ソードアート・オンライン~紅の心意―The Cardinal Mind 作:坂道
気付けばお気に入り件数が100を突破していた。凄く嬉しい(魂響)
これからも頑張る!!
「信じる?」
「そうよ。あの人が私に――」
ごめんなさいお母さん、お父さん、華太……今、私誰も信じられない。信じたいんだよ……でも、自分を信じることもできない。
「違うわよ華美……」
母が言ってくれた言葉が今では重みになっている。だけど今はその言葉を思い出したかった。
「自分を信じるなんて誰にもできないわよ」
「じゃあどうしたらいいの?」
「それは――」
忘れてしまいたいのに夢は正直だ……
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重い瞼を数回ほど瞬きすると、そこは知らない部屋だった。
「ここは……」
部屋は広いとは言えなかった。自分が寝ていたベットと木の小さな卓上と椅子、それと小さな小窓だけがある特に何もない殺風景な普通の部屋。
「あたしは確か……」
寝起きで意識が朦朧としている中、自分がなざここに居るのかを考えていると部屋の開いた小窓から楽しげな笑い声が聞こえてきた。
ベットから降り、夕差しを射している窓に手を翳しながら窓の外を覗くと、そこでは子どもたちが楽しく庭で遊んでいた。そこには彼の姿もあった。
「見てろよレト、今度こそ俺様たちがゴールを決めてやるぜ、行くぞ野郎ども!」
庭の砂地にコートのようにひかれた線の中に、小学生くらい男の子が五人と黒の教団服の袖を捲り上げたレトの姿があった。コートの外では数十人以上の子どもたちが歓声を上げていた
「お手並み拝見といこうか、キング」
レトの背後に建ってある網を見る限り、サッカーをするようである。五人の男のたちが一斉に散らばり、ボールを交互にパスしながらゴールネットを守っているレトに迫る。
ボールは、遊戯専用のアイテムで圏内でしか使用できない。耐久値があるのだが、一定時間経つと自動的に修復される、つまりオブジェクト扱いにされている。
ボールがキングに回り、馴れた足つきでボールを蹴りながら徐々に距離を縮める。
「レト、言っておくけど手を使うのなしな!」
「よし分かった……って!、どうやってボールキャッチすればいいんだよ」
「スキあり、【俺様スーパーシュート】!!」
足裏を上に向け豪快に振り上げる【俺様スーパーシュート】(ただのシュート)はアタフタしたレトに迫りくる。
「ふん、甘いぞキング!、【リバース・スタンドアップ&キャッチ】!!」
両手を地面につけ飛んできたボールを両足で巻き込むようにキャッチする【リバース・スタンドアップ&キャッチ】(ただ逆立ちして脚でキャッチする)。
そのままアクロバティックに手を押し上げ、宙に浮かびながら脚で掴んだボールを持ちながら器用に体制を整える。
「フフフ、これで終わりだ。【デットエンド・シュート】!!!」
よくわからない横文字を並べながら蹴られたシュートはレトの【蹴り】スキルにより力が増し物凄いスピードで相手ゴールネットへ飛んでいく。外野で観戦している男の子たちはキラキラした目でレトの技名に歓声を上げていたが、他の女の子たちはしらっとした目をしていた。
ゴールネットを守っていたケインは体を固まらせたまま自分の横を勢いよく通り過ぎたボールを見ることなく口を開けながら呆然としていた。
「決まったな」
華麗に地面に着地した後、清々しくVサインを外野に送るレト。
「せこいぞレト、スキルを使うなんて!」
「あるものを使って何が悪い」
「くそ~、みんな集まれ!」
中学生が小学生に言うとはかなり大人げない感じだ。悔しむキングは一度チームを集合させ、何やら策を立てているようだ。話が付いたのか手に持ったボールを地面に置く。
「レト!、お前は俺たちには勝てない!」
「ほぉ、ならば見せて貰おうか?」
「いくぜ!、オペレーション【アタック】!!」
すると、ボールをそっちのけでキングたちはレトに向かって武器を構え駆け出す。
「なるほど!、アタックとは武器を持って攻撃する……って、それただの武力行使!?」
納得したかのように手をポンッと叩き、言い終わる頃にはキングの飛び蹴りがレトの仮面に直撃し、そのまま倒れたレトを囲み、ソードスキルでボコボコにし始める。ダメージはアンチクリミナルコード有効圏内のため蓄積されないが衝撃が伝わる。亀をいじめるように武器で少年たちはレトを殴る蹴るの暴行を繰り返す。
