FAIRY TAIL 竜騎兵と竜の子   作:MATTE!

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魔風壁

 リュウは魔風壁の前に立ち、目の前の風の壁をジーっと見つめた。

 

 

「どう、リュウ?」

「りゅー……思ってたよりはまじゅくなさそう……かな?」

「思ってたよりってどういう意味だ?」

「そっちで寝っ転がってる奴のほうがもうちょっとまじゅい魔力だったと思うんだけど……りゅー?」

 

 

 リュウは目の前の魔風壁の魔力をより、カゲの魔力が不味かったことに首を傾げる。

 確か、リュウは性根が腐ってる奴ほど魔力が不味いと言っていた。リュウの言うことをそのまま受け取ればエリゴールよりカゲのほうが性根が腐っているってことになる。うー、それは納得いかない。明らかにエリゴールのほうが性根腐ってるでしょ、顔つきからしてなんか悪そうな感じしたし!!

 

 

「それで、食べれるか?」

「りゅ!食べられる!!」

 

 

 単刀直入にエルザが聞き、リュウも元気よく答えた。

 

 

「すーはー……りゅーーーーー!」

 

 

 リュウは深呼吸をすると、口を大きく開けて風を吸い込んでいく。

 

 

「よし!いいぞリュウ!!このまま魔風壁を全部食べるんだ!」

「りゅーーーーーー!!」

 

 

 魔風壁の風はみるみるリュウの口に吸い寄せられ、リュウのお腹に収まる。よし、これで魔風壁もなくなるは……ず?私は目の前の魔風壁をよーく見る、その後に目をごしごしと擦りもう一回よーく見る。うん、おかしい。

 

 

「……なんか、気のせいかな?さっきと全く変わってないような……」

「……気のせいじゃねぇな、リュウが食べる前と全く同じだ」

 

 

 私の言葉にグレイが同意してくれた。おかしいな、今もなおリュウが風を食べているのに魔風壁の様子が変わることがない。横にいるリュウを見るが、リュウは凄まじい勢いで食べている。手を抜いてる様子はないから本気で食べている。今、リュウは全力で風──空気を食べている

 

 

 

 

 

 

 ……空気?

 

 

 ……いや、まさかそんなわけはないよね。うん、そんなわけない。私は必死に頭に思い浮かんだ答えを否定する。

 

 

「なんか……息苦しくない?」

「そうか?」

 

 

 しかし、ルーシィとナツの会話が決定打となり現実に引き戻された。

 

 

「リュウ!ストップ!ストップ!!このままじゃ私たちとついでに『鉄の森』(アイゼンヴァルド)の連中が危ない!!」

「んー!なにするのー!」

 

 

 別に『鉄の森』(アイゼンヴァルド)はどうでもいいと言えばいいけど、それでもちょっと見捨てるのは後味悪いしついでに私たちも危ない。慌ててリュウの口を塞ぎ、食べるのを阻止する。

 

 

「シエル!なぜ止める!!」

「いや、このままじゃ命が危ない!!」

 

 

 エルザが凄まじい勢いで睨み付けてきたが、私は負けじとリュウの“食べる”について話す。

 

 

「えーっとなんて言うか……リュウは魔法を食べることはできるけど、物体に魔法が付与されていた場合、魔法“だけ”を食べることはできないの!その場合は物ごと食べるしか手段がない!」

「それが今リュウを止める理由になるのか?」

「なるよ、この魔風壁はエリゴールの魔力だけで作られているわけじゃない。エリゴールの魔力を核にして周りを風で覆い作られている。リュウは周りの風を食べることはできるけど、魔風壁は足りなくなった空気()を補充している。ルーシィ、さっき息苦しいって言ったよね?」

「え?う、うん」

「その原因はこれ、核のエリゴールの魔力がある限り、魔風壁は周りの空気を吸収して回復する。そのせいで周りの空気が極端に薄くなっているの。このままじゃ外側はともかく、内側の空気がなくなる」

 

 

 これが、私が慌ててリュウを止めた理由だ。気付くのが遅れたら酸欠で危なかった……

 

 

「核のエリゴールの魔力を食べることは?」

「無理だよ、そのためには周りの風をどうにかしなくちゃいけない。今は核に届かなくて上辺だけ食べてる状況」

 

 

 周りの風をどうにかするにはエリゴールの魔力をどうにかしなくちゃいけなくて、エリゴールの魔力をどうにかするには周りの風をどうにかするしかない。

 

 

「リュウの食べるじゃ魔風壁をどうにかするのは無理だ」

「ならシエル、【疾風のごとく】で魔風壁の制御を奪えるか?」

「それができたらリュウが食べる前にやる!私が槍を手にして使える魔法はその属性を主にした魔導士には到底かなわない!」

 

 

 今、魔風壁を目の前にした状況で【疾風のごとく】で風を集めようとしても集まらず魔風壁の方へ風は流れてしまう。私に言えることは一つだけだ。

 

