真・恋姫無双~袁紹再臨(仮)   作:凡将モブA

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文章を付けたしていたので若干遅れました。

その内投稿した物全部見直して少し書きなおそうかな…描写不足な所多そうだし。

特に人の動きや姿の描写が非常に甘い…これは反省物ですわ。うまく書けるようになりたいものです。

後、アンケートをこの後すぐに活動報告に載せるつもりなので、載せられたら書いてもらえると嬉しいです。

ご感想や批評も首を長くしてお待ちしております。

(以下修正点)

決戦地は川の前の → 決戦地は川の先の

年に300人ものの → 年に300人もの



死と恐怖、生と覚悟(後編)

 

 

 

 

 

一人の白髪の少女が、城の中を走り抜ける。それは城で働く人物なら誰しもが知りうる人物。

 

袁紹に仕える軍師見習い、田豊であった。

 

 

 

「…はっ…はぁっ…!」

 

 

牢獄から逃げ出した田豊は纏めた自分の白色の髪が乱れるのもお構いなしに誰もいない廊下を駆け抜けて、そのまま自分の部屋に閉じこもる。

 

 

バタン!!

 

 

勢いよく閉めた扉が大きな音を出す。が、田豊はもはやそれどころでは無い。

 

布団に一気に潜りこみ、歯を恐怖からがちがちと鳴らす。その姿からは何時もの冷静鉄仮面な軍師、田豊の姿は無かった。

 

ただそこにあるのは死という恐怖から逃げてきたただ一人の少女の姿。

 

田豊は怯える少女のまま、一頻震えた。

 

 

(あれが…人が死ぬという事…)

 

 

突然ながらも、衝撃的な光景に泣きたくなるのを必死に抑える。

 

確かに誰かに仕える、そんな時にそういう事を考えなかった訳ではない。

 

実際噂では人が死ぬ話なんていうのは聞き飽きる程に聞こえる。が、実際見るとなると話は別である。

 

あのようにして人は呆気なく死んでいくんだと、そう思うと戦とは言葉に表せない程、惨たらしいものなのだろうと想像してしまう。

 

それをやれと、そう指揮するのが軍師、つまりは私。途端に自分自身が恐ろしく感じてしまった。

 

そんな簡単に人に死にに行けと私は言えるのだろうか。人には人の人生がある。それを、何千何万単位で、私があっさり消し飛ばしてもいいのだろうか?

 

 

(そんな職に就くのなら、軍師なんて…)

 

 

そう思考が出掛かる。が、その度に袁紹の顔が思い浮かぶ。

 

自分が生涯仕えると決めたあの主の姿が。

 

 

(そうだ…私は袁紹様の恩に報いわなければならない…でも…)

 

 

二つの思考が田豊を挟んで揺さぶる。田豊はゆっくりと追い詰められていた。

 

 

「………これではいけません。気分晴らしに町にでも出ましょう…」

 

 

思考を停止して、布団から出て、町に向かう。町は騒然とはしているものの、未だその活気を失わずにいた。

 

田豊はその様子に正直予想外ではあったが、そのまま酒屋に向かう。

 

酒屋はいらっしゃいいらっしゃいと大声で客寄せしている。酒屋のおっちゃんは田豊に気づくとにっこりとして声を掛けてくる。

 

 

「おう、県令様の御嬢さんじゃないかい。珍しいね、酒でも飲みに来たのかい?」

 

「まあ、そんな所です。地度の低い酒をほんの少し買わせていただきたいのですが」

 

「あいよ、酒器一杯でいいかい?」

 

「はい、それでお願い致します」

 

 

おっちゃんはにこやかな笑顔で顎髭を撫でつつ、酒器に酒を注ぐ。

 

田豊はその間、町を見廻すが、やはり緊張感やどよめきはあるものの、逃げようと騒いだりする者はいない。

 

今こうしている時にも黄巾賊は迫っているというのに。

 

 

コトッ。その音と共に酒が入った酒器が置かれる。

 

田豊はそれをちびちびと啜るように飲む。

 

田豊はやや下戸気味だった。また、酒で犯す過ちの恐ろしさ故に酒を飲む事は滅多に無い。

 

しかしそれでも今、忌諱している酒を呑もうとしているのは、現実逃避の為なのかもしれない。

 

田豊はこの際、町の不明を聞いてみようとおっちゃんに話しかけた。

 

 

「あの、黄巾賊が迫っているという話は聞いてますよね?」

 

「ん?ああ、確かにそう聞いているね」

 

 

おっちゃんは何でも無いようにそう返す。田豊はその様子が不思議でならなかった。

 

 

「怖く、無いんですか?」

 

「何がかい?」

 

「その、黄巾賊がです」

 

「怖いさ」

 

「じゃあ、何故ここから逃げないんですか?」

 

 

餓えた民から賊は生まれるが、民が一番怖いのも賊である。

 

