ドジっ娘は風紀委員長様のおきにいり!?   作:ひばりの

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愚痴

 

 まりやがあたふたと家を出て行った後、しんと静まり返ったリビングのソファーで、明らかに不機嫌な匂いを漂わせ雲雀はニュース番組の画面を睨みつけていた。

 

 相手が相手なので、事が全て思い通りに運ぶとは雲雀も思ってはいない。しかし、学校がない日に態々この家にまで足を運んだというのに、肝心の観察対象が慌ただしくこの場を離れていってしまった。まるで、雲雀から早足で逃げ去るように――

 

 ふん、と鼻を鳴らして、今朝の記事を読み上げる女性キャスターに目もくれず画面を消す。家中が息を潜めたように無音が立ち込める。息もない沈黙、彼女のいないここにいても意味はないと腰を浮かそうとするが、背後から子どもの声がかかる。

 

「あ、あの……」

 

 少年のあどけなさの残る声……。首を捻ると、階段の影から顔を出して、こちらの様子を窺う一人の少年がいた。その面影は、どこか彼女を彷彿とさせる。

 

「ひ、ひひ雲雀さんが、家にいる……! 夢じゃないんだ……!」

 

 振り返った雲雀を凝視して、感動が雪崩れ込むように興奮している。何やら影に隠れてボソボソと呟いている彼に、呼び止めてなんなんだと雲雀は苛立ちを覚える。雲雀は正直鬱陶しいと思うのであった。

 

 緊張を含んだ声音で、期待と不安に入り混じる少年の表情が告げた。

 

「あ、あの、雲雀さんって、ゲームとかしますか?」

 

 ……ゲーム? 雲雀はうんともすんとも言わず、訝しげに少年を見ていた。自分と距離を縮める手段のひとつとして尋ねられたことなのだが、この場でその単語が雲雀にはさっぱりわからなかった。

 

 雲雀の反応からして、もしやゲームは嫌いなのかと、はたまた彼を不機嫌にさせてしまったかと勘繰った少年は、あわあわとし始める。あながち間違いでもないが、切羽詰まったところですると少年は足を踏み出した。

 

「あ、あの、今日は家に来ていただいて、恐縮です! そ、そんで……」

 

 小5の思考など単純だ。しかし単純故に、時折突拍子もないことを言い出す。

 

 彼のこの瞬間の脳裏には、玄関を開けた先にまた見るとは思わなかった憧れの人の姿が、キラキラとオーバーな表現をされて思い出されていた。ずっと憧れていた背中、手が届かないと思っていた人の存在―― 遠い夢であったそれが、今は自分の目の前にいる。これ以上に喜ぶことが、少年にはない。

 

「ずっと、ずっと…… 雲雀さんのこと、憧れてて…… だから、ずっと今日まで雲雀さんに会いたいと思って、そしたら雲雀さんが家に来て、なんていうか、その…… オレを食べてください!!!」

 

 少年が、そう断言すると、この家に先程とは比にならない静けさが舞い降りた。

 

 興奮気味で自身で何を言ったのかイマイチわかっていない少年を見据え、雲雀は咄嗟にその身を引いた。一概に例えられない悪寒が、彼の防衛本能に働いた。

 

「オレは、雲雀さんに咬み殺されたいんです! オレの身体が、雲雀さんの血となり肉となるなら本望なんです! こんなチャンス二度とないし、どうぞ遠慮なく! さあ!」

 

 さあ!と迫られたところで、彼の言葉に素直に頷くわけがない。特に彼を咬み殺す理由はなかったが、雲雀が今はそういう気分ではない。第一相手から申し出て、雲雀は気に食わない。

 

「嫌だ」

「えっ、そんな!」

 

 目に見えるショックを受ける。本気で言っているのだろうか。とんだ狂言者だ。あの姉と同じ匂いがする。言動がどことなく姉弟で似るところもあるが、今は彼女以上に得体の知れないものを感じる。

 

「オレはこの日を待っていたんです! 気に入らないところがあるなら教えてください! オレはあんな姉より雲雀さんに染まる覚悟なんです!」

 

