それではどうぞ!
~NOside~
タッグトーナメントにおけるペア発表から数日が経ち、トーナメント当日。第一試合、一夏・デュノアペアはここ数日で、対戦相手であるオリジン・ボーデヴィッヒペアに対する作戦を練り、現在、ピットにて作戦の最終確認をしていた
「それじゃあ最初は予定通りに、マキナから狙うぞ」
「うん、わかった。その時に気をつけなきゃいけないのが―――」
「ボーデヴィッヒだな……」
と、この会話を聞く限り、マキナに対する作戦はだいたい予想がつくだろう。この二人は真面目に作戦会議をしているが、マキナの方はというと―――――
「ラウラ、何か作戦とかあるのかしら」
「そんなものいらんだろう。後、気安く名前で呼ぶな」
取りつく島もないといった様子である。二人とも実力があるので、作戦など無くとも大丈夫かも知れないが、同じペアだというのに、このコミュニケーションである。この場合はラウラが悪いのだが、マキナも元より、どうしようもない人間には何もしない、この場合、同じペアだから話しかけているだけである
この後、二人は一言も話すことなく試合開始まで待機していたのだった
~マキナside~
ラウラと話すことも無くなり、試合開始まで暫く待っていると
『間も無く、第一試合を開始します。ピットにいる選手はアリーナに入場してください』
ようやく始まるのね。何も喋らないでいると時間の進みが遅く感じるのよねぇ。ラウラを先にアリーナ中央に向かわせ、少し後ろを付いて行く。
アリーナには既に、大勢の観客、国や企業、軍の首脳陣、中央には、一夏とシャルロットがやる気十分な顔で佇んでいた。
「二人とも、今日は全力で掛かって来なさいよ」
「マキナ相手に手を抜いて勝てるなんて思ってねえよ」
「それもそうね」
そうこうしている内に、カウントが鳴り始める。
5―――――4―――――3―――――2―――――1―――――試合開始
先に仕掛けたのは一夏とシャルロットだった。一夏は雪片を構えマキナの正面に、シャルロットはラウラへの牽制をしつつ、マキナに近付いていく。対するマキナは、距離を取りながら二人にビットとアウェイク:マキナを使い、近付けさせないように射撃をしていく
シャルロットの牽制をAICで止め終わったラウラは、一切動かないでいた
「(ラウラが動かない……私が落とされるのを待ってるのかしら?)」
「(ボーデヴィッヒさんが動いていない?なんで?こっちとしてはありがたいけど)」
ラウラが動かないのを好機と見て、シャルロットが両手のアサルトライフルをマキナに向け乱射。マキナはそれをビットで防ぐ。銃弾を弾く音が消えた後、マキナを守っていたビットが、中程までに亀裂が入る
「まずは一つ!」
いつの間にか上昇していた一夏が、ビットを零落白夜で切り裂いたのだ。もちろん、マキナもただでくらう訳にもいかないので、他のビットでの射撃はしていたが、全て避けられるか、零落白夜で無効化されていたのだ
「腕を上げたわね一夏」
壊されたビットを粒子化させながらマキナは言う。ちなみに壊されたビットだが、射撃こそできないが盾としては十分に機能する。だとしたらなぜ仕舞ったのか、この場にいる他の人たちには分からないが、マキナは後にこう語る―――――修理が面倒だったから、と
話を戻そう。戦況は、一夏が零落白夜の弊害でシールドエネルギーが少し減っている。シャルロットはビームがなんどか掠っただけで、シールドエネルギーはあまり減っていない。マキナは未だに、被弾が0である
シャルロットが少し接近し、右手にアサルトライフル、左手にショットガンを持ち、マキナの動きを制限させながらアサルトライフルで削りにくる。そこでマキナは、2つのビットを一夏とシャルロット目掛けて突進させる。
二人は咄嗟に横に回避。そこを残り1つのビットとマキナ自身が狙い撃ちにする
一夏は零落白夜の発動を余儀なくされ、シャルロットは体を捻って避けるが、避けきれずに体を掠める。幸い、あまり溜めていない攻撃だったので、ダメージは少ない。
一夏はビームを無効化した後、瞬時加速でビットへ一気に近づき、斬る
「二つ目ぇ!」
一夏は二つ目を破壊した直後、シャルロットと共に一気に攻勢に出る。シャルロットが両手にショットガンを展開し制圧射撃をしながら接近。一夏はそれに当たらないように近づく
「ここまでやれるなんて思って無かったわよ」
「マキナが褒めるなんて、珍しい……なっ!」