 

「“この魔風壁は解呪するしかない”」

「んなこと言ったってその解呪魔導士(ディスペラー)がこんな状況じゃ解呪なんて出来ねぇだろうが!」

「くっそ!こんなもん突き破ってやらぁ!!!」

 

 

 ナツが魔風壁にぶつかり弾き飛ばされる、諦めず立ち上がり再びぶつかろうとするが当たる前にルーシィに止められた。

 

 

「やめなさいって!!」

「……っそうだ星霊!!」

「え?」

 

 

 ルーシィを見て何かを思いついたらしいナツがガバッと振り返りルーシィの肩をがっしりと掴む。

 

 

「エバルーの屋敷では星霊界を通って場所移動できただろ!」

「いや……普通は人間が入ると死んじゃうんだけどね……息ができなくて。というか(ゲート)は星霊魔導士がいる場所でしか開けないのよ、つまり星霊界を通ってここを出たいと思ったら最低でも駅の外に星霊魔導士が一人いなきゃ不可能なのよ!」

「ややこしいな!いいから早くやれよ!!」

「だからできないって言ってるでしょ!!もう一つ言えば人間が星霊界に入ること自体が重大な契約違反!!あの時はエバルーの鍵だからよかったけどね」

「エバルー……鍵?」

「どうしたのハッピー?」

「あーーーーーーーー!!!!」

 

 

 ナツたちの会話に何かが引っかかったのかハッピーが突然叫ぶ。

 

 

「ルーシィ!思い出したよ!!」

「な、何が……?」

「来るときに言ってたことだよ!!」

 

 

 ハッピーはゴソゴソと金色の鍵を取り出す。

 

 

「これ!」

「それは……バルゴの鍵!?ダメじゃない勝手に持って来ちゃ!」

「違うよバルゴ本人がルーシィへって。エバルーが逮捕されたから契約が解除になったんだって、それで今度はルーシィと契約したいってオイラん家訪ねてきたんだ」

「あれが……来たのね」

 

 

 ルーシィはエバルーの家で見たバルゴの姿を思い出し体を摩る。アレが家に現れるとは中々に恐ろしいが、そんなことを思っている場合じゃないとその思考を隅に追いやる。

 

 

「嬉しい申し出だけど今はそれどころじゃないでしょ!?脱出方法を考えないと!」

「でも「うるさい!猫はにゃーにゃー言ってなさい!!」

 

 

 ルーシイはハッピーの両頬をつねる。

 

 

「……バルゴは地面を潜れるし、魔風壁の下を通って出られるかなって思ったんだ」

 

 

 ハッピーはポツリと呟き、私たちは全員ハッとなってハッピーを見た。

 

 

「そっか!やるじゃないハッピー!!もう!なんでそれを早く言わないのよぉ!」

「ルーシィがつねったから」

 

 

 ハッピーは抓られたことをちょっと根に持って呟くが、ルーシィは気にせずにハッピーから鍵を受け取った。そして鍵を掲げる。

 

 

「我……星霊界との道を繋ぐ者。汝……その呼びかけに答え(ゲート)をくぐれ、開け!!処女宮の扉!!バルゴ!!!」

「お呼びでしょうか?ご主人様」

「え!?」

 

 

 ルーシィの呼びかけに答えて、メイド服を着た華奢な女性が現れる。その“姿”にルーシィは目を見開いた。

 

 

「痩せたな」

「あの時はご迷惑をおかけしました」

「痩せたっていうか別人!!」

 

 

 ルーシィがエバルーの館で見た“バルゴ”はごつくゴリラのようなメイドだった。しかし今、目の前にいる“バルゴ”はどっからどう見ても線が細く、か弱いメイドだ。

 

 

「あ、あんた……その姿……」

「私はご主人様の忠実なる星霊、ご主人様の望む姿にて仕事をさせていただきます」

 

 

 バルゴは姿が変わった理由を簡潔に説明する。つまり──

 

 

「……その姿はルーシィの好みってこと?」

「ルーシィは華奢な女の人が好きなの?」

「なんかそれものすごく誤解を招く言い方だから止めて!!」

 

 

 バルゴの説明から思ったことを二人で言ったがルーシィにすごい剣幕で否定された。そこまで否定されるとなんか気にかかるんだけど……

 

 

「前のほうが迫力あって強そうだったぞ」

「では……」

「余計なことは言わないの!!」

 

 

 ナツの言葉にバルゴは最初に出会った姿へと変化させようとするがルーシィは止める。やっぱり、アレがルーシィの好みの姿なんじゃ……何ですごい剣幕で否定されなきゃならないんだ?

