Snow wind & Temerity heart VS The world   作:Phidias

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エピローグだから長くならないと思ってたけど、考えが甘かった……。文字量が前回と変わんないなんて……。



10:未来(あした)予報はいつも晴れ

「おとうさまっ、おかあさまっ!」

イルククゥが2匹の巨大竜に向かって声をあげた。その様子は嬉しそうに見える一方、どこか恐れているようだった。

「イル、あれほど言ったじゃないか! 『危険だから巣の外に出るな』と。どうして私たちの言う事を聞かなかったんだ!」

 イルククゥの父親なのだろう。全長20メートルの巨大な青い竜が威厳の感じる低い声で彼女を叱った。それに続き、もう一匹の青い竜も女性の声を出して叱りつける。彼女は母親なのだろう。

「イルククゥ、どれほどわたしたちが心配していたか分かる? 風の精霊たちにあなたの向かった先を聞いてどれだけ心が押し潰れそうになった事か……。とにかく、母さんはとっても怒ってますからね!」

「きゅい……。ごめんなさいなのね……」

 両親に怒られてイルククゥは落ち込み、縮こまった。

「お説教は巣に帰って長老たちを交えて行いますからね。ところで……」

 母竜がタバサと勾導たちを見る。続いて砦の一角にあったカ・グター・バ達の遺骸にも目をやる。

「この人間たちは何者なの? それと、そこにある見た事も無い幻獣の死骸は? まさか、先ほどまで精霊たちが怯えていた原因はこの幻獣なのですか?」

「この人間達と一体何をやっていたんだ、イル。正直に言いなさい」

 2匹はイルククゥを問い詰める。それに対し彼女は捲し立てるように返した。

「この人間達はとってもいい人たちなのね! イルはこの子達に助けてもらったのね! おとうさま、お願いなのね! ムキムキ……じゃなかった、この男の子の怪我を治して欲しいのね!」

「どういうことだ、イル。詳しく説明しなさい」

「あのね、実は……」

 イルククゥは両親に今までの経緯を話した。2人に出会った時の事、怪物に遭遇した事。2人と一緒に怪物を倒した事。身振り手振りを交えて説明する。

 両親はその内容に時々顔を青ざめながらじっと聞いていた。

「……と、言うわけなのね。お願いなのね、この子を治してあげてなのね」

 大切な娘の願いを受けて、躊躇った素振りを見せつつも父竜は勾導の容態を確認する。全身の骨が折れ、中でも右足の様々な部分が開放骨折で飛び出した骨によってズタズタに引き裂かれていた。正直、意識を保っている事が不思議な状態だった。

「酷い怪我だ……。だが、やれるだけやってみよう。この者の身体を流れる水よ、肉体を正しき姿に癒せ……」

 父竜がそう呪文を唱えると、勾導の身体は逆再生映像のように傷口が塞がっていく。体内でも変化が起きた。折れた骨や千切れた筋肉・血管が接合していき、開放骨折の患部は飛び出した骨が体内に引っ込み、そのまま体内の骨とくっつく。2分ほど経つと、先ほどまで重傷患者だった勾導の身体は完治し、2本の足で歩けるまでになった。

「スゲぇ……。もう全然痛くねぇし、歩くのにも問題ねぇ……。あんがと、きゅいきゅいの父ちゃん」

「正直、我々は人間とは関わり合いたくない。だが、お前たちは娘を守ってくれた。これはそのお礼だ。第一、私だって驚いている。私は水の精霊魔法は得意じゃないが、この治癒速度はまるでエルフ達が使う高位の精霊魔法と同じだ」

「ふーん、まぁいいや。それはともかくよかったな、きゅいきゅい。両親が迎えに来てさ。安心して家に帰れるぞ」

 勾導はそう言いながらイルククゥを撫でる。だが、イルククゥ自身は浮かない顔をしている。

「おいおい、元はと言えば、お前が家出したからだろうが。怒られるのは当然だろうが」

「あなたは子供。ご両親の言う事は聞かないといけない」

 タバサもイルククゥに一緒に帰郷すべきだと言う。だが、イルククゥははっきりと言う。

「イルは……、竜の巣に帰らないのね。この人達に付いて行くのね」

 イルククゥの宣言に、両親は驚き、烈火のごとく怒りだした。

「なにを言っているんだイル! 人間達に付いて行くとはどういう事だ!」

「そうよ、イルククゥ! 今回家出して嫌な目にたくさんあったのでしょう! まさか、この人間達に洗脳されたの!? やっぱり人間は恐ろしいわ!!」

「違うのね! お願いだからイルのお話を聞いて欲しいのね!!」

 イルククゥは大声で両親に反抗した。その様子に2匹は驚き黙りこんだ。

「確かに、人間達の中には酷い事をするやつがいて、イルも酷い目にたくさん遭ったのね。何度も巣に帰りたいと思ったのね。でも、この2人の人間に出会ってイルは大切な事を学んだのね。人間達の中には種族が違っても一緒に生きていける人たちもいる事を。この子達はイルにとっても優しくしてくれたし、正体を現しても態度は変わらなかったのね! ……イルはとっても嬉しかったのね。それに、ちっちゃい女の子はイルよりすごい風を操る魔法使いだし、このムキムキの男の子は魔法が使えない平民だけどすごいのね! 身体もそうだけど、『心』がとっても強いのね!!」

「『心』?」

 父竜がその瞳を大きくした。

「そうなのね。この子はこう言ってたのね。『人間は弱い生き物だ。でも例え勝ち目のない状況に陥っても、覚悟と決して屈しない精神があれば『奇跡』の様なすごい大番狂わせを起こせる』って。実際にイルは見たのね。普通だったら勝てないような怪物を倒しちゃったところを。……イルは学びたいのね。『長く生きるために静かに籠るだけの生活』をする韻竜の生き方とは別の、『例え短い生でも、大きな奇跡を引き起こす可能性』を秘めた人間の生き方を。きっと、これからの韻竜の生き方に対しても良い切っ掛けがあるはずなのね!」

「精霊を怯えさせるような幻獣を倒したのは人間の心の力が生んだ奇跡、か……」

 父竜は考え込むように唸りながら娘と勾導達を交互に見る。娘が初めて自分たちに反抗してまで伝えた人間の『心』に少し興味が湧く。だが、自分たちの一族に数千年に渡って受け継がれた『生き方』がその興味を打ち消した。

「駄目だ、イル。前にも話したが、私たちは古い一族だ。少しでも長く生きる事がこの世界に対する恩返しなんだ」

「あなたに何かあったら母さんは死んでしまいそうになるわ! あなたは私たちの『希望』なのよ。お願いだから考え直して!」

 両親に反対されたイルククゥは涙声できゅい、と鳴くと人間2人を見る。勾導たちもどうしたらいいのか迷っていた。本音は家族の元に帰ってほしいが、その一方で、彼女なりに種族の事を考えており、その希望を叶えさせてやりたいと思った。結局タバサと相談した結果、両親と一緒に巣に帰ってもらう事にした。その事を伝えようとしたその時だった。

