ソードアート・オンライン~紅の心意―The Cardinal Mind   作:坂道

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この前の戦闘シーンからです……どうぞ

それと鞘にダメージ判定はありません、衝撃だけが伝わります!!


舞い踊れ‐紅の斬光

 

 二人の間合いは1メートルもなかった。フロアの壁に追い込まれたローゼルは手から弾かれた短剣が宙を舞い重力に逆らえず床に落ち、金属音が鳴り響く。

 

 金属音が鼓膜に震わせたときには、レトは次の攻撃に入っていた。

 左手の逆手に持った刀がスキルによりライトエフェクトすると少し腰を落とし身体を両足で床を蹴り飛び上げ、逆刃に向いた切先をローゼルの顎の下から振り上げる。

 刀のアッパーによりローゼルは宙に舞い、同じく技で飛翔したレトが地面から7メートルくらい離れた空中に二人はいる。

 

 身体が浮かび上がっているのが判る、この状況ではお互い身動きが取れないはずだが、レトは宙に浮かび上がった状態で攻撃に入る。

 殴り上げられた顎を戻し視界がレトに移るときには、違う衝撃が身体に走っていた。空中で左足の中段の突き蹴りから右足の下段の逆蹴りを身体を捻りながら仕掛ける。

 しかしその蹴りは打撃というダメージ反動ではなく蹴りスキルによる斬撃付加が入った蹴り、レトは蹴っているのではなく斬っているのだ。

 

「ま、まだ……」

 

 スキルで短剣を回収するが、手に戻った瞬間レト蹴りによりまた弾かれてしまう。

 【クイック・シフト】はその性能の上に、剣が戻るときに僅かな硬直がある。レトはその僅かな硬直を狙って即座に武器を弾きに入っている。

 

―こいつ……スキルの弱点が解ってる、それに……

 

 二人は確実に下に下降している筈だが、落ちるスピードがあきらかに遅い。それはレト攻撃によるものと……そして壁である。

 レトはローゼルを壁際に追い詰め、空中からの剣と鞘、そして蹴りの連続攻撃で壁にローゼルを叩きつけており、ラグが生まれている。

 攻撃は決して速くはない。しかし、刀・鞘・両足からの流れるような空中からの連続攻撃……、まるで四本の剣と同時に戦っているかのような錯覚がローゼルには想えた。

 

―攻撃から抜け出すこと出来ない……

 

 両足を交差させ十字を描く蹴り斬り、左手の刀からの右一閃、右手の鞘での突打撃よる壁との距離を戻す。ローゼルのHPバーは見る見るうちに減り半分を切っていた。

 ローゼルは自身の死が迫っているのが、HPバーで理解した。

 

―いやだ……まだ私には……やることがあるのよ!

 

 レトの斬撃を振り切るように壁を両足で蹴りレトに体当たりを仕掛けるが、くるりとレトは身動きの捕れない空中でありながら、身体を横へと逸らし避ける。

 

「また隠蔽スキル?……」

 

「違うよ」

 

 レトが空中でバランス良く身動きをとっているのは、基本システムアシストによるサポートである。空中で体制をシステムが自動的に立て直してくれるサポートで全プレイヤーにアシストが掛かる。一見便利そうに見えるが使いどころが難しく、体制を直せたとしても空中で自由が利かないのは変わりない、SAOは地上で戦うのが基本のため使うプレイヤーは弾き飛ばされた身体の体制を戻すことにしかならない。

 

 レトは少し違う。レトはソロで戦う間にこのシステムアシストを戦闘に活かす事出来ないかと考え、何度か使用するうちにエクストラスキル【エアリアル】が取得されていた。

 このスキルは空中で掛かる身体の負荷を軽くするスキル、空中攻撃の負担が減り、【エアドッジ】による回避が可能になる。

 しかし扱うのが難しい上にこれと言った打点が無い、寧ろ的になる。そこでエクストラスキル【蹴り】を組み合わせた。

 このエクストラスキル【エアリアル】と【蹴り】を流用した自分だけの戦闘スタイルを編み出し、空中で圧倒的な有意に立て、空中での連続攻撃を得意とした独自のシステム外スキルを開発した。

 

 ローゼルの攻撃を避けたレトは鞘を手放し、両手で逆刃向けた刀を空中で上段に構え、渾身の一撃をローゼルに叩き下ろす。空中で背後をつかれたローゼルはガードするのが叶わず石造りの地面に叩き落された。

 顔が床につくと肌から地面の冷え切った感覚と全身に力が抜ける感じがした。

 

「うぅ……」

 

 呻き声を上げながら、倒れた身体を起こそうと両腕で支えながら上半身を上げると、目の前で刀を向けたレトが立っていた。

 

「俺の勝ちだ」

 

 ローゼルのHPバーがレッドゾーンに陥っていた、あと一撃でも食らえば消滅してしまう。

 

「だったらなんなのよ、早く殺せば良いじゃない!……」

 

「俺は……君を殺したくない」

 

「嘘よ……あなたが手を汚したくないだけ……」

 