 

 

「時間がないの!契約後回しでいい!?」

「かしこまりましたご主人様」

「てかご主人様は止めてよ!」

 

 

 “ご主人様”呼びは止めてほしいとルーシィが言い、その言葉にバルゴはチラリとルーシィが持っていた鞭に目を向ける。

 

 

「では女王様と」

「却下!!」

「では姫と」

「そんなところかしらね」

 

 

 “女王様”は却下したルーシィだが“姫”呼びは許した。それでいいのかなルーシィ……どっちも似たようなものだと思うんだけど。というかなんでバルゴは鞭を見て“女王様”なんて呼び方にしようと思ったんだ。

 

 

「そんなとこなんだ!!?」

「お姉ちゃん、“じょおーさま”と“ひめ”ってどう違うの?」

 

 

 リュウが“女王様”と“姫”の違いを聞いてくる。

 

 

「んー?あれでしょ、“年寄り”“若いか”だよ!!」

「じゃあ“ひめ”も、年取ったら“じょおーさま”なの?」

「そ!どんなに若いころに姫と言われようが……年取ったら誰だって女王様だ!!」

 

 

 ババーンとリュウに自信をもって答えた。

 

 

「“女王様”年寄り……“姫”……うん!リュウ、覚えた!!」

「(違う……そんな意味の“女王様”じゃない!)」

 

 

 バルゴが言った“女王様”は年齢で決められるものじゃない。

 とんちんかんなことを言う姉妹たちにグレイは内心ツッコミをいれる。口に出したい衝動にも駆られるが何とか押しとどめた。純粋無垢なリュウとなんだかんだ純粋なシエルのため、頑張って押しとどめた。

 

 

「では行きます!!」

 

 

 バルゴは泳ぐように地面に穴を掘り、魔風壁の外への道を作った。

 

 

「おお潜った!」

「いいぞルーシィ!!」

「痛!」

 

 

 エルザが胸にルーシィを押し付けるが鎧に頭を叩きつけられる形となってルーシィは痛がった。エルザはそんなことは気付かなかったが。

 

 

「おし!あの穴を通っていくぞ!」

「よっと」

 

 

 穴を通って魔風壁の外に出ようとするがその前にナツはカゲを抱える。

 

 

「何やってんだナツ!」

「オレと戦った後に死なれちゃ後味悪ぃんだよ」

 

 

 このまま中に置いて行っても下手をしたら仲間に殺されるかもしれない。ナツの言葉にそれもそうだと私たちは糸目の男を連れだした。

 

 

 


 

 

 

 外は凄まじい強風だった。どうやら魔風壁は今もなお外の空気を取り込んでいるようだ。外がこんな状況になっているならやっぱりリュウの食べるを止めさせて良かった。あのまま食べ続けてもリュウは食べきることができなかったね。

 

 

「りゅ~~!!!」

「リュウ!」

 

 

 槍を地面に突き立て、風で吹き飛ばされそうになるリュウをしっかりと抱きとめる。内より外のほうが酷いとは……【疾風のごとく】もこの場ではただの槍同然だ。せめてもの抵抗で風を纏おうとするがそよ風程度の力しか引き出せない。

 

 

「姫!下着が見えそうです」

「自分の隠せば?」

 

 

 従者らしくバルゴはルーシィのスカートを抑える。しかし自分のスカートは全く無視した行動だったためバルゴのスカートは大きく翻る。パンツが見えてしまったグレイは赤面したがそれは気にしないでおこう。

 

 

「無理だ……今からじゃ追い付けるはずがねぇ……オレたちの勝ちだな」

「気絶から復活したかと思ったらすぐさま減らず口とは中々にいい根性してるね」

 

 

 地面に置いてけぼりにされたカゲをぎろりと睨み付ける。

 

 

「事実を言って……なにが、悪い」

 

 

 殺されかけてもなぜそんなことが言えるのか私には分からないし分かりたくもない。踏みつけてやろうかとも思ったけど怪我人にそれをするとなんか負けた気もするのでそれは止めとく。だから、一言だけ言い切ってやろう。

 

 

 


 

 

 

「リュウ!魔力ちょうだい!!」

「りゅ?いいよ!」

 

 

 魔力を欲しがるハッピーにリュウは快く魔力を差し出す。

 

 

「おし!外出たらすぐに追うぞハッピー!シエル、こいつは任せた」

「えー……いいよ、気に食わないけど」

 

 

 断ろうかとも思ったがナツがまっすぐこちらを見てくるので仕方がないとばかりに引き受ける。まあ、さっきナツが言ったけど、手当てしたのに死なれたら確かに後味が悪い。気乗りはしないけどしょうがないか。

 

 

「うっしゃ外だー!!行くぞハッピー!」

「あい!」

「行ってらっしゃーい」

「らっしゃーい!」

 

 

 


 

 

 

「一言だけ言ってやる。妖精の尻尾(フェアリーテイル)をなめるなよ」

 




メリークリスマス。
あけましておめでとうございました。(遅い)

気が付いたらクリスマスと正月が終わっていた。
時間たつのって早いんだね……

年明けまでには鉄の森編は終わると思っていたのにオカシイナ。
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