真・恋姫無双~袁紹再臨(仮)   作:凡将モブA

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残酷な描写一つ入りまーす。これまでの比では無い位、文醜ハードです。

文醜はこんな性格じゃない!という方。残念だけどこれ二次創作なのよね。

悲劇的シーンだけ見たくない方は前半の文章だけ読めばいいと思います。多分大体察しは付くと思うので。

ああ…シリアル的構想で書きたかったのにどうしてこうなった。これも虚淵玄って奴の仕業なんだ(大嘘)




二人

 

 

 

 

話はつい少し前に遡る。

 

 

濮陽攻防戦、開始から約1時間半が経過していた時の出来事である。

 

 

「………はぁ、はぁ………さすがに、疲れたな…」

 

 

袁紹はこの頃、陣の後方で休んでいた。

 

何せ90分間、ぶっ通して戦い続けていたのだ。どんな人間だろうが疲れない筈が無い。

 

田豊は心配そうに献身的に水や食事を持ってきたり、布で袁紹の汗を拭いている。

 

 

「ですから無茶ですとあれほど言いましたのに…そもそも死ななかったのが不思議な位ですよ」

 

「戦場で僅かな兵士達が戦っているというのに、私が戦わなくてどうする」

 

 

 

まあそもそもこんな無茶な戦、前世なら私とて絶対にしなかっただろうな。

 

袁紹はその言葉を言いかけて、直ぐに呑みこんだ。

 

 

(一度死んで自分の命が安く感じるようになってきたのかもしれないな)

 

 

自嘲的に袁紹はそう思った。無論むざむざと死ぬ事はしないが、昔よりも無茶する事は非常に増えた様になったからだ。

 

 

「御自愛ください。戻羽様が亡くなってしまえば元も子もありません」

 

 

田豊は正面から袁紹を見据えて額の汗を拭く。

 

こうしている間にも田豊は戦況を度々見て指令を出している。

 

驚くべき事に田豊はこの短時間で実戦指揮を荒削りながら物にしていた。

 

訓練の時の最初は命令違反の対処や敵の動きの対応などに慌てて袁紹に対策法を相談していたのだが、今となっては動きに合わせてすぐさま冷静な対応手段を編み出していた。

 

田豊の才能の一片が窺い知れる一面である。

 

 

「しかし、まだでしょうか。敵の動きに可笑しな点はありませんし、『策』が見破られたという訳ではなさそうですが…」

 

「さてな。『二人』とも進軍に手間取ってるのやもしれん」

 

 

意味深に言葉を交わす二人。

 

それはこの場を良く知り、この場を良く見廻した者にはその意味がはっきりと分かる事であろう。

 

その答えは、次の場面に移った時こそ分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、『二人』は木で生い茂る小山の中を密かに進軍していた。

 

 

「痛ててて…枝がさっきから引っかかるぜ」

 

「我慢しないと。私達がこの戦いの決定打になる重要な役割なんだから」

 

 

それは文醜と顔良であった。その後ろには兵達が次々と、黙々としたまま続く。

 

そう、戦場に文醜と顔良の『二人』の姿は無かったのだ。

 

それだけではない。正規兵と義勇兵の両方の兵の半分は、二人とともに小山にいた。

 

つまり戦場には袁紹、田豊、正規兵500人、義勇兵500人しか存在していなかったのである。

 

そして援軍に来たと思ぼしき軍勢は文醜顔良が率いていた別働隊だったのだ。

 

しかし濮陽軍の内情を多く知らない黄龍は1000人の軍勢を見てそれを濮陽軍全軍だと誤解していた。

 

無論、佐校や劉石、黄巾賊の誰しもがこの事実に後々まで気が付く事はなかった。

 

そもそもそれほどの兵力差がありながら攻めきれなかった事自体が黄龍の誤算であったのだが。

 

 

「しっかし、まだ着かないのかよ。後どれくらいだ?」

 

「もうそろそろで敵の側面辺りに当たる場所に着くと思う」

 

「でも、何で後ろ側からじゃないんだ?楽でいいけどさ」

 

「私が聞いた話だと、あまり敵を追い詰めると逆に敵の戦意をあげちゃうんだって」

 

「ふーん。火事場の馬鹿力って奴か。お、もうここら辺でいいんじゃないか!」

 

「あっ、そうだね。それじゃ思昂ちゃんに言われた通り、旗を立てちゃおうか」

 

 

所定の位置に着くと兵士達は持っていた旗を小山に次々と立てていく。

 

これもまた田豊の策。

 

人は最初に受けた印象を深く信じ込みやすいものである。そしてその印象をすぐに疑う事は殆どの場合、あまり無い。

 

旗を多く立て、大軍の援軍が来たと錯覚させたのである。

 

実際、黄龍らはこれに完全に引っかかり、大軍が来たと思い戦意を消失してしまった。

 

もっとも、気づいたとしても所詮黄龍ら3人では兵の動揺までは抑えようはなかっただろう事だが。

 

 

「よし、皆立て終えたみたいだぜ!」

 

「うん。じゃあ、皆さん武器を構えてください!これから敵軍に突入します!」

 

「正規兵のあたい達が最初に前に出るから、義勇兵の皆は後から続けぇ!」

 

 

「「「応!!!」」」

 

 

文醜と顔良が合図すると兵士達もそれに応えて声を挙げる。

 

それを聞いた二人は正規兵達の指揮を取って黄巾賊の側面に突っ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在の状況へと至る。

 

黄巾軍は側面を突かれた事によって体制を大きく崩し、陣形はもはや形を留めていないも同然であった。

 

さらに文醜と顔良の武が猛威を奮う。

 

