原作の標的50からあとのお話です。(あれ、原作からあんまり進んでない。やばい)
vorbesc.沢田綱吉としてありますが、視点切り替え注意です。
それにしても、ツナ視点が多かった印象です。謎だ。
「はぁ〜、散々な休みだったなぁ〜」
家に帰って早々、部屋でゆっくりしようと思ったけどリボーンのスパルタが始まる予感がして、眼を光らせた奴にワタワタと適当な理由をつけて抜け出してきたとこだった。
せっかくのバカンスであっちこっち振り回されて死ぬ思いだったのに、家に帰ってもゆっくり出来ないのかよぉ……。
とりあえず近所をウロウロしてみるけど、いつもどうしてオレがこんな目に…… だからマフィアになんてなりたくないんだって……。
なぜか家にも居場所がなく、ほぼヤケクソになりながら道端の小石を蹴って歩く。
こうなるんなら、最初っから家でゲームしてる方が何倍もマシだったよ。
まさか、ペットボトルの懸賞で当たった旅行が全部仕組まれてて、マフィアの戦争に巻き込まれるなんて思っても見ないじゃん!
リボーンの奴め〜〜〜ッ!
逃げてきた相手のことをとやかく言ったってどうしようもないけど、せっかくの休みが台無しだ。どうしてくれるんだよ。いつも勝手なんだ。散々人のこと振り回しておいて、何度地獄を見たことか。
今回の旅行だってそうだ。マフィアランドとかいう得体の知れない孤島にいきなり連れて行かされたら、審査につまずいて今度は裏マフィアランドってところに強制送還されるし、リボーンみたいな赤ん坊にスパルタされるし…… オレの経験値がこの3日で10倍になったよ……。
つーか、リボーンみたいな赤ん坊が、他にもいたとか聞いてないよ! マフィアにはあんな規格外な奴がゴロゴロいるのか!? もうわけわかんないよー!!
マフィア界の最強の赤ん坊とかなんかの1人らしいリボーン…… そして、あいつと同じおしゃぶりを持つ7人の赤ん坊たちを『
なんだよ、虹って……。なんかカッコつけちゃって……。
そんなことはどうでもいいけど、一方的に振り回されるのはもう勘弁してほしい。
オレだって、あいつがいなければ好き好んでマフィアの人種なんかと関わらないし、こんな面倒事に巻き込まれやしないのに……!
あの時だって……。
――――ツナ。おめーも、今見たもんを忘れんなよ。
ふと電池が切れたようにその場に倒れた花内さんを見て、オレはどうしたらいいのか駆け寄ることも出来ずにいた。
すると、ケースの中を睨んでいたリボーンが、唐突に言った。
なんだよ、こんな時に、とオレはリボーンに愚痴を零した。こんな時に、よくそんな風に平然としていられるな。
だって、人が1人…… その先は、言葉が続かなかった。
――お前が、これから背負うもんは、こんなもんじゃねえんだぞ。
そんな奴の言葉が、不思議と耳に残った。
――どうして…… 私は、もう誰も傷つけたくないッ……。
あの時の光景が、今もこの目に焼きつく。すごく、後悔した表情だった。
――花内さん!
――泣いてた……?
……こんなダメな奴に、守れるわけないじゃんか。
だから、マフィアなんか、なりたくないんだよ。
どうせ、オレには……。
「ちゃおっス」
「って、出たあ〜〜〜〜〜〜!?」
なんかギンギンの黄金色なのが飛び出て来たんですけどーーー!?
「今度はカメハメハ大王パワーを頂戴するぞ」
「世界横断しちゃったよーー!?」
つーか、まだやってたんかいーーっ!!
少し眩しいけど、言い出していたらキリがない。とりあえず、早くコイツから逃げないと。せっかく家から出て来たのに、この厄介がそばにいたんじゃ意味ないじゃん!!