 突然、勾導の背中のルーンが赤く光り出す。まるで、その結論は間違いだと言いたげに。

 その光にイルククゥの両親たちも気付き、警戒した様子を見せる。

「い、一体なんだ、その背中の光は? 人間、やはりなにか企んでいたのか!」

 勾導は慌てて弁明した。

「違います違います、これは使い魔のルーンの光です! 決して娘さんに危害を与えるようなものじゃありません!」

「使い魔だと? お前は人間なのに使い魔になったのか?」

「あっ、はい。そのため背中にルーンが入ってます。見ますか?」

 そう言って背中に刻まれたルーンを両親に見せた。そのルーンを見た2匹は信じられない物を見たような驚いた表情を見せた。

「こっ、この紋章は……」

「あ、あなた……、まさか私たちが子供の時に長老様が言っていた……」

 何度も見間違いじゃないか確かめるように勾導のルーンを確認した後、父竜は娘に近付き、優しく言葉をかけた。

「イル。大いなる意思はお前を『選んだ』のだね……」

「きゅい?」

「お前の出会ったこの人間は、ずっと昔精霊や我らをはじめとした古代種が一目置いていた者と同じ特徴を持っているんだ。背中に赤く輝く紋章を背負い、我らの先祖と共に迫りくる『終わり』と立ち向かった者と」

「私たちが子供だった頃、その時の長老様が言っていたの。『世界に危機が迫る時、赤く輝く紋章を背中に刻まれた者が、その主人に当たる者と共に現れる。そして、彼らに最初に出会った古代種の者は大いなる意思が選んだ『大使』として、その者達と共に行動する運命が待つ』とね……」

「そして、『大使』として選ばれた者は、その者達の生き様を記憶し、我ら古代種に語り伝えなくてはならないという使命を与えられるそうだ。まさか、それにイルが選ばれるとは……」 

 2匹は娘が大任を与えられた事に喜ぶ一方、これから嫌でも多くの危険に巻き込まれる事を心配して複雑な表情をする。イルククゥもどこか困惑した様子だった。

「イルが、そんなすごい使命を……」

 すると、母竜はイルククゥに近付き、娘をまっすぐ見た。

「イルククゥ。あなたは大きな使命を与えられたのね……。今でも、母さんは行ってほしくないわ。でも、あなたは行かなくちゃいけないのね……」

 そう言って顔を近付けて擦り合わせる。既に別れを覚悟したようで、お互いの匂いを忘れないように記憶していた。その一方で父竜が勾導たちを見る。これから娘が世話になる2人の為なのか、言い伝えの存在を前にしている為なのか分からないが、父竜は敬語で話した。

「娘をお願いします。あの子はまだ子供なので迷惑をかける事がありますが……」

「いや、オレらも子供なんで、お互い迷惑掛け合いながら一歩ずつ前へ進みますよ。それより、本当にいいんですか? あれほど反対していたのに。正直、オレ達も一緒に帰ったほうがいいんじゃないかと思ってんですけど……」

「はい。本当は行って欲しくはないですが……。巣離れが早くやって来たと考えるしかないです。ところで、あなた達の名前を教えていただけないでしょうか?」

「タバサ」

「勾導です。七瀬勾導です」

 勾導が名乗った時、父竜は驚いた様子を見せた。

「ナナセ……。いえ、なんでもないです……。私が昔出会ったことのある人間も同じ名前を名乗っていたもので……」

「まあ、よくある名字ですからね、七瀬って。つーか、他にも日本人この世界に来ていたのかよ……」

「変わった男でしたよ……。こんな人間ばかりなら我々も巣の中に隠れたりしないと思うほど精霊に愛されており、私たち韻竜以外の古代種とも仲良くしていましたから……。ところで、イル」

「きゅい?」

 父竜はイルククゥの顔を前足で撫でた。そして、今生の別れをするように語りかけた。

「お前は、今日から独り立ちをしなくちゃいけない。きっと、辛い目に遭う事もあるだろう。悲しい体験をする事もあるだろう。でも、決して挫けちゃ駄目だよ。お前は大いなる意思に選ばれたのだから」

 その言葉にイルククゥは首を縦に振った。

「大丈夫なのね。悲しい事があったら、その分後から楽しい事がやってくるのね。そう考えたらへっちゃらなのね!」

 その言葉に両親は微笑んだ。まるで自分の娘を誇るように。続いて、勾導たちを見て頭を下げた。

「これから娘をお願いします。そして、あなた達にも大いなる意思の祝福を」

「大丈夫。責任を持って共に行動していく」

 タバサが父竜に答えた。それに合せて勾導も続ける。

「オレも同じ考えです。あと、オレの背中のルーン実際そんな大層なものじゃないと思いますよ。発動条件も良く分かんないし、発動したところで、ちょっとクウガみたいな感じの肉体強化をするだけですので……」

「『クウガ』とは?」

「どういったらいいのかな……。 ……オレの国にたくさんいる英雄の中の一人です」

 『英雄』という言葉にタバサがピクリと反応するものの、すぐに平静になった。

「そうですか。ますますイルが大使に選ばれた理由になりますね。……では、イル」

 父竜は静かに笑った後、イルククゥの首を優しく噛んだ。母竜も同じことをする。イルククゥも両親の足を軽く噛む。お別れの挨拶なのだろう。それが終わると、両親は翼を羽ばたかせた。砦の周囲に強風が巻きあがり、勾導たちはイルククゥの身体に隠れた。

「お別れだ。私達と大いなる意思はお前を見守っているよ」

「あなたの使命が無事に達成される事を毎日お祈りするわ、だから怪我はしないでね!」

「さよならなのね! イル、この使命を絶対達成して見せるのね! だから、だから、心配しないでなのね~!」

 互いが別れの言葉を伝えた後、二匹はものすごいスピードで空に消えていった。イルククゥはいつまでも前足を振っていた。いつまでも、いつまでも。

 風が止んだその時、いつの間にか空が白み始めた。夜が明けたようだ。勾導がイルククゥに最後確認するように問いかけた。

「行ったな……。いいのか、使命とかそういうの抜きにしてオレらに付いてきてさ。親父さんたちにも言ったが、オレらそんな大層なもんじゃないぞ。ただのメイジとその使い魔だぜ」

「いいのね。イルは使命抜きにタバサ様(・・・・)コウドウ様(・・・・・)に付いて行きたくなったのね」

「『勾導様』って、急に言葉づかいが改まったな、おい」

「一緒に生活するから当然のことなのね」

「いや、そんな言い回し堅っ苦しい呼び方しなくていいから。めんどくさいし。なぁ、タバサ」

 勾導に問われ、タバサは同調するように頷いた。すると、別の呼び方を考えているのか、イルククゥはうーんうーんと唸りだす。しばらくすると、いい案を閃いたのか声を弾ませた。

「そうだ、でしたらお二人の事をお姉さま、お兄さまって呼んでいいかしら? イル1人っ子だったから、ずっと年上の兄妹が欲しかったのね! ねぇ、いいでしょ?」

 イルククゥの頼みにタバサはこくりと頷いた。その頬は、嬉しそうに赤くなっていた。

「『お兄さま』ねぇ。ほっちゃんボイスでそう呼ばれたら最高なんだけどな……。まぁ、全然構わないぜ。しっかし、異世界来たら竜の妹が出来たなんてヘタなラノベの設定にもないミラクル展開だな……」

