは手を合わせ合掌するが、それはちょっと早いので止める。せめてナツがエルザに吹き飛ばされるまで取っておきなさい。

 

 

「りゅ?でも──」

 

 

 


 

 

「……っ…………っ……」

「なっさけねぇなぁナツよ……」

「毎度のことだけど辛そうよね……」

 

 

 ナツは彼にとって最大の敵、【乗り物】によってダウンしていた。さっきまでの気合はどこに行ってしまったんだろう。そしてリュウの合掌の意味が分かった、そういうことか。この地獄の事をさして合掌したのか。

 

 

「全く……しょうがないな、私の隣に来い」

 

 

 エルザは乗り物酔いで苦しそうなナツに自分の隣に座らせる。

 そして──

 

 

「ふが!!!?」

「これで少しは楽になるだろう」

 

 

──腹パンを食らわせ気絶させた。

 

 

「……なーむー?」

「うん、そうだね。なーむーだね」

 

 

 今回は聞いてきたリュウに頷いておく。そうだね、ナツのご冥福を祈ろう。(※ 死んでません)

 

 

「「なーむー」」

「いや死んでないから!!?」

 

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