真・恋姫無双~袁紹再臨(仮)   作:凡将モブA

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主人公である袁紹回。

田豊ら3人は殆ど出番ないです。次はある…はず。

次回更新予定は決めてないです。

(1月20日、年号修正)


戦いの意志

 

 

 

 

 

 

顔良からの報告から数日後、濮陽城は騒然としていた。

 

何せ前触れすらなく各地で反乱が一斉に起こったというのだ。それも微妙な時間差はあるがほぼ同じタイミングで。共通点である黄巾を巻いた賊というのも、それに拍車をかけていた。

 

現皇帝、霊帝は皇甫嵩らの助言もあって急いで禁錮の令を解き、次に官軍を各地に派遣した。

 

そして黄巾を巻いた賊を黄巾賊と呼称する事となった。

 

袁紹は恐らく宮廷でも大きな騒ぎとなっているのだろうと確信していた。

 

慢心していた訳ではないが民や訪れた放浪者から情報を多く得ていた自分ですらこのような事は読めなかった。

 

だがそれ以上に袁紹の心を揺さぶる事があった。

 

 

(いくらなんでも早すぎる…今はまだ熹平六年(177年)、私の前世では黄巾の乱が起こったのは…)

 

 

そう、黄巾の乱が起こったのは“184年”。まだ後7年も先の未来の事である。

 

袁紹も今はまだ23歳という頃。ここまでくればもはや異常な程に時間のズレが生じている事が分かる。時勢ももはやあったものではない。

 

 

 

 

一体何が起こっているのか…あくまで三国志を生きていた袁紹には理解が出来なかった。

 

それもそうである。何せ、この世界は三国志であり、三国志ではない。

 

袁紹には知るよしもないがここは外史、もしくは私達に言う恋姫無双という名の世界なのだ。

 

時間の流れやあらゆる事象に至っては本来の三国志を逸脱している。本来起こりうる筈の無い事ばかりが起こる、願望の世界。

 

故に理解出来ない。袁紹にとってはこの世界に適応するための最初の壁と言っていいかもしれない。『あの時』の忠告の意味を、袁紹は今更のように理解した。

 

前世の記憶とこの世界の歴史。それが袁紹を悩ませるが、今はそんな事をとやかく気にしている場合でも無かった。

 

東郡太守の橋瑁はその領城である濮陽に対して警戒と防衛を命じ、そしてその後自分も防衛の為に黄巾賊の発生地の一つである冀州に最も近い領城に移動したらしい。

 

 

 

 

 

――――――――濮陽。東郡の中心都市。

 

ここは過去、戦乱が付近で数多く起こった兵家必争の地であり、古くは帝丘と呼ばれた都である。

 

位置的にもここは戦乱の中心となりやすく、各地に派遣された官軍が不甲斐なく敗北した場合、この地にも黄巾賊は迫るだろうと武官文官達は予想した。

 

命令された通りに袁紹は自分の一つ上の地位に当たる県長と相談をして防衛策を練る事にした。

 

 

(この世界の歴史は大きく狂っている事は分かった…もはやこれ以上は私の前世の記憶など当てに出来んな)

 

 

冀州に向かった官軍の指揮官は盧植である。前世の記憶では黄巾賊の本体である張角軍相手に連戦連勝した彼の者ならば問題無いとは思うが…。

 

そもそも不思議な事に張角どころかその兄弟である張梁や張宝の行方すら不明との事らしい。

 

それならば盧植殿が敗れる心配は殆ど無いだろう。主格犯である張角兄弟が居ないのは不気味な事だが…。

 

 

「何事も無ければ良いが…どうにも不安だ。」

 

 

それは軍人の勘が囁いたからであろうか。憂い顔で袁紹はそう呟く。その不安が的中しようとはこの時誰も思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1か月が経過した頃である。

 

満身創痍な橋瑁とその兵士数十人と多くの民達が濮陽に到着した。

 

