筆者ももっと他の小説を見て勉強しないと…
『復讐、怒りは糧とすれば凄まじい力となる。しかし―――自らの未来を読む思考を失うだろう。
…嘗ての私のように』
―――袁本初
顔良と文醜が袁家の侍女として仕えた次の日から、いきなり二人は多忙を極める事になる。
彼女らはまず家の雑用をこなしたり、買い物の手伝い、掃除、料理の勉強と多岐に渡って仕事をこなす事になった。
「おーい、水を汲んできてくれるか?」
「了解だぜ!」
「あ、そこの書類を向こうの棚に置いてきてもらえるかしら?」
「はい、分かりました!」
「うおおおおおお!頑張るぜ!!」
「そこ、必死になるのはいいですが少々煩過ぎます」
「アッハイ」
「猪々子ちゃんが済みません!!」
「…どうしてあなたが謝るのでしょうか」
仕事が終わるとすぐさま田豊の所へ向かう。
所詮庶民であったが為に文字もまともに習っていない文醜と顔良。故に田豊に勉強を教えてもらったりしていた。
「仕事が終わったら勉強しましょう。基礎的な字すらちゃんと出来てませんから、早めに覚えていただかないと…」
「うえー面倒だ…」
「猪々子ちゃん…教えてもらってるのにそんな事言っちゃだめだよ」
「まあ自分達の名前や真名、簡単な字くらいは出来てますから、これならそう時間はかからないとは思いますよ」
勉強も終わると夕食を食べ、片付ける。さらに軽く田豊の勉強会に出て頭に知識を詰め込む。
最後に寝る準備をしてからようやく就寝という、割とハードスケジュールな日々が毎日のように続いた。
二人が十分な知識さえ付けていればこんなぎっしり詰め込みはしなかったのだがそれを言っても仕方が無い。
二人は一種の拷問である勉強漬けに晒される日々の中、仕事をしっかりこなす事を何とか出来ていた。
…そうして忙しいと時間が経つのも早いもの。いつの間にかという感じで3か月が経過していた。
ある程度の基本知識を田豊の勉強会で体にまで染み付ける事が出来た二人は勉強会の時間を短縮してもらう事に成功し、その短縮された時間にようやくの余裕を付ける事が出来た。
そして…ある日、彼女らはその頃合いを見てこう切り出してきた。
「武芸を習いたい?」
袁紹の前で二人はそう願った。この時ばかりは陽気な文醜も表情を硬くし、真剣になっていた。
その場にいるのは袁紹だけだ。この相談を自分達が叔母達に話したところで断られるのは目に見えている。
そこで袁家次期当主ではないものの、御曹司の袁紹の頼みからならば二人の育成という理由で納得してもらえるだろうという顔良の考えだった。
無論、これに文醜も考案した顔良も躊躇や罪悪感が無かった訳ではない。
頼むという形式は取っているが、これは事実上利用すると同義なのだ。
しかし、今この時まで生きてきたのはこの為。先の事はどうでもいい。
「はい。命を助けてもらった身でおこがましいとは思いますが…」
そうだ、今まで私達が生きてきたのは―――!
「…復讐の為か?君達の親は山賊に殺されたと聞いた。その山賊を討つ為か?」
「―――っ!」
気づかれていた。そうだ、あの話を唯一聞いていたのは袁紹ただ一人。
叔母や田豊は「才能ある孤児を見つけたから家で雇いたい」と袁紹から言われただけだ。
本来ならそんな事は許されるはずもないが叔母方もああ言っていたのだ。叔母達の判断もちゃんとあったのだろう。
そうだ、復讐の為。私達から家族を奪った奴らへの復讐。
奴らは罪も無く幸せに暮らしていた村を滅ぼした。今度はその生き残りである私達がこの手で滅ぼし返す。
その為には力が必要だ。誰にも負けないような、そんな力を。
幸い二人は普通の人間よりも相当強い怪力を持っていた。だから素質はあると昔から自分達でも薄々は気づいていた。
だからこそ二人が最初に提案したのは力仕事。いや、寧ろそれしか無かった。
だが世の中全ての出来事はそう思うとおりには行かないのが常だ。特に二人はその意味では運が無いと言えよう。
袁紹は溜息を吐く。そしてこの事を予期していたかのように二人にとって恐ろしい事実を淡々と突き付けた。
「言っておこう。その山賊はもう討伐済みだ」
「な!?」「え!?」
二人は驚いた。二人は真逆にまるでその事を予期していなかったのように動揺した。
それもそのはずだ。二人にとっては山賊達を一般人が考えるよりもとても恐ろしいものと認識している。
その恐れ故に客観的に物事を見る事が出来ていなかった。
