今回は二人の恋の始まりについてです。
それでは、どうぞ!
翔夢が思わぬ邪魔を受け、告白が失敗した日の翌日、咲夜は紅魔館でいつものように仕事をこなしていた。ふと、咲夜は昨日の事を思い出した。
咲(…そういえば、翔夢さん最後に私になんて言おうとしてたんだろう?)
もちろんのことながら彼女は翔夢の言葉は全部は聞いていない。彼女が聞こえていたのは『初めて見た時からあなたのことが…』のところまでである。咲夜はその先の言葉を推測してみる。
咲(私のことが何なんだろう?すごく真剣な目をしてたから普通のことじゃないはず…。初めて見た時からって言ってたから………もしかして、好き?)
そこまで考えがついたとこで咲夜の顔は急に真っ赤になった。
咲(いやいやいや!そんな、そんな都合のいいことあるはずが…。でも、好き以外に他に言葉が当てはまらないし…。)
そういえば、と咲夜はある事を思い出した。昨日のレミリア達のことである。
咲(あの時はお嬢様の言葉に納得したけど、今考えると不自然だわ。あれはたまたまその場にいたのではなくて、初めから見張ってたのでは?霊夢がいたのも変だったし、もしかして二人は協力してた?霊夢なら、翔夢さんの事情とか知っててもおかしくないし…じゃあ、本当に翔夢さんは私のことを?)
咲夜は自分の疑惑が確信に変わりつつあった。翔夢は自分のことが好きなのではないかと。そして自分もまた翔夢のことが好きである。まだ確証はしていないが、そうなると二人は両思いになる。だが、咲夜にはそれを確かめる勇気が持てなかった。もし思い違いだったら恥ずかしいし、何よりその後の関係が気まずくなる。それに、もし彼が本当に自分のことが好きならば、彼から告白するのを待とうと咲夜は思った。自分から告白するのもいいが、昨日あれだけ勇気を持って告白しようとした彼なのだから、きっと近いうちにまた告白をしてくるだろう。そう信じ、咲夜は仕事を再開する。翔夢が昨日の事で挫け、告白を諦める可能性もあるが、咲夜はそうは思わなかった。
今まで恋愛とは無縁だった自分が一目で惚れ、恋した男性である。一回の失敗で挫けるはずがない。咲夜はそう決め込んでいた。
咲(…それにしても、最初に出会った時はこんな事になるなんて、思ってもみなかったな…。)
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それは紅霧異変の解決から四日程経った日のことであった。突然レミリアは霊夢の兄についての事を話し始めた。
咲「博麗霊夢の兄、ですか?」
レ「そ。聞いた話だとそいつ三年前までは神主をしてたらしいけど、今はカフェを経営してるらしいわ。紅茶もあるみたいだから、見に行ってみましょう。」
咲「わかりました。では、準備をしてきます。」
咲夜はそう言い部屋を出た。能力を使いすぐに準備を済ませ、出発した。
咲「どういう人なんですかね、その博麗霊夢の兄というのは。」
レ「さぁ。でも異変の解決に来なかったってことは、よほどものぐさか臆病なのかしらね。」
レミリアはそう評価していたが、咲夜は若干の不安があった。何しろ霊夢ですら、腕に自信があった自分達を容赦なく叩きのめした人物である。その霊夢の兄なのだから、かなりの実力をもっている男ではないかと咲夜は思っている。その男が経営してるカフェに異変を起こした張本人である自分達が来たら、あまり良くない反応をする可能性は充分にある。または問答無用で攻撃するかもしれない。そうなったら、まだ怪我が完全に治っていない自分はレミリアを守ることかできない。
そんなことを考えていると、視界にその店らしき建物が見えてきた。