 

「おらぁ!死にたくない奴はどけどけどけぇー!あたいが吹っ飛ばしてやるぜー!」

 

「出来るだけ二人組になって各個撃破してください!はぁぁぁぁー!」

 

「いっっっやっふぅぅぅ!」

 

「これ以上はやらせるかぁー!」

 

 

二つの武器が勢いよく敵を蹴散らす様はとても爽快で、兵士達の戦意を駆り立てる。

 

その勢いに敵は恐怖しどんどん下がっては自分から挑む者はいなくなっていく。

 

 

「ひぃぃ…な、何て強さだ」

 

「正面で戦ってた眩しい奴も凄かったが、こっちの二人もやべえ…」

 

「次々きやがる!敵はどれくらいいるんだ!?」

 

「分からねえが、あの山見てみろ!多分相当いるぞ!」

 

「まずいんじゃねえか…?」

 

「も、もう無理だ…あかんかったんや…どうせこうなる運命だったんだ…逃げろぉー!」

 

 

状況が不利になるにつれて黄巾賊達も段々と逃走していく。

 

もはや黄巾賊は軍勢としての形すら留めてはいなかった。

 

 

 

 

その様子に、文醜はますます怒りを募らせていた。

 

 

(…なんなんだよ…こんな連中があたい達の故郷を滅ぼしたって言うのかよ…!)

 

(こんな連中に…あたい達の家族は…!)

 

 

(殺されたっていうのかよ…!!)

 

 

いや、文醜は失望していたのだ。許せなかったのだ。

 

虚弱な意思で賊になり、自分と同じ境遇の者達をいたぶってきた者達の姿に。

 

自分達がやってきた所業を棚上げにしながら、いざこうなると罪と罰を認めないで逃げようとするその行動に。

 

賊に家族を殺された自分が許さなかった。

 

 

「逃げるなよ………逃げんなよ、黄巾賊―――!」

 

「ひぃ!?ぐわぁぁぁ!!」

 

「あ…あぁ………」

 

 

文醜は斬り結ぶ内にとうとうその怒りを爆発させた。長年蓄えてきた負の念が、解放されてしまった。

 

鬼のような形相と化した文醜が、大剣で次々に敵の首を跳ね飛ばしていく。

 

文醜の姿はその度に血に塗れ、姿をますます赤く染めていく。

 

大剣も赤黒く刀身を濡らし、血を垂らす程に人の血を被った。

 

その姿に黄巾賊はおろか、数回の戦いを経験してきた正規兵や義勇兵すら恐怖を抱いた。

 

そして鬼は暴れるのを止めない。止められない。

 

 

「がぁぁぁぁ!!!」

 

「ぎゃ、ぎゃあぁぁぁぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして文醜が大剣をようやく地に突き刺した頃には…

 

 

「…こちらです。顔良様」

 

「…はぁっ!…はぁっ…はっ……」

 

「………」

 

 

物言わぬ死体と血の池だけしか、その周りにはいなかった。ただ、圧巻の地獄がそこにあった。

 

地に無造作に置かれた黄の巾は血でもはや紅色に染まっていた。

 

正規兵から文醜の暴れぶりを聞いて駆けつけた顔良ですら、口を閉ざした。

 

それは果たして文醜だったものなのか?その疑問が一瞬だけ顔良の脳裏に浮かび、気づいて慌てて消した。

 

自分とて同じ境遇にあった者だ。このような臆病な性格でなければあのように怒り狂っていたのかもしれない。実際、腹だ出しい思いが無かったと言えば嘘になる。

 

それを認めたくは無い。が、このような光景を目の当たりにされては認めざる得ない。

 

 

「…猪々子、ちゃん」

 

「………」

 

 

顔良が話しかけるが、文醜は答えない。

 

恐怖を呑みこんで、再び話しかける。

 

 

「猪々子、ちゃん」

 

「斗詩」

 

 

唐突に文醜が答える。無機質な声は、普段の文醜を思わせないような声色で問いかける。

 

表情もまた、影が刺したような無感動で機械的だった。

 

 

 

「人ってさ、幸せってさ、心ってさ、こんなに簡単に壊れるもんなんだな」

 

「猪々子ちゃん」

 

「たった一刺しで人は死ぬし、思い出も幸せも消えちまう。なんて安いんだろうな」

 

「猪々子ちゃん!」

 

「なんて、儚いんだろうな。なんで、幸せを捨ててまで殺し合うんだろうな」

 

「猪々子ちゃん!!」

 

「なんで、人はずっと幸せに生きていけないんだろうな」

 

「猪々子ちゃん!!!」

 

 

顔良は文醜を抱き締める。自分のただでさえ汚れた鎧が、さらに赤黒く汚くなる。

 

そんな事、どうでもよかった。

 

ただ、強くて、脆く、か弱いその体を、抱き締めずにはいられなかった。

 

 

「猪々子ちゃん、帰ろう」

 

「壊れても、また作ればいいよ」

 

「不幸な目に遭っても、幸せになる為に頑張ればいいよ」

 

「死にかけて、それでも生き延びてる事って、多分そういう事の為なんだよ」

 

「だから、帰ろう。その為に、思昂ちゃんも、戻羽様も、頑張ってくれるから」

 

 

顔良は抱きしめた文醜に赤子をあやすようにそう優しく語りかける。

 

文醜の肩が震える。目からは、一筋の涙が顔を洗い流すように垂れていく。

 

 

「…そうっ、だな。っく…その為に…頑張んなきゃなっ…」

 

「…うん」

 

「ああっ…うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

文醜はただ泣いた。顔良もまた泣いた。

 

悲しみを鎮める為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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