 雲雀に捲し立てるその勢いは、その辺にいる小学5年生の男児とは到底思えない脅威を感じる。彼の覇気に一歩間を置く雲雀も、しかし本気でイラついてきた。ここで手を出してしまえば相手の思うツボだ。

 

「君に教えることなんてない」

 

 相手に喰われるわけにはいかない。どうして雲雀が堪える立場にならなければいけないのか、この状況に納得がいかない。

 

「そう…… ですか……」

 

 ともあれ、相手が身を引いてくれたようだ。ややこしくなるくらいなら、この場を立ち去る手を打つ方がいい。雲雀は鵜呑みにした。

 

「そう、か…… オレ、そこまで雲雀さんに認めてもらえているなんて……」

「…………うん?」

 

 一瞬の間を置いて、雲雀は違和感に気づく。なんだか話が噛み合っていない? そう気づく頃には、手遅れであることに彼はまだ無知であった。

 

「なんてもったいないお言葉っ! オレに教えることがないと言うことは、オレのことをちゃんと認めてくださったという何よりの証! 光栄です!」

「……別にそういう意味で言ったんじゃないけど」

「オレの憧れる人が、雲雀さんで本当によかった、あぁ」

「ねぇ」

「雲雀さん、いえ委員長! 貴方に一生ついていきます!!!」

「…………」

 

 痛い。頭が痛い。激痛で幻聴を聞いていたような気がする。

 

 ポジティブシンキング――雲雀がこの世で五万とある死ねばいいと思うもののひとつだ。委員会会議に乗り込んでくるあの暑苦しい男といい、自分への忠誠が時に歪な角度から入り込むじゃがいも顔の男といい、いつか絶滅してしまえばいいのにと彼は日々願う。

 

「蒼哉ちゃん、ポチに朝ごはんあげてきてほしいわ」

 

 蒼哉、と呼ばれるとご機嫌な様子で母親に振り返り、素直に頷いて餌やりに向かう。その時にも、雲雀にパァァと満面の笑みを浮かべた顔を向ける。どうやら彼の中で雲雀との確固たる何かが結ばれたらしい。災難だ。

 

 雲雀は、また自身の周りに付き纏う蛆虫が一匹増えたと、鬱になった気分だった。

 

 彼が消えていったリビングは、嵐が去ったように鎮まった。勝手に言ってくればいいと、最後まで自分に振り返る少年へと毒吐いた。

 

 さて、彼もいない内にこの場を離れようと思い至ると、彼のテーブルの前にコトリと小皿が置かれる。

 

 それを視界に止めて、雲雀は横目にそれを置いた人物を一瞥する。

 

 彼に睨まれたことにも、この家を仕切る母親の馨子は大福を勧めてふわりと上品な微笑みを浮かべた。

 

「戴き物のお菓子なんだけれど、よろしければどうぞ」

 

 

 

 

 ――粒餡の大福を一口大に割いて、楊枝に刺して味わう。

 

 控えめな餡の甘味が、雲雀の舌に広がっていった。

 

 戴き物だと言って出された大福だが、この味は雲雀もよく知り好んで食す和菓子メーカーの一品だった。一口味わえば、そのことがわかる。

 

 ここの和菓子は雲雀の舌が好む甘味を表現して、プライベートでも度々ここの店舗から取り寄せるほどだ。一緒に出された湯呑みの緑茶も嗜み、一息吐く。いつしか和菓子に気が緩んでいた。

 

 じっと向かい合う相手を見据える。雲雀と向かい合うソファーにそっと腰を落ち着かせる馨子は、自身の湯呑みを傾けてしばし口を利くことはなかった。

 

 彼女の様子を観察していた雲雀だったが、そのことをなんとなく察し、あの姉弟のように騒がれるのも嫌なので特に何も言わず放っておいた。

 

 それに、彼女の料理の腕はなかなかに目を瞠るものがあると、雲雀は落ち着いた頭でふと思っていた。

 

 今朝の朝食も然り、いつかあのドジ娘がお詫びにと持ち込んだぼたもちも然り、雲雀の舌を唸らせた。

 

 期待しなかったこともあり、あの一口の衝撃は今も片隅にある。

 

 そんな驚きと共に自分の舌を満足させる味を作る人物を、特段咬み殺す理由はない。

 

