ドジっ娘は風紀委員長様のおきにいり!?   作:ひばりの

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これまでのドジっ娘〜

P1〜P11……初日
P12〜P16……2日目
P17……3日目

この事実に書いた自分でも驚き。
初日に10話以上使うって何事w

展開が遅くなるのはどうやら癖なのですが、もうちょいペース上げたいですね。

原作のバトル編まで程遠い気がしますw



やっぱりドジは最低だ。

 

 ――あの後、屋上でのゴタゴタでぶちまけてしまったぼたもちは、申し訳ないながらもお母さんに事情を話して作り直してもらい、そうして私は今応接室の前で一人立ち尽くしている。

 

 あ…… これ今更だけど、どうやって入ったらいいんだろう……。

 

 ノックをして入った瞬間に、私を捉えた雲雀さんがトンファーを投げつけてこないかとか、昨日折ってしまったトンファーの弁償代を請求されたりしたらどうしようとか……。

 

 

 とにかくどうしようどうしようって、威厳のある扉の前で右往左往する。

 

 それに…… これも今更なんだけど、雲雀さんってぼたもち好きかな?

 

 あの雲雀さんのことなんて何ひとつ知り得ない私は、咄嗟に不安になった。

 

 ぼたもちって、結構好き嫌いが分かれる食べ物だけど、もし雲雀さんが苦手だったら、彼の機嫌を損ねて、私今度こそ咬み殺されるーーー!?

 

 そんなことを考えていたら、もうこの扉なんかノックする勇気がなくて、その場で銅像のように固まってしまっていた。

 

「おい」

「ひぎゃアアアア※○□★▽!!? ちちち違うんです違うんです!! こここれは偶然通りかかかってすすすぐに立ち去りますからどうかお慈悲をぉぉおおオオオオオオオ!!」

「……落ち着け、花内。オレはまだ何も言ってないだろう」

「へっ……?」

 

 その場で縮こまっていた身体を反射的に起こすと、後ろから私を見下ろしていた風紀委員会副委員長の草壁哲也さんだった。

 

 よ、よかった…… 雲雀さんじゃなくて……。

 

 だけど、あんなダメダメなところ、草壁さんに見られただなんて…… 恥ずかしくて今ここに穴があいたのならすかさず落ちたい。

 

 草壁さんとは、入学式の時以来の顔見知り。

 

 最初は、その…… 気合いが入ったあのリーゼントからして、雲雀さんみたいな野蛮で恐い人なのかと思ったけど、案外親切に接してくれて、最初は隣を歩いてビクビクしていた私も、話すうちに気が緩んで、入学式の会場に送ってもらうまで飼犬の話で意気投合していた。意外にも親切な人だった。

 

 今日も口には草を咥えて、そんな彼は私がここにいることが不思議な様子で窺ってくる。

 

 また、私が両手に持つどっしり感が否めない重箱の包みを見て、結構あからさまなリアクションをしていた。

 

「なるほど…… 委員長にお礼を、か。しかし残念だが、委員長は今日は学校に来られないようだ」

「ええっ!? あの雲雀さんが欠席!?」

 

 あの(・・)雲雀さんが、学校に来ていないって…… どういう事態!?

 

 たしか春奈ちゃんデータによると、雲雀さんはなかなかの愛校家らしい。ちなみに愛校家とは、所謂学校大好きな変わり者のことだよ。

 

 恐ろしい変わり者である雲雀さんは、自分が支配下に置くこの並中のことがとにかく大好きらしく、だから風紀を乱す輩はああやって咬み殺すとか言ってるらしい。

 

 ハハッ…… そりゃ、あれだけ風紀風紀ってうるさくなるよ……。

 

 そんな学校が恋人な彼が、彼女(?)を置いて、行方がわからない?

 

 これは―― 何かただ事じゃない臭いがプンプンしてくる。

 

 

 ――――浮気か!?

 

 

 もしや、学校より素敵な相手を見つけて、こうして恋人を置きざりにその相手とデートに行ってるのかも……!?

 

 うん。そうだ。きっとそうなんだよ!

