魔王ルシファーの無双冒険~親子で異世界制覇~   作:猫つまみ

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親子喧嘩の果てに

 真新しい綺麗な家々が大きなレンガ状の道路を挟んで、数多く建ち並んでいた。

 この土地は東京都が新開発地区区域と指定していて、21世紀になった時移住民を募集した。

 駅の裏側で大型スーパーもあり誰もが争っていたらしいのだが、[流(ながれ)家]はちょっとしたツテの様な何かを使い、この場所を獲得したそうな。

 

 中世風の街灯にレンガの道路等、日本にいて外国にいる様な感覚が楽しめるとして、とても人気を誇っていた。

 

 

 

 そんな場所の1角……鈴虫の鳴き声が響き渡る秋の夕暮れに、静けさとは無縁と思える住宅があった。

 

「何であんたは、俺の仕事を潰すんだよ!?」

 

 オレンジ気味の朱色の髪が食卓のテーブルに、細い糸の様に流れ落ちてきた。

 

「ん? ああ……あの女優とのキスシーンの事か? そんなに、したかのったか?」

 

 怒りに身を任せた琉輝唖は、テーブルを強く叩く。

 その怒りを向けられたのはーー琉輝唖に似ている青年だった。

 

 琉輝唖よりも濃い深紅の髪は首の後ろまで伸ばされていた。

 より深い朱色の瞳が琉輝唖の怒りをそのまま受け止める様に、少し揺らいだ。

 

「……父さん」

「ん? パパの胸に飛び込んでくるのか? いいぞ! さあ、来なさい」

 

 座ったまま両手を広げ、琉輝唖を全身で受け止める体勢をとった。

 そして何故か頬を赤らめ、目をキラキラと輝かせている。

 

「……っ! この変た……」

「パパだろ?」

 

 琉輝唖よりも濃く、燃え盛る焔の様な髪の青年は立ち上がると、琉輝唖の頭を優しく撫でた。

 身長は琉輝唖よりも頭1つ分程高い。

 そして2人が並んだ場合、最も大きな違いがより分かり安くなっていた。

 

 それは……体格だった。

 

 琉輝唖が女性の様な線の細さなのに対し、この青年は真逆だった。

 服の上からでも分かる程に引き締まった筋肉をしていて、ガッチリとした鍛え上げられた肉体だった。

 

「誰が、あんたなんかを……っ!」

 

 目の前に立たれるとかなりの迫力があるらしく、琉輝唖は少したじろいでしまう。

 

「反抗期か? んん?」

 

 青年は微笑みながら顔を近付け、琉輝唖に威圧感を与えた。

 

「は……反抗期とかじゃないだろ! 父さんが、何で俺の仕事に口出しするんだよ!?」

 

 負けじと、顔を強ばらせた。そんな琉輝唖の反応が楽しくて仕方ないらしく、ついついニヤニヤとしてしまう。

 

「ん? ああ、その事か」

「何を、いけしゃあしゃあと……!」

 

 父と呼ばれた青年は琉輝唖の細くて夕焼けの様に美しい髪を、自らの指に絡み付ける。

 そんな行動が頭にきたらしい琉輝唖は、ある事を忠告した。

 

「そうやって余裕ぶっていられるのも、今の内だけだぞ?」

「うん?」

 

 父親に負けじと笑う琉輝唖は、指を鳴らした。

 

「お呼びでしょうか? 琉輝唖様」

 

 音もなく部屋へと入ってきたのは、メイド服の美少女だった。黒いメイド服に白いヘッドドレズと、ヒラヒラのエプロンを着ていた。

 ピンクの髪をツインテールにし、腰程まで伸びており、どこか幼い印象を与えていた。

 けれどそんな幼さの残る小柄な見た目とは裏腹に、大きな胸が少女の動きに合わせて揺れていた。

 

 そんな美少女は大きな紺碧の瞳を微動だにせず琉輝唖と青年を、ただジッと見つめていた。

 

「琉輝唖様。今日は、何時もよりも多目に刺しておきました」

「ああ。何時もすまないな」

「いいえ。私は琉輝唖だけの味方ですので」

 

 メイド服の美少女は微笑みながら、琉輝唖に何かを手渡した。

 

「はは。乃利香(のりか)がいてくれて、本当に助かるよ」

 

 琉輝唖が満面の笑顔で受け取ったそれは……金属バッドだった。けれどそれは少しおかしな事に、誰もが知る普通のバッドとは違っていた。

 あちこちに釘が打ち込まれており、いわゆる釘バッドと呼ばれる、ギャグを中心とした漫画等で使用されている物だった。

 

「あっ。前の時の返り血は、拭いておきました。それから、釘は20本程付け足しておきましたので」

 

 少女から向けられた笑顔を、彼もまた笑顔で返した。そして、青年へと視線を向けた。

 それを見た青年はつい先程までの余裕綽々な表情はどこへやらで、一気に血の気が引いてしまう。

 

「本当に、おしい人を亡くしたよ。父さん。お葬式位は、盛大にやってあげるからさ」

「身内だけでの葬儀となりますが、留史加(るしか)様の為です。チマチマと執り行いましょう」

 

 留史加ーー琉輝唖の父は半べそをかきながら、後ずさりしていく。

 

「ちっ……ちょっと、落ち着こうか? な? お前のその仕事を断った理由は、ちゃんとあるんだぞ!? 決してまだお前には早いとか、あんなアバズレが可愛い息子の唇を奪うとか……そんな事になる位なら、俺が最初に奪ってやろうとか、思って……ハッ!」

 

 どうやら本音をぶちまけてしまったらしく、慌てて自らの口を両手で塞いだ。

 

「ひっ!」と、小さな恐怖を混ぜた声を出したのち……鈴虫の鳴き声をかき消す程の大きな叫び声を、流家の周囲一帯に響かせたのだった。

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