ソードアート・オンライン~紅の心意―The Cardinal Mind   作:坂道

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すいません中編ができちゃいました。途中で疲れた……すいません(涙)


鍛冶屋のアタシと仮面のキミ (中編)

第25層 ルプス鉱山 鉱山洞

 

「ここに来るのも久しぶりねぇ……」

 

 ウプサール荒野を抜け、ルプス鉱山に辿り着いた。鉱山内は薄暗く少し湿ったような空気の重さと土の澄んだにおいがしていた。ルプス鉱山は武器に必要な鉱石などが採掘でき、鍛冶職人などは鉱石を求めて訪れる。

 

 レトとリズベットは今、鉱山洞のフロア9に居た。

 ルプス鉱山は全15フロアに分かれており、フロア1の入り口は真っ直ぐ作られた長い坑道でモンスターが出現しないフロアで、この先を向けた先がフロア2の中央区となっている。中央区を基点にフロアの道が三つに分かれており、右の坑道は3~5フロア、左の坑道か6~8フロアでどちらも鉱石アイテムの採掘に適したフロアで比較的モンスター出現率は低い。

 残された真ん中のフロアは最深部へ続く坑道。9~15フロア、フロア数が他の道と違い多く、レア度の高い鉱石が多いが、モンスター出現率も高い。最深部には<ダーク・インサイト>といったフロアボスもいるが二週間前に討伐されたらしい。

 

「おい」

 

 レトはランタンを持ちながら自分の前方を歩くリズベットに声をかける。中央区以降からは点灯がなく、ランタンを持参しなければいけない。

 

「君……ルプス鉱山に来るならランタンは必須アイテムだろ、何で忘れたんだ?」

 

(仕方ないでしょう!、あんたを捜すのに手間取ってそれどころじゃなかったんだから!)

 

 リズベットはルプス鉱山に用があったわけではなく、仮面の男が所持しているモンスターの心が欲しいだけでルプス鉱山に来る予定はなかった。

 

 あの後、急いで店を閉じてレトを捜したが見つからなかった。諦めてパールの転移広場に戻ると、入り口付近に設置してあった《何でも屋》と書かれた木造りの地味な掲示板が目に入った。

 リズベットは男が言っていた「何でも屋」という言葉を思い出し掲示板に近寄った。それには実行中と表示された依頼書が貼ってあり、依頼内容に[吸血の牙 10個]と目的地が書かれいたの確認し急いでルプス鉱山にレト追いかけにいった。

 目的地は《第25層 ルプス鉱山》とかかれてあったが、レトを捜すのに夢中になっていたリズベットは25層の町で売ってあるランタンを買い忘れてしまっていた。

 

(そもそも……あそこでモンスターの心を売ってくれれば、あたしがここに来ることはなかったのよ。ここ暗くて苦手なのに……)

 

 リズベットは以前のもルプス鉱山に訪れており、鍛冶屋の知り合いの仲間と何度か採掘に来ている。

 

(でも弱気になっちゃいけない!、全てはモンスターの心のため……あれを売れば自分の店を建てれのも夢じゃない……)

 

 自分の店を持つのは、鍛冶屋をするプレイヤーの目標でもある。自分専用の店を持つことでより強力な武器の強化なども可能になる。

 彼女自身も自分の店を経営したい、という小さい頃からの夢であり、たとえ仮想世界とはいえ夢をかなえたいという思いがある。仮想世界は確かに現実ではないが今ここで生きている以上、ここがプレイヤーたちの現実である。

 

 リズベットはレトの質問に答えず、自分のことで無我夢中になっていた。

 

「俺、なんか悪いことしたかな……って、君そこの足場に気をつけて……」

 

――つるん

 

「きゃっ!?」

 

 レトの注意が聞き及ばず、リズベットは坑道の湿気っている地面に足を滑らせ尻餅を付いた。

 

「あぁもう最悪!、服が泥だらけ……」

 

 ルプス鉱山は水脈が流れているという設定で、坑道は奥に進むにつれ地面が湿っている。レトは呆れながらリズベットに近寄る。

 

「大丈夫か?」

 

 レトはリズベットに右手を差し伸べる。

 

「あ、ありが……きゃあー!!」

 

 リズベットはレトの差し伸べた手を振り払い、地面に尻餅をついたまま後ろに下がる。

 

「ど、どうした!?」

 

「どうしたもこうしたもないわよ!、ランタンの光であんたの仮面凄く不気味なよ」

 