 

 いやぁ、あの雲雀さんも隅に置けないなぁ〜〜。

 

「ああ、悪いが…… 委員長は体調が優れないようで、学校は留守だ」

「えぇーーー!? デートじゃないのーーー!??」

 

 つい大声で叫び返してしまったじゃないか。

 

「……デート? 委員長がか? 何のことだ?」

 

 穏やかな校内の廊下で突如声を荒げた私へ、草壁さんが驚きと侮蔑を込めた眼差しを投げる。あっ、これかなりドン引きされてる顔だ。そんな表情で、私が先程突っ走ってしまった言葉を復唱する。いや、ホント申し訳ないです。

 

 ……まあ、群れたがらないあの雲雀さんがそんなわけないかぁ〜。

 

 それより、草壁さんから彼が体調不良と聞いたけど、昨日はピンピンしていたはずなのに一体どうしたんだろう。

 

 ふと、入学式の時、熱を出して苦しんでいた姿を思い出す。

 

 誰もが恐れる風紀の鬼と言っても、ちゃんと人なんだよね……。

 

 少し、彼のことが心配になった。

 

「そんなわけで、すまないな。ぼたもちなら、オレが代わりに委員長に渡しておこう」

「あっ、はい。ありがとうございます」

 

 私が持ってても、いつまたドジで台無しになっちゃうか分からないし、草壁さんのお言葉に甘えて素直にぼたもちの包みを渡した。

 

「詫びと礼で言ってはなんだが、茶でも一杯飲んで行かないか?」

「えぇ!?」

 

 まさかの草壁さんからのお誘い。

 

 で、でも…… 私もさすがに最恐様のアジトでお茶なんか飲めないよ……。

 

「大丈夫だ。風紀委員会の活動拠点だから、俺たちは入室を許されている。茶を飲むぐらいなら、お前も入ることを許されるだろう」

 

 不安な心情を悟ってくれたのか、丁寧な言葉で草壁さんが安心させてくれる。

 

 そうして、誰もいないにも関わらず、草壁さんはきちんと扉を3回ノックしてドアノブを回すと中に入っていく。

 

 その間際、私へとちょいっちょいと手招きをして。

 

「…………」

 

 悩んだけど、お茶ぐらいならと、もう半分はこの胸をくすぐる好奇心から、厳格なる扉の中へ入っていく。

 

 一応入る前に言っておこう…… お邪魔します、雲雀さん。

 

 

 ********

 

 

 応接室の中は、さっきまで人がいなかったから、どこか殺風景に見える。

 

 案内されたソファーに座ると、草壁さんは慣れた動作でお茶を淹れてくれた。まるで普段から淹れているようだ。これがまた美味しい緑茶で、私が持ってきたぼたもちとの相性もバッチリ。

 

 きっとこれなら雲雀さんも食べてくれて…… うん? お礼なのに食べちゃってよかったのかって? 雲雀さん一人じゃ食べきれない量なんだから、少しくらい大丈夫大丈夫〜〜♪

 

 母特製のぼたもちに舌鼓する私と反対側のソファーに腰を下ろした草壁さんは、せっかく出したお茶にもぼたもちにも目をくれず、おもむろに口を開いた。

 

「すまないな。時間を取らせてしまって」

「ふぉ!? い、いえいえ! 全然平気ですよ! 私の方こそ、こんなに美味しい緑茶までご馳走になって……」

 

 一人だけぼたもちに夢中になっていたのが、急に恥ずかしくなって、縮こまりながらおずおずと手を止める。

 

「花内、ひとつ聞きたいんだが」

 

 神妙な顔で、草壁さんは話を切り出す。

 

 その様子を見て、気が緩んでいたことを自覚すると、これから草壁さんが話すことに肩の力を入れて身構える。

 

「……近頃、委員長と何かあったりはしなかったか?」

「エッ……」

 

 思わず口から出たのは、図星だと言わんばかりの渇いた声だった。

 

 く、草壁さんが、どうしてそんなことを……。

 

 むしろ、最近雲雀さんと何かありまくりなんですけどーーーー!!

 

「ど、どどどどうしてそそそんなことをわわ私に尋ねるんですか……?」

 

 誤って地雷を踏んで、草壁さんに咬み殺されないかビクビクしてしまう。

 

「それは……」

 

 ふと、草壁さんは視線を逸らした。

 

 彼が視線を逸らした先にあったのは、壁際にひっそりと置かれた大きなダンボール箱。

 

 そこからはみ出るほど詰め込まれた箱の中身を見て、私はハッとした。

 

 

 あの花飾りは…… 入学式の日に校門前に掲げられていた、あのプレートの……。

 

 

 

 ――入学式のあの日、野良猫に追い回された後でクタクタだった私は、足が覚束ずにあのプレートに突っ込んでしまい、無茶苦茶にしてしまった。

 

 その時に残った残骸が、壁際のダンボールに押し詰められている。

 

 雲雀さんが、あの時言っていたことは本当だったんだ……。

 

 

「委員長は、ふとした時にあの残骸を眺めて何やら思い悩んでいられるようだ。オレたちでは生憎検討がつかないがな……」

 

 物寂しそうに、草壁さんはそう語る。

 

「あの日、あの残骸の処分を取り止めた時から、委員長は虚ろだった」

 

 雲雀さんが、悩んでる――?

