ソードアート・オンライン~紅の心意―The Cardinal Mind   作:坂道

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非常に遅くなりました

またこんな感じになるかもしれません。

それではどうぞ


約束―見えなくても

2023年 10月25日 6:00 教会前

 

 

 鶏が鳴くにはまだ早い少し空が薄暗く朝日が顔を出していない時間。

 肌寒い早朝から教会の入り口では皆が見送りに着てくれていた。

 

「もう行っちゃうのかよレト~」

 

「そうだよ、もう少しいればいいじゃん」

 

「そう不貞腐れるなよ、また帰ってくるから」

 

 キングとギンとケインが駄々こねながらレトを困らせていた。他の子どもたちもレトと別れのを寂しんでいる。

 ここに居る子どもたちはサーシャが一層ずつ巡回して見つけた子、ダンジョンでパーティと離れ離れになった子など、様々な環境で苦しんでいたプレイヤーたちがこの教会で暮らしている。

 これも茅場晶彦が引き起こしたデスゲームが原因ではある。しかしだからといって全ての元凶を押し付けていいものなのか。

 誰かが孤児院を設けなければ今頃心を押しつぶされていた子もいたであろう。たまにこの孤児院の噂を聞きつけた中層プレイヤーが他の階層の街で取り残された子を連れてきてくれるが、そこまで心の広いプレイヤーはあまりいない。

 仮想世界とはいえ、ここで生きている全プレイヤーは人……ちゃんと意思を持っている。全プレイヤーが協力すればゲーム攻略も早まる……だが、そこで立ちふさがるのが他ならぬ己自身の命……。命を投げ捨てまでモンスターと戦う必要性、現実世界に帰りたい、安全に暮らしたいというプレイヤーも沢山いる。それが間違えとはいえない……皆自身のことで精一杯なんだ。 

 

「レト、今度帰ってきたら私が料理を作って上げるから!」

 

「楽しみにしてるよ、ミナ」

 

 ミナが胸を張りながらレトと話していると、教会の内からサーシャがシズナの腕を引っ張りながら慌てて出てくる。シズナは目をショボショボさせていた。

 

「レト……その……無理しないで……です」

 

「シズナ……眠いなら無理しなくてもいいんだぞ」

 

 まだ教会の子どもたちは起床の時間には一時間早いため、サーシャは態々シズナを起こしにいっている。サーシャは走ってずれた眼鏡を整え一息つく。

 

「もう~シズナたら、あれほどアラームをセットして置きなさいって言ったのに……」

 

「でも……サーシャ先生……アラームじゃ……起きられなった……です」

 

 頭がまだ目覚めていないのか、シズナはおぼつかない足でフラフラしていた。

 

「朝が弱いなら無理して起きなくてもよかったのに」

 

「レトお兄ちゃんに……ぬいぐるみを作っていたら寝るのが遅くなったんだもん」

 

 そういうとシズナは両手に持っていた布で作られたぬいぐるみをレトに渡す。見た目は……凄く……斬新だった。

 

「あ、ありがとうシズナ。これはなんというか……俺?」

 

「はい!、レトお兄ちゃんを可愛くしてみたです!」

 

 その形状はあまりにも可愛いといえるものではなかった。全体的にまん丸で何故か垂れた耳がついていた。仮面の色が黒からピンクになっており、目のボタンが糸がほつれて飛び出していた。正直のところ、紅い布が付いていなかったら自分とは解らなかった。

 苦笑いしながらシズナにお礼を言う。―似ていないなんて……言えるわけないだろ。

 ローゼルは教会の入り口から少し離れたところでその様子を見ていた。

 

「…………」

 

「昨日はちゃんと眠れました?」

 

 ローゼルに気が付いたサーシャは声を掛けて来てくれた。俯けた顔を下に向けたまま長い銀髪の髪毛がローゼルの顔を隠す。

 

「おかげ様で。それで……あの子……」

 

「あの子?、ああ、シズナのことですか」

 

「あの子はアイツの妹なの?」

 

「いいえ、シズナがレト君を勝手にそう呼ぶです。シズナはレト君ことを慕っていますから、本当の兄妹の様に」

 

「兄妹……」

 

 私は楽しく笑い合う二人を自分と重ねていた。今の私たちには考えられない日常……あのまま《はじまりの街》で留まっていれば、この教会に入れたかもしれないな。

 