「ちょ、ちょっと審判!?。これあきらかにイエローカード!?」
円陣から手を差し伸ばす亀は審判に助けを行が、審判のギンは口笛を吹きながら顔を逸らしていた。この浦島太郎は白状者である。
「…………」
とても上の層では考えらない光景がローゼルのに映ってた。無邪気に笑い合う子どもたちの笑い声は彼女の心を突拍子もない感覚へと誘う。
「こういうのを……平凡って言うのかな」
口に出た言葉は誰に言ったことではない。ただ何か自分が切なくなっていた。
するとどこからか物が軋む音がした。振り向くと部屋のドアから眼鏡をかけた修道服の女性が入ってきた。
「あ、目が覚めたようですね」
「あなたは?、それにここ……」
「ここは《はじまりの街》の教会ですよ、ローゼルさん」
「私の名前……」
「レト君から聞いたんです。私はサーシャ、ここでレト君と協力しながら子どもたち世話をしています」
「レト……」
視線を窓へと戻し、彼女が呟いた人は子どもたちを追い掛け回していた。
「仮面貴公子マスク・ザ・ナイト参上!!」
「キング、次は俺に貸せよ」
「僕もかぶりたい」
「コラ!、仮面で遊ぶな!」
殺しにきたのに助けられている。私は求めてもいないのに彼は何度も…………
「びっくりしました。急に帰ってきたと思えば気を失ったあなたを背負いながら、『彼女を安静な場所へ』って言うとそのまま倒れてしまったんですよ」
サーシャはほは笑みながらローゼルの横に立つ。
「なんでそこまで私を助けてくれたんだろう……私は彼を」
あのまま死にたかったというのは嘘だ、本当は誰かに助けてもらいたい。いつも胸に抱いていた願望を掻き消しながらこの仮想世界で生きてきた。
まさか殺そうとしている相手に窮地を救ってもらうなって思いもしなかった。
「それはたぶん、レト君があなたを助けたいと思ったからですよ」
「助けたい?……私にはわからない。他人にあそこまで疑いもせずに……私からしてみれば異常よ」
ローゼルのレトへの捉え方は一見冷たいものだが、確かにその通りなのかもしれない。例えば見ず知らず初対面の他人に嘘を吐かれれば、嘘を吐かれた相手はその人を疑心暗鬼してしまうだろう。ましてやローゼルはレトを消そうとしたのにも拘らず、説得を試みよとした。何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか……ローゼルには理解できなかった、いや……人間として理解できない。
手で頬を支えながら苦笑いするサーシャは返答に困っていた。
「……きっとレト君とってローゼルさんはもう他人でないんですよ」
「え?」
「だってそうじゃないですか、ここまでへとへとになりながら必死に運んできてくれたです。それだけ……口にするのが恥ずかしいんですけど、私も、向こうにいる子どもたちも、そしてローゼルさんも、彼にとっては大切な人なんです」
「オラぁ!!」
「ごっふぅ!」
ギンとケインを追い掛けている間にキングはレトの横腹にドロップキックを喰らわせていた。レトの体はくの字を作りながら横に飛び、子どもたちは楽しそうに指を指していた。
「あれを見て大切に想われているかは微妙ね」
「ふふふ、そうですね。私そろそろ止めてきますね、レト君に起きたこと伝えましょうか?」
「いいえ、もう少し横にならせてもらいます」
軽くお辞儀をしてサーシャは部屋を後にした。遣り切れないわだかまりの中、楽しげに笑う彼の姿を見た後、ベットの上で瞼を閉じた。
「大切な人か……」
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10月24日 23:30
次の日の深夜、教会は夕方の騒がしい声が止み、薄暗い夜の闇に静まり返っていた。部屋に置かれた針時計が秒針を一秒ごとに進ませるたびに、針の動く音が静まり返った部屋にほのかに響いていた。
ローゼルは寝服から自分の防具に着替えていた。右手を翳しメニューウィンドウのフレンドから登録解除の項目を選択。
[ <Leto> フレンド登録から取り消します? ]
OKボタンを押し、レトとのフレンド登録を解除したローゼルはベットから立ち上がる。
―これ以上ここに長居するわけにはいかない
月夜の光が窓から射す中、乱れた髪を首筋から両手で掻き揚げ銀色の長い銀髪が月の光で鮮やかに反射する。最後に周りを見渡し、ローゼルは部屋を後にした。
忍び足で出口のある礼拝堂に足を運ぶ。建物の構図を把握していないローゼルは礼拝堂までの道を掴めていなかった。こんなことなら窓から出ればよかったと後々後悔するがここまで来たら仕方が無い。