その報告を受けた袁紹は田豊、顔良、文醜の3人を集めて橋瑁の元へ急ぎ向かった。

 

橋瑁は袁紹同様、威厳に満ちた人物で、恩情を兼ね備えていたという評判の良い政治家である。

 

その橋瑁の姿は今や見る影もなくボロボロであり、所々に矢傷と思わしき傷が付いていた。傍に控える兵士も同様、いやそれ以上に酷い有様だった。

 

袁紹は真っ青になった。自分の悪い予感が的中したのだと確信したのだ。

 

 

「橋瑁様!一体どうなされたのですか!」

 

「おお…袁紹か…済まぬ、見てのこの通りだ。黄巾賊に城は奪われ、我々は辛くも逃げかえってきた」

 

「そんな…!ともかく今は怪我の治療を致しましょう!話はそれからです!」

 

 

袁紹は慌てて橋瑁を介抱しようとするが橋瑁は手で制す。橋瑁は落ち着いた状態で言葉を口にする。

 

 

「良い…聞きたまえ袁紹…官軍の防衛線は現状厳しい状態だ…」

 

「…盧植軍はどうなされたのです?彼の軍が黄巾討伐に向かったとの事ですが…」

 

「うむ…そうなのだが盧植軍の防衛線が整わない内に一部の黄巾賊がその防衛線を突破してきたのだ」

 

「何と…それでどうなされたのですか?」

 

「当初はそこまででも無かったのだが黄巾賊共が周辺の別の黄巾勢力を吸収し…かなりの数の兵力に膨れ上がっていた。その軍勢に襲撃され、15日の間、城に籠城したのちに破られてしまった」

 

「それで敵の兵力は如何ほどに…」

 

「初期は2000人程度だったが今は約5000人にまで増えている」

 

 

2000人が5000千人に。これを聞くと周辺はざわざわと慌て始めた。

 

 

「今、濮陽で集められる兵は約1000人だぞ!?」

 

「待て、慌てるな。敵はたかが烏合の衆だ。訓練を受けたこちらの兵ならば…」

 

「馬鹿言うな!橋瑁様の居た城だって防衛の為に周辺の城から2000人集められていたんだぞ!たった1000人ではどうしようも無いじゃないか!」

 

 

ざわ…ざわ…

   ざわ…ざわ…

 

 

ますます周辺がどよめく。今や雰囲気はどん底レベルまでに低下していた。

 

ここでさらに橋瑁から絶望的な言葉が出てくる。

 

 

「盧植殿も黄巾賊を撃退するのに手いっぱいで援軍は望めないそうだ…現状の戦力で対処しなければならない」

 

「たった1000人で相手をせよと仰せられるのか!?」

 

「馬鹿な…!勝てるわけがない…!敵の兵力が5倍では籠城戦でも持ちこたえられない…っ!」

 

「おおおおお落ち付け。まままだだだあああ慌てるような時間じゃない」

 

「お前が落ち付け」

 

「義勇兵を募っては?」

 

「確かに兵は集められるが…戦力的にはどうかと思うぞ」

 

「弩を使わせれば?あれなら短期的な訓練でも…」

 

「白兵戦はどうするつもりだ。槍の訓練もしなくちゃならんし、ちゃんとした戦力になるまでの時間があるとは思えん」

 

「そもそも軍隊としての統率もあまり取れないだろう。勝手に動く者も出る。やはり使えない」

 

「くそっ!どうしようも無いじゃないか!」

 

 

混乱する将兵と武官文官達。もはやこれまでか。全く纏まりが付かない中、

 

 

 

 

「各々方、落ち付かれよ!!」

 

 

 

 

鶴の一声が響く。周囲は一瞬で静まり返る。

 

 

 

皆が振り返ればその声の主は我らが袁紹であった。

 

袁紹は堂々とした態度で言葉を紡ぐ。

 

 

 

「各々方は黄巾賊などというような輩にこの地を汚され尽しても良いと仰せられるのか!!」

 

「違うでしょう!私達の使命はこの地の死守。そして!」

 