 ローゼルは立ち上がり足を引きずらせ柱に背を付けながら、レトから目をそむける。

 

「そんなこと言っても……人なんて自分が大事なだけ……簡単に裏切る。あなたも私に騙されたでしょ……何でそんな奴に構うのよ!」

 

 俯きながらローゼルは目頭を押さえながら、彼女自身は屈辱的な扱いを受け唇を噛む。

 

「あのまま私を殺してくれれば、こんな思いすることなく……楽に死ねたのに……」

 

「っ!?……」

 

 口から零れた一つの言葉がレトの思考を流れ、怒りが立ち込め、刀を強く握り締める。

 

「もう殺してよ……死にたいのよ……」

 

 

「死ぬなんて簡単に口にしてんじゃねぇ!!」

 

 

 ローゼルはレトの張り上げた怒声に驚愕する。

 

「死ぬっていうのは、もう誰にも会えなくなるってことなんだぞ!!」

 

 仮面越しでも見える真っ直ぐな瞳は、凄く悲しい目をしていた。

 

 

「一緒に笑ったり、喧嘩したり、泣いたりもできない。殺してだ……なんでそんな悲しいこというだよ!!……そんなことしたら……お前を……もう助けられないじゃないか……」

 

 

―どうして……私に優しくするのよ……

 

「もうほっといてよ!!」

 

 ローゼルは耐えられない悪循に逃げるようにボス部屋の入り口のほう走っていく。

 

「ローゼル!!」

 

 呼びかけに答えることなくローゼルは駆け出した足を止めることはなかった。

 

 

 

//////////////////////

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 ローゼルは雨が激しく降る第40層の迷宮区<密林>を無我夢中で疾走していた。雨の音が周りの静けさを一層際ただしていた。湿気た土の足場に水たまりが出来ており、足場が不安定で必死に踏み切っていた足を滑らして無造作に転んでしまった。

 

「くぅぅ……」

 

 土の澄んだ臭いがする地面についた手の指を握り締めると、雨で柔らかくなった土が指で引きずった跡がの頃。

 

―優しくされると不安……いつかそれが失ってしまうと思うと……

 

 ローゼルの心情を表すかのように激しく降り続ける中、数体のモンスターがローゼルを狙うように森林から顔を出していた。

 

 黄色い一頭身の大きな顔面した<アーム・イータ>、迷宮区に出現するモンスターで大きな口でかぶりつき、その名のとおり腕を食い千切る強力な魔物。1体が飛び出してくるがローゼルは逃げることなく、上半身を上げ腰をつけたまま虚ろな眼をしながらモンスターを見ていた。

 

―ごめんね華太……お姉ちゃんもう疲れちゃった……

 

 ローゼルのHPバーはレッドのまま回復をしていない、死ぬ気なのであろう。

 

―当然の報いなんだよ……私はこの世界に来る前から母を殺してるんだ……死んで当然なんだ…………死ぬのって痛いのかな

 

 口が大きく開かれグロテスクな歯がローゼルに襲い掛かる。

 

―でも誰も悲しんだりしないよね……お母さんの所に逝けるかな……逝けないよね……

 

 魔物と私の間に真紅の光が閃光の如く飛び込んできた。

 

ブッシャーー!!

 

 走馬灯?……違う……でもはっきり見えた……腕を食い千切られた……紅い光を纏った……彼の姿だった……

 

 レトの食い千切った左腕をグチャグチャ噛むイータを見た他の魔物が、涎を垂らしながら森から飛び出してくる。その中にはアーム・イータ以外の魔物たちも血の気を上げ武器を振り回しながら襲い掛かる。千切れた左腕から紅くポリゴン状に浮き出た粒子を散らばし、自分の腕を食ったアーム・イータの頭上に刀を突き刺し消滅させ、刀が地面に刺した形になる。レトは周りから襲ってくるモンスターに武器を構えることなく倒れたローゼルに近づき仮面を外しながらしゃがみ込む。群がる魔物の軍勢の地鳴りが迫り狂う。

 

「黙れ……」

 

 息を荒らした魔物がレトたちに迫ってくるが、レトの呟いた一言で突然モンスターたちが動きを止める。魔物に感情など無い、ましてやこの仮想世界のエネミーには……。だがモンスターはレトの只ならぬ殺気に立ち止まった、そんな風に見えた。

 

「腕……」

 

「少し待ってろ……片付けるから」

 

 レトは千切られた左腕を気配ることなく紅いマントをローゼルに被せて微笑んだ後仮面を被りなおし、突き刺した刀の側まで移動し引き抜く。

 静止した魔物たちが糸が切れたかのように動き出し一斉にレトたちに襲い掛かる。

 イーターがレトにかぶりつこうとした瞬間、レトはその場から姿を消え、イータは地面に顔を打ち付けてた後、周りを見渡すがレトの姿が無い……すると紅い光が視界を通り過ぎると綺麗に縦半分に割れてしまった。

 

「何……あれ……」

 