「あの子、はじまりの街で姉においていかれたんですよ」

 

「え?……」

 

「レト君はシズナの姉を捜すしているんですよ……あれからもう一年、まだ見つかっていないんです」

 

「一年って!?、もうそんなの……」

 

「サーシャ先生!」

 

 向こうで話していたシズナが手を振りながらサーシャに駆け寄ってきた。

 

「シズナ、ちゃんとレト君にプレゼントと渡せた?」

 

「渡したよ、あぅ……」

 

 すると、シズナはローゼルを見た矢先にサーシャの後ろへ隠れてしまう。

 

「コラ、駄目でしょシズナ。ちゃんと挨拶しなさい」

 

「あの……その……こんにちは……」

 

 早朝にも拘らず昼の挨拶をするシズナ。顔を出しながら顔を赤らめながら小動物が怯えるようにサーシャにくっ付いていた。

 

「今は朝よ、シズナ」

 

 ローゼルはシズナに声を掛け、膝を曲げながら優しく髪を撫でてあげた。人見知りのシズナは初対面の相手にはいつもこの調子である。

 

「私はローゼル、昨日は顔を会わせていなかったよね」

 

「……うん」

 

 隠した顔を出すと、ローゼルはシズナの頬を触る

 

「お姉ちゃんもね……弟を捜してるんだ」

 

「……どこかにいちゃったの?」

 

「ううん、少し……手が届かない所にいるの」

 

 ローゼルはシズナを弟の華太と重ねていた。理由は違えども離れ離れになっている姉妹と自分と重ねてしまう。

 

「シズナは自分のお姉ちゃんに逢えなくて……寂しくない?」

 

 シズナは暗い顔でサーシャから手を離すとモジモジしながら口を動かす。

 

「凄く……寂しいです。でも……レトが……レトのお兄ちゃんが必ず見つけてくれるって約束してくれたです……だから……大丈夫」

 

「そう……ごめんね、変なこと聞いて……」

 

―なんでこんなことこの子に聞いてしまったんだろう。たぶん恵太を思い出していたんだ。私も華太に約束したんだけどな……必ず守るって……

 

「ローゼル……泣いてるんですか」

 

「え、あっ……」

 

 いつの間に片目から涙が一粒頬に流れていた。手で触れるまで全く気付かなかった。

 

「何か辛いことがあるんですか?」

 

「……心配しないで。お姉ちゃん……見つかると良いね」

 

「はい、見つかるです!」

 

 

 

///////////////////////

 

 

 はじまりの街 中央区 中央通り

 

 

教会を後にしたレトとローゼルは《はじまりの街》中央広場にある転移台へと向かっていた。

 

 辺りはあのデスゲーム開始時の騒ぎを忘れてしまいそうなくらい静まっていた。ここに居るプレイヤーは大体1000人はまだここで現実の帰還を待ち望んでいる。

 

 広場へと続くの中央通りを進んでいると、大勢の同じ鎧をきた十人ほどの集団プレイヤーがゾロゾロと隊列を組みながら、歩いてくるのが目に入った。

 

「あれって……」

 

「《軍》だな」

 

 最近では《アインクラッド解放軍》といったSAO最大の規模を誇るギルドがこのはじまりの街を基点にしている。最近といってもデスゲームが開始されて半年にはその存在が知れ渡っていた。所属すると食事が支給され、多くのプレイヤーが参加し、千人以上のプレイヤーが《軍》に所属している。

 

 少し距離を空けながら、視線を合わさずに通り過ぎるっていくと、

 

「ちょっと待ちな」

 

 軍の一人の男がローゼルに声を掛ける。

 

「君、可愛いね……どうだい、今から一緒にお茶でも、ちゃんとエスコートするぜ」

 

「おいおい、抜け駆けは良くないな、俺とお茶しようよ」

 

 すると、いつの間にか軍の男たちがローゼルを囲むように軽薄な言動で誘ってくる。俗に言うナンパという奴である。

 

―はぁ~、この手の馬鹿か……

 

 ローゼルは呆れながら、溜め息を零す。

 

「ねぇ~いいだろ、遊ぼうぜ。さっき下層プレイヤーからコルを巻き上げてきたばかりでさぁ」

 

「あの~」

 

 男の背後から肩を叩く仮面の少年、先ほどから置いてけぼりのレトがである。

 