「ちとマズいことになったんだ」
ふざけた格好の割に、リボーンは冷静な口調で言った。一体何のことだ?とオレが呆れた顔で言うと、その手にあるものを見せられた。
「な、なんだよ? それ?」
「花内まりやが身につけていた髪飾りの破片の一部だ」
「んなーーーー!? 嘘だろォォ!?」
「嘘じゃねーぞ。オレがこっそり発信機を仕込んでおいたやつだからな」
「何してんだよお前ーーーーー!?」
こいつの話どころじゃないオレが思わず叫ぶと、そんなオレの反応も今はどうでもいいかのようにリボーンは淡々と続けた。
「お前が逃げちまったから仕方なく標的を監視していたんだが、途中信号が途絶えたんだ」
案の定、この赤ん坊に魂胆を見破られていたことに内心緊張が走る。
そのことは置いといて、話の内容が花内さんであることはわかっているから、オレは奴に問い返す。
「えっ…… それって……?」
「こいつを見る限り、第三者の可能性があるぞ」
真っ白な髪飾りのカケラを見つめて、頭を過った最悪の事態にゾワッと悪寒がした。
白い雪に血が滲んでいく残像が、ふとオレの中に湧き起こって、あの時のデジャウじゃないかと胸が騒いでいる。
「だから言ったじゃないか! 花内さんに何かあったらどうするんだ!! 全部お前のせいだぞ!?」
「……花内まりやの素質が本物なら、この機会を逃すわけにはいかねえんだ。ここで開花させておかねえと」
固く口を閉じた赤ん坊に、これ以上言っても仕方ないと思った。一体何のことだ……?
「アイツも今頃乗り込んでるはずだ」
「アイツ……?」
全く心当たりのない人物を思い浮かべて、そうしていると、オレの意識は一瞬にしてぶっ飛んだ。
一瞬その視界に見えたのは、アイツの銃口だけだった――……。
********
夕暮れの並盛。
一羽のカラスが、オレンジ色の空を渡る。
その空の下、並盛の川に架かる橋の上を、その人物が自動車を追い越す勢いで駆け抜ける。
一見して珍妙な光景だが、ここ並盛の一部では近頃珍しくないことになっている。
一人の赤ん坊が、この町にやって来てから、並盛の賑わいはまた異なる色を魅せていた。
彼方から響き渡る銃声は、町内で不定期に催される花火大会として、町の老若男女から密かな楽しみとされている。
ある時、とある校舎裏の告白シーンにおいて、この花火の音を聞いて告白すると恋が叶ったという並中生の話から、幸運を招く花火として一種の都市伝説並みの信憑性を得ている。
今日もまた、幸運を呼び寄せる花火の音色が奏でられる。
一房の花弁が散っていくと同時に、並盛のどこかではぎっくり腰の御年配が花火の音に飛び上がり、ぎっくり腰が治ったという新たな伝説が持ち上がったのだった。
その新たな伝説を生む根源と成り得た少年の方は、その勢いは獲物に噛みつく猛獣さながら凄まじいものであった。橋を渡り終えた後も、その勢いの衰えるところを知らない。
彼のけたたましい獣の姿は、その身に一度は死を与えられた真実を揺るがした。
花火の音が上がると同時に散っていく彼の心臓に、しかしひとつの後悔の芽が伸びていた。
――ごめん……。
最期の間際にも、こんな自分でも彼女を助けるために何か出来たんじゃないかと、煮え切らない思いを胸に散る。
どんなに死にきれない感情か。
そんな彼の後悔の芽は、覚悟と温もりを秘めた炎を灯す。
彼の命は、たったひとつの報われない思いに突き動かされる。その『死ぬ気』が、彼の鼓動に再び熱い脈を打ちつける。
その生い立ちは、悔やみきれず今世を彷徨う浮遊霊のようだが、彼は迷ってはいない。
――いつも死ぬ時になって後悔して、誰よりも臆病なオレだけど……。
――君をもう巻き込みたくないんだ! こんなオレでも、君を助けたいんだ――――!
額に浮かぶ炎の灯火に、一心不乱に少女の姿を思い浮かべた。
陽は沈む。静かに音も立てず、ただ刻々とタイムリミットを刻む。
本能のままに向かう先が目と鼻の先に見えた時、彼の意識に耳慣れた衝撃が走る。
その瞬間、宿した希望が絶望に変わる瞬間を、裸足で踏みしめる力を強めながら、それでも縋るように彼は走り続けた。