 2人の了承の態度を見たイルククゥは嬉しさのあまりその場で飛び跳ねる。

「イルに兄妹ができたー! お兄さまとお姉さまができたー! うれしいのねー! るーるるるー」

 そんなイルククゥの様子を見ていたタバサが杖を向けた。

「あなたはこれから人前では喋っちゃ駄目」

 タバサの言葉にイルククゥは急速にテンションが下がる。

「どうしてなのね!」

「私達人間は、韻竜が遠い昔に滅びたと思っている。周りにバレて騒がれたら面倒」

「あー、そう言う事か。下手したらきゅいきゅいの一族に迷惑もかかっちまうからなぁ」

 2人の言葉に不満はあったが、イルククゥは納得した。

「ん~、わかったのね。我慢するのね」

「まぁ、オレらだけになったら好きなだけ喋っていいから。普段は我慢してくれよ」

「きゅい……」

 少しへこんだイルククゥを見たタバサは、元気を出してもらうよう、ある提案をした。

「あなたに新しい名前を付けてあげる」

「名前?」

「イルククゥという名前はあなた達の種族の間の名前。これから新たな世界に出るあなたに相応しい名前を付ける」

 その言葉にイルククゥは再び嬉しそうな声をあげた

「嬉しい、新しい名前! 新しいなーまーえー! どんな名前かなー」

 その時、勾導が手を挙げた。名前を考えたようだ。

「このキングオブゴッドファーザー勾導様がいい名前を思いついたぞ」

「どんな名前なのね! お兄さま、早く教えてなのね!」

「ふっふっふ。痺れる名前だぞ。聞いて驚け、それは……」

 イルククゥの心の中にドラムロールが流れる。そして、満を持して勾導の口から発表された。

「『バトルホッパー』だ! この星の為に時を超えろ、空を駆けろ!」

 イルククゥは想像していた名前とは全然違う名前にテンションが急激に下がった。

「なんかイルっぽくない名前なのね……。嫌なのね!」

 イルククゥの反対にあったが、それにめげずに勾導は次々と名前の案を出す。

「それじゃ『アクロバッター』! もしくは『ライドロン』!」

「なんなのね! 変な名前ばっかりなのね! 全然かわいくないのね!」

「かわいいじゃない、カッコいいだ! 第一男は初めて乗った自転車なり3輪車に特撮マシンの名前を付けるもんだろうが!」

「イルは乗りものじゃないのね!!」

「それじゃあ、『レゾン』、『ウインスコード』、『ソルギャロップ』、『バリアス7』の中から好きなやつを選べ! お勧めは『ウインスコード』な! 着化すれば『ファイヤースコード』になれっから!」

「着化ってなんなのねーッッ!! やっぱりお前の呼び名なんてムキムキで十分なのねーッッ!!」

 2人がきゅいきゅいガヤガヤやかましくしている時、タバサがぽつりと呟くように言った。

「『シルフィード』」

 その言葉にイルククゥは反応した。

「それ、もしかしてイルの新しい名前?」

「そう。“風の妖精”という意味」

 イルククゥは電撃に貫かれたかのように感動と感謝と喜びに震えた。『風の妖精』という、自分に相応しい名前を考えてくれたのだ。イルククゥは即決した。

「かわいい名前! 今日からイルはシルフィードなのね! 短く言ったらシルフィなのね! お姉さま、ありがとうなのね!」

 嬉しさのあまりイルククゥ改めシルフィードは感謝を示すようにタバサの顔をペロッと舐めた。勾導は自分の案が一蹴された事に納得がいかないのか、ブツブツと名前の案を出す。

「シルフィードがいいならグラディウスの方がいいんじゃね……。もしくはツインビー……」

「シルフィード」

 タバサが勾導にそう言いながら近付いた。

「いや、沙羅曼蛇も捨てがたい……。R-TYPEもいいな……」

「シルフィード」

 無表情のままずんずん近付く。

「ゼビウスだ! それしかねぇ!」

「シルフィード」

 さらに近づく。若干プレッシャーをかけながら。

「ヘクター'87は……」 

「シルフィード」

 いつの間にか勾導の傍まで来た。その溢れ出るプレッシャーに勾導はビビる。だが、それでもほざく。

「バトルガレ……」

「シルフィード」

 遂に根負けした。

「シルフィードでいいです……」

「そう」

 タバサは勝ち誇るように両手をあげた後、勾導から離れていった。その勾導は、溜息をひとつつくと、ある事を思い出す。

「そう言えば、村にいたじいさんどうなったんだ?」

 その言葉にシルフィードもあっとなる。

「そうなのね! おじいさんの事を忘れていたのね!」

「多分、呪術の効果も解けていると思うし、助けに行こうぜ!」

 そう言うや皆は急ぎ村に向かった。

 

 勾導たちは村に戻り、老人を拘束した部屋を確認した。しかし、そこにあったのは縛った時に使った縄だけで老人の姿はどこにもなかった。他の家を探してみたが見つからない。埒が開かなくなり結局村を後にする事になった。

 帰り際、勾導はぽつりと呟いた。

「まさか、オレらが見たのって幽霊だったのか?」

 その言葉にシルフィードはビクリとする。

「お兄さま、変なこと言わないで、きゅい!」

「あぁ、冗談だよ。しっかし、どこ行ったんだか……」

「他の村に避難したのかもしれない」

「そうだといいんだがな……。うん」

 勾導の手には四谷怪談の台本があった。感じ入るものがあったのかそれを2、3目にしてカバンの中に押し込む。どこか心に引っかかるものを感じながら、シルフィードの背に乗った。

 シルフィードは翼を羽ばたかせ空を飛んだ。強風が顔を打ち付けていると、村は次第に小さくなる。任務達成を実感したら疲れがどっときたため、2人は眠り始めた。

 

 その後、チュ・ルーヤ村は廃村となった。事件の事を知るものは当然のごとく誰もおらず、世間では山賊や亜人に襲われた事が原因と伝わっている。

 

 

 なお、この時期を境にエルパソ郡の各集落では犬を飼う人々が増え、その事からエルパソ郡は後に『犬鳴り郡』という名で人々に呼ばれる事になるが、それはまた別の話である。

 

 

 勾導たちは報告の為、プチ・トロワに戻った。報告の内容は任務の達成と、新たに風竜(表向きには)を手なづけた事。それらを伝えるため、シルフィードを中庭に着陸させた。衛兵に説明をして、シルフィードの食事を用意してもらう。それを確認した後、宮殿の中に入ろうとした。だが。