「この地に住まう民を守る事が、ここを守る者としての責務でありましょう!」

 

「全ては私達が愛す漢の国とこの地と民の為に、全力を尽くす。どのような状況下であろうと、それは絶対に成さねばなりません!」

 

「それを分かった上で、戦う意思を失わないでいただきたい!」

 

 

袁紹は周囲を叱るように演説する。そこで一人の文官がおずおずと反論する。

 

 

「し、しかし、勝算はあると言うのですか」

 

「勝算がどうという事ではありません。ここでやらねばこの地は荒廃し、私達も皆殺しにされるだけです。違いますでしょうか?」

 

「そ、それは…」

 

「死に生を見出す。私達に残された道は逃げる事ではありません」

 

 

そこですっと息を吸い、吐き出すように叫ぶ!

 

 

「勝つ事!!!」

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

「ただ、それだけです」

 

 

「………」

 

 

周囲の者達は黙った。確かにこの場を放棄した所で国がそれを許してくれるなど有り得ない事である。

 

どうせ死ぬならば、生きる道が僅かにも残されている道を進んで生きるか死ぬ。それが一番の方策だ。

 

しかし、皆が考えている事はそういう事ではない。

 

袁紹の演説によって皆が心に思い浮かべたのは民達や家族、または漢への忠誠心。

 

自分の拠り所とするものを奪われる…それは屈辱であり、皆に怒りを与えた。

 

そしてそうならないよう必ず勝つ。希望を次に与えたのだ。

 

これによって皆は失いかけていた戦意を回復したどころか、それ以上に戦意の炎を燃やしていた。

 

そこにはあの絶望な雰囲気はもう無かった。必ず勝つ。この場の人々の心は一つとなっていた。

 

 

 

「ええ、やりましょう袁紹殿!」

 

「民達を必ずや守って見せる!」

 

「ああ…そうだ、私達は示さねばならない。この時の為に私達が居る事を!」

 

「奴らの勝手で世を乱されてたまるものか!」

 

「やぁってやるぜ!!」

 

「急いで兵の編成をするぞ!連中に負けられん!」

 

「俺達は死なねぇー!」

 

 

 

橋瑁は唖然としていた。援軍も望めないようなこの状況下で、袁紹の言葉はこの場全員を呑みこみ、圧倒していた。

 

そして戦意を煽られ、今ややろうやろうとばかりに熱気に満ちているではないか。

 

 

(…成程、これが袁紹本初という男なのか)

 

 

橋瑁は感動し、確信した。この男ならこの大事を成す事が出来ると。そして、世の中に羽ばたく事が出来るだろうと。

 

橋瑁は演説を終えた袁紹に対して笑顔で声をかけた。

 

 

「…袁紹。見事だった」

 

「橋瑁様。あなたの前で勝手な事を多く申しました。ご無礼をお許しください」

 

「いや、良い。寧ろ良くやった。この橋瑁、思わず心を揺さぶられた」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

「…袁紹」

 

「何でございましょうか」

 

「お前に軍権の全てを託す」

 

「…それは」

 

「この場を活気づけられたのはお前以外にここには居なかっただろう。それだけの言葉の力を持つお前になら、重傷を負った私の代わりを託せる」

 

「しかし、私よりも県長殿の方が…」

 

「いや、袁紹殿。私も貴方を推薦するさ」

 

 

それでも渋る袁紹に対し、濮陽県長が笑ってそう告げる。

 

 

「県長殿」

 

「私でもあんな事は出来ない。それに皆揃って袁紹殿に指揮をされたいだろうさ」

 

「………」

 

「この大任、引き受けてくれるな」

 

「…はっ。その大任、袁本初が引き受けました」

 

「うむ。…勝て、袁本初よ」

 

「ははっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄巾賊5000人に、袁紹ら濮陽軍1000人が挑む。

 

この最初の袁紹の正念場と呼べるこの戦い、『濮陽の戦い』が幕を開けようとしていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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