一方で、翔夢は今機嫌がかなり悪くなっていた。このカフェをオープンして三年、やっと経営が軌道に乗り始めた矢先にあの異変である。翔夢は万一を考え人里で待機していたが、それは霊夢と魔理沙が異変を解決してくれたおかげで人的被害は無くて済んだ。が、異変の影響で妖怪や妖精が活発化した為、人々は警戒しあまり外出しなくなり、人里の中心部から離れたこのカフェの売り上げはすこぶる落ちている。活発化が収まるにはあと三日はかかるだろう。こうも経済難が続くとさすがに普段温厚な翔夢も不機嫌になる。材料は翔夢の能力で生み出しているので費用はかからないが、せっかく作ったスイーツ類を廃棄してしまうのは心が痛む。もちろん自分や里の人達に配布したりはしているがそれでも消費しきれないものもある。何よりの問題は、稼ぎがないと霊夢に生活費を送れないことであった。今は異変解決のお礼が紫や翔夢経由で届けられているが、恐らくそれはあと一週間くらいだろう。そうなるとまた貧乏生活になるだろう。そうならない為にも早いとこ稼ぎを得なくてはいけない。当時の翔夢は現在より霊夢に対する家族愛が少し強い傾向にあったので、そういう事を含めて不機嫌な状態になっていた。
翔(ったく!今度異変の首謀者にあったら文句いってやる!……いや、まずは事情を聞いてからにするか。)
そう思っていた翔夢だったが、すぐ近くに誰かが来る気配がしたので迎える準備をし始める。
カランカラン
翔「いらっしゃいませ。」
?「あら、結構礼儀はいいのね。霊夢とは大違いね。」
?「そのようですね、お嬢様。」
翔夢はこの来客を不思議に思った。見ない顔というのもあるが、霊夢のことを知っているのが気掛かりであった。それに、メイドらしき来客を見た瞬間、少しドキッとしたのであった。ほんの少しの出会いであるが、その来客の言葉遣いや姿に何かしら惹かれるものがあった。綺麗な人、というのがその来客の第一印象だった。
翔「えっと、あなた方は?」
レ「ん?霊夢からは何も聞いてないの?私はレミリア・スカーレット。この前の異変の首謀者であり吸血鬼よ。こっちは従者の十六夜咲夜よ。」
咲「初めまして。十六夜咲夜といいます。」
翔夢この二人が前の異変の首謀者であることに驚いた。霊夢からはある程度は聞いていたが、簡単に吸血鬼とその親友と部下としか聞いていなかった。それゆえ、この綺麗な人がそこにいる小さな吸血鬼の従者とは信じられなかった。
レ「まさか異変の首謀者がここに来るなんて思ってみなかったって顔ね。別に腹いせに来たわけじゃないから安心いいわ。」
翔「あ、わかりました。自分は博麗翔夢といいます。」
レ「翔夢ね。とりあえず、紅茶を一つ貰えるかしら。」
翔「かしこまりました。今淹れますのでこちらへどうぞ。」
翔夢は二人を席に案内する。翔夢は注文された紅茶を淹れ始める。数分で出来上がり、テーブルへと紅茶を運んだ。
翔「お待たせしました。」
レ「ありがとう。」
レミリアは紅茶を口に運び、一口飲んだ。
レ「…意外ね、かなり美味しいわね。気に入ったわ。」
翔「ありがとうございます。…ん?」
翔夢はその時、咲夜の腕に包帯らしきものが服の下からのぞいていたのが見えた。
翔「えっと、咲夜さんでしたっけ?その包帯は?」
咲「あぁ、これは、その…前の異変の時に「霊夢にですか?」そうです。」
途端に翔夢は咲夜に向かい頭を下げた。
翔「すいません、妹がこんなことしてしまって!」
咲「え?」
咲夜は動揺した。何故彼が謝るのか?自分達は異変を起こした者で、霊夢はそれを止めるのに実力を行使したのであり、こんな目にあうのは当然だと思っていた。なのにその霊夢の兄はそれを謝っている。それが不思議でしょうがなかった。
咲「えっと、何故謝るのですか?」
翔「いや、実は妹が異変の解決に向かう前に俺、言っておいたんです。異変の関係者と戦うことになってもあまり傷つけたりするなって。確かに、異変を起こすことは幻想郷にとっては悪いことです。けれど、起こした側にも何かしらの理由があるはずですし、何より、ここは全てを受け入れます。なのに理由も聞かずにそれを拒否するような事をするのはおかしいと俺は思っています。だからそう言いつけていたんですが、妹は貴女を傷つけてしまいました。妹にはちゃんと謝らせます。ですから、許してもらえませんでしょうか?」