足を動かすたびに軋む床を進みながら次のドアを開くとそこは大きいなテーブルの中心に皿の上に乗ったろうそくが灯しんでいた。そこで足を組みながら椅子に座る花がらエプロンのレトの姿があった。
「こんな時間にどこに行くんだ?」
「あなたこそこんな時間まで一人で何をしてるの?」
質問を質問で返され、レトは得意の溜め息を吐くと椅子から立ち上がり部屋の台所へ足を勧めていった。
「俺はここで君が起きてくるのを待っていた……これを召し上がってもらうためにな」
大きな手すりつきの鍋をミトンを着けながら運んできた。蓋を開けると、温かな湯気とともに部屋全体にいい匂いが広がる。
大した答えが返ってこないのは薄々予想はしていたが、いざ聞くとやはり調子が狂う。
「いらなわよ……そんなの」
「あ、わかった。小腹が空いたから深夜に何かつまみに台所にきたわけだな」
「違う!、私はここを出て行こうと…」
―ぐぅ~~
どこから鳴ったかは考えなくても解るが、このタイミングで鳴らなくてもいいだろう。自分の腹の虫に苦虫を噛みながら顔を桜色に染める。
「ほらみろ、腹は正直だ。座れよ」
レトは丸皿にスープを入れた後、椅子を引きローゼルを手招きする。言い返す言葉が見つからないまま自然と椅子に座ってしまった。それを見たレトは少し嬉しそうに頷いた後、ローゼルの反対側の席に座る。
テーブルの上には、この前と同じくクリームシチュー、パン、サラダが並べられていた。昨日の食べた料理、最初に食べたときはこんな美味しいものがこの世界にあるとは思わなかった。違う……ただそんなこと考えている余裕がなかったんだ。この世界に着てからと言うものろくな物を食べていなかった。
テーブルに置いてあるスプーンを手に取り、シチューを掬い上げようとすると
「待った」
レトが手を開き前へ出していた。
「食べる前に「いただきます」だろ?」
「そんなこと、この前は言わなかった……」
「いいだろ別に。ホラ、手を合わせて…」
レトが両手を合わせていた。なにゆえにするのかは解らないが、ローゼルはなるがまま手を合わせると、どこか懐かしい感じがした。
「いただきます」「いただきます…」
なんだろういつも現実の世界やっていた事がとても新鮮に思えた。
もう一度スプーンに手が伸び、スープを口に含んだときはとても温かい気持ちになる……あの時も。
「どうだ?、少し材料を変えてみたんだ。この前はあまり癖のない《ココオウルの腿肉》を使ったんだが、今回は少し癖がある《リーガルラビットの肉》を使ってみた。リーガルラビットの肉は臭みがあって筋が多い、それを解消するために俺はありとあらえる試行錯誤を繰り返したんだ。」
「は、はぁ……」
レトは急に握りこぶしを作りながら語りだす。
「まず香りの強い<エリーブの花びら>、香辛料に使える<ヤカカの種>をペースト状に磨り潰し粉末ペーストを作る、その粉末を肉に念入りに塗すことで、肉の臭み、肉のコク、噛んだときの食感、そしてシチューのスープのとろみが付いた。だがこれに欠点があった、ヤカカの種がスープの味を辛くしていた。これではシチューにコクがあっても、甘味がない……そして俺はある調味料へと辿り着いた。それは……」
「あのさぁ……」
「うん?」
「食べていいかしら」
「…………はい」
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食べ終わった後、レトは紅茶を淹れてくれた。
「ふぅ~、もう少し考える必要がありそうだな」
「…………」
料理の感想を述べているレトを横目に紅茶を一口飲み、ローゼルは俯いていたまま塞がっていた口を開く。
「私はそろそろ……」
「勝手に出て行くなよ」
ローゼルが話しかけた瞬間、レトは遮るように口を割って話しはじめる。
「俺は君に聞きたいこと沢山あるんだ」
「……話すことなんてない」
「弟がいるんだろ?」
「!?」
不意にレトの口から出た弟という言葉に口が止まってしまう。
「……なんで知ってるの」
「君がコルとアイテムを盗んだ道具屋に聞いたんだ。君が人を殺めるのと何か関係があるんじゃないか?」
まただ、またコイツは私の中に入ってくる。最初にあった時も私を……私に……これ以上構わないでほしい……構わないで……どうして
「……どうしてそっとしておいてくれないの?」
おもわず考えていた事が口に出てしまい、口を押さえようとしたときにはもう遅かった。でもこの際だ、はっきり聞いておこう。