 レトの仮面がランタンの火の光に照らされ、リズベットには不気味なものに見えていた。

 

「お願いだからそれ以上近づかないでよ、この変態仮面!」

 

「なっ!……前から言おうと思っていたが、その変態仮面はやめろ。この仮面はギルドの名を挙げるために着けてるだ、変に言うな!」

 

 自分の顔に指を指しながらレトは言う。レトはこの仮面を割りと気に入っているので変態仮面と呼ばれるのは心外である。

 

「じゃあなんて呼べば良いのよ!」

 

「それは普通に名前で……そういえばまだ俺たちお互いの名前いっていなかったな……」

 

 レトはリズベットが会ってからもう一時間近く一緒にいたが、二人とも自分の名前を言っていなかった。

 

「俺はレト、よろしく……」

 

 レトはもう一度リズベットに近づき手を差し伸べる。

 

「……リズペット……」

 

 差し伸べた手を掴まずに、ムスッとした顔で泥を払いながら立ち上がり名前を言った。

 

「はぁ~、とりあえず先を急ごう……ゴーフバットはそろそろ現れるはずだ」

 

 今度はレトが前を歩き始めると、リズベットの方に振り返る。

 

「それと、鼻に泥が付いてるぞ」

 

「えっ//////」

 

 それを聞きすぐさま服の袖で顔を拭くが、リズの袖は泥で汚れていて、泥を広げてしまった。レトはアイテム画面から布切れを取り出しリズに放り渡す。

 

「ありがとう……」

 

「くすっ……女の子だからもう少し見た目に気をつけたらどうだ、リズベットさん」

 

「大きなお世話よ!!」

 

 リズベットは顔を赤面に染め上げながら怒るが、レトはクスクスと笑いながら足を前と進めていた。

 

(こ、こいつ……アスナにも言われた挙句、見ず知らずの変な奴にも見た目のことを言われた)

 

 ふんっと首を横に向けながらレトの隣を歩いた。

 

---------

 

 

ルプス鉱山洞 14フロア

 

 最深部の手前のフロアに着いた二人は、ゴーフバットを捜していた。ゴーフバットは昼間は14フロアで睡眠をとっている。夜間はフロア全域に飛びまわりプレイヤーに奇襲攻撃をするため、油断をしていると後ろ付かれる。

 今は16:30、もうすぐあと一時間も経てば目を覚ますであろう。

 

「あれじゃない……」

 

 リズベットが指を指した先は天井である。上にランタンを掲げると無数のコウモリが天井に足を着けぶら下がっていた。

 

「うげぇ、さすがにあの量は気持ち悪いわねぇ……」

 

「同感だな……」

 

 だいたい18体くらいのゴーフバットがいた。ゴーフバットは口と目がでかく、黄色と紫といったグロテスクな色を知っており、それが沢山上に吊り下がっていると思うとゾッとする。

 

「でもどうするの……あんな上にいたら攻撃が届かないじゃない……」

 

「そこでこれを使う」

 

 レトが腰のアイテムバックから出したのは白い球体を取り出した。ランタンをリズベットに預け、球体を天井に向かって放り投げた。

 

「目をつぶれ!!」

 

「えっ?」

 

――パァーーーーーーン

 

 白い球体は天井にぶつかると炸裂し周りは物凄い白い光に包まれた。

 

 光が消えると天井にぶら下がっていたゴーフバットがボトボトと落ちてきた。レトが使用したのは閃光弾、ゴーフバットは目を開けながら寝ているため突然の光に驚き落ちてきた。

 

「よしこれで攻撃がとど……」

 

「いきなり何してのよ!?」

 

 するとリズベットはレトの胸倉を掴みながら強張った顔を近づける。

 

「いや、言っただろ……目をつぶれって……」

 

「そういうことは先に言え!?」

 

 リズベットは両手で胸倉を掴みながら腕を振り揺する。レトは首をガクガク揺らされながら話す。

 

「そ、そ、それより!モンス、モンスター!」

 

 ゴーフバットの何体かが、目を覚ましこちらに向かってきた。

 リズベットの腕を放し解放されたレトはふらふらしながら剣を構える。

 

「き、君は下がってろ……」

 

「バーカ、私も戦うわよ……それと全然格好ついてないから」

 

 リズベットはメイスを両手で持ち構える。ゴーフバットの一体リズベット目掛け飛びかかる。

 

「おい、そいつ結構つよ……」

 

「ふんっ!」

 