「なんで、オレは城ん中に入っちゃいけないんだよ。ふざけんな、あのクソデコ姫が」

 勾導は宮殿内に入る事を禁じられた。イザベラの命だそうだ。そのため、勾導は1人中庭の噴水に座り込み、ブツブツと呟いていた。

「たかがヘッドバット一発かましただけで出禁にするか普通。あの野郎、今度会ったらコンビニで買えないエロ漫画でしかやらないようなスンゴい事をしてやる……」

『コンビニって何? なんだかとってもおいしそうな名前なのね!』

 勾導の頭の中にシルフィードの声が響いた。それは、『念話』と呼ばれる意思疎通手段で、互いの心の中で会話をする事ができるようになる能力である。この事は、リュティスへの移動の最中に気付いたことで、タバサに聞くと「ルーンの影響かもしれない」との事だった。少しずつ、自分自身が人間離れしていく事に勾導はダウンな気持ちになったが、タバサもシルフィードと念話ができると言ったので、『シルフィードが大使となった際に手に入れた特典』だと思い、切り替えることにした。

 また、シルフィードは食事を終えた後、イザベラのいる部屋の窓を見つけ、そこから彼女とタバサのやり取りを覗き見しながら勾導に報告をしていた。

『しっかし、あのおでこ姫は嫌なヤツなのね。せっかくお姉さまが報告しに来たというのに、嫌みしか言ってないのね! あいつ、シルフィを見てなんて言ったと思う? 『移動の足が手に入ったのならこれからもっとこき使ってやる』ですって! この偉大な風韻竜であるシルフィを足扱いするなんて、ふざけるんじゃないのね! ……それにしても、どうしてお姉さまはあんなヤツに仕えているのかしら?』

『知らねぇよ。オレもここに来たの2回目だし。さっきも言ったが、あのデコ姫がタバサに直接ちょっかいをしたらオレに報告しろよ。すぐに部屋に乗り込むからよ』

『乗り込むってどこから入るのね?』

『「Aチーム」のテーマ口ずさみながら窓ぶち割ってダイナミック入室に決まってんだろ!』

『きゅい! お兄さまかっこいいのね!』

 そんなやり取りをしていた時だった。グラン・トロワ側の扉が開き、中庭にいる勾導に近付く者が現れた。勾導もその人間に気付く。 

 それは豪奢な衣装を纏った男だった。正直、そんな事は印象に残らなかった。なぜなら、

 

 それは青かった。

 髪も。

 瞳も。

 驚くことに、綺麗に整えられた顎髭すらも真っ青だった。

 30代、下手をすると20代に見える美貌を持ち、さらに体格も逞しかった。勾導が低い背に無理矢理横に大きくしたアンバランスな体型なのに対し、一方その男は190に届かんばかりの背に程良く筋肉がつき、無駄な物が削がれたルネサンス期の彫刻のような体型だった。

 だが、その男は世の男たちが望むもの全てを手にしているというのに、その青い瞳の奥の奥は暗くからっぽだった。まるで、心はここに置いていないように。

 

 男は立ったまま、勾導は噴水に座ったまま静かに対峙した。お互い、じっと見合う。最初に動いたのは男の方だった。青い、空っぽの瞳に勾導が映る。

「ほう。『シャルロット』が喚んだ人間とはお前の事か」

「なんだよ、おっさん」

 勾導は静かに、不機嫌さ全開で返した。いきなり、見ず知らずの青髭の男が話しかけてきたのだ。正直、関わりたくなかった。

「ふん、『おっさん』か。45年生きてきて初めて言われたな。そう言うお前は……。若いな。いくつだ?」

 男は親しげに話しかける。それに対し、勾導はぶっきらぼうに返した。

「いくつに見えるかい?」

「そうきたか……。……うむ、19か?」

「おしいな。答えは18だよ」

「18か……。おれもお前くらいの頃には己の中の正義が色々と解決してくれると思っていたよ……。大人になれば、卑しい劣等感は消えると思っていた。分別、理性、道徳……。そういったものが解決してくれると信じていたよ」

「勝手に1人語りしてんじゃねーよ。きめぇ。つーか、出会ったばっかのガキに何言ってんだおっさん。そのツラで正義とか道徳とか。未だに中二病引き摺ってんのかよ。怪しすぎるわ。ヒゲも青いし」

「そういうお前だって髪が黒いじゃないか。その色は、このガリアでは珍しいぞ」

「あっそ。……羨ましいか? おっさん。レアカラーだぞ」

「おれの髪の色も珍しいのだがな」

「へぇ。オレの身内の人間に知ったヤツの何人か同じ色のヤツがいるからよくある色だと思っていたよ」

「身内?」

「オレのご主人様と妹分。あとクソデコ女」

「クソデコ女とはおもしろい呼び名だな。誰の事だ?」

 いつの間にか噴水の隣に座ってきた男の質問に勾導は、プチ・トロワを指差す。

「この城にいる女だよ。……思い出したら腹が立ってきた。人を出禁にして勝ったつもりかよ、あの野郎」

 苛立たしそうに悪態をつく勾導に男は不思議そうに尋ねた。

「ふむ……。お前の言っている女はイザベラの事か? 1つ言っておくが、あの娘はこの国の王女だぞ。それをお前はコケにしているが、王族というものを怖くないのか?」

 その問いかけに勾導は男の顔を見ないで答える。いつものだらしない弛んだ目つきははっきりと形作り、その声は真剣さがにじみ出ていた。

「なんで怖がらなくちゃいけないんだよ。たかがちょっといいとこに生まれただけのヤツをよ。王女だから偉いのかよ? 王冠被ったくらいで他人より高い位置にいられるのか? ……くだらねー事にこだわってよ。バカじゃねーの」

 勾導の言葉に男は目を丸くした。勾導の話はまだ続く。

「第一、本来人に『上』なんてないだろーが。オレの許可なくオレを支配しようとしてんじゃねぇっつーの。……あー、なんかイラついてきた。後で部屋に乗りこもっか、マジで」

 そんな事を言っていると、突然男が大声で笑い出した。心の底から笑っているのか、腹を押さえていた。男の様子を見た勾導は少し引いた。

「いや、すまんな少年。こんなに笑ったのは5年ぶりだ。ところで、1つ聞くが……」

 爆笑が止んだ男が再び尋ねる。その声色はどこか真剣さがにじみ出ていた。

「もし、お前を支配しようとするものが現れたらどうするのだ? おとなしく従うのか? そして、もう1つ。お前は今使い魔ではないか。ということは、すでに主人にお前自身が支配されている事に違わないか?」

 男の目は勾導の顔をじっと見ている。その瞳は相変わらず空っぽだが、少し、ほんの少し光が灯っていた。勾導は一切の迷い無く即答した。

「従わないに決まってんだろ。オレの生まれた国の話ならともかく、この世界でオレの上に何人の存在も認めてたまるか。『上ナシ』の理念舐めんな。例えそのことで死ぬ事になろうと、オレの勝手だしな。それが『自由』というものだ」

 勾導の答えに男はほう、と呟く。さらに勾導は続ける。

「あと、オレは使い魔だけどよ、タバサを主人だと思った事は一度も無いぞ。オレとアイツは互いが対等のパートナーだよ。少なくともオレはそう思っている」

 勾導は男の顔をじっと見る。勾導の瞳は男の空っぽの瞳とは対照的に、光に満ちていた。自分の吐いた言葉に一切のブレを感じさせない、それは本当にまっすぐな瞳だった。男は勾導の答えを一通り聞くと、笑みを作った。