咲夜はその言葉に感銘を受けた。もし自分が逆の立場なら問答無用で首謀者を倒していただろう。が、彼は違った。相手側の言い分を理解し、その上で対処しようとしている。上っ面だけの言葉の可能性もあるが、彼の目を見る限り、その言葉がその場だけの言葉ではないことを示していた。
咲夜は彼に対して、レミリアに対する忠誠愛とは違った愛おしいような感情を覚えた。先ほどから感じていた胸の高鳴りも大きくなっていた。
翔「あの、咲夜さん?」
咲「え?あぁ、いや大丈夫ですよ。大した怪我ではないので。「いや、ですが…」お気持ちだけで充分です。ですから、翔夢さんが気にする必要はないですよ。」
翔「そこまで言うなら、わかりました。」
翔夢は霊夢が行なったことを咲夜が許したことに心からほっとした。それと同時に、先程から感じてるこの感覚が何かわかった。ーー自分はこの女性に恋をしたんだと。
レ「話は終わったかしら?そろそろおいとましたいのだけど?」
翔「あ、はいお会計ですね。こちらです。」
翔夢がレジへと案内し、カップを片付ける時であった。咲夜はついいつもの癖でカップを片付けようとし、咲夜の手が翔夢の手に触れた。2人は驚き、思わず手を引っ込めた。
咲「す、すいません!つい、いつもの癖で。」
翔「いや、大丈夫ですよ。」
互いの手が触れ合った時、咲夜はドキドキしていた。恥ずかしいのもあるが、彼に触れたということに対して少し嬉しいような感じがあった。
そんな考えをしている間にレミリアは会計を終わらせた。
レ「ごちそうさま、また来るわ。」
翔「ありがとうございます。」
レ「咲夜、行くわよ。」
咲「は、はい。」
二人は店を出て行った。やがて遠くに行ったのを見届けると、翔夢は軽くため息をついた。
翔「咲夜さん…か。また来るって言ってたから、その時少し話でもしようかな。」
一方、咲夜は先ほどのことで思い悩んでいた。店を出る時、もう少し彼といたいという気持ちが湧き、また、今は彼にもう一度会いたいという気持ちになっていた。
レ「どうしたの咲夜?さっきから変よ。」
咲「えっ、いや、平気です。……お嬢様、一つよろしいですか?」
レ「何かしら?」
咲「お嬢様は今まで誰かにもう一度会いたいとか思ったことはありませんか?」
レ「…そうね、そういう気持ちになるってことはその人物に恋をしているってことだから、そういう意味ではまだないわね。何故そんなことを?」
咲「いえ、ただなんとなく聞いてみただけです。(そっか…恋か…。)」
この瞬間、十六夜咲夜は自身の初恋に気がついた。これが、翔夢と咲夜がお互いを好きになった経緯である。
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咲(あれから何回も翔夢さんに会ったけど、結局何も話せずになっていた。けど、昨日やっと翔夢さんとの距離が近くなったし、多分だけど告白まがいのこともされかけたな…。)
咲夜が思う通り、ここ最近で二人の距離はかなり近くなった。これが吉とでるか凶とでるかは二人の行動次第である。だが、二人は間違いなく吉へと向かおうとしていた。
店の中で、翔夢は一人考えていた。昨日の告白は失敗したが、紫には二度と勝手にスキマで呼ばないよう約束させたので、次は失敗しないだろう。
翔(次のチャンスは…クリスマスだな。咲夜さんがどこまで聞いてたかはわからないが、多分勘づいてるだろうな…。もしそうなら、早く告白しなくては。)
前回、二人の恋が実るのはまだまだだと評したが、事情が変わったようである。二人がお互いの気持ちに気付き始めた今なら、二人が結ばれるのは近いだろう。
さて、二人は見事付き合える事が出来るのか、今後の二人に注目してください!
それではまた次回まで、
ゆっくりしていってね!