 

 あの鬼の面で、迷いがなくて、横暴で、バッサリした性格の人が、何かを抱え込んでいる姿なんて、想像もつかなかった。

 

 それに――…… 彼が悩むことなんて、私にわかることじゃ……。

 

「――いつもの委員長の面影はどこにもなく、このままではいずれ風紀委員会の統治に大きな影響を与えかねない。しかし、委員長のいない今のオレたちではッ……」

 

 草壁さんを見ると、膝の上に置いた拳を握り締めて、喉の奥から出てくる苦味を噛み締めている。

 

「花内。お前が知っていることなら、どんな些細なことであっても話してくれ」

 

 真摯な目で、草壁さんが見つめ返してくる。

 

 こんなにも雲雀さんや風紀委員会のことを大事に思っていて、草壁さんのそんな姿に胸が締め付けられる。

 

 ――何か、力になってあげたい。

 

 自然とそう思えた。

 

 

 ――もしかしたら、雲雀さんも……。

 

 

 

「花内、どうかこの通りだ」

 

 

 

 雲雀さんも、こんな表情を隠して、本当は何かに苦しんでいるのかな――――?

 

 

 

 

「……――私、は……」

 

 静寂の空間の中に、ポツリと私の声がする。

 

 それに反応しておもむろに顔を上げた草壁さんに、私は事の全てを打ち明けた。

 

 複雑な感情が巡る中で、私はそれを選んだ。

 

 ストーカーの件も、軽蔑されるのを覚悟で話した。

 

 本当は最後まで、気持ちが揺れていた。

 

 ――こんなにも委員長想いの真っ直ぐな心を誤魔化すなんて、私には出来ないよ。

 

 

 

 

 

 

 全てをありのまま話し終えたら、怖いくらい真剣な面持ちの草壁さんは、なぜかタコのような顔をしていた。

 

 ……ものまね? このタイミングで?

 

「あ…… あの委員長のトンファーの牙から…… の、逃れられたなど……」

「あ、あのー…… 草壁さん……?」

 

 何やらショックを受けていらっしゃる様子。それより顔がタコでも怖いです。

 

 私って、どんだけイレギュラーな存在に見られてるんだろ……。別に嬉しくない……。

 

「い、いや…… すまない。それより、話してくれてありがとう。おかげで少しだが、委員長の思うところが見えてきた気がする」

 

 私の話したことなんて本当に大したことじゃないけれど、それでも草壁さんの力になれたならよかったのかもしれない。内容が内容なだけに、私も肩の荷が少し下りた感じがした。いや、本当に不本意なんだからね!

 

 それに…… あんな気難しい人の気持ちがわかるって、やっぱり草壁さんは副委員長だけあるよね。すごいなぁ。

 

「いえいえ、草壁さんのお力になれたなら嬉しいです」

 

 そう言葉を返したところで、ふと頭に浮かんだ疑問が口から零れた。

 

「あの、ひとつ聞きたいことがあるんですが、いいですか?」

「どうした?」

 

 神妙な様子で尋ねる私を見て、草壁さんは改まって質問に答えてくれる姿勢を見せてくれた。

 

「雲雀さん…… どうしてあれを捨てずに、ずっとここに置いていたんでしょうか?」

 

 草壁さんが語ってくれた内容が、ずっと引っかかっていた。

 

 もう使えないガラクタを、どうして捨てることなくアジトでよく見える位置に置いたままにしているのかなって……。

 

 まあ、ガラクタにしちゃったのは私なんだけど……。あの時は不可抗力だったんだよ……。

 

 

 ――まるで、それが彼を縛りつけるかのようで。

 

 何かの『戒め』みたいに――……。

 

 

 

「……オレも、あくまで想像でしかないが、アレには委員長の『想い』が詰まっているだろう」

 

 そう告げた草壁さんの瞳に、どこか哀愁が漂っていた。

 

「雲雀さんの…… 想いですか?」

 

 私の声に、コクリと頷いてくれる。

 

「実は、あのプレートを提案したのは、他でもない委員長なんだ」

 

 口頭から驚く内容に、私も目を丸くして話に聞き入った。

 

「今年は例年とは違い、新しく入学祝いのプレートを立てることになり、委員長は自らもプレート製作に携わった。委員長が設計し、必要な材料を揃え、オレたちに指示を出し……。普段は、風紀を乱す輩を容赦なく咬み殺すので誤解も多い方だが、誰よりもこの並中を敬愛し、この学校のために日々尽くされている。オレたちも、そんな委員長に従い、委員長が愛するこの学校の秩序のため、全力でサポートさせていただいている。