一夏が雪片で斬りかかってくる。それを紙一重で避け、反撃にでようとするが―――
「こっちにもいるよ!マキナ!」
今度は、反対側から近接ブレードとパイルバンカーを持ったシャルロットがブレードを振るってくる
「(恐ろしいもの持ってるわね)」
恐ろしいものとは、言わずもがなパイルバンカーである。あんなもの当たったら、一溜りも無いだろう。流石のマキナも、シャルロットの攻撃を避けきれない
シャルロットと交互に一夏も雪片で斬りかかる。斬撃の嵐の中にいるマキナはというと、何故かビットによる反撃をしないでいた。何かを待っている様にも見える
「(何かおかしい。なんでマキナは避けてるだけなの……?)」
そう考えてマキナのもう一つの武装がある、掌を注視してみると、握り拳から僅かだが、光が漏れ出していた
「!? 一夏!離れて!」
「もう遅いわよ!」
そう叫んだマキナは、手を振り上げ、勢いよく二人の足元に向け振り下ろす。すると、マキナの掌から、巨大な光の球が放たれる。着弾と同時に光球は派手な爆発を引き起こす
「名付けて、そうね。『ユナイティリィ・ラフ』のお味はどうかしら?」
爆発による煙が晴れると、二人のISの装甲はボロボロになって倒れていた。シールドエネルギーも、残り僅かである
「ゲホッゲホッ、ああ、大した威力だよ」
先に立ち上がった一夏が言う。その直後、すぐにシャルロットも立ち上がる
「それは良かったわ」
飄々とした態度で話すマキナだが、デウス・エクスのシールドエネルギーも、残り少なかった。
「おい。私も手伝ってやろう」
三人のシールドエネルギーが僅かになったタイミングで、ラウラが参戦する。マキナにとっては有り難いだろうが、一夏たちにとっては、無傷のラウラの参戦は、絶望的とも言えるだろう
「あら?今のタイミングで?兎じゃなくてハイエナね貴女」
「そうだな。確かにハイエナだ」
マキナはラウラを少し煽ると、前に出ようとするが、体が動かない
「自身の敵を、また別の敵の手を借りて、止めを刺すんだからな」
その言葉の直後、ラウラはマキナにレールカノンを撃つ。まだシールドエネルギーが残っている。それを確認したラウラは、続けて二発目を撃つ。今度こそシールドエネルギーが無くなり、デウス・エクスが解除される
そして、ラウラはマキナの腕を掴み、アリーナの端に放り投げる。地面に顔から打ち付け、うつ伏せになったマキナは、ピクリとも動かない
「ボーデヴィッヒいいいいいい!!」
その光景を見た一夏は、怒りを爆発させ、ラウラに向かって突撃する。それを冷静にAICで拘束するラウラ
「ふん、単純だな貴様は。やはり教官の弟には、相応しくない」
「うるせえ!どうしてマキナを!同じペアで、仲間じゃねえか!」
「仲間だと?笑わせるな。ヤツを仲間だと思ったことなど一度も無い!逆に、私の邪魔をする敵だ!」
拘束されている一夏にレールカノンを向ける
「死ねぇ!織斑一夏!!」
そう叫んだラウラはレールカノンを撃つ―――――が、弾丸が一夏に届くことは無かった。なぜなら
「いい加減にしなさいよ、人間」
ISを解除させられ、気絶していた筈のマキナが、シュバルツェア・レーゲンのレールカノンを素手で、拉げさせていたのだ
「折角同じペアになったから話しかけても無視。挙句の果てには裏切り」
今までのマキナからは考えもつかない程の冷たい声。観客には聞こえていないが、周りにいる一夏たちは、言い表せない恐怖を感じていた
「何様のつもりかしら?」
無表情―――――いつも何かしらの表情を浮かべているマキナと同一人物とは思えない。そんなことを感じさせる表情だった
「覚悟はいいかしら?」
そう言ったマキナは、次の瞬間にはラウラを右腕で吹き飛ばしていた。もちろん、ISなどは付けていない。生身の状態だ。掴んでいたレールカノンの砲身は、半ばから引きちぎられ、ISの保護機能が無ければ意識は飛んでいただろう。それほど威力のある攻撃だったのだ
「(なんなんだアイツは!?)」
恐怖で身が竦んでいたラウラは、殴り飛ばされたことによって、現実に引き戻されていた。レールカノンを失ったラウラは、一夏以外を殺すわけにもいかないので、ワイヤーブレード、またはAICでの拘束に移ろうとする
が、衝撃で顰めていた顔を上げたラウラの眼の前には、既にマキナの拳が近付いていた。無論、それを避けられる訳も無く、無防備な状態でマキナの右ストレートをくらってしまう