「そうか」

 そう言って噴水から立ち上がる。そして、用件は済んだとばかりに、勾導から離れていった。そのまま自分の来た扉に向かう。扉の側に来ると、勾導の側を振り向かずひとり言のように喋り出した。

「なかなか面白い話を聞かせてもらった。その礼だ。プチ・トロワにいつでも入れるよう、おれが口利きしておいてやろう」

 その言葉に勾導は口笛を吹いた。そして尋ねる。

「えっ、マジ? あんがとな、おっさん。アンタひょっとしてあのデコ姫の上司だったの?」

 勾導の質問の内容が予想外だったようで、くるものがあったのか、男はくつくつと笑った後、

「まあ、そんなところだ」

 そう言って扉の向こうへ消えた。 

 ほんの数分程度のやり取りだったが、何時間も同じ場所で話をしていたような感覚だった。結局あの男はなんだったんだ、と勾導は思う。いろいろと親しげに話しかけたり、意味不明な1人語りしたり。去る時も勝手に去っていった。いろいろと男に対して思う事があったが、感じたことは、

「……気にいらねぇ」

 男と話している時は親しげに会話をしていたのに、男が離れて一人きりになった時に思い浮かんだ事は不思議とこの言葉だった。なぜ、と考えるが、頭に靄がかかったかのように考えがまとまらない。

 結局なんだったんだ、と頭を掻き毟っていると、目の前に影が出来る。首をあげると、タバサが勾導を覗きこんでいた。隣にはシルフィードもいる。

「終わった」

 タバサはそう言ってシルフィードに乗る。それを聞いた勾導もその背中に乗ると、シルフィードは翼を強く羽ばたかせた。

 飛行中、シルフィードは今まで喋れなかった鬱憤をぶつけるかのように、喋りだす。その内容はイザベラのタバサに対する嫌がらせに対する非難だった。きゅいきゅい喚く彼女を勾導は適当に相槌をしていると、中庭で起きた事を思い出す。

「そういえばさ、オレ出禁が解除されるみたいだから。次からオレも一緒に城の中に入れるわ」

「本当? 良かったのね! でも、どうしてなのね?」

「待ってる時変なおっさんがやって来て言ったんだよ。『城に入れるよう口利きしてやる』って。なんか、髪も髭も青いおっさんだったぜ」

 勾導のその言葉を聞いたタバサの表情が突然強張る。杖を握る手にも力が加わった。そんな事を露とも知らず、勾導は話を続けた。

「訳わからんおっさんだったよ。自分語りを始めたと思ったらいきなり笑い出したりよ。あれは確実に中二病いや、あのノリは高二病だ。嫌だぜー、あの年で高二病は。中二病は一生患っても大した害にならないからいいけど、高二病は早めに治療しないと周囲に悪影響与えるからなぁ。タバサもシルフィも覚えとけよ。あんな男に捕まったらロクな事にならないぜ」

「きゅい、わかったのね!」

 シルフィードは元気よく答えたが、タバサは何も言わない。強張った表情のまま、何かを考えているようであった。

「ところで、これからどこに向かうんだ? 学院に戻るのか?」

 勾導はカバンからMDプレイヤーを引っ張り出しながらシルフィードに尋ねる。

「違うのね。お姉さまのお家に向かって欲しいと言われたのね」

 その答えに勾導は驚きつつも、わくわくする気持ちが生まれた。いろいろあったが、タバサの親に会えるのだ。どんな挨拶をしようか頭を働かせる。ふと、自分の格好を見る。今の格好は『モーターヘッド』のTシャツとボロボロに破けたジャージズボンを身に纏っているという姿だ。

(ジャージの上着があればちょっとはカッコがつくんだけどな。タバサのご両親と会うことになるんだぞ。くそう、シルフィめ……)

 そう思いながら、きゅいきゅい歌っているシルフィードの頭を憎々しげに見つめた。

 

 

 イザベラはグラン・トロワの廊下を歩いていた。その表情は不機嫌を通り越して嫌悪に満ちており、すれ違う衛兵や法衣貴族達は何事かと驚き、心配するように振り返った。目的地にたどり着いたのか、ある扉の前で足を止めた。その先は王への謁見の間。このガリア王国を支配する者が鎮座する場所だった。

 数度深呼吸をした後、イザベラは扉を開けた。扉の先の謁見の間には、王を世話をする侍従がいるものだが、部屋にはそういった人間は一人もいなかった。

「父上!」

 部屋に備え付けられた絨毯を踏みつけながらイザベラは謁見の間を歩く。イザベラの視線の先には土台のように段差となって高くなった部分があり、土台の上には贅の限りを尽くした調度品に飾られた豪奢な造りの玉座が備え付けられていた。その玉座に男が座っていた。驚く事に、先ほどまで勾導と話をしていた男だった。

「なんだ、イザベラ」

 男は興味なさそうにイザベラに声をかける。そんな男の様子にイザベラは一瞬不機嫌な表情をするも、すぐに取り繕い一気にまくし立てた。

「どういうことですか!? わたしが命じた命令を取り下げるなんて!!」

「なんの話だ?」

「あの人形娘の使い魔のことですよ! わたしが出したあの男のプチ・トロワへの立ち入り禁止を解除するなんて! わたしがあの平民にどんなひどい事をされたのか、昨日話したじゃないですか!!」

「あぁ、そうだったな。……それで?」

 興味なさげな態度しかとらない男にイザベラはより怒気を強める。

「『それで』って……。あの平民はわたしに狼藉を働いたばかりか、このガリア王家に代々伝わる王冠を破壊したのですよ! これは明らかにこのガリア王国に対しての敵対行為ではありませんか! その事について父上はどうお考えなのですか!?」

 イザベラの言葉に男はしばし黙った。考えているのか、それとも何も考えていないのか。その姿はどちらにも捉えられるようだった。そして、男は考えていた割にはあっさりと、ゴミを捨てるように言い放った。

「冠なんぞ壊れたら作り直せばいいだけだ。それに、今日その男と話してみたが、なかなか楽しい平民だったぞ。『本来人に『上』なんてない』と言われた時は目から鱗が落ちそうになった。それこそ、教会の偉いと言われる坊主どもの説法よりも頷ける所があったわ。立ち入り禁止の解除はその話の礼だ。余が許可する」

 その言葉を聞いたイザベラの顔は蒼白となり、身を震わせた。

「父上……。あなたはご自分が何を言っているのかご理解しているのですか? あなたはこの国の王なのですよ。ガリア王国国王ジョゼフ一世なのですよ。この国を統べるあなたがそんなことを言っていると臣下や国民に知られたら、それこそ……」

