ソードアート・オンライン~紅の心意―The Cardinal Mind   作:坂道

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頑張る!!


離れていても・・・

ゲームが開始されてから約1ヶ月半・・・俺はまだ《はじまりの街》にいた。

 

 

「キング君、走ったら危ないよ。」

 

「大丈夫だって、うわぁ」

 

「ほらやっぱり転んだです。」

 

 俺は二人と噴水広場に来ていた。シズナとキングはこの1ヶ月半で<兄妹?=姉弟?>のように仲良くなっていた。二人が遊んでいるのを横目に、噴水を囲むようなたちで設置されてあるベンチに座りながら《アインクラッド》の攻略状況なのが無料配布されている新聞を読んでいた。

 

「第4層突破・・・死亡プレイヤー数約二千人か・・・」

 

 レトはこの1ヶ月半に起きたことを振り返っていた。11月6日のデスゲームの開始、シズナとキングとの出会い、初めての戦闘とデュエル、モンスターとの死闘、謎のスキルなど色々なことがこの世界に来てから起こった。

 

「このゲームを攻略しようとして死んでいった人たちもいるんだろうな・・・」

 

 俺は彼らとは同じ世界で暮らしているが明らかに住んでいる世界が違っていた。俺はこんな昼間からベンチに座って新聞を読んでいる今でもゲーム攻略をするプレイヤーは必死に戦っているだろう。そう考えると少し自分が情けなく思えた。

 

「あぁもう、だから剣はこう振るんじゃなくて、こう振るんだよ。」

 

「よくわかんないです。」

 

(だけどあの子達をおいていくわけにはいかないし・・・)

 

 レトはまた答えが出ないことで悩んでいた。レトは何でも一人で考える癖がある。そして最後はいつも溜め息を出してしまうのも。

 

「「はぁ~」」

 

・・・・・・・・?

 

 するとレトの横で同じように溜め息を吐く眼鏡をかけた女性がいた。

 

「「あっ」」

 

 レトは溜め息を吐いた女性のほうを振り向くと眼が合ってしまった。

 

 

------------

 

 

「まさか俺と同じ境遇の人がいるとは思わなかったです。」

 

「私も君みたいな子が同じことをしてると思わなかったわ。」

 

この女性の名前はサーシャという。俺と同じくゲーム内に取り残された低年齢の子供たちを三人連れていた。子供たちの名前はミナという女の子と、ギンとケインと男の子二人。

サーシャは1ヶ月ほどくらいゲーム攻略にも参加していたそうなのだが途中で断念したそうだ。

まだ攻略に参加していたある日に街角で見つけたミナと出会い一緒に暮らしはじめた。ミナは心に深い傷をおっていたそうで、街にはそんな子供たちがまだたくさんいると思い、居ても立ってもいられず子供たちを保護したそうだ。

 

「俺もゲームが開始されて黄昏ていたら、中央広場で泣いているシズナが居て、ほっておくことが出来なくって。」

 

「ますます私たち似ているわね。」

 

サーシャは口に手をつき、クスクスと笑うと、俺も笑ってしまった。

 

向こうではシズナたちとミナたちが意気投合したのか、一緒に遊んでいた。

 

「ミナたちがあんな楽しそうにしているの始めて見るわ。」

 

「シズナとキングもいつもより活き活きしてます。」

 

二人は向こうで楽しく鬼ごっこしている光景が眼に映った。

 

「サーシャさん、向こうでシズネという名前を耳にしませんでしたか?」

 

「シズネですか?さぁ…聞いたこと無いけど?」

 

「やっぱりプレイヤーネイムじゃないとわからないか…」

 

「どうかしたんですか。」

 

サーシャは首を傾げながら聞いてきた。

 

「実は・・・」

 

俺はシズナのことをサーシャに話した。

 

「じゃあ、あの子…」

 

「はい、たぶん姉においていかれたんでしょう…」

 

「そんな、ひどい…」

 

サーシャはシズナの姉に見捨てられという話を聞き、顔を俯ける。向こうではシズナが皆と楽しく遊んでいるが姉に会いたくて仕方ないであろう。

 

「ごめんなさい、力になれなくて…」

 