 最初はあのポンコツ娘の母親と身構えていた分、普通の母親である姿に拍子抜けしていた。そんな部分も大きいだろう。

 

 あの姉弟にして、この母親。

 

 世間とは複雑なものだと、雲雀はその言葉を熱を持った緑茶と共に流し込んだ。

 

「最初は、正直のところ不安だったの」

 

 自身の湯呑みを膝の上に持って、彼女はそう零した。

 

「あの人のいない家族だけで、この町に来ることが…… とても先の見えない不安を感じたわ」

 

 穏やかな顔でそう語るが、その瞳には誤魔化し切れなかった不安の粒が混じっている。彼女の話を、雲雀は沈黙を守って片耳に入れていた。

 

「いつだって、あの人のことを信じていたから。この引越しも、彼からの伝言だったの。何年ぶりに連絡をくれたと思えば、それだけで電話は切れた。家のことも、子供たちのことも、元気にしてるくらい、聞いてくれてもよかったのに…… 私も、少し腹が立った。あまりにも一方的で、独り善がりで、家族のことを考えない身勝手だと思ったから……」

 

 ツーと無情な機械音が、馨子の鼓膜に振動する。やるせなかった。苦しかった。頼りない線に繋がれて、何も出来なかった。通話ボタンを切り、その場に崩れ落ちた……。

 

「でもね、あとで手紙が届いたの。一言、『子供たちをありがとう』って……。たったそれだけで、気づけたの。あの人に、ずっと頼りにされていたんだって。あの人と同じ、あの子たちの親としての私の責任を――」

 

 確かにあの人の字で親しみを込めて書かれていた一言、それだけでも彼女の不安な心は救われた。そばにいなくても、声が聞こえなくても、ここにある形だけで伝わった。

 

 それを胸に抱き締め、ただあの人を想う涙が止まらなかった。

 

「あの人の背中ばかり追いかけて、やるべきことを見失っていた。子供たちのことで、自分にある責任まで彼に押しつけようとしていた。ただ、あの人を苦しめていただけだった。家族のことを考えていないのは、私の方だった。そばにいてくれない彼に不満を当たり散らして、責任逃れもいいところだわ。彼の気持ちを尊重してあげられなかった。彼はいつだって、家族のためにここにはいないのに…… 彼のパートナーとして、母親として最低なことをしていたと気づいたわ」

 

 溢れる嗚咽に過去の不満を全て流して、変わろうと誓った。あの人と家族を守ろうと誓った。どんな苦しみがあっても、誰よりも強い母親になろうと誓った――……。

 

「だから、彼の思いを受け入れて、この町に来る覚悟を決めたの。今度はしっかりと、母親としてあの子たちを見守ってあげよう。……少しだけど、変われたかしらねぇ」

 

 朗らかに微笑む彼女に、雲雀には到底思い至らないところだった。誰かのために、そんな風に意志を持つなど浅はかだとも思う。けれど、彼女の瞳は真剣で、鋭い眼差しをその奥に秘めている。

 

 雲雀は喉の奥に引っかかる感覚を覚え、間髪なく相手に空返事をした。

 

「相手が違うんじゃない」

「まあ、本当ねぇ。どうしてかしら…… 忘れちゃった」

 

 ただ、風紀委員長さんに愚痴を聞いてほしかったのかもねぇ、なんて呑気に答えるこの母親からあの姉弟に至る経過は想像に難くないと思えた。

 

「それに、あの2人も不安だったんじゃないかしら。いろいろあったもの……。

 でも、最近は家でも揃って雲雀さんって、楽しそう。だからかしらぁ」

 

 ふわりと笑い、その緩い口元からトンデモ発言が飛び出す。

 

 彼の知らないところであの姉弟に口々に自分の名前を呼ばれ、身の毛もよだつ不快さだ。近々彼らを標的に据えると打算を打つところで、彼に呼びかけがかかる。

 

「風紀委員長さん」

 

 普段から皮肉めいてあの小娘にいろいろ呼ばれることがあるが、その口から改めて自身の役職を呼ばれるのは誇りを感じて雲雀も悪い気はしない。そんな的外れなことを胸中に零す。彼も知らず識らず許容範囲が広がるのを自覚していない。

 