「『無能王』が遂に王権の意味を忘れたと笑われる、か。笑いたいやつには笑わせておけ」

「しかし……」

「イザベラ、言いたいことはそれだけか? だったらこの場から去れ。余は忙しいのだ」

 話すことはないとばかりに、手を振ってイザベラに退室を促す。イザベラはそんな父王の姿を見ると、歯を食いしばりながら部屋を退出した。

 イザベラが去り、一人きりになった部屋の中で男-ガリア王ジョゼフ一世は肩を震わせ、くつくつと笑い始める。最初は小さな忍び笑いだったのが、次第に声を上げた大笑いになった。その瞳は天井に備え付けられた天窓から差し込む光一点のみを見つめていた。まるで、その光の先に誰かがいると言いたげに。

 突然、大声で、子供のように無邪気に叫びだした。

「おいシャルル! おまえの娘が喚んだ男はなかなか面白い男だ! 王であるおれを前にしても生意気な口を叩き、対等の口調で話しかける! こんな体験は初めてだ。おまけに話す内容はなかなかおもしろい!」

 嬉しそうに、光に向かってジョゼフは叫ぶ。

「『本来人に『上』なんてない』、『王冠被っただけで偉くなれるわけがない』、おまけに『上ナシ』だと! ロマリアの連中や頭の固い貴族どもが聞いたら卒倒してしまうだろう! おれはその言葉を……、その言葉を……」

 突然、ジョゼフは悲しそうな表情になった。しばしの黙考のあと、言葉を続ける。それは、後悔と悲しさ、絶望が込められていたが、どこか表面的であった。 

「その言葉を子供の時に聞いたなら、王に選ばれる前に聞いたなら、おれは自分の中の劣等感や卑屈感を捨てられたはずなのに……。あの時笑ってお前に王位を譲ったはずなのに……」

 表面的な嘆きの声が少しずつ別の感情に包まれていく。瞳には、光るものがあった。

「きっと、お前を殺す事はなかった」

 その感情の正体は狂気であった。瞳に溜まった雫も涙であって涙ではない。実感のない空虚な水だった。

「そうだ、きっと殺意に囚われなかった! 絶望に包まれなかった! おれたち兄弟はいつまでも仲良くできたはずだ! そんな魔法のような言葉を、おれが聞きたかった言葉をあんな小僧があっさりと言ってのけたんだ! おれはあの小僧を……」

 ジョゼフは目に溜まった水を拭う。その空っぽだった瞳には憎しみが爛爛と輝いていた。

「どういうわけか気に入らん。遊び相手としては十分合格点なのだがなぁ。今はお前の娘同様この国の為に働いているようだが、もしこの国に、このおれに害を成した時は……」

 言葉を一度止め、身を焦がすほどの狂気に焼かれる王は静かに宣言した。

 

「殺す」

 

 

 リュティスを出立して約3時間後、途中休憩をはさんだ後にシルフィードは目的地であるタバサの実家に到着した。途中、大きな湖を見た勾導は驚く。その湖は目算で考えても琵琶湖の何倍もあり、なおかつ丘や森の木々、更には家々を水で飲み込んでいたからだ。明らかに水位が上昇している。その様子に勾導は思わず「うわっ」と言ってしまった。大災害なのに何も手を打ててない様子に『魔法は万能じゃないのか。つーか何とかしろよ中央政府』と思う。

 話を戻そう。タバサの実家は古く立派な造りの大きな屋敷で、門には交差した2本の杖をかたどった紋章が刻まれていた。それを見て思わず口笛を吹いた勾導は同じような紋章をプチ・トロワの至る所で見た事を思い出した。その紋章をよく見ると、×の字が上から付けられていた。そこか違和感を感じ、勾導は周囲を確認する。

 すると、屋敷の中から一人の老執事が現れた。最初はシルフィードの姿に驚いていたが、タバサの姿を見つけると、恭しく頭を下げた。

「お嬢様、お帰りなさいませ」

 その身のこなしと声に勾導は、

(なんか田園調布に住んでるアホみたいな規模の大金持ちの家でも執事やったことありそう。って事はこの人も執事力高いのか?)

 と勝手に思う。そんな事を思われているとは気付いていない老執事は勾導とシルフィードの姿を見る。

「お嬢様、こちらのお方が……?」

「手紙で伝えた召喚した男の子。この竜はわたしたちに懐いてついてきた」

 タバサの説明に老執事は驚いた表情を見せた後、礼をした。

「私はこのオルレアン家の執事を務めておりまするペルスランでございます。おそれながら、その姿はどうされたのですか?」

「あっ、オレは使い魔の七瀬勾導です。この格好は、今朝方まで任務やってて、そのせいで服がボロボロになったんです。……初対面だというのに、こんななりですいません」

 勾導の説明を聞いたペルスランはタバサの姿を確認する。服のほつれ一つない彼女とボロボロの勾導を

見比べた後あることを悟り、頭を地面に擦りつけんばかりに下げた。

「おお……。お嬢様を守っていただき、ありがとうございます……」

「あっ、いや、オレもタバサに助けてもらったからイーブンですよ」

 そんな言葉を交わしながら、屋敷の客間に案内された。全体的に手入れが行き届いた綺麗な室内だったが、そこで勾導は先ほどから感じていた違和感の正体に気付いた。これほどの規模の邸宅なら相当の数の使用人がいるはずだ。だが、今のところ出会ったのはペルスランのみ。つまり、人がいないのだ。人がいないという事はすなわち活気も生まれない。今、この屋敷は死んでいるも当然だった。

 客間に備え付けられた暖炉の上に肖像画が飾られていた。そこに描かれていたのは青い髪をした美形の男女とその2人の間に長い髪の小さな女の子だった。その女の子の姿はどこかタバサに似ていた。

「ここで待っていて」

 タバサはそう言って部屋を出る。えっと思ったが、部屋着に着替えて来るのかと勾導は思い直した。突っ立っているのもなんだと思い、勾導は立派な造りのソファに座る。正直、周りの立派な調度品に囲まれていて落ち着かない。そわそわしていると、ペルスランが客間に入って来て勾導の前に紅茶とお菓子を置いた。

 礼を言い、紅茶を一口飲む。こっちのものを初めて飲んだが、パック物には決してない深みを感じた。紅茶を飲んで、生まれて初めてうまいと思った。

「うまいっす。この紅茶」

「気に入っていただけてよかったです。おかわりはまだありますので」

「ありがとうございます。ところで、タバサのご両親はいないんですか? こんななりですけど、挨拶はしておかないといかないんで」

「それは……」

 ペルスランは急に困惑した表情を見せる。その時だった。

 ガシャン、と食器を床に落としたような音が部屋の外から聞こえてきた。なにか金属の音も聞こえて来る。

「なんだ、今の音は」

 勾導は立ちあがり、部屋の外に行こうとする。それをペルスランは慌てて止めようとした。 

「大丈夫ですっ、部屋におられてくださいっ」

 そんな事を言うが、物音はまだ聞こえた。勾導は無理矢理部屋を出る。音は一番奥の部屋から聞こえてきた。なにか女性の荒げた声が聞こえてきた。

「そこか」

 扉を開けた勾導の目に映ったものは、伸び放題になった青い髪を振り乱した痩身の女性が、物や食器をタバサに投げつけている光景だった。

「まだいるのですか! 絶対にシャルロットを渡さないわ! 帰れ! 帰りなさい!」

 痩身の女性はそう言ってガラスのコップをタバサに投げつけた。コップは額に当たり、そこから血が流れた。タバサはそれを気にすることなく、ただ悲しい笑みを浮かべていた。

 その光景を見た勾導は2人の間に入り込む。2人は、特にタバサは『どうしてここに』と言いたげな驚いた顔をした。その顔を見ず、勾導は痩身の女性の胸倉をグイッと掴む。今、勾導は周りの状況が見えていなかった。