 リズベットの目の前にいたゴーフバットは大きく右にスイングされたメイスに当たり、レトの足元まで転がってきた。ゴーフバットの顔はへっこんでおり、そのまま消滅してしまった。

 

「…………」

 

「で、何か言った?」

 

 メイスを肩に置き、左手を腰に添えながら得意げに話す。

 

「いえ、何でもありません」

 

(さすがメイス使い……威力が凄い……)

 

レトはリズの攻撃力の高さに顔を青ざめていた。

 

「さぁ、相手が怯んでるうちにとっとと片付けるわよ」

 

 リズベットはゴーフバットの群れに飛び込んでいった。レトもリズベットに続きゴーフバットの群れに切りかかる。ゴーフバットたちは先ほどの閃光弾より前が視えておらず命中率が落ちている。二人は隙を付き次々と倒していった。

 

 

--------

 

 

 ゴーフバットを一掃し、目当ての[吸血の牙]が12個ほどドロップした。レトがドロップアイテム回収しているとレベルアップ画面が現れた。レトは今の戦闘でレベルが27となった。

 

「よし、レベルが上がった」

 

「あっ、あたしも上がった」

 

 レトが横で喜んでいると、リズベットが隣でレベルアップ画面が表示されていた。それを横目で見てるとレベル37と、レトより10も上だった。

 

「あれ、君って鍛冶屋だよね……なんでそんなにレベルが高いんだ……」

 

「これくらい普通よ、あたしたち職人だってレベルを上げないとスキルが成長しないでしょ……あんたはレベルいくつになったのよ」

 

 リズベットがレトのステータス画面を覗いた。

 

「レベル27……ぷっ、くっくく……あんたそれ低すぎでしょ……ここの層の敵にギリギリ適してるくらいじゃない」

 

 リズベットはお腹を抱えながら笑っていた。レトのステータスは今の最前線と比べレベル25と低く、武器や防具も10層クラスの装備で固められていた。

 

「仕方ないだろ、俺はゲームに参加するのが皆より遅かったんだ……それにソロだし……」

 

「それ言い訳にしか聞こえない」

 

 リズベットは片手で口を押さえながら笑いを堪えていた。

 

「ほっとけ……」

 

 レトは腕を抱えながらそっぽを向け、不機嫌そうな振る舞いをしていた。

 

「まぁまぁ、そんな気を落とさないで……あ、なんだったら今からあのときの取引の続きを……」

 

「しっ!」

 

 レトが指を前に立てる。リズベットはレトの不自然な行動に疑問に思う。

 

「何かいるぞ……」

 

 声を低くしながら、ランタンで周りを確認するが特に変わった様子が無かった。

 

「なによ急に……わかった、あたしを驚かせるのが魂胆ねぇ。お生憎様、そんなことに引っかかるほど……」

 

――シャーーーー!

 

「上だ!!」

 

 レトはリズベットの腕を引っ張り、リズベットを抱きかかえながら大きく横へ跳んだ。すると坑道の天井から巨大な腕をした大きなカメレオンが落ちてきた。レトの胸に顔うずめたリズベット起き上がりモンスターを確認する。

 

「うそ、ダーク・インサイト!?」

 

 ダーク・インサイト、ルプス鉱山の最深部に出現したボス。このボスは二週間前に討伐された情報が入っていたはずだが、今目の前にいるのは紛れも無く情報に載ってあったボスである。ボスの横に放置してしまったランタンから窺えるのは、ギョロっとした眼球が目をくるくるさせ、黒い皮膚をした巨大なカメレオン。大きな腕と尻尾には鋭い刃が付いていた。

 

「どうしてフロア14に……それに色が違う……亜種か!?」

 

 ダーク・インサイトはレトが落としたランタンを踏み砕き、坑道はたちまち薄暗くなった。

 

(まずい、あいつは暗闇を徘徊するハンター……俺たちから見えなくてもインサイトにはみえる!)

 

 インサイトは暗闇でも相手の居場所がわかり、暗闇の中では圧倒的有利である。

 2つの青く光る眼球が闇の中で動き回る。

 

「どうしよ、真っ暗で見えない」

 

「動くな!」

 

 暗闇の中、不意に動こうとしたリズベットの腕を掴みとめる。

 

「うわぁ!?、掴まれた!?」

 

「落ちつけ、俺だ……来い!」

 

「ちょっと、どこにいくのよ」

 

「今の状態じゃまともにアイテムも使えない。最深部には明かりがあるはずだ!」

 