「ありがとう。手のかかる子たちだけれど、見守ってくれて」

 

 うふふ、と馨子があざとく微笑み、その笑顔に返す言葉は手持ち無沙汰だ。別に雲雀には殊更そんなつもりはないが、相手がそう思い込んでいるなら仕方がない。彼女が振る舞う腕を見込んで、雲雀は明後日を向いた。

 

 あくまで風紀委員の活動の一環だと、雲雀は譲らないつもりだ。この訪問も、彼女の普段の生態を観察し行動パターンを把握したところで捕獲を図るという、緻密に計画されたことだ。

 

 いずれ雲雀は彼女を咬み殺す。それだけは確実に見据えていた。

 

 視線を逸らした先に、壁際の棚に立て掛けてある家族写真が目に留まる。

 

 まだ幼い顔立ちに、自分の目の前にいる女性、そして――……。

 

「こんな話をした後で、少しお恥ずかしいけれど……」

 

 雲雀の視線を追って、馨子はそれの存在を認識すると、にわかに女性らしく頬を染め上げた。

 

 彼女がふと立ち上がり棚の一枚を手にすると、雲雀の前まで差し出した。

 

 そこに写る、面識のない男性の顔。

 

 しかし、その人物が誰なのか、雲雀には見当がつく。

 

 すると、馨子がそっと手を添えて紹介する。

 

「彼が、忠秋さん」

 

 写真の中の微笑みに、しこりが残るのを胸の奥に感じ目を細めた。

 

 

 

 

 程なく蒼哉が餌やりから戻り、リビングは再び騒々しい空気となる。

 

「かーちゃんたちだけずりぃ〜! オレも大福食べたい〜!」

「はいはい、すぐに用意してくるから待っててね」

 

 馨子が催促され、その場から離れ台所へと一旦消えていく。

 

 あの母親になんと言われようが、やはり面倒見てやるつもりはないので早々に雲雀は席を空ける。

 

「えっ、あの、雲雀さん、どこ行っちゃうんですか?」

「ご馳走様」

 

 彼の問いかけに答えることはなく、大福の感想を述べて足を止めることもなく立ち去った。蒼哉は、相変わらずその背中を羨望の眼差しで見送った。

 

 追いかけて来ないうちに花内家を後にしようとした雲雀だったが、玄関の庭に出た先にいたそれに一瞬で意識を持っていかれる。

 

 つぶらな瞳、もふもふの身体、触れれば熱で溶けてしまいそうな柔らかい感触に翻弄された。

 

「アン!」

 

 雲雀を見据えて元気に吠える。

 

 あれからまだ少しの日数しか経っていない。拉致された主人の居場所を、あの時たまたま巡回中に居合わせた雲雀に伝えた聡明な犬だ。またこうして触れ合えることには今日訪ねて無駄骨ではなかった。

 

「ふふっ。よければ、ポチの散歩に付き添ってあげてくれないかしら?」

 

 時間を忘れていたところに、花内家の玄関のところで馨子が佇んでいた。その後ろには、大福の粉でベドベトに顔を汚す蒼哉がいる。

 

 すかさず目を逸らし、雲雀は彼女の提案に少し考え込む。案外嫌ではないらしい。さらに、そんな彼に追い討ちをかけるように潤んだつぶらな瞳が見上げて何かを言いたそうにしている。

 

 雲雀に選択肢はなかった。

 

 

 ********

 

 

「ん?」

 

 住宅街の道をトボトボ歩いている時、獄寺はある人物を見かけたような気がして、曲がった角を一旦戻る。

 

 しかし、そこには人気のない住宅街の光景があるだけ。

 

 気のせいか、と踵を返そうとした時、横から不意に声をかけられた。

 

「どうしたんだ、獄寺?」

「あ? てめぇには関係ねえよ。山本」

 

 今日も爽やかな笑顔で自分の隣を颯爽と歩く野球バカに、唾を吐き出すように獄寺が切り捨てた。

 

 そんな相方の態度に山本は別段気を悪くすることもなく、いつものように笑って受け止めている。そして、いつものようにしつこく獄寺に詳細を迫る。

 