「サーシャさんが気を病む必要はないですよ。それよりサーシャさんは何をしに《はじまりの街》へ?」

 

「ああ、それはコルと宿屋の問題があって・・・」

 

上の階層にいくに連れて宿屋の宿泊料も上がっていく上に、この人数では部屋が窮屈で仕方がない。

 

「なるほど、だからまだ原価の安い《はじまりの街》の宿に。」

 

「ええ、でもほとんどの宿屋はもう部屋が埋まっていて、一人部屋しか空いてなくて・・・」

 

この《はじまりの街》ではいまだに何千人というプレイヤーが留まりつづけており、宿屋のほとんどがそのプレイヤーたちで埋まっている。団体の広い部屋など空いているところなどまずない。

 

「ああ、これからどうしよう・・・あの子達を野宿させるわけにはいかなし・・・」

 

またサーシャは暗い顔で深い溜め息をついていると、

 

「なら一緒に来ますか?」

 

レトがサーシャに手を差し伸べながら言った。

 

「えっ?」

 

「あるんですよ、広い部屋。」

 

 

 

-----------

 

 

「ここは・・・教会?」

 

レトたちは、サーシャと子供たちを連れて東区の教会に戻ってきていた。

 

「ここなら部屋があり余っていますよ、維持費は馬鹿になりませんが。」

 

レトはサーシャに提供したのはいま自分たちが住んでいる教会である。

 

「本当に貸してもらっていいの?」

 

「はい、三人で住むには寂しすぎるくらいですから、それに困っている人を見捨てられない気持ちはすごくわかりますから・・・」

 

レトは照れながら頬をかいていた。

 

「ありがとう!本当に助かるわ。」

 

するとサーシャがレトの手を掴み握手してきた。

 

「俺も同じ気持ちです、子供たちを見ているそう思います。」

 

それを聞きまたサーシャは笑う。

 

「あなたも十分子供じゃない?」

 

「そうでした。」

 

二人はまた笑い合っていた。

 

「レト・・・お腹すいた・・・です。」

 

シズナがレトに近寄りながら話しかけてきた。するとサーシャを見るとレトの後ろに隠れてしまった。

 

「すいません、こいつ人見知りで…」

 

「構わないわ。」

 

サーシャはシズナに近づき、しゃがむとシズナに話かけた。

 

「はじめまして私はサーシャ、あなたの名前は?」

 

「シズナ・・・です。」

 

シズナは隠していた顔を出した。

 

「いい名前、このお兄ちゃん助けてもらったのね。私も今このお兄ちゃんに助けてもらったのよ。」

 

「同じ・・・です。」

 

「うん、私たち似たもの同士なのかも?ねぇ私と友達になってくれる?」

 

「とも・・だち・・ともだち!!」

 

(すごいな…シズナとこうも早く打ち解けるなんて)

 

レトはサーシャたちのやり取りを見てそう思った。やはり女の子同士のほうが打ち解けるのは早い。

 

レトは教会の扉を開き皆を呼ぶ。

 

「お~い!皆、飯にするぞ!」

 

 

-------

 

「あ~こんなおいしいのここにきてはじめて食べた。」

 

「うん、おいしい。」

 

「レトお兄ちゃんは料理もできるんですよ。」

 

「ただの料理スキルだよ。」

 

 サーシャたちは料理を食べていた。この教会には台所があり、料理スキルを活用できる場所である。

 

「でもさぁ、最初の頃それはひどいの何の・・・」

 

「キング、黙って食べろ。」

 

 料理スキルは料理の成功や失敗を重ねることでスキル熟練度が上がっていく。最初はコルの節約をするために始めたのだが、それはひどいものだった。

 この1ヵ月半、やっとまともな料理を出せるようになった。

 

 昼食を食べ終わり、シズナたちは外で遊んでいた。

 

「どうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

レトは飲み物をサーシャに差出し、テーブルに座った。サーシャがカップに入った飲みを嗅ぐと

 

「あ…これ紅茶!?」

 

「この前作れるようになって。」

 

 第1層の森のマップで採取した葉っぱなどを色々混ぜ作った紅茶モドキである。他にもウーロン茶・緑茶など様々なものに挑戦している。

 

「すごい、何でもできるのね。」

 

