ドジっ娘は風紀委員長様のおきにいり!?   作:ひばりの

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おまけ  vorbesc.リボーン

 

 たまたまヒバリの奴を見かけたから、オレは奴に気づかれねえように気配を殺し、こっそり後をつけて観察した。

 

 っつーのも、オレの手元にある奴の情報が少なすぎちまって、オレもちょいと情報不足なんだぞ。

 

 奴には今後、ボンゴレの大事な役割を任せる以上、謎に包まれた奴の詳細を把握しておくのは、ダメダメなダメツナの代わりにオレがやっておくことだからな。

 

 家庭教師であるオレの仕事であり、それに、オレのプライドが許さねえ。

 

 最強の名をほしいままにしたオレの中の意識が、一度標的にした相手を逃すことはしねえ、完璧への執着。

 

 これを機に、あいつのことを少し探らせてもらおうじゃねえか。

 

 おいお前ら、オレがヒバリを付け狙ってること、誰にも話すんじゃねーぞ。

 

 話したら…… わかってんだろうな?

 

 

 

 

 殺し屋は、影で標的を観察してーからな。人目を避け、オレは人気のない屋上から奴の動向を眺めていた。

 

 昨日はツナたちの始業式があって、今日は入学式だ。このタイミングは放課後とあって、特に校内が群がっている頃だ。あいつにはいいトンファーの手入れになりそうだぞ。

 

 さっきから新入生の群れを、あいつが愛用するトンファーで滅多打ちにしている光景が、そこかしこで目につく。

 

 そういや、ヒバリは昨日の放課後にも新学期に浮かれた生徒たちを、気晴らしに咬み殺していたな。

 

 こりゃ、めでてー今日が血祭りになっちまうぞ。

 

 今日も調子良さそうに群れを咬み殺すヒバリを、朝の出来事が脳裏を過ぎりながらじっと観察する。

 

 ツナから聞いたが、ヒバリの奴、急に熱を出して階段のところに倒れていたらしいが、今はもうピンピンしてるな。

 

 思い当たる節はあるが、あれはオレの専門外だからな。男は見ねえアイツが、あの時保健室に連れてったとして下剤は打ってやらねえだろ。

 

 あの様子なら、桜が近くになければ問題もねえみてえだからほっとくか。

 

 

 

 しばらくはのんびりヒバリ(ターゲット)の動向を眺めていたオレだったが、ふと感じた気配におもむろに辺りを見回す。

 

 気配からして、恐らく3人ほどだが…… こいつはオレへのじゃねーな。

 

 その気配の矛先は、どうやら咬み殺しに夢中のヒバリへと向けられているみてーだ。

 

 誰だ? ヒバリを殺りにきたどっかの差し金か?

 

 んにしても、気配がだだ漏れで、殺気も感じねえ。

 

 キョロキョロとグラウンドを見回してると、オレはそいつの正体にようやく気づいた。

 

 その気配は、校内でよく目につく並中の制服に身を包んだ、3人の並中生徒のものだった。

 

 男が1人に、女が2人か。

 

 あれはどう見ても素人だな。

 

 早々に杞憂に終わると、次に逡巡する。

 

 見たことねぇ顔に、全員赤タイをしている。恐らく新入生だろうが、あいつらなんでヒバリを見てんだ?

 

 遠くの校舎の物陰から盗み見てるってことは、隠れて尾行してるつもりみてーだが、あれじゃ全然甘えぞ。

 

 オレの考えに(のっと)ったみてーに、奴らの存在はヒバリにもあっさりとバレる。

 

 あの3人がどんな奴らか知らねーが、並盛で最強と言われるヒバリが、どんな男か見てみたくなって、オレみてーに視察に来たってところだな。

 

 まあ、あのヒバリが素人の気配に気づかねえわけがねえからな。ご愁傷様だぞ。

 

 あいつら3人共、咬み殺しに血が高ぶる(オオカミ)トンファー()の餌食か、ってぐれーに思っていたが、どうやらそうはいかねえらしいな。

 

 仲間の女が1人干されたようだ。もう1人いた女にそこから突き飛ばされると、そのまま土の地面にすっ転んでった。

 

 あのダメツナ並にひでぇ転け方だったぞ。

 

 その女の仲間の2人の方は、女を置き去りにしてさっさとどっかに行っちまったぞ。

 

 にしても、あんなダセェ転け方の後に仲間にまで裏切られるとは、あの女も相当ついてねぇようだな。

 

 そんな女のもとに、ヒバリの方は同情してやることもなく、いつもみてーにトンファーを構えてじりじりと獲物との距離を詰めてってる。

 

 素人にも殺気半端ねえな。女の方もビビって…… 奴の脅しに震え上がらねえでジタバタ抵抗しようとしてやがる。

 

 顔は真っ青だが、奴の殺気と脅しにさっさと尻込みしねえとは、案外度胸の据えた女だ。

 

 その女のもとに歩み寄り、トンファーを振り上げる。

 

 それにしても、あいつが女を咬み殺すところを見るのはオレも初めてだぞ。普段は男しか見ねえからな。

 

 あいつもそこは配慮しているのかと思ってたが、やはり泣く子も黙る鬼の風紀委員長様は手加減っつー言葉を知らねえみてえだ。

 

 ヒバリの奴も、女には手加減してやったらどうだ?

 

 オレが出て行ってやってもいいが、今行くとヒバリの情報が集まらねえし、最悪オレがヒバリを相手にしねえとならねえ。それはめんどくせーぞ。

 

 まあ、あのヒバリを相手にしたことが間違いだろ。

 

 あの女も自業自得だな。

 

 

 ――だが、一向に奴の牙が獲物に噛みつかないことに、オレは疑問を抱き始める。それを突き止めるため、手すりから身を乗り出してその様子を窺う。

 

 どうやらまだ何か言い合ってるようだが、ここからじゃ遠くてよく聞こえねーな。

 

 下手に近づくと、ヒバリが気配に気づきかねないからな。迂闊に近づくこともできねえ。

 

 あのヒバリのことだ。次期にあの女も咬み殺すだろう。

 

 やはり、無駄な足掻きだったみてえだな。

 

 

 

 だが、オレの予想は、ヒバリ自身の行動によって裏切られた。

 

 あいつはなぜか、己の牙であるトンファーを仕舞った。

 

 その行為の意味は――――戦意喪失。

 

 何が起きたか知らねえが、その後ヒバリは女を担いでそいつと共にどこかへと消えて行っちまった。

 

 オレは目を丸くした。

 

 あのヒバリが、女を抱き上げることもそうだが、奴の楽しみである『咬み殺す』ことを止めたんだ。

 

 一体何が起きたんだ。

 

 それを知るのは、ヒバリの奴と、もう一人――

 

 あの栗毛の髪の女――……。

 

 結果を変えたのはヒバリ自身だが、それを仕組んだのは少なくともあの女の何かだ。

 

 

 あの女、何者だ?

 

 

 にわかに口角が上がる。

 

 面白そうだな。

 

 今日は随分と機嫌がいい。

 

 久々に、いい報告が出来そうだ。

 

 並盛最恐の男を、ああも上手く手懐けるとはな。

 

 オレはすっかり、魅了されちまった。

 

 ダメツナ並のダメっぷりを見せてくれた、あの栗髪の少女に――――

 

 

 

 

 これから始まる愉快な日々を、密かに胸の内に描きながら屋上を後にする。

 

 この呪われた身体を翻して、先の見えねえ未来に期待してみるのは、無謀なことだろうか。

 

 

 そうして屋上には、誰もいなくなった。

 

 




これまた余談ですが、発熱するのはオプションです。
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