「なぁ、どうしたんだよ。さっき急に来た道戻って。なんか面白いもんでもあったのか?」

「別になんもねーよ。あんなもん、気色悪りぃだけだろーが」

「何が気色悪りぃんだ?」

「てめぇはいちいちつっこんでくんなッ!」

 

 はらわたの限界だった獄寺は、一気にそれが爆発して山本の胸倉に掴みかかった。彼の急な反発に、山本は面白可笑しそうに返す。それがさらに獄寺の腹の虫と調子を狂わせるとも知らずに。

 

「だってよ、あんな露骨にされると気になるだろ?」

「露骨だと……!? てめぇ、このオレが単純な野郎みてえだとでも言ってんのか!」

「えっ、違うのか?」

「喧嘩売ってんのかッ!」

 

 そうして単純に彼の胸倉に掴みかかった獄寺をどうにか宥め、山本はそれとなく気になる話題に話を振り返る。

 

「まあまあ、冗談だって。謝っからさ。

 んでよ、獄寺はあん時一体何を見たんだ?」

「ケッ、誰がてめぇなんかに話してやるかよ。つーか、んでてめぇまでついてきてんだッ」

「ん? たしか買い出しに戻ってこねえツナたちを迎えに行くためだろ?」

「10代目をお迎えしに行くのはオレ一人で十分なんだよ! てめぇはアネキが作ったポイズンクッキング食って果ててろッ!!」

「獄寺のアネキの料理はちょっとな……」

 

 普段のようにツナの家に遊びに来た山本と獄寺は、ツナたちが買い出しに出かけたと聞き、どちらも譲ることなく彼らを迎えに行くことにしたのだ。

 

 そうなったのも、家に上がり込むと独特の異臭が鼻を突き、獄寺に至っては姉の顔を見てさらにトラウマの腹痛に苛まれたのが災いしている。

 

 ツナの母親である奈々は、この時珍しく家を開けており、幸いにも被害には遭わなかった。

 

 それらの一連の事を、惨事の主犯であるビアンキから直接聞き出し、その後彼らはこうして沢田家を飛び出してきたのである。

 

 ビアンキの顔を見てまだ腹の虫が唸りを上げている。それで普段より気性の荒い獄寺を宥めるのに、山本もまた一苦労していた。

 

「たくっ、んでこんな野球バカと隣を歩かねえとなんねえんだよ……」

「細けえことはいいじゃんか、肩抱き合っていこうぜ」

「オレはてめぇなんか認めてねえかんな!」

「なんだよ、連れねーなー。1年もツナたちと一緒に遊んでまだそんな風に爪立ててんのかよ。お前ってさ、なかなか懐かねえ猫みたいだよな」

「ああん゛?」

「あっ。そーか、獄寺って猫なのか。オレはどっちかっつーと犬派だから、なるほどな〜」

「何一人で納得してんだよ!?」

 

 そーかそーかとすっかり納得している山本の隣で、獄寺は近所迷惑なツッコミを連発させている。久々の登場場面でも彼らはこんな感じだ。どうやらツナの苦労はあれからも健在のようである。

 

「んで、結局獄寺は何を見たんだ?」

「てめぇも強情だな! んなとこばっかしつけえんだよ!?」

「はぐらかされると気になるっつーか」

「……チッ。一回しか言わねぇからな」

 

 野球で鍛えられたかは知らない山本の粘りとしつこさに圧倒され、獄寺は不服ながら折れるしかなかった。この鬱陶しいやりとりが終わってくれるなら彼も妥協する。

 

「言っとくが、笑うんじゃねえぞ」

「ハハッ、オッケー」

「先に笑ってんじゃねえぞ!」

 

 獄寺自身、ありえないと寸前まで気のせいにしていたことだ。この期に及んで口にするには、少々勇気がいる。

 

「ヒバリだよ……」

「え?」

「ヒバリが、ガキ連れて歩いてんの見たんだよ……」

 

 少々言いづらそうに目を泳がせ、そう暴露した。

 

 そして、山本からは盛大に笑われたのであった。

 

 




ふと思ったんですが、ビアンキのポイズンクッキングは原作の後どうなるんでしょう。
死人が出てないというところで手をつけられていないとすると、私の見解では己の毒素に自爆した後、風化するんだと思います(適当)
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