強欲で愚かな領主がいる事よりも、本当に何でも奪っていく賊の方が恐ろしいからだ。文醜や顔良はその一例と言える。

 

民を救う義賊なんてどんな世の中だって数える程しかいないのだ。

 

その賊が迫ってきているというのに、逃げる民は殆ど居なかった。

 

するとおっちゃんは急に真面目な顔になって答え始める。

 

 

「なあ、御嬢ちゃんにも故郷ってのはあるだろう?」

 

「それはもちろんです。それが…」

 

「寂しくはなかったかい?その場所を離れるってのは」

 

「………」

 

 

田豊は閉口した。

 

確かに袁紹に仕えると決め、自分の生まれ住んだ場所を離れる時、無性に心寂しさを感じずにはいられなかった。

 

 

「御嬢ちゃん達は立派さ。故郷を離れてでもこうやって俺達の為に仕事してくれてるんだから」

 

「…」

 

「だけどな、離れたくない奴もいんのさ。俺だって出来るならここから生涯離れたくない。梃子でも動きたくない」

 

「ですが…!」

 

「もちろん、死にたくはないさ。それでも、この場所が大好きなのさ」

 

 

そう言うおっちゃんの顔はとても爽やかであった。

 

その心はまさしく本物であると、まざまざと見せつけていた。そして

 

 

「だけど、もう一つ理由がある」

 

「もう一つ…?」

 

「御嬢ちゃん達さ。県令様」

 

「戻羽様が…理由?」

 

「そう。御嬢さん達は自覚が無いかもしれないけどね、ここ最近暴れ出す迷惑な奴や人殺しの話が殆どしなくなってな。御蔭でこちらも安心して商売出来るようになったし、ここ3年間で見違えるようになった」

 

 

袁紹達の活躍は実際近辺の噂に聞こえる程で、濮陽の治安は滅多に犯罪者が現れない程にまで改善された。

 

それと同時に濮陽に人も集まるようになり、おっちゃんの言うとおりかなり暮らしやすい場所になっていた。

 

 

「これでも皆感謝しているのさ。何でも、県令様が太守様の代わりに黄巾賊と戦うんだろう?寧ろ皆義勇兵の募集を待ってうずうずとしている筈さ」

 

「…そう…なんですか?」

 

 

意外な事実に田豊は嬉しさがこみ上げた。

 

自分達のやってきた事が評価され、皆に慕われる。袁紹に忠誠を誓っている田豊はより嬉しくなった。

 

そこでおっちゃんはだから、と付け加え

 

 

「御嬢ちゃん達は気にする事は無いさ。例え誰かがその戦いで死んだからって気に病む事は無いと俺は思うぜ?俺達が俺達の為にやってる事なんだからな」

 

「自分の為に…」

 

「俺達の人生は俺達自身が決めた事。だから、死んでもあんた達の所為じゃない。俺達自身が無力だからだ。それでいいじゃないか」

 

「それで、いいんですか?」

 

「人生儚いもんさ。重く考えすぎたってしゃあない。ま、御嬢ちゃん頭よさそうだから仕方ないかもしれんな。はっはっは」

 

 

おっちゃんは真面目な雰囲気を解いて快活に笑う。そこで思い出したように何か閃いたような顔になる。

 

 

「そうだなぁ。ならせめて覚えてくれればいいさ」

 

「覚える…ですか」

 

「そうさ。別に一人一人の事細かく覚えてくれなくたっていい。だが、御嬢ちゃん達がいたからこそ、幸せになれた俺達の事を覚えればいい。そうすれば俺達も嬉しいし、御嬢ちゃんも嬉しいだろ?」

 

 

自分達がいたからこそ、幸せになれた者達。田豊は再び町を見た。

 

最初、ここを訪れた時は良くも悪くも普通の町だと感じた。活気がある訳ではないが、そこまで暗くも無い。そんな中途半端な町。

 

ここを統治してから1年経つ頃には年に300人もの犯罪者が出たのが、150人まで減っていた。

 

2年経つ頃には治安向上と袁紹の名声による町の活性化が起こった。

 

3年経つ頃には犯罪者は50人に、町は活気溢れる場所へと変革した。

 

年が経つにつれて、民からは笑顔を浮かばせる者が、増えていった。

 

 

「これは俺達の恩返しと、信頼みたいなものなのさ。その結果どんな事になったって、後悔しねえさ。寧ろあの世で誇りにするさ」

 

 

田豊はその言葉を最後に聞いて、ようやく酒器の酒を飲みほした。そして穏やかな顔で礼を告げる。

 

 

「ありがとう、ございました」

 

「へへっ、いいってことよ。ついでに酒代もちゃらにしとくよ。行きな。仕事、あるんじゃないかい?」

 

「はい。御馳走様でした」

 

 

そして田豊はささっと城の方へ立ち去った。もう、迷いは無い。

 