 次々に魔物たちの横を紅い閃光が駆け抜けるたびに、モンスターは消滅していく。閃光を捕らえようとモンスターはレトたちを包囲し始める。

 雨粒が紅い光に透き通りぼんやりとした幻想的な光景が魔物たちを刺激させる。

 角を生やした棍棒を持った毛深い人型の<バーバリアン>、毒の尾を持った蛇のような長い身体をしたトカゲの<バイパー>、他にもこの迷宮区で出現する魔物が総勢20体という絶望的な状況だ。

 

 ローゼルが迷い込んだのはモンスターフロア、長い時間留まり続けるとマップの魔物がプレイヤーを感知し一斉に集まるランダムエリアの一種。フロアに入ると警告アイコンが表示されるため、大概のプレイヤーは入り口に引き返し他のフロアから回るがローゼルは気付かず進入してしまった。

 

 モンスターが一斉に駆け出し円を狭くするように二人に迫る。

 敏捷性が高いバイパーたちが先制を仕掛ける、身体をシュルシュルと曲げながら翻弄するように素早くレトに食らいつこうとするが、口を開く前にレトが飛び上がり、刀の斬光がバイパーの身体を斬り裂く。背後からローゼルを狙うバイパーには刀を槍のように振り投げ細い頭にズレもなく突き刺さる。

 足が地面に着く頃には他の魔物が二人に群がっているが、敵の猛攻を振り切り、ローゼルに近づく一体を跳び膝蹴りで吹き飛ばし、飛んだ勢いで先ほど突き刺さった刀の柄の部分を掴み、刀を軸にスキルで強化された回し蹴りで遠心力が付き、周りのモンスターを蹴り飛ばす。 

 モンスターは止まることなく攻撃を仕掛けるが、ローゼルに攻撃は届くことなく全て魔物の攻撃をレトによって憚れる。

 物量では完全に負けているが、ローゼルの周りを飛びまわり守りつつ自身にダメージが喰らっていないかった。

 仮面を付けたピエロがまるで剣で曲芸をしているような動きだが、その戦う姿は道化師ではない。

 地を駆け宙を舞い斬り裂く姿は、紅光によって反射した滴る雨を祓い百花繚乱の如く咲き乱れていた。

 

 小物を一掃し、図体のでかいバーバリアン五体がレトを囲い、一斉に手に持った棍棒を振り下ろす。だがレトの神速に追いつけない。

 紅くライトエフェクトした刃が周りのバーバリアンたちの腹を素早く横向きに一回転斬りで切り裂き、円状に振った刀が斬光を残す。斬られた腹には妙な刻印が刻まれ、レトが最後に刀を上に振り上げる。

 

「【爆砕円斬】!!」

 

 技名を叫ぶと同時に刻印が鉄を焼いたかのように赤くなり魔物の腹を爆発させ、粉々に吹き飛ぶ。魔物が消滅ともにガラスの破片のようにポリゴンが割れ、雨と紅く輝いたレトに反射し周りをキラキラさせていた。

 

 レトに纏わり付いた赤い光が輝きを失くす。いつの間にかすっかり再生された左腕から鞘を抜き取り刀を納めた後、能力の副作用でガクッと膝を付く。

 

「はぁ、はぁ……はぁ、やっぱり疲れるな……」

 

 なるべく使わないようにしているのは効果が切れた後の極度の脱力であるが、凄まじい力が秘められているの確か。第40層のモンスターとはいえ、20体魔物を数分で全滅させたレトの強さ……いや、【クリムゾン・リミット】は、確実にゲームバランスを崩している。

 

 

 疲労で重くなった身体を振り払うように立ち上がり、ローゼルの下へそっと近寄る。

 

「ほっといてって……言ったのに……」

 

「死にたいなんていう奴……死なせて堪るかよ」

 

「本当に……お人好し……」

 

 ローゼルは冷ややかに呟いた後、横に倒れこんでしまった。

 

「ったく……横になりたいのは俺のほうだよ」

 

 

 

 

 

 

―あれ……私……あれからどうしたんだっけ……

 

 身体がゆっくり揺れている感じが伝わっていた。

 

―私……おぶられているのか……恥ずかしい…………でも……あたたかい……

 

 急に母におんぶしてもらっているのが頭に浮かんだ。

 

―懐かしい……よくお母さんに駄々こねて……こんな風に背負ってもらったけ……

 

 ギュウと肩に置いた手を強く握り締める。

 

「お母さん……」

 

 ローゼルはどこか懐かしい温かい背中に身体を預けながら、瞳から一滴の涙が零れた。

 

 

「うん?…………寝言か……」

 

 

 首下に雨とは違う水滴が付いた気がした……

 

 

 

 




今回は戦闘メインの話で短くなってしまいました……区切り方間違えたかな?

 技名を言うのはレトの癖だと思ってください。

システム外スキルというか、エクストラスキルを複合した感じかな?……
このシステム外スキルにキリトみたいな《武器破壊(アームブラスト)》みたいな厨二的な名前を付けたい……

質問・疑問・物語の感想がある読者様は感想までお願いします!!、よければシステム外スキルの名称を考えて頂けると参考にするかもしれません……お待ちしています。

 
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