まだまだ暴れまわっては不幸を撒き散らしている事だろうと思い込んでしまっていた。
「当然だろう。もう君達が来てからもう3ヶ月過ぎている。幾ら手順やらと行動に制限がある官軍とはいえ、それだけ経っていれば討伐出来るさ」
「それにそこまでの規模でも無かったようであるしな」
それもそうだ。文醜、顔良らの村を襲ったのは千人もいかないような何処でもいる程度の山賊であった。
そのくらいなら官軍が討伐に行けば楽勝である。山賊を率いていたのが優秀な者であるなら話は別だったかもしれないが、
統制も取れていない山賊が抵抗しようと勝敗は明らかであった。
結果として官軍が現地に到着するまでに三週間。山賊は一週間も掛からず捕らえられたか討たれ、ほぼ全滅した。
つまりは約一カ月の間に討伐が完了していたのだ。その事実に二人は困惑した。
自分達の手で、と息込んでいた所にその対象が既に壊滅していたのだ。二人の怒りは行き場所を失った。
「おい…嘘だろ…そう言ってくれよ…袁紹、様…」
縋る様な気持ちで袁紹にそう詰め寄る文醜。顔良は黙ったまま立ちつくす。
顔良は慎重な性格だ。だからこそ、もう少し経てばこの事を危惧する事も出来た。だが余りにも早すぎた。
感情の整理がとても追い付かない。顔良は文醜同様に半ば混乱していた。
袁紹は無表情のまま言葉を発する。二人を突きつめる為に。
「どうした?君達をどん底に落としめた奴らはもう居なくなった。安心しないのか?それとも…」
「恨みをぶつけられなくて残念か?」
「…!!…それ、は…」
「お前達の考えている事は分かっている。自分達の家族の命を奪った山賊に対して復讐し、自分達の手で奴らに仕返ししようと思ったのだろう?」
「ち、ちがっ…」
「何が違うのか?違わないだろう。寧ろぴったりな程に的中しているはずだ。本当に違うか?」
「………」
文醜はとっさに反論するが自分達の想いを見抜かれ、何も言えなくなってしまった。
そんな文醜に構わず袁招は言葉を続ける。
「しかし、武芸を習いこの家を出て行き、奴らに復讐したところでお前達には何が残る?」
「残らぬさ。しかもたった二人であったならば逆に自分達が死ぬ事にもなりかねん」
「それに君達の親の意思に反する事ではないか?」
「え…?」
「君達自身が語ってくれただろう。お前達に対する愛情でもあるその言葉を」
そう言われて二人はあの時の親の言葉を思い出した。猪々子の親の言葉だ。
『…ああ…ただ生きろ、猪々子…斗詩ちゃん…それが私達の願いだ…』
願い。それは尊い望みだ。家族は生きて恨みを返せとは二人に言わなかった。家族が生きていたとしても二人に言う事は無かっただろう。
親は復讐などというような思いを一切持たずにただ『二人に生きてほしい』、そう願ったのだ。
「お前達は生きろと言われたのだ。復讐をしろと言われた訳ではなかろう?」
「ならばお前達は復讐などという次に繋がらないような事をするな。自分達の為に生きて何かを成せ」
「それが家族の本当の願いだと、私は思う。復讐や怒り恨みは…己の考えを…狭める…」
袁紹は遠い目で最後は呟く様に言った。何かを後悔するような口ぶりと表情だったが、やはり直ぐに元の表情に戻った。
「…君達はこれを聞いてどうしたい?これでもまだ、その為に武芸を習いたいか?」
「………どう…って…」
「……時間を…ください…」
俯いて聞いていた顔良が静かにそう言った。
「良かろう…その時になったら言ってくれ。人払いさせよう」
「………行こう、猪々子ちゃん」
「斗詩…」
二人はゆっくりと部屋から去った。袁紹も椅子からゆっくりと立つと窓から外を見て再び溜息を吐いた。
「…ままならぬものだな。物事も、世の中も………人の想いも」
そう呟いて、そのまま言葉は消えた。窓からは夕焼けが差していた。
二人は一週間もの間、気持ちを整理した。もちろん今でもあの時の山賊は許せる筈もない。
しかしあの時の親の姿が、二人には生涯忘れられないものとなっていた。
文醜でもあの時の言葉を一句一句間違えずに覚えている。それほど印象深かった。
そして二人は結論を出した。
―――ならば、私達はあの時の親の姿を尊敬してこう在りたいと思う。
誰かを守って生きる。だけど、守って死なない。あの時の私達のような人間を生み出さない為にも。
私達は親の願いのままに生きて、親の願いを憧れとする。それが私達の生き方となった。
「…それが、君達が出した答えか」