 リズベットの腕を引っ張り、最深部のフロア15へ走った。ダーク・インサイトは二人の動きを見逃さず壁を張り付きながら迫ってくる。レトは後ろを振り向き、残っている閃光弾を投げる。

 パァーーーーン、という光ともにダーク・インサイトは閃光弾の輝きで視界を奪われ動きが止まる。その隙に二人は最深部へと移動した。

 

フロア15 最深部

 

 最深部はドーム状の少し広い空間で、光る鉱石《ブルーライト》呼ばれる巨大な鉱石の塊が天井に突き刺さており、青く輝く光が広い最深部の洞窟の真ん中を照らしていた。

 

 フロア15へ着いた二人は息を荒らしながら最深部の照らされている中心に座り込んだ。

 

「ここなら、アイテム画面を表示できる……」

 

 レトはアイテム欄から転移結晶を取り出す。

 

「リズベットさん、早く転移結晶を……?、どうしたんだ?」

 

「やば……あたし、転移結晶を持ってくるの忘れてた……」

 

「なんだと!?」

 

 リズベットが必死にアイテム欄を確認するが転移結晶がなかった。焦る二人に追い討ちをかけるようにダーク・インサイトが追いついてきた。ダーク・インサイトは壁を登り、天井の《ブルーライト》を覆うように張り付くと、急にフロア全体が薄暗くなり、ブルーライトの輝きが失われいった。どうやら光の調整はボスが管理しているらしい。フロアは薄暗くなるが先ほどの狭い坑道よりは多少視界がはっきりしていた。

 

「君は俺の転移結晶で脱出するんだ」

 

レトは自分の転移結晶をリズペットに渡そうとするが拒む。

 

「ば、馬鹿そんなことできるわけ、あんたはどうするのよ!」

 

「四の五の言っている場合か、このままだと全滅するぞ」

 

 二人はもめているがダークインサイトは待ってはくれない、天井から飛び降り二人に襲い掛かる。リズを前に押し飛ばし、レトは後方へと下がる。二人はボスを挟むように分かれてしまった。ダーク・インサイトは先ほどの閃光弾で気が立っているようだ。

 

「たかだか25層のボスなんかに……」

 

 リズベットは立ち上がりメイスを構える。ダーク・インサイトが口から長い舌を出しリズベットに迫る。メイスで防御姿勢に入る。すると両手に持っていたメイスが舌に巻き取られ、メイスを奪い取られそのまま口の中へ飲み込んだ。

 

「武器を飲み込んだ!?」

 

 飲み込んだメイスを喉元でごくりと飲み込み、げっぷをする。

 リズベットは直ぐに新しい武器を取り出そうとするが、ダークインサイトがリズベット目掛け唾液を吐く。リズベットは避けようとするが左足に付着してしまう。

 

(危なかった、距離をとらないと…………!?)

 

 リズベットが足を動かそうとするが、何か錘をつけられたかのような感覚が左足にかかり、そのまま倒れてしまう。左足を見ると、足が石のように固まっていた。

 

「足が……動かない……」

 

 ダーク・インサイトは右腕を振り上げ腕に生えてある鎌のような鋭い刃をリズベットに向かって振り下ろす。リズペットは必死に足を動かそうとするが左足が動かない。

 

(し、死ぬ……)

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 ダーク・インサイトの下を回り、両手持ちで【フェル・クレセント】を巨大な腕にぶつける。腕は微動だにせず攻撃が弾かれるが、振り下ろす先をずらすことができ、リズベットの横隣に刃が振り下ろされた。

 

「早く逃げろ!!」

 

「無理……動かないの左足が!?」

 

 左足が石のように灰色になっていた。

 

(石化!?、聞いたことが無いぞ……)

 

 ダーク・インサイトが放つ唾液は石化状態にさせる効果があり、相手を動かなくしてから束縛してから攻撃をたたみかけるアルゴリズムを持っている。

 現在石化といった状態異常は最前線でも情報が無く、通常のダーク・インサイトにはそのような特性は持っていない。

 

 レトはリズベットに近寄ろうとするが、ダークインサイトがもう片方の腕で横振りを仕掛けて来る。レトは咄嗟に剣でガードするがそのまま右方向へ吹き飛ばされる。地面を擦るように背中から倒れ、体勢を立て直す。

 

(くっ、なんて力だ)

 

 今の攻撃だけでHPが半分以上持っていかれた。先ほどソードスキルで相手に攻撃を仕掛けたが、黒い皮膚は頑丈でダメージ受けた様子もなく、ボスのHPバーに変化は無かった。