「チッ、なんだよ。今は取り込み中……って、テメェは《何でも屋》!?」

 

 一人の男の声に周りの男たちも反応する。レトのを見るや否か先までの気の抜けたチャラい態度から一変、男たちは顔を青ざめていた。レトは変わらずいつもの調子で話し始める。

 

「どうですか、下層部の治安維持は?」

 

「…………」

 

「最近、またとあるギルドのプレイヤーたちが懲りずにコルやアイテムを恐喝しているとサーシャから聞いたですが……何か知りませんか?」

 

『す、すいませんでした!!』

 

 男たちは一斉に同声をあげ、謎の謝罪をレトにし、砂煙を上げながら走っていってしまった。

 

「あなた《軍》に何したの?」

 

「いや、特に何も」

 

「そうかしら……」

 

 最初は彼らの援助は救世主といえるように思えた。しかし、第25層攻略時に大きな被害を出した後、『軍』は変わってしまった。下層の治安維持と組織強化を重視し、最前線に出てこなくなった。犯罪者狩りとフィールドの独占の推進、人数を生かした狩場の独占による内部強化など聞こえいい事しているが、下層NPC店の独占やオレンジの処遇等に関する噂など一般プレイヤーの間には「軍には極力近づくな」という共通認識が生まれている。彼らの行いは中下層プレイヤーの強化促進の邪魔になっている事実は疑いようもない。

 

 実際に教会にもその魔の手が何度か降りかかった事もある。孤児院は、軍の援助を受けずにレトが稼いできた資金で切り盛りしている。軍内部のキバオウというプレイヤーはそれが気に食わなかった、はぐれ者の攻略にも参加しないソロギルド「何でも屋」の援助を受けている教会が。軍に所属するキバオウの部下は徴税と称した恐喝を行った。

 あの時は偶然、レトが《はじまりの街》に帰ってきていたため《軍》の侵攻を押さえられたが、またいつ何時押収に押しかけてくるか解らない。

 そのためレトはとりあえず押収にきたプレイヤーを警告と言わんばかりに片っ端から叩きのめし、軍の本部前に連中を放り出した。その一件が軍全域に広がり、軍プレイヤーからは「あの仮面には極力近づくな」という共通意識が生まれている。

 上の階層の攻略組に《何でも屋》が毛嫌いされてるのは軍から仕返しで、陰でこそこそと悪い噂を立てられているようだが、レト自身は自覚していない。

 

 

 軍といざこざになることなく中央広場へとたどり着いた。

 ここに来ると今だにあの恐怖が記憶から甦る。《はじまりの街》中央広場……茅場晶彦によるデスゲーム開始の宣言された場所。あの時は精神がおかしくなった。人々の悲鳴、怒り、絶望……混沌した負の感情がこの広場を埋め尽くした。

 このゲームが開始されてからもうすぐ一年……俺たちは本当にこの現実世界に帰れるのか、

そんな思いがここに来る自然に湧き出てくる。

 そっと息を吐き、憂鬱になった心を振り払い、ローゼルに今日の予定を告げる。

 

「今日の予定だが、まず第22層の《コラル》に依頼の件、且つシズネさんの情報を……」

 

「その人……もう無理じゃない」

 

 丁度転移広場に着いた辺りでローゼルは足を止めてこもった声で否定する。

 

「サーシャに聞いたは、その人シズネって言うんだよね。妹を置いていくなんて信じられないけど、きっとその人……もうどこにもいないと思う……」

 

「なんで……そう思うだ」

 

 転移場の上で振り返り、レトは低く呟く。

 

「だって、もう一年も経ったんでしょ、どこかでゲームオーバーになったのよ」

 

 この世界でのゲームーオーバー……つまり『死』。普通のゲームならコンティニューという選択肢がある、このSAOではそうはいかない。一度HPがゼロになれば、ナーヴギアにより脳を焼かれこの世との別れを告げる。

 

「今も所在が分からない、相手の生存も確認できない、プレイヤー名も分からない……そんな一握りの可能性もないのに見つかりわけないは……」

 

「それは……」

 

「仮に生きていたとしても……私なら……逢えない……」

 

 ローゼルは胸に手を沿え、両手を握り締めた。シズネという人物に共鳴りを感じていた。

 

「そうだな……俺も……このところ、もう駄目じゃないかって……思ってきた」

 