「何分暇なもので…こんなことしかやることがないんですよ。」

 

 レトはこの1ヶ月、第1層のクエストなどに挑戦してコルを集めたりしている。レトはカップを置きサーシャにあることを聞いた

 

「サーシャさん…今前線はどうなっているんですか?」

 

 レトは攻略に向かったプレイヤーたちのことが気になっていた。コウガも今前線戦っているのだと思うが、やはり心配である。

 

「・・・そうね、私もあそこにいたけど、ボス攻略にはあまり参加してなかったから・・・私は途中でドロップアウトしたけど…」

 

「あ…すいません。」

 

レトは顔を俯けた

 

「あ、謝らないで!?私が勝手に言ったことだから・・・話が逸れたわね、何から話そうかしら…」

 

 

 俺はサーシャさんに向こうで起きていることを聞いた。もちろん新聞にも情報が回ってるが、前線での戦いの様子や殺人PKの情報など知らない事がが沢山聞けた。

 

「私が知っているのはこれくらいかな?」

 

サーシャは残った紅茶を飲み干し、カップを置いた。

 

「あそこも…ひどく荒れていたわ、もしまだ上にいたら死んでいたかもしれない・・・」

 

サーシャは悲しげに喋っていた。俺はそれを黙って聞くことしか出来なかった。でも俺は一つ決心がついた。

 

「ごめんなさい・・・こんなことレト君に話しても仕方がな…」

 

「サーシャ少し相談したいことが」

 

急に立ち上がったレトをみて、サーシャはびっくりした。

 

「急にどうしたの!?」

 

レトは真剣な眼差しでサーシャを見ていた。

 

「俺・・・上に行こうと思うです。」

 

 

 その後、サーシャさんと色々口論になった。危ない、行かないほうがいい、子供たちはどうするのと、当然の答えが返ってきた。そこでサーシャにシズナとキングの二人を任せることはできないかとお願いした。床に足をつけ土下座をする。

 

「そんなの無責任よ・・・」

 

「無責任なのわかってます・・・でもシズナをもう一度姉に逢わせてあげたいんです。」

 

レトは顔を下に向けたまま話を続ける。

 

「昔…交通事故で父と妹を亡くして…何もできなくて…助けを待つことしかできなくて。」

 

「えっ!?」

 

「分かるんです…シズナの気持ちが、いつも目の前にいた姉がいなくなって…あいつまだどこかでたまに泣いてるんです。」

 

サーシャは口を押さえながら話を聞き続ける。

 

「唯一この仮想世界で血のつながった姉においていかれて・・・悲しまないわけないんです。まだ生きているかもしれない姉にもう一度…逢わせてあげたいです!!」

 

「レト君・・・」

 

 父と妹を亡くしたレトはシズナの気持ちが痛いほど分かっていた。

 

「お願いします、どうか…どうか・・・!?」

 

 サーシャはレトに駆け寄りやさしく頭を抱きしめてくれた。

 

「ごめんね・・・私より年下なのに・・・そんな辛いことがあったのにね。」

 

 俺はこの世界に来てから何でも自分ひとりで考えていた。周りに相談する相手が居ないのもあるが、確実に自分を追い込んでいた。でも今はとても温かくて安心する気持ちになっていた。今まで溜まっていたものが、涙となって流れ出た。

 

 

 

 夕方俺はシズナとキングに二日後の朝に出って行くと告げると、キングは泣きながらレトを抱きしめていた。だがシズナはそれを聞き、寝室に閉じこもってしまった。寝室からはシズナの泣き声が響いていた。

 

 次の日の朝、朝食を皆と食べているがそこにシズナはいなかった。キングはいつもように元気でいるが、シズナはまだ寝室に閉じこもったままだった。サーシャさんは「今はそっとしときましょう」といいシズナを一人にさせていた。

 

 その日夜俺はシズナの寝室の扉の前に立っていた。

 

「シズナ、ここに晩飯を置いておくぞ。冷めないうちに食べてくれよ。」

 

 お盆に載せたクリームシチューとパンを扉の横に置き、レトは扉に背中つけるように床に座った。

 

「今日のは自信作でさぁ、シズナの大好きなクリームシチューを作ったんだけど、これがまた美味しくて…」

 