 今回のプレート作製にも、誰よりも励んでいらっしゃっただろう。お前には悪く聞こえてしまうかもしれないが、あの日のために作られた品を台無しにされたことは、オレたちも、そして委員長も、やるせないんだッ……」

 

 言葉を詰まらせて、草壁さんはそう言い切った。

 

 聞かされた内容の衝撃に、言葉も失って愕然としてしまう。

 

 そんな、私…… 知らず識らずのうちに草壁さんや風紀委員会の人たちの思いを踏み(にじ)って、なんて酷いことをしてしまったんだろう……。

 

「――ほ、本当にごめんなさいッ!!」

 

 すかさずソファーから立ち上がって、草壁さんへ深く腰を折る。

 

 こんな言葉じゃ、きっと足りない。

 

 こんな単純な言葉で、彼らの頑張りが、報われるはずがない。

 

 どうしていつもこうなんだろう。

 

 悔しさが、胸の奥から溢れてくる。

 

 でも、今はいじけている時じゃない。

 

 

 ――せめて、私にも何か償いができたら――……。

 

 

 

「……もう過ぎたことだ。花内にも否がないことはわかっている。それにそのことはもう……」

 

 あっさりと引こうとする草壁さんを見て、咄嗟に叫んだ。

 

「そんなのダメですよ!」

 

 思わず机を叩いて、身を乗り出す。

 

 

 だって、そんな簡単に諦めないでほしい。

 

 諦めてしまったら、そこで終わってしまうから。

 

 

 一度失ったら、簡単には取り戻せないんだよ――……。

 

 だから、壊れても、全て失ってしまう前に補ってあげればいい。

 

 

 

 償いも後悔も、また繰り返してしまわないように――――

 

 

 

 

「――なら」

 

 横目でダンボールの箱を睨む。

 

 私の勢いに気圧されたのか、ソファーの上で身体を仰け反らせる草壁さんに、おこがましくもこう進言した。

 

「私が、このプレートを直してみせます!!」

「は、花内……!?」

 

 ドーンッと言い放った私に、草壁さんはポロッと咥えていた草を落とした。

 

「草壁さんたちには絶対に迷惑かけません! 設計図とかまだあったら、自分で材料調達して補いますから!」

 

 草壁さんにこんな顔をさせてしまうのだから、わがままも承知でお願いする。

 

 作ったところで、もう遅いかもしれない。

 

 けど、何もしないよりは…… やるだけやって咬み殺されるなら、それも本望…… でも、やっぱり痛いのは勘弁だよー……。

 

 

 誰かを傷つけたままなんて、私にはもう耐えられない。

 

 だから、こんな私にも出来ることがあるなら、全力で頑張ってみよう。

 

 

 ――これが、せめてもの償い。

 

 

「いいや、悪いがそれは出来ない」

「ガーン!」

 

 こ、断られてしまった。しかも鼻で笑われ……。

 

「花内だけじゃ、ドジを踏むばかりで先が不安だろう。ぜひ、オレたちにも手伝わせてくれ」

「草壁さん……」

 

 協力してくれるんだ。

 

 元はと言えば、私のドジのせいなのに、そうやって笑って許してくれるのかな……?

 

 草壁さんって、本当にいい人だね。

 

 だけど、最後の言葉はちょっとだけ傷ついたな。

 

 でも――草壁さんがいてくれるだけで、すごく心強くなれるから、何も聞こえなかったことにしよう。

 

 うん。結果オーライオーライ……。

 

「よしっ! 野郎共ッ! 直ちに集合だあッ!!」

「えっ?」

 

「「「押忍ッ!!」」」

 

「キャアアアアアアア!?」

 

 いつの間にか、周りを風紀委員に囲まれていた。

 

 すると、私の脳裏には入学式のあの日の苦い思い出が蘇って…… ああ、やっぱりこの集団こえぇぇええええっ!!

 

 

 私が唖然としている間に、あちらの方たちは何やら盛り上がっている様子で、私を置いてさっさと修復作業に移っていた。切り替え早いな!

 

 私も遅れを取りながらも、風紀委員の人たちに負けじと作業に入る。って、張り合ってどうするっ。

 

 自分の作業に目を通しながら、不意に作業の様子を見渡して、また小さな溜息が零れる。

 

 

 

 ――やっぱりドジって最低だな。

 

 




ここでご報告です。

リアルの方で立て込んでおりまして、次の更新には少しお時間いただくことになります。
2〜3日を目安にしております。

ではでは、いつも読んでくださってありがとうございます。ひばりのでした。
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