 本当はずっと前からシズナの姉が見つけることできないと思っていた。一年という月日は振り返ればとても短いものかもしれない……だが、今の俺たちプレイヤーには長すぎる。レトは教会がある方向に顔を向ける。

 

「でもシズナは……まだ姉の帰りを待ってるんだ……俺との約束を信じて」

 

 レトはシズナたちに貰った紅いマントを見ながら、微笑んでいた。

 

「約束ってさぁ、その人が見えなくても繋がっているんだ。破られたら、とても悲しいけど、守ってくれたら……凄く嬉しい」

 

 登り始める朝日に手を翳しながら、その仮面の下はどういう表情しているのか気になった。

 

「あいつが諦めてないのに俺が諦めたら駄目だろ……だから、たった少し可能性があるなら……望みは捨てない。それに大好きな人、逢えないなんて……悲しいだろ……」

 

「…………」

 

―華太も私の事……待ってるよね……待ってるのかな

 

 ローゼルもまたシズナと同じく長い間、実の弟に会えていない。生きているのは分かっていてもやっぱり寂しい。あの男……スライの手の内にいる限りは、ローゼルの束縛された道からは解放されない。でもそれ以前に私には……不安があった。

 

―こんなことしている場合じゃない、早く華太を……

 

 ローゼルの望みはただ華太にまた逢うこと、レトに付き合っている時間はない。レトに別れを告げとようとすると、先にレトが口を開いた。

 

「ローゼル、君は好きな色ってある?」

 

「好きな色?」

 

 急な質問だ……それに意味が分からない。即座に返せるのものでもなく、首を傾げる。

 

「俺は赤が好きだ、ローゼルは?」

 

 体に纏ったレトの何でも屋のトレードマークの一つ紅いマント。鮮やかな紅いマントを片手で広げながら楽しげに言った。

 

「……好きな色はない……でも嫌いな色はある」

 

 レトの横に立ち、レトのマントに指を指す

 

「赤」

 

 別にレトを指したわけではないが、示すものが都合よく目の前にあったからである。

 仮面の下で苦笑いしながらレトは続ける。

 

「じゃあ、なんでその色が嫌いなんだ」

 

「……嫌な思い出であるから」

 

 ただ赤が嫌いというわけではない、ローゼルにとって赤は……赤い血の記憶でしかなかった。あまり深くそのことを考えると、あの最悪を思い出すからである。

 

「そうか……なら君をあの場所に連れて行く必要がありそうだな」

 

「?、あの場所って」

 

 意味有りげに答えるレトにローゼルは当然の反応をする。

 

「君がきっと赤が好きになれる秘密の場所だよ」

 

 仮面の下でどんな顔しているが窺えない……本当に何を考えているのか、とことん変な奴と私は思った。

 

「そろそろ行くぞ、君にはちゃんと働いてもらうからな」

 

「ちょっと、この質問の意味は!?、それに秘密の場所って」

 

「それはギルドの依頼が終わった後で……転移<コラル>」

 

 ローゼルの訴えに答えることなく目的地の場所を名乗ると、転移していってしまう。

 

「またそうやって、はぐらかして……はぁ~、もう訳わかんない」

 

 またレトのペースに乗せられてローゼルは深く溜め息を吐く。

 

―あいつ、先に転移したけど、このまま私が何も言わず行ってしまうとか思わないの……

 

 別にスライの【筋力拘束】で縛られているわけではない、今なら彼から離れることも可能だ。だけど、ふと昨夜の約束を思い出す。

 

『ゆびきりげんまん、嘘ついてもローゼルのこと許してやるよ』

 

 何とも彼らしい……いや、彼にしか言えないような歌詞だ。指きりなんて、とても子どもっぽいことだ。それでもレトのことを思い出すと煮え切れない思いが立ち込めてくる。

 

「……あぁもう!、転移<コラル>!!」

 

 誰もいない広場で釈然としない頭の中のモヤモヤを怒声を上げて、追いかけるように青い光ともに姿を消した。

 

 

―そういえば、お父さんとも……指切りしたっけ……

 

 

 




約束時間に、その人が待っていてくれたら、嬉しいですよね……

すいません、感傷に浸っていました。

次回はレトが、「何でも屋」で何をしているか、書きたいと思います

更新次回も頑張ります!!、感想よろしくお願いします!!
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