今度は右と左の連撃、時折脚での攻撃も織り交ぜていく。その連撃に対応できずにサンドバック状態になっている。シュバルツェア・レーゲンも装甲がボロボロになってきている。シールドエネルギーも残り100しかない
「(こんなところで、こんな負け方をするのか?嫌だ!力が欲しい!)」
『願うか……?汝、自らの変革の為に、力を欲するか?』
「(寄越せ……力を……!)」
ラウラが力を願った瞬間、シュバルツェア・レーゲンに紫電が走る。その変化にいち早く気付いたマキナは、即座に一夏たちの所まで退避する
「ああああああああああああ!!!」
ラウラが悲鳴を上げる。その最中に、シュバルツェア・レーゲンの形が変わっていき、紫色のドロドロとした何かが、ラウラを包み込んでいく。形状を完全に変えたその姿は、第一回モンド・グロッソ優勝者、織斑千冬の専用機、『暮桜』によく似ていた。というよりも、暮桜そっくりそのままの姿だった
「俺がやる……」
「何言ってるの?見たところあれは、千冬の真似をしてるのよ。貴方が勝てる訳無いでしょう」
「だから俺がやるんだよ!あれは千冬姉だけの物なんだ!だったら俺が止めないと!」
呆れた、この程度のことでここまで怒れることができるのね。やっぱり人間ってよく分からないわ。
「だったら好きにしなさい。私はアイツが死のうが、貴方が死のうが、関係ないわ」
「? なんでボーデヴィッヒが死ぬんだ?」
「あれは、ヴァルキリートレースシステムって言って、大会優勝者の動きを無理やりさせるのよ。脳にも負担が掛かるから、放っておいたら勝手に死ぬのよ」
それを聞いた一夏は歯を食い縛っている―――なんなんでしょうね。アイツを助けようとでも思ってるのかしら。どうして今も敵の人間を助けようとするのかしら。
「助けるならそれでもいいけど、シャルロットからエネルギー貸してもらってからにしなさい。今の状態じゃ、すぐに負けるわよ」
「わかった。頼む、シャルロット」
「うん」
エネルギーを補給し始めた途端に、VTSが接近してくる。狙いは二人の様だ。死なせるわけにもいかないので、相手の懐に潜り込み、掌底で弾き飛ばす。
「時間稼ぎはしてあげるから、早く補給しなさいよ」
そう言ってからVTSに近付く。補給自体はすぐに済むだろから、攻撃を避けるだけでいい。袈裟斬り、上段からの振り下ろし、横薙ぎに斬りつけてくるが、どれも回避する。
やはり偽物だからだろう、本物と比べると、どこか微妙なところが違う。ここが違う、とはっきり言えないことが少し悔しい。
「マキナ!終わったぞ!」
ようやくね。準備完了の知らせを聞いて、VTSを蹴り飛ばし、一夏と交代する。
「遅かったわよ」
「悪いな。後は任せてくれ」
さっきと違い、一夏の表情は落ち着いていた。これなら大丈夫そうね。
「それじゃあ、頑張ってちょうだい」
一夏に手を振りながらアリーナの端に避難する。振り返ったと同時に、VTSが一夏に斬りかかるが、それを弾き、千冬の技である大上段からの振り下ろしでVTSに止めを刺した。切り裂いた所から亀裂が入り、その中からラウラが出てくる。
それを確認した私は、アリーナを出て、自室に向かう。
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今私は、両隣を本音と簪、正面を楯無に囲まれて医務室にいる。皆が睨んできて少し怖いわね。
「どうしてあんな無茶したの?」
簪が怒っている様な、それでいて心配している様な顔で聞いてくる。
「生身で戦ったことを言ってるなら、見当違いの心配はしなくていいわよ。私は機械だもの」
三人がさらに睨みを効かせてきた。何か間違えたかしら?
「そういうことを言ってるんじゃないのよ。マキナに何かあったら私たち……」
なるほど、そういうことか。優しいわね、この娘たちは。
「心配してくれてありがとう。そうね、貴女たちを心配させないためにも、これからは危険なことは避けるわ」
「そうしてくれると安心だよ~」
この娘たちも、私の大切な、護りたいと思った人なのよね。それなら、いつか別れるその時がくるまでは―――――
今回はどうでしたでしょうか? 毎回うまく書けてるか心配な赤目です。
次は臨海学校前の、準備編ですかね?
ちなみにISで他の作品も書きたいと思ってるので、これが一区切りついたら書こうと思ってます。
それではみなさん、また次回!