「あんた、タバサになにやってんだコラ。なにやってんのかって聞いてんだよコラッ!」

 勾導の恫喝に女性は一瞬怯えた様子を見せるが、目を爛爛と輝かせて強い口調で言い放つ。

「無礼者っ! わたしに手をあげるというのですか。それでもシャルロットは絶対に渡しません! わたし達は静かに暮らしたいだけなのですっ!」

「オレはタバサになにやってんだって聞いてんだ! シャルロットとか知らんヤツの名前出すな! ちゃんと人の話聞けや、このババアッ!」

「おおおお……。シャルロット……。安心して……。ずっと母さまがずっと守ってあげますからね……」

「だから、人の話ちゃんと聞けつってんだろうが、このクソババア! ……わかった、目ぇ覚まさせてやる」

 女性の頭をベッドに据え付け、右肘を構える。エルボーを叩きこむつもりだ。

 その時、誰かが勾導の右腕を止める者がいた。振り向くと、タバサが怒りに満ちた表情をしていた。

「……出て行って」

「なに言ってんだよ、タバサ! このババアおまえに手ぇ挙げてたじゃん。額から血も出てるし」

「……出て行って」

「いいから手ぇどけろ。コイツのアーパーな頭もオレのエルボー喰らったら、ちったぁまともに……」

「出て行ってッッ!!」

 タバサは勾導に怒鳴りつけた。初めて生の感情を勾導に見せた。その事に勾導は思わず、構えを解いた。

「分かった……」

 助けようと思った人に逆に「出ていけ」と言われた事に勾導は気落ちしながら部屋を出た。

 勾導が出ていくと、部屋にはタバサと女性だけになった。女性はタバサの事を目もくれず、傍らにあったフェルト製の人形を抱きしめている。

「大丈夫、大丈夫ですよ。シャルロット……」

 そううわ言のように繰り返しながら人形を頬擦りする。長年にわたり何度も同じことをしていたのか、人形の頬は擦りきれて綿がはみ出ていた。

 その姿をタバサは先ほどのように悲しい浮かべながら、静かに言う。

「あなたの夫を殺し、あなたとあなたの娘を苦しめた者どもの首を、いずれこの手に持って戻って参ります。その日まで、どうか、心安らかな日々を」

 

 勾導は客間に戻った。そこにはペルスランが悲しそうな表情でそこにいた。

「ご覧になられたのですね」

「ああ、なんだよ、あのババア。訳のわからんことばっかり言って。誰だよ、シャルロットって。あそこにいるのはタバサだろうが」

 勾導がそう言うと、ペルスランはあっと表情を強張らせた。

「お嬢様は『タバサ』と名乗ってらっしゃるのですか……。わかりました、コウドウさま。使い魔になられたとはいえ、お嬢様をお守りしていただいた方なら信用に値するでしょう。……お話ししましょう」

 そこから語られたのは、ガリア王家の継承争いに巻き込まれたある幸せな家族の悲劇だった。前王が崩御し、残された兄弟の周囲で王位継承をめぐった小競り合いが起きた。しかし、問題の中心となった兄弟はとても仲が良く、兄が王位を継承することでこの問題は収まった。うまく解決したと思われた継承問題だったが、生まれた火種はくすぶり続け、結果的に弟は狩猟会の最中に毒矢で胸を射抜かれ謀殺された。手に入れた自分のパイを守りたい連中は続いて弟の妻子を宮廷に呼びつけ、毒入りの料理を食べさせようとした。しかし、妻はその事を察知し、娘をかばいその料理を口にした。その結果、母は心を狂わされ、娘は1人残された。

「快活で太陽のように明るかったシャルロットお嬢様は……、その日より別人のようになってしまわれた。言葉と感情を心の中に封じられたのです。しかし、それも無理からぬこと。目の前で母が狂えば、誰でもそのようになってしまうでしょう。そんなお嬢様は、自分の、いえ母の安全を守るために進んで王家の駒になられました。困難な命を多くこなして忠誠をしめしても、与えられたのはシュバリエの称号のみで、厄介払いのように外国に留学させたのです」

 ペルスランは唇を噛みしめながら涙を流す。その様から見て、この老僕の忠誠は本物だった。

「そして! 未だに宮廷で汚れ仕事が持ち上がると今回のようにほいほいと呼びつけられる! 父を殺され、母を狂わされた娘が、自分の仇にまるで馬車馬のように道具にされる! 私はこれほどの悲劇を知りませぬ……」

 勾導は、タバサが感情を殺している理由を、王宮の人間が腫れもの扱いした理由を、話の流れから知った血縁者であるイザベラからひどい扱いをされている理由を、彼女に起きた悲劇を知った。いつの間にか、唇をかみしめ、手は拳を作っていた。その拳を叩き込みたいのは自分自身だ。知らぬとは言え、タバサの守りたい人を自分は傷付けたのだ。思いっきり自分を恥じた。肩に人1人分の重りが乗っかったような重い気分になる。

「お嬢様は、タバサと名乗っておられる。そうおっしゃいましたね?」

「あっ、はい」

「その名前は、幼い頃のシャルロットお嬢様に当てて奥様がプレゼントなさった人形の名前なのです。……今、その人形は奥様の腕の中にございます。心を病まれた奥様は、その人形をシャルロットお嬢様と思い込んでおられます」

「……だから、自分は人形になるってか」

 突然、ペルスランは勾導に深々と頭を下げた。

「コウドウさま。お願いします……。お嬢様を、シャルロットお嬢様を見捨てないで下さい。私は、あの方の笑顔を、心からの笑顔を再び見たいのです。お願いします、いつまでも守ってあげてください……」

 勾導はその言葉に即答する事が出来なかった。本音は守ってやりたい。可愛い女の子だから。なにより、パートナーだから。

 自分1人だけの手柄ではないが、地球にいる時はヤクザの二次組織や赤軍残党、果ては新興カルト教団とそれなりのヤツらとケンカをしてきた。だから対組織もそれなりにいける。だが、今回は相手が悪すぎる。『国家』が相手だからだ。それもこの世界における超国家だ。国家とは本来、『法』と『暴力』を両立させて大衆をコントロールするものだ。ここで重要なのが『暴力』だ。口では「暴力はいけません」、「暴力反対」と言うが、実際のところ我々は『暴力』の加護のもと日々を送っている。そう、警察だって立派な暴力装置だ。時によっては、国家のさじ加減でその拳が『法』の保障の元、無差別に向かってくる事だってあるのだ。このように警察などの『表の暴力機構』とは、暴力団の様な『裏の暴力機構』より性質が悪い面があるのだ。