ローゼルは顔を逸らしながらレトの返答を待っていた。レトは紅茶を飲み干し、空になったカップの中を見ていた。
「……それは……君が…………俺の好きな人に似てたからかな」
ローゼルは帰ってきた言葉にキョトンとしていた。
「まだ八歳のくらいかな、小学生で剣道の習い事をしてた頃……俺弱くてさ、正直剣道が下手でいつも同級生の足引っ張ってばかりで道場で孤立してた。秋くらいに練習試合の団体戦のチームをくじで決めていたんだけど、見事に俺を引き当てたチームは俺に罵倒の嵐。皆が俺を毛嫌いするような蔑んだ目で見られて……その場にいるのが耐えられなくなってさ、道着のまま道場を飛び出てた。あの時は悔しくて悔しくて……悔しくて仕方がなかったな」
憂鬱な表情で話し続けるレトに自然とローゼルは視線を向けていた。
「一人になりたかった。そしていつも辿り着く場所は……夕日が見える河原、人気がなくて夕日に反射する川を見ながら嫌なことがあればいつもそこで泣いてた。でもその日は違ったんだ、いつも俺が決まって座っていた場所に知らない女の子がいたんだ」
「それがあなたの……好きな人」
レトは頷き顔を上げる。
「凄く高そうな綺麗な服を着てて、遠くからじゃ顔が見えなかったから近寄って声を掛けたんだ。なんだか一人泣いてたみたいで……素顔が見えたんだよ」
するとレトはそわそわしながら頬をかき顔を逸らしていた。
「それでさぁ……まぁなんというか…………一目ぼれだ」
「…………ぷっ」
ローゼルはあまりにもベタ過ぎる話におもわず口から息を吐き笑ってしまった。レトは気を取って咳払いする。
「普通にというか、かなり可愛かった……俺はドギマギしながら頭の中が真っ白になって次に出た言葉は『何で泣いてるの』って何の捻りもないことを聞いて、それで返ってきた言葉は『あなたには関係ないでしょ!ほっといてよ!!』って言われて、その子そのままどこか行っちゃった。その日はボーっとしながら家に真っ直ぐ帰って親にはそれは凄く怒られたよ。それからというもの、その子の顔が忘れられなくなって道場の帰り、毎日その河原に向かった。さすがに毎日いないと思ったけど、その子いつもの場所でずっと一人で泣いてた。さすがに不安になったな……話しかけても離れていくから……だから」
「だから?」
「そのまま黙って横に座った」
「……あなたらしいわね」
呆れながら私は知らないうちに彼の話に夢中になっていた。
「その日から来る日も来る日もただ一緒に夕日を眺めてた、ある日をきっかけに仲良くなるだけど、まぁそう言うことだローゼル、今日から俺のギルド入ってもらうぞ」
「…………はぁ?」
すると、ギルド加入ウィンドウが目の前に出現した。ローゼルは急な勧誘に戸惑うがそれ以前に何か忘れている。
「ちょ、ちょっとどういうことよ!?」
「どうもこうもないだろ君がギルド【何でも屋】に入るだけだ」
「答えになってないそれに私は……」
ローゼルの唇ををレトの人差し指がそっと押さえ口が止まる。
「静かにしろ、皆が起きるぞ。君は俺に借りがあるだろ……それに皆に挨拶もせずに帰るつもりか?」
得意げに話すことは、根拠があるといえばある。ローゼルは眉間に寄せ、レトの手をどける。
「…………また裏切るかもしれないわよ」
「了解だ。それじゃ……」
するとレトは、小指を立てながら右手を出す。
「何よ……これ」
「指きりを知らないのか?」
「いや、そうじゃなくて……」
「あ~もう、ほら」
ローゼルの右手を掴み、小指を勝手に結ばせる。
「ゆびきりげんまん嘘ついてもローゼルこと許してやるよ」
テンポよく結んだ小指を上下交互に振りながら指を放す。
「今のは?」
歌詞が少し変だった。もうローゼルは完全にレトのペースに付いていけなかった。
「俺流の指きりだ、針千本飲ませるとか怖すぎるだろ。それじゃ明日からよろしくな」
ローゼルは深い溜め息を吐き諦めついたのか肩を落としながら承認ボタンに手が伸びる。
「……わかった。ただし一日だけ、それでどう」
「ああ、約束だぞ」
ボタンを押したときは少し嬉しかったのかもしれない……でもこれ以上この人に迷惑掛けていけない。私は人殺しだから……
ローゼルと和解するのが難しい……
何だかこの前喋らなかった分、レトはかなり口を動かした。主人公のギャップ的な話かな?
ほのぼのした話が書きたかったので書きました。
更新これから遅くなるかもしれませんが、頑張ります!!
早く第一章を完結させねば!!