新年明けましておめでとうございます。
いつも読んでいただき光栄です。ひばりのです。
昨年、二章スタートの前に年内に完結させたいとちゃっかり宣言して早年明け…… 無理でしたw すみませんw
まさか2016年早々謝罪から始まるとは…… しょ、精進して参りますので、今年もどうかよろしくお願いします。
家に帰るとガキたちの遊びに巻き込まれてクタクタだ。早く自分の部屋でのんびりしたいと階段を上がってく。
踏み慣れた階段を淡々と登って、なんとなく零れる溜息を吐き出して、部屋のドアを開けた。
いつものように学校帰りの充電切れた身体が気怠げに回したドアノブの向こうには、並々ならない数のディスプレイ画面の光景が、オレを迎えていた。
「オレの部屋で何してくれてんだよーーーー!?」
オレのベッドの上で、それらの画面を真剣に見ていたスーツの赤ん坊に、第一声でそう叫ぶ。
するとコイツは、画面から視線を外して、こっちにつぶらな瞳を向けてくる。
「やっと帰ったか。ツナ」
「それどころじゃないだろーーー!! なんなんだよコレーーー!?」
呑気に返事を返すリボーンに、オレは今日の疲れも吹っ飛ぶほど叫び倒した。
毎度のことながら、コイツのすること為すことにいつか我を忘れている。家に帰った時くらい、オレにも憩いのひとときをくれよぉ〜……。
そんなことを言ってみても、どうせないものねだりだ。こんな時に家庭教師とか方便使って黙らせてくるんだ。もう嫌だ。こんな身勝手な家庭教師。
悔しさに歯をギシギシと喰いしばるけど、この時はオレもまだまだ平和ボケしていたんだ。
今までの奴の厄介事とは比べものにならないショッキングなことが、この後に待っているとも知らず……。
「いいところに来たぞ。並盛の至るところにある公共の監視カメラをハッキングして標的を観察してたところだ」
「んなあーーー!? それ犯罪だろーーー!?」
そのニヒル口が、あっけらかんと告げた衝撃に、オレは猛烈に頭を抱える。
ハッキングって、どこぞのハリウッド映画だよ!! 一体どこの次元の話してんだよ!! これだからマフィアはッ……!
つーか、そんなこと、この町の秩序を豪語する人にバレたら絶対にタダじゃ済まねーだろ!?
こんがらがる意識をすぐリボーンの方に戻して、オレは文句を唱える。
百歩譲ってそれはいいとして、オレの部屋でそんな好き勝手すんなよ! ここオレの部屋だぞ!? オレだって一人でゆっくりしたいんだぞ!?
もうマフィアに巻き込まれるのだけは御免だ〜〜〜!
マフィア関係のゴタゴタになんて、絶対に関わるか!って姿勢で構えていたのに、オレの俄然関わらない姿勢を見ると、リボーンは変化球からいきなり直球勝負に出てきた。
「お前が遠ざけるマフィアのゴタゴタが、花内まりやに関わることでもか?」
その名前を出されて、オレもさすがに無視することが出来なくなった。
「は、花内さん!?」
過剰に反応したオレを見て、確信を得た奴は漂う黒いオーラを一層深め、話を攻めてくる。
「面白そうな人材だったからな。一度どの程度のものか、ぶっつけでそいつを試してやろうと思ってな。
ちなみに今回接触を図って、マフィアとの裏取引に向かわせたんだ」
リボーンがそう言って目を向けた先には、高いビルが立ち並んだ街中を歩く花内さんらしき女子の姿が、パソコンのデカい画面上のあちこちに映っていた。
マジかよーーーーー!?