二人は再び袁紹の部屋にいた。今度の二人は迷いを振りきったかのように清々しい顔をしていた。
二人が出した答えは、誰かを守る為に武芸を習いたい。
その為に武将となってこれ以上誰かのために自分達のような不幸な人を出さないようにする。
それが二人の結論だった。これも親の言う事に背く事なのかもしれない。
しかし、復讐をするよりも喜んでくれるだろう。何より、これが私達の夢にもなったのだから。
袁紹も微笑を浮かべて二人に対し喜んだ。
「君達の将来は、君達が決める事だ。私がこれ以上、とやかく言う事ではない」
「私がしっかり支援しよう。叔母も許してくださるはずだ」
「「ありがとうございます!」」
「いや、袁家に生まれた者として当然の事をしたまでだ。…妹もそうであれば…」
「袁紹様?」
「いや、何でもないさ。…武将になるのだろう。どうだ、このまま私直属の将にならないか?」
「え?」「袁紹…様の?」
二人は驚いた。自分達はただの庶民であり、孤児であった。
その自分達が将として勧誘された事に驚かないはずはない。
いくら最近は女の将が多いからと言っても、何ら功績も挙げず、まだ武将としての心構えすら出来ていないような女子供を将とするのだ。
本来なら気が狂ったとも言えるような発言だ。しかし袁紹には良き将となるだろう確信があった。
理由は言わずもがな。自分がかつて、いや今も信じている”文醜”と”顔良”だからだ。
「うむ。…嘆かわしい事だが今の情勢は些か不安定だ」
「叔母が愚痴を零していたがどうやら今は十常侍や宦官達が漢の政治を牛耳る状態になっているらしい」
「彼らが世の中を支配して安定した政治が出来るならそれはそれで構わない。が、」
「奴らはそれを利用して私腹を肥やしているらしい。そんな政治が続けばいつか漢は崩壊してしまう」
「反乱などの混乱もいつか起こるはずだ。その時に備える為に私に従う優秀な将が必要なのだ」
「田豊もその為に引き入れたといっても過言ではない」
「私達も…?」
「君達は偶然だがな。しかしその意思を持っていれば君達は優秀な将として活躍出来るだろう」
「君達の力をくれないだろうか?無論、断ってくれても構わない。その場合はもっと良き主を紹介しよう」
一瞬二人は顔を見合わせたがお互いに頷くと笑顔で答えた。
「いえ、もう決心はつきました。ね、猪々子ちゃん?」
「ああ!あたい達、袁紹様の将になるぜ!」
「本当か?とても助かる!」
「へへっ、私達は袁紹様に助けられたからな!助けてくれなきゃ私達は生きてすらいなかったし」
「その恩を生涯をかけて返したいんです。むしろ手伝わせてください!」
「ありがとう…」
袁紹は頭を下げて感謝した。実際袁紹はこれを内心酷く喜んでいた。
何せ、先頭に立って戦う武将候補がおらず、田豊は頭は切れるが武芸に関してはからっきしである。
総大将と言える袁紹自身が積極的に戦う訳にもいかなかった。そもそも苦手という訳ではないが得意という程でもない。
最悪の場合なら、自分も先手をきって戦っていたかもしれないが。それだけの勇気だけはあった。
「よし、ならば私は戻羽と呼んでくれ。それが私の真名だ」
「あたいは猪々子だぜ!よろしくだぜ戻羽様!」
「斗詩と言います。どうかよろしくお願いします、戻羽様」
「うむ。よろしく頼む」
こうして文醜、顔良の新しい人生は本当にここから始まったのだった。
お ま け
…と言いたい所ですが僅かに現時点でのネタバレを含んでいますので活動報告の方に書いてます。
おまけは基本的に別作品にここの袁紹が出たら…という筆者のくだらない妄想を書いています。
次があるのか分かりませんが今回は「Fate編(袁紹能力値)」です。
これは聖杯戦争に袁紹がサーヴァントに出たらどんな能力値なのか、という妄想です。
向こうの方にも書いていますが次のような要素が認められない方は見ない方がよろしいです。
・こんなの書いてる暇あるなら本編あくしろよ
・主に武器のネタバレ
・ちょっとチートかもしれない(一応よくあるような程度の能力にはしたつもり)
・矛盾があるかもしれない
・筆者はにわか(アニメzeroは適当に見た。エクストラはやった事ある程度)
以上に問題が無くて興味のある方は見ていってね!感想もあれば欲しいです。
本編の感想もね!あいやすみません感想乞食で済みません駄文で済みませんだからキツイのは無しで
ウ ボ ァ -