ドジっ娘は風紀委員長様のおきにいり!?   作:ひばりの

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過疎地域だと休日にイ◯ンに行くと知り合いにばったりはあるあるですね。
私は隠れてコソコソする捻くれタイプでしたw
なんであんなことしてたか謎です。



偶然

「へぇ! 京子さんってお兄さんがいるんですね!」

「うん。優しくて、いつも一生懸命で、自慢のお兄ちゃんだよ。まりやちゃんには、弟君がいるんだよね」

「はひ〜、お2人とも素敵な兄弟がいて羨ましいです〜。ハルは家に兄弟がいないのでロンリーですぅ……」

 

 お目当ての限定スイーツを食べに来て、そんな他愛ない会話をしていた。

 

 京子さんとハルさんと、初めてのおでかけにしどろもどろになる私を2人とも笑顔で受け入れてくれて、いつの間にか緊張もほぐれて会話が弾んでいた。

 

 以前に面識があった三浦ハルさんとも、今日会ってすっかり仲良くなれたので、最初の頃に抱いた偏った印象は払拭されていた。緑中に通っているハルさんはどうやら沢田さんを追いかけて度々並中に現われるらしいけど、あの人に見つかっていないのかととても不思議に思う。もしそうならすごい強運の持ち主だ。私も見習わなければ。

 

 沢田さんへの強い想いを包み隠さないハルさんは時々自分の世界に入り込んでわけのわからないことになるけど、そんな彼女を微笑ましく見守る京子さんと3人で囲むテーブルは居心地がよかった。

 

 そういえば、朝食を食べ損ねてこの甘ったるい生クリームとフルーツの塊は少しハードルが高い。

 

 ……と思ったけれど、一口食べてみればそんな思考を溶かすようにとろける舌触り、ほどよい甘みと酸味の絡むクリームとフルーツの合わせ技、完敗だった。たかが知れていると、量産型販売店のクオリティーをなめてかかっていた。恐るべし。

 

 そんなこんなで美味しいケーキを頬張り他愛のない談笑していると、話はいつかの頃に戻っていた。

 

 あの時のことを振り返り、ハルさんが急にこちらへと頭を下げた。

 

「ハルは勘違いをしておりました。まりやちゃんには、もうハートを射止めた素敵な殿方がいらしてたんですね。ハルはドキドキが止まりませんでした」

 

 遡ったのは、彼女たちと出会った日の保健室での一騒動にまで至るところだった。思い出話に花を咲かせていた時、ふと何を思ったのか顔を赤くしてあわあわと震え出したハルさんに声をかけると、いきなり爆弾発言が飛び出した。

 

「ぐふっ…… ハルさん、いきなりなんなんですか……!?」

 

 いまいちピンと来ないけれど、ほんの一瞬過った予感に自分でも一体何を考えているんだろう。詰まった生クリームとスポンジが、バカなことを考えた私に戒めているみたい。

 

「あの…… いきなりで何を言っているのか、よくわからなくて……」

「はひっ! ハルもいきなりですみません! でも、あの時の勘違いをまりやちゃんに謝りたくて……。あの時は見ず知らずの女の子を、勝手にツナさんの逢引きだと思い込んでいて…… ハルの早とちりで、大変ご迷惑をおかけしました!」

 

 この際と誠意を込めて謝るハルさんに動揺してかける言葉もなかなか見つからない。

 

 たしかにあの時はなんのこっちゃと驚いたけど、彼女自身のインパクトに圧倒されたこともあって私としてはすっかりなりも潜めつついたんだけど、実は彼女なりに今日まで引きずっていたところがあったのかな。

 

 そう考えると、彼女の心の温かさに触れて、この場に似合わない感情が込み上げてきてしまった。

 

 もちろん、私はなんともないとハルさんに伝えてそうして精一杯慰めて、ようやくいつもの笑顔を取り戻してくれたハルさんは、また突拍子もないことを言った。

 

「ヒバリさんという殿方がいらっしゃったなんて♡」

「あ、はは……」

 

 もう諦めた。彼女からの熱い視線を躱すように最後の一口を頬張ろうとする。

 

 フォークに刺す最後の一切れを完食しようとした時、どこからともなく声が聞こえる。声がまるで落ちてくるように、だんだんとトーンが上がってきて、そして男の子が頭上へと突然落ちてきた。

 

「ぴぎゃあッ!!」

「ふぎゃあッ!?」

 

 同時にそんな声を上げて、その場に崩れる。その衝撃に洒落た椅子から転げ落ちた私と、突然頭の上から降ってきた男の子を見比べて、2人が戸惑っている。

 

 意識が朦朧としながらも、上の階から降ってきた男の子にあの最後の一口を横取りされたことははっきりと覚えている。ケーキ……。

 

「甘い…… もん、ね……」

 

 最後の一口の感想を丁寧に残して、こてんと首が項垂れた。

 

 それを見て、慌てて彼女たちがこちらに駆け寄る。

 

「ランボちゃん!」

 

 私のお腹の上で意識を飛ばした男の子に駆け寄り、ハルさんが抱き上げて必死に男の子の名前を呼びかけている。

 