嘘だと思いたいくらいの状況の中で、この散らかる頭を整理するためにも、とりあえずこの事態の元凶の奴へと矛先を向ける。
「どういうことだよ! リボーン! どうして花内さんがこんな危ない目に遭うんだよ!?」
マフィアでもない、普通の女の子の花内さんを、どうして強引にもお前の世界に巻き込むのか。
オレの中で、煮え切らない怒りが次第に湧いてくる。オレだって迷惑してるんだ。なのに、関係ない娘まで巻き込むなんて、余計にタチが悪いだろ。
とにかくリボーンの腹の中を少しでも探りたくて、オレも奴に直球でそう返した。
「――花内まりや。あの女の素材は、磨けば裏社会の闇黒に光る、唯一の原石に成り得るかもしれねえからだ」
リボーンは、得意の変化球で投げてくる。この曖昧な言い回しが、後々面倒を起こすから、オレは地雷だと思っている。ここは慎重に持っていかないと、またリボーンの掌に乗せられるぞ。
「なっ…… 花内さんは、普通の女の子だぞ。京子ちゃんやハルと変わらない……」
少し、個性的だとは思うけど…… それだけの、普通の女の子だ。
リボーンからすれば、京子ちゃんやハルもファミリーの一員だとか、そう思ってるんだろうけど、花内さんに限ってはたぶんそういうことじゃないんだ。
あの2人と花内さんでは、明らかに違う。
どうして、花内さんだけが、こんなに苦しめられるんだ?
「これだから、おめーはダメツナなんだ」
「んなっ!? 今それ関係ないだろ!?」
話を逸らされるかと思ってヒヤヒヤした。
そして、リボーンの纏う空気が、一瞬で変わる。
オレでもわかるその変化に、背中を思いっきり刺されたようにゾクッとした。
「オレは、京子とハルのような"守られる側"で、花内まりやを見てねえからな」
ボルサリーノの下から覗く鋭い眼光が、その言葉の重みを助長させていた。
そんな…… 余計にタチ悪いだろーーーー!!!
オレの胸の内を知ってか知らずか、気取った赤ん坊は神妙な表情を崩さず、話をこう続けた。
「おめーも知ってるだろ。あのヒバリでさえ唸らせる才能だ。これを使わない手はねぇ」
「それ才能でもなんでもねーよ!! ただの悪運だろーーー!!」
花内さんには悪いけど、そう思うしかなかった。
きっと、オレがそう思いたかったんだ。
君を、巻き込まずに済んだかもしれないから――……。
「本当にそう思ってんのか。ツナ。あん時も直感に来るもんがあったんじゃねえのか?」
不意にリボーンから真剣な眼差しを受けて、言葉に詰まる。
心当たりがないにも関わらず、浮かんでくるのは保健室での光景だった。
あの時、リボーンから聞かれた言葉に、なかなか答えられなかった自分を思い出す。
出会って間もないのに。
あの娘の何を知っているわけでもないのに。
どうして…… オレはあの娘を守りたいんだろう?
こんなにも、オレはお人好しな奴だったかな?
これと言って、理由は見つからないけど――……。
……やっぱり、放っておけないよ。
今は、ああやって誤魔化すしか、他に君を守れる術を見つけられなくて――……。
ぼんやりと考え込んでいた思考に、僅かな意識の隙間を掻い潜って、呆れにもとれる奴の声が、皮肉にもオレを現実へと引き戻した。
「おめーも、いつまでもダメツナじゃねーんだ。これも将来はお前とボンゴレの繁栄のための土台なんだぞ」
単純な問題を何度もわからない教え子に教える家庭教師の顔で、こいつは言った。
嗚呼―― マフィアって、これだからなりたくないんだ。
どうしてマフィアなんてもんが、この世にあるんだよ。
お前らのために、どうして花内さんがこれ以上苦しめられるんだ。
――――いい加減にしろよ!!
「……誰が、誰が頼んだんだよ! こんな酷いこと! 10代目とかボンゴレとか、そんなのが言い訳になるかよ! マフィアって、人の命なんだと思ってるんだ!? こんなことして、もし花内さんの身に何かあったらどうするんだよ!?」
精一杯の怒りを言葉にして吼える。
何よりも、花内さんの身にもしものことがあれば、オレはリボーンごとボンゴレの存在を否定する。
人をまるで道具のように利用する大人なんか、信頼も尊敬も、ましてや跡継ぎなんて冗談じゃない。
今日こそ、それをはっきりしよう。
こいつは赤ん坊だけど、こいつもれっきとしたマフィアなんだ。自分たちの都合で誰かを傷つける奴らに、最初から信用なんて出来ない。
真っ向勝負に挑もうとするオレを、落ち着かせるようにリボーンはこう言った。
「オレもようやく見つけた掘り出し物を野放しにするほど、この賭けを無謀に考えてねーぞ。いざという時に、ボンゴレのSPをセッティングしておいたからな」
それは、こいつなりに花内さんのこといろいろ配慮してくれているのか。
だったら、最ッ初から首突っ込ませるなあーーー!!