往く先は戦の厳しさの一片を見せた主の元。見習いなどでは無い。軍師田豊が、遂に動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その主は既に作戦会議を行っていた。

 

凛として立つ袁紹の前の机に開かれるは、濮陽周辺の地図である。

 

 

「ふむ、城の前には川。川の先は平原。平原を挟むようにして木が茂っている小山が立っている…か」

 

「この地形だと、決戦地は川の先の平原でしょうか。ならば、川の前に陣取るのが有効だと思います」

 

「そうだな…」

 

 

相談しているのは袁紹と比較的戦術にもやや明るい顔良である。

 

文醜も田豊に少なからず戦術を教わってはいるのだが、いかせん難しい事を考える頭は文醜には無かった。

 

よって文醜は暇そうに端っこにある椅子を並べて横になり、寝そべっている。

 

 

「しかし、これではやはり守勢に回る他は無いか…平原では数の差が物を言う」

 

「ですが壊滅的な決定打を与えるには至りませんね。退却させてしまえば盧植軍が危なくなるんですよね?」

 

「そうだ。だから確実に壊滅させねばならないが…兵力が少なすぎて包囲などしようものなら突き破られるのがオチだ」

 

「義勇兵は…」

 

「どれほど集まるか分からん上、錬度の低さが目立つ。期待はあまり出来ないだろう。正直不安定過ぎる」

 

「じゃあどうすれば…」

 

「うーむ…」

 

 

悩む二人。兵力が不足しているこちら側にとって義勇兵は確かに欲しい。

 

しかし、義勇兵の出来る事は精々弩による攻撃が出来る程度であろうし、槍による攻撃も敵よりはまあマシな程度しか訓練は出来ないだろう。

 

それに袁紹の見通しでは集まっても500人程度。それでも喉から手が出るほど欲しいくらいだが。

 

 

「仕方ない。取りあえず敵を追い払うしかあるまい。ただ、追い払うだけなら私も出来るが、撃破までは難しいか」

 

「そういえば思昂ちゃん、大丈夫でしょうか」

 

 

顔良は心配そうに表情を曇らせる。袁紹とてあれは賭けであり、戦に出るまでに立ち直れるかどうかと言えば何とも言えない。

 

ただ、急な黄巾賊襲来の為にああせざるを負えなかった。本来の予定ならばもっと後で他の方法で教えるつもりだったが。

 

袁紹とて若干反省はしていた。

 

田豊という人物であるとはいえ、ここでは思昂という名の持つ少女である。それに負い目を感じずには居られない。

 

 

(あれが一生残る傷となれば、私は本当に最低の人間だな…)

 

 

ただ自分の都合の為に現実の恐怖を目の前でまざまざと見せつけ、それで軍師に仕立て上げる。

 

やってる事を客観的に見ればまさにその通りであり、言い逃れなんて事は出来ないだろう。

 

 

(いや、もう過ぎた事だ。こうなれば覚悟を決めよう。どんなに罵られようと、私は私の道を行くしかない)

 

 

そう決意する袁紹。転生の覚悟は決して安いものでも無ければ、そう簡単に揺らぐものでも無い。

 

自分のした事に反省はしても、後悔はしてはいけないのだ。この道を、ただ往くのみ。

 

そこで突如、部屋の扉が勢いよく開けられる。

 

 

「戻羽様!戻羽様はこちらでしたか!!」

 

「思昂!?もう、大丈夫なのか?」

 

 

そう、そこにはあの田豊の姿があった。田豊は袁紹の元に近づき、そのまま跪いて礼をする。

 

 

「申し訳ありません。この田豊、命に背きました」

 

「いや、私が悪かった。このような人道に反する試練を与える私が、悪かった。顔をあげてくれ」

 

 

袁紹は自分も跪いて田豊を立たせる。顔をあげた田豊の表情は何かを振り切ったかのように清々しい顔だった。

 

 

「戻羽様。私はあなたの軍師として、どのような場所であっても共に参ります」

 

「!………」

 

「ですから、戻羽様も存分に私をお使いください。戻羽様と、民の為に」

 

「………もち、ろんだ」

 

 

袁紹はそのまま田豊をゆっくりと腕で抱き、背中を撫でる。しながら、静かに泣いた。

 

心を傷つけて、それでも健気なまでに付いて行く。

 

その姿に自分の情けなさと、田豊の忠義に袁紹は心打たれたのだった。

 

一方、抱かれながらも田豊は動揺せず、ただそのまま抱かれたまま袁紹の優しい厳しさに寧ろ感謝をしていた。

 

普通の人間なら恨んでも可笑しくはないのだが、兎に角真っ直ぐな田豊はそんな感情に至る事は無かった。

 

このような聖人っぷりは田豊の長点ではあるが、欠点でもあった。

 

 

 

「私に、お任せください」

 

 

 

軍師は主の期待に応えるべく、知恵を巡らせ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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