 しばらく意識を朦朧としていた私も、京子さんに助けられてなんとか起き上がる。それにしても一体何が……。

 

「ランボ〜! どこ行ったの〜?」

 

 ランボ君が突然私の頭に落ちてきて2人共意識を失くしてあの子が私の最後の一口を奪ったところまで思い出した時、今度はそんな声が遠くないところから聞こえた。

 

「あっ!」

 

 いつの間にか男の子が立っていた。ランボ君より少し大きくて、蒼哉と歳も変わらないくらい。そしてこの時期になぜか縞模様のマフラーを巻いた少年。その男の子は、こちらへ何やら熱い眼差しで、頬をにわかに赤くして、興奮しながら近づいた。

 

「――まりや姉だぁ! やっぱりまりや姉だぁ!!

 僕のランキングで『天性のドジ体質者ランキング』の1万6032人の中から堂々第1位のまりや姉だぁ!」

 

「何この子ーーーッ!!」

 

 いきなり感動の再会的な雰囲気を醸し出してきた男の子に、わけがわからない。

 

 誰!? どこの子!? 私、この子と初めましてだよねぇ!?

 

 かたく手まで握られて、どうしよう「どちら様かな?」なんて聞き返せるわけがない! 無闇にこんな子の眩しい気持ちを裏切るわけにはっ……! でも、全ッ然思い出せない!!

 

「ランボ〜! フゥ太〜! どこ行ってんだよ、もぉ……」

 

 すると男の子の背後から、知る影が近づく。耳慣れた人物の声にもしかしてと反応して、私は顔を上げる。

 

「沢田さん!?」

「えぇ〜〜〜!? 花内さん〜〜〜!?」

 

 向こうもどうやら驚いた衝撃のあまり頭を抱えている。目の前の男の子が私の手を握っている光景に戸惑っている様子だ。

 

 しかし、彼の混乱を他所に彼のもとにはさらなる混乱が訪れる。

 

「ツナ君!」

「はひっ! ツナさんです!」

「き、京子ちゃんに、ハルまで〜〜!? みんなで何してるの〜〜!?」

「ハルたち3人で集まって秘密の女子会です〜」

「さっそく秘密バラしちゃってるしー! つーか、女子会〜〜〜!?」

「うん! ツナ君たちも一緒にどう?」

「はひっ! 京子ちゃん! それじゃあ女子会の意味がなくなってしまいますよ! ……でも、ツナさんならまあいいですか♡」

「いいんだ……」

 

 最早女子会の名義はどこへやらと彼女たちに巻き込まれた沢田さんをただただ不憫に思う。

 

「ねぇ! 聞いて、ツナ兄! ドジっ娘ランキング1位のまりや姉に会えたよ! 僕すごく感動して、今日はよく眠れそうにないよ!」

 

 フゥ太君というらしい可愛らしい男の子は、今度は沢田さんに向かって興奮気味にそんなことを話している。ランキングがなんたらかんたら……。少なくとも沢田さんの知り合いのよう。ていうか、兄弟?

 

 フゥ太君のはしゃぐ姿をわけもわからず見ていたら、人の安眠妨害までしている体質なのかとまた落ち込む。私がこの子に何をしてしまったというのか。

 

「ちょっと、沢田さん! 一体なんの嫌がらせですかぁ!?」

「ちちち違うんだよ、花内さん! フゥ太ももうやめろーーー!」

 

 沢田さんから話を聞くと、フゥ太君は沢田さんの弟君ではなく居候中の子ということで、彼もまたマフィア云々に関わっているらしい。

 

 そんなフゥ太君の特技は、彼方の星と交信していろんなランキングを作ること。

 

 ここでようやく繋がった。それにしても何そのオカルティックな能力……。どこかの変人が聞いたら飛びついて来そうな……。それに、星との交信なんてにわかに信じ難いけど……。

 

 沢田さんから説明を受けた内容に眉を顰めていると、フゥ太君がちょんちょんと私の服の袖を引っ張る。

 

「あのね、まりや姉のランキングはまだたくさんあるんだ。

 『何もないところで転んでしまうランキング』は、3歳のタロー君を抜いてダントツ1位だし、週間、月間、年間ランキングを集計して総合した順位も『道端の動物の糞を踏んだランキング』堂々第1位! まりや姉はすごいなぁ〜」

「あはは、フゥ太君、もうランキングしないでください……」

「えぇ〜! どうしてぇ?」

 

 ランキングのことを年相応に嬉しそうに語る様は可愛い天使だけれど、ランキングはなんて悪魔なんだろう!!

 

「まりやちゃん、有名人だね」

 

 京子さんが、私の隣で清々しい笑顔を振りまいた。

 

 こんな形で知られてるなんて複雑だよーーー!!!

 

「あっ、ランボ!」

 

 あたふたと沢田さんが騒ぎ出す。彼らがここへやって来たのは、飛んでいってしまったランボ君を探していたらしい。そのことを思い出して、ハルさんの腕の中で目を回しているランボ君に駆け寄り、そうこうしているうちに施設内の乳白色の壁にかかる時計の針が刻々と進んでいった。

 

 

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