「・・・・」

 

 寝室からは声が帰ってくることは無かった。沈黙が続く中、レトが口を開く。

 

「シズナ・・・明日の朝、俺ここを出るよ。」

 

「・・・・」

 

「お前のことサーシャさんに頼んであるから心配するな、外に行ってシズナのお姉ちゃん探して来るから・・・」

 

「・・・・」

 

「それじゃあ、お休みシズナ…」

 

 レトは立ち上がり自分の寝室へ戻っていった。

 結局今日はシズナと顔合わせることはなかった。

 

次の日

 

 レトは剣を背中に背負い、アイテムストレージにポーションのストックを所持し、寝室を後にした。

 

 教会の外ではサーシャさんとミナ、ギン、ケインの姿があったが、シズナとキングの二人はいなかった。 

 

「ありがとうレト。」

 

「頑張ってこいよ。」

 

「応援してるよ。」

 

ミナとギンとケインとはこの二日間の間で仲良くなっていた。

すると、サーシャが近付いてきた。

 

「シズナとキングのことは任せてください・・・それとたまには顔を出しに帰ってきてください、そのほうが二人も喜びます。」

 

「はい・・・あとここの維持費は俺が稼いでくるんでご心配なく。メールでコルを送りますんで、それから・・・」

 

 

サーシャさんが俺の肩を叩くと教会の扉のほうに指を指していた。そこには小包みを持ったキングとシズナがいた。

 

「レトーーー!」

 

キングが近寄ってくるとシズナも後ろからやって来た。

 

「はいこれ!」

 

キングが小包みをレトに渡した。

 

「なんだこれは?」

 

「開けてください…です。」

 

シズナがレトに小包みを開けるように言うと、小包みをアイテムストレージから選択し中を開く。すると中には赤い深紅のマントが現れた。

 

「「メリー・クリスマス!!」」

 

(メリークリスマス?)

 

 今日は12月25日、クリスマスの日である。

 

「びっくりしただろ」

 

キングが胸を張りながら言った。

 

「着てみてください!」

 

俺はマントを広げ羽織った。

 

「すごく似合ってる・・・です。」

 

「本当だ、カッコいい!」

 

「二人は日頃の感謝をこめてレト君にクリスマスプレゼントを用意したですよ。」

 

サーシャが微笑みながらそう答える。

 

二人はレトが出て行くといった日にサーシャからの提案でレトにプレゼントを用意するように仕向けたようだ。レトが遠くに行ってもすぐに分かるようなものをプレゼントにしたようである。

 

「ありがとう二人とも…クリスマスプレゼントを貰うなんて久しぶりだよ。」

 

 レトは二人の小さなサンタにお礼を言った。キングは照れくさそうに笑っているが、シズナは泣きそうな顔をしている。

 

「レトお兄ちゃん・・・行く・・・です?」

 

「うん。ごめんな・・・でも必ずシズナのおねえちゃんを連れて帰ってくるから…」

 

レトはしゃがんで笑顔で返すとシズナは俯いた。

 

「行かなくて・・・いいよ・・・」

 

「シズナ?」

 

「お兄ちゃんと離れたくないよ~!!」

 

シズナはレトに抱きつき泣いた。レトはいつものように頭を撫でてあげた。

 

「大丈夫、絶対にまた帰ってくるから・・・言っただろ、約束は必ず守るから。」

 

「うん!!」

 

 

 レトは手を振りながら教会を離れていくが、遠くから見える紅いマントがレトだと示してくれていた。

 

 

第1層 草原

 

 もう見慣れた草原地帯は今日はレトには違うように見ていた。二人に貰ったマントを靡かせ紅葉清貴は第2層続く道を歩いた。

 

 

 この先にどんな過酷な運命が待ち受けてるともしらずに---

 

 

 

              

 

 

序章 Fin

 

 

 

 

 

 

 

 




 序章が遂に終わりました。長すぎると思いますがこれも後半に繋ぐためのフラグのためでもあります。
 ここから物語の時間軸の移り変わりが早くなるかもしれません。
 
 こんな作品でもお気に入り数が20以上ありました(涙)

 これからもよろしくお願いします。
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