 インサイトは標的をレトに換え、襲い掛かってくる。剣を構え相手に剣先を向けるが、インサイトはレトを跳び越し、壁に引っ付くと、背後から唾液を放ってくる。

 唾液を避けるが、インサイトはそのまま唾液を放ちながら、壁から跳び下りてくる。

 唾液を避け切り、相手の鎌攻撃をは【ターン・スライド】で避け、インサイトの背後に回る。後ろから攻撃を仕掛けようと考えたが、インサイトはレトが後ろにいることが分かっているかのように刃を付けた尻尾を鞭のように振ります。

 

(それにこいつ速い上に……頭が良い……)

 

 インサイトは目は360度の視界を持っており、背後を突こうが視えている。素早く振る尻尾を紙一重で避け続けるが、いつまでも持つはずも無い。

 インサイトは尻尾を横薙ぎに振りながら旋回する、レトは後方へ離れるがその隙を突き、唾液を放つ。レトは武器を左手に持ち替える。剣を庇っての行動が右腕と左足に唾液が付着してしまう。

 

「右腕が……」

 

 唾液のついた右腕が石化し始め、左足も脛の部分から石化が始まった。インサイトは動きの止まったレトに突進を仕掛けてくる。

 

「くそ!」

 

 レトは左手に持った剣を逆手に持ち、剣で左足を切り落とした。切り落とされた足は消滅し、右足だけで体制を整え、【フェル・クレセント】をインサイトがいる方向とは別の方向に発動する。レトは【フェル・クレセント】の間合いをつめるモーションを利用し、回避に使った。攻撃をうまく回避するが左足が無いため無造作に転がってしまった。転がった先には身動きのとれないリズベットのところだった。

 

「だ、大丈夫……ううっ!!」

 

 リズベットはレトの切り落とされた足を見て、口を押さえてしまった。HPバーも残り少なくもうとても戦えるような状態じゃない。レトは剣を杖のように使い立ち上がろうとするが、剣の耐久値が無くなり消滅してしまう。最初の攻撃で耐久値がほとんど持っていかれたのだろう。そのまま倒れる、レトはメニュー画面から武器を取り出そう試みるが、右腕が動かないとメニューは開けない。

 それでもレトは再生し始めている左足を地面につけ立ち上がろうとする。

 

「もういいよ、あんただけでも転移して逃げて!」

 

 リズペットの石化は腹の辺りまで進攻しており、とても動ける状態じゃない。

 

「いやだ……」

 

 左足を軸に膝をついた形となっているレトはダーク・インサイトのいる方向に顔を向けながら拒む。

 

「このままじゃあんたが死んじゃう、早く……」

 

「いやだ!!」

 

 レトは強く声をあげる、フロアが木霊するかのよう響き渡る。リズベットはその迫力に唖然とする。

 

「諦めない……目の前で助けられる人がいて、俺は置いていくことなんてできない!!」

 

 リズベットはレトの言葉に衝撃を受けた。こんな状況でまだ他人のことを考えている、普通なら人間なら直ぐに逃げるところだろう。だがこの男は敵に背を向けることなくたたずんでいる。

 

(あたしってば……情けない……)

 

 レトと一緒にこのルプス鉱山を一緒に渡り歩いた。彼は一瞬でも不自然な真似をせず、自分よりレベルが低いのに先陣を切って戦っていた。私がここにきた理由はアイテムを騙し取るようなこと……そんなこと考えてる私を疑いもせず手を差し伸べてくれた。

 

(あたし……最悪だ……)

 

 ダーク・インサイトはこちらに気付き迫ってくる。レトは重い右腕をぶら下げながら睨みつける。

 

「レトー!!」

 

 リズベットの声に反応し、後ろを向くと刀が飛んできた。レトは左手で鞘に収まった刀を掴む。

 

「あんたが欲しがってた<牙刀>よ……それ使って!」

 

 レトは迫るダーク・インサイトに顔向け、石化した右腕を動かそうとする。

 

「動け……」

 

 すると、レトの背中から紅いオーラが浮き出てきた。右腕の石化がとまり、パキパキと剥がれる様に石化が解けてきた。

 ダーク・インサイトは両腕の鎌をレト目掛け振り下ろす。

 

「レトーー!!」

 

「動けーーーー!!」

 

 

――Crimson Limit 発動

 

 