ていうか、結局根本的なところから解決していないような気がする。そもそも花内さんを巻き込むなって話だったんだ。これじゃ何も進んでないじゃん!
けど、今のオレがどうこう出来ることなのか?
花内さんが、どこに向かって、何をしようとしているのか、オレは何ひとつ知らないじゃないか。
ただ、画面越しに、彼女が無事でいる姿をじっと見守っていることくらいだ……。
こいつに聞いたら、全部教えてくれるのかもしれない。
そんなの、自分からマフィアに首を突っ込んでいくのと同じで、またこいつの思う壺なんじゃないかと思うと素直に聞けやしない。
こいつが考えることの術中に嵌りたくなくて、時間もないのに優柔不断に悩み出す。
そんなバカなことをしていたら、案の定だ。
「お前が帰ってきた直後に奴らとの通信が途絶えたがな。敵に見つかってやられたみてーだ」
「ノォォォォォォォォォォ!!」
それってつまり、花内さんの周囲ガラ空きーーー!? まずいよーーー!! それって恰好の的じゃないかーーー!!
「敵は絞られる。今回の取引に介入してほしくねえ奴らなんて、精々向こうぐらいだからな。新しいボスが就任して以降、先代のボスを事故死に見せかけ暗殺し、数々の密売に手を染めているブラックな奴らだ。オレたち真っ白なマフィアはそういうマフィアを許さねえ。この取引もボンゴレのスパイ行為なんだ」
さらなる追い打ちをかけるように、リボーンが敵のそんな情報をオレに伝えてくる。マフィアが真っ白かどうとかなんて知らないけど、花内さんが巻き決まれた裏でそんなことが起きているなんて、余計に不安が駆り立てる。
「そこに、ちょうどいいカ…… 花内まりやという面白え人材がいたから、力量を試すためにもオレがセッティングしてやったんだぞ」
「今カモって言おうとしたよね!?」
「寸止めだぞ」
「イデデデデデッ!」
なんでオレが十字固めキメられなきゃいけないんだよ! どさくさに認めてるし! もう無茶苦茶だよーーー!!
つーか、やっぱりもともお前の仕業かぁぁあああああああ!!
リボーンに十字固めをキメられ床で力尽きるオレのそんな情けない格好を、自分からしておいて見てられなくなったのか、ボルサリーノの下からボスとしての威厳云々を、こんな時に垂れてくる。
「そんな器で、マフィアのボスにはなれねーぞ」
「なるかこの人でなしーーーー!!」
すっかりいつものようにペースを崩された後、リボーンがオレに背中を向けてモゾモゾと支度を始める。
オレは不思議に思って、小さな背中に警戒しながらそっと問いかける。
「何してんだよ……?」
「決まってるぞ。花内まりやの救出に行くぞ。発信機は仕込んでおいたからな」
リボーンがそう言い切ってくれたから、安心した。こいつなら、きっと花内さんを助け出してくれるんじゃないかって、普段から威張っているイメージのおかげでそう期待出来る。
ホッと肩の力を緩めたところに、鼓膜のすぐそこで響いた耳触りな機械音。
「何してんだ? お前も行くんだぞ」
横目で恐る恐る確認する。
案の定、オレの死を告げるそれが黒光りを放っていた。
部屋の南向きの窓から入るオレンジがかった光を反射して、一層鈍色の光を増しているように見えた。
「お前が助けるんだぞ」
オレがビビっている間に、スーツの赤ん坊は、オレの返事も待たずして狙いを定める。
「ちょっ! そ、それは撃たなくていいから!!」
見事に慌てふためくオレの姿を、こいつの眼がどう捉えていたのかなんて知る間もなく、こめかみに焦点が当たる。
オレの家庭教師は、そうしてニヒルに口元を緩めて、引き金を引いたんだ。
「イッツ・死ぬ気タイム♪」