 振り下ろされた鎌はレトの抜刀の横薙ぎにより砕け散った。

 レトのHPバーのレッドゾーンが紅く点滅し、気付くと左足が再生されていた。

 インサイトは自分の鎌が切り落とされ激怒し唾液をレトに放つが、レトはもうそこにはいなかった。

 紅い閃光が薄暗いフィールドを駆け巡り、インサイトはレトを捉えることが出来ない。インサイトは闇雲に尻尾を振り回し始めると、紅い光が通り過ぎると尻尾が切り落とされいた。

 インサイトは呻き声をあげ、天井の《ブルーライト》に跳び、鉱石に張り付いた。

 

「紅く光ってる……」

 

 天井を見上げるレトは紅い光に包まれ、辺りを照らし出していた。

 上からインサイトが唾液を放ち始める。レトは壁を走り唾液を避けながら近づく。隙を突き壁蹴りしてダーク・インサイトの間合いに入り、踵落しで頭を蹴り、落下させる。

 ダーク・インサイトは地面に這い蹲り、奇声を上げながら空中で身動きのとれないレトに跳びかかる。

 レトは空中で刀を両手で持ち、刀を逆刃に構え、急降下する。

 

「はあああああああー!!」

 

 インサイトが折れた鎌を新しく生やし、斬りかかるが、レトはインサイトの顔の目の前にいた。レトはインサイトの頭上を逆刃向いた刀を渾身の一撃で振り下ろす。

 

「【アビス・ブレイク】!!」

 

 振り下ろされた刀はインサイトを叩き落とす。地面に叩きつけられたインサイトは粉々に消滅してしまった。

 

 

 ダーク・インサイト消滅後、辺りは薄暗くなり、レトを纏っていた紅い光も無くなった。ダーク・インサイトが消滅したことで石化が解け、リズベットは動けるようになっていた。

 

「レト……死んでないよね……」

 

 リズは立ち上がり、薄暗いフィールドを探し回る。辺りは静けさに包まれリズベットの不安がよぎる。

 

――ガチャ、ガチャ

 

「な、なに!?」

 

 暗闇の中《ブルーライト》輝きが無くなり、辺りは何も見えない。物音がどんどんとこちらへ近づいてくるのが分かる。リズベットは息を呑み、身構える。

 

――パァーン

 

「よっ!」

 

「キャーーーーー!?」

 

 いきなり目の前が青く光、仮面に反射した青い光がレトの仮面を不気味に映し出した。リズベットは驚き、豪快に後ろに倒れる。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないわよ、いきなり目の前に出ないでよ!?、先より不気味よ!!」

 

 レトが持っているのはランタンに入れたブルーライト。ブルーライトを採取すると他の鉱石が輝きをなくし、この鉱石だけ残った。

 

「いや~、ランタンに使えると思ってな」

 

 レトはランタンを右手に持ち、頭を掻いていた。

 

「いや~じゃないわよ!、もう早くここからで……」

 

「そうだな。行こうか……」

 

――ガシっ

 

 すると、レトが足を動かそうとすると、リズベットが地面に座ったまま、手で片足を掴まれていた。

 

「ごめん……腰を抜かした……」

 

「へっ?」

 

 リズベットは先ほどの衝撃で腰を抜かしたそうで、腰に力が入らなくなっていた。

 

「仕方ない、背負ってやるよ」

 

「なっ、イヤよ!……あ、あんたみたな仮面なんかにおんぶしてもらうなんて……」

 

 リズベットは慌てて顔を逸らし両手を前に出し、交互に振っていた。

 

「はぁ~……これでいいか……」

 

 するとレトが黒い仮面をはずし素顔をだした。リズベットは自分と同じくらい歳の顔と想っていたが、彼の素顔は大人びたイメージがあった。

 リズベットがしばらくレトの顔を見惚れているとレトが背を向けてしゃがんだ。

 

「ほら……ぼっとしてないで早く……」

 

「え、うん……」

 

 リズベットは呆けたままレトに体を預け背負ってもらった。

 

「お、重くない?」

 

「重くないよ、リズベットさんは軽いから……」

 

 レトはリズベット背負い歩き始めた……

 

 

 

 




リズベットがドジっ子になってますね。
というか主人公の武器が壊れすぎですね……

今回、書く量が作者的には多かったです。次回の後編は少し短くなるかもしれないです。

 そろそろ主人公のプロフィールを載せたほうが良いかもしれないですね。私的には読者様たちがご想像で考えてある容姿ほうがいいと考えていますが、一応書いてみようと思います。
 私はテイルズのあるキャラを主人公に似たてて考えて小説を書いています。この話が終われば書きたいと思っています。

 ご感想よろしくお願いします。

 
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