 『国家』とは、暴力を表裏自在に使えるから『国家』なのだ。

 それだけではない。自分はこの世界の人間ではない。所詮異邦人。いつか、帰る手段を見つけたら帰らなくちゃいけないのだ。いつまでもこの世界にはいることはできない。

 躊躇いつつも、なにか言わなくちゃいけないと思っていたところ、タバサが部屋に入ってきた。

 ペルスランが一礼する。

「お疲れ様です、お嬢様。お夕食にいたしましょうか?」

 タバサは頷いた。いつの間にか、空は暗くなり始めていた。

 食堂で勾導たちは食事を食べたが、会話は一切生まれなかった。

 

 夜、勾導は屋敷の中庭にいた。そこにはシルフィードがおり、ぐうぐう眠っている。さきほどまで話をしていたのだが、今日は色々あって疲れたのだろう。大量の肉を食べた後、うつらうつらと眠り出した。

 勾導も、そろそろ寝ようと思い、ペルスランに用意してもらった寝室に向かおうとした時だった。

 向かい側からタバサが現れた。部屋着なのだろう、制服ではなく水色のセーターに黒のロングスカートを着ていた。

 ここしかない、そう思った勾導は勇気を出して声をかける。

「タバサ、昼間は、ごめんっ。何も知らなかったとはいえ、お前の母ちゃんに手をあげて……」

 そう言って頭を下げた。タバサは勾導を見ずに、

「いい。あなたは知らなかったから。……話さなかったわたしが悪い」

 と、言ったきり、部屋に戻ろうとした。

「あのさっ、……聞いたよ、タバサの事。今の王家に何されたかを」

 たまらず、そう切り出した。彼女は止まった。

「ヒデぇヤツらだよ……。一兆歩譲って国を割らない為に父ちゃんに手を出したとしよう、だからと言って母ちゃんにまで手ぇ出すかよ、普通。おまけに現在進行でお前に任務を……」

 タバサは何も言わない。ただ、下を俯いているだけだ。

「オレ、決めた。お前の母ちゃんを元に戻す方法を見つける手伝いをするよ。方法を見つけるまでは、例え地球に帰る方法を見つけても帰らない。『約束』するよ」

「……ありがとう」

 俯いたまま、タバサはそう言った。さらに勾導は、言いづらそうに尋ねた。

「あのさ。もしかしてさ、お前の父ちゃんと母ちゃんにあんな目にあわせたヤツをさ……」

 唾を飲み込んで、勇気を出して言った。

「……殺したいのか?」

 少女は、一切の躊躇い無く頷いた。

「止めろ止めろ止めろっ! ロクな事にならないぞ! 絶対母ちゃんも喜ばねぇよ。とりあえず、母ちゃんを元に戻すことだけ……」

「知った風な口を聞かないで」

 氷点下の声色で少女は告げた。

「わたしの何がわかるの!? 父さまを殺され、母さまをあんな目にあわされたわたしの何が。仇のいる場所は分かるのに、そこに近付けないわたしの何が。あなたの様に、その場の感情の赴くまま行動したくてもできない人形のような生き方を強いられたわたしの何を知っているの!!」

 勾導は少女の涙交じりの叫びを黙って聞いた。聞くしかなかった。だが、『それは違う』と心が拒絶する。普段は無感情の彼女が今、自分に少しずつ感情をぶつけてくれている。これもまた『プロレス』だ。オレも返さないといけない。いけなかった。

「女の子が、自分から手ぇ汚そうとしてるのを黙って見てられるかッッッ!!」

 勾導も叫んだ。その言葉を聞いてタバサは思わず黙りこんだ。

「いいか、オレの親父はまだピンピンしてるし、母ちゃんだって全然まともだ。だから、お前の気持ちは共感までしかできない。同調なんてできやしない! でもな、でもな。そんなオレでも分かる事がある! 殺ったらお前絶対後悔するぞ! 元気になった母ちゃんをまっすぐ見れなくなるぞ! それでいいのかよ!? よくねぇだろッッッ!!」

 タバサは言われてハッとなった。復讐心に囚われたまま、周りが見えていなかったからこそ、勾導の言葉はハンマーで殴られた衝撃を受けた。

 あの時、自分の代わりに毒入りのワインを飲んだ母親がその直前に叫んだ言葉を思い出した。

『わたくしだけでご満足ください。なにとぞ、娘だけはお救いくださいますよう』

 その言葉は、仇敵に言った言葉であったが、自分に向けて『自分の事は忘れて、新たな道を歩め』とも伝えたかったのではないか。最後まで母は自分の事を案じていたのだ。そして、形は変わってしまったが今この瞬間も自分の事を守ってくれている。その事に嬉しくなる一方、恥ずかしくなった。

 自分は危うく親不孝者になるところだった。その事を気付かせてくれた男を見る。召喚して使い魔となった同じ年頃のこの少年はものすごい変わり者だった。時々意味不明の言葉を叫び、メイジの存在を怖がらない。それどころか、メイジに喧嘩を売る。おまけに、とっても危険な発言をたくさんする。

 最初は『はずれ』だと思った。でも、今は違う。どんなに傷ついてボロボロになって倒れても、その度にまるで魂が強くなって立ちあがり、最終的には巨大な怪物を倒すまで至った。そんな、幼い日に憧れた『英雄』のような少年にタバサは時々憧れに似た気持ちを向けてしまう事がある。

『メイジの実力を測るには使い魔を見ろ』という言葉はあながち嘘ではないと思った。

 タバサがそんな事を思っているとは知らずに勾導は続ける。

「そんなに復讐したいならよ……。よし決めた。オレが仇をボコボコに叩き潰してお前に謝らせてやる! その後、そいつの額に『肉』なり『米』なり好きな文字書いていいからっ! それで勘弁してやれ!」

 勾導の言葉にタバサは呆気にとられた。そのどこか滑稽さの感じる復讐の内容に少女は思わず笑った。

 その笑顔に勾導もつられた。

「おっ、やっと笑ったか」

「……ばか」

 そんな事を言っているが、タバサの顔は赤くなっていた。正直、復讐心は消せない。長く内に秘めていた感情だ。もしかしたら、これは死ぬまで消えないかもしれない。でも、この少年の言う通り、あの男の額に落書きしてやると思ったら、その陰鬱な気持ちを上書きするかのように楽しく、清々しい気持ちになった。

 

「……努力してみる。殺意を捨てるように努力してみる。……だって、母さまが治った時、笑って喜びたいもの」

「……そっか」

「『約束』」

「ん?」

「『約束』して。母さまを元に戻すまで一緒にいて。そして、あの男を、ジョゼフを謝らせると」

「おう、やってやるよ。『約束』するよ」

 

 2人は笑い合い、並んで屋敷の中に戻っていった。空には双月がその光景を祝福するように輝きを放っている。

 

 明日もきっと晴れるだろう。2人の進む道を照らしながら。

 

 




 タバサの冒険エピソードのエピローグEDは、GOING STEADY版の『銀河鉄道の夜』です。
 最近のアニメによくある特殊EDみたいな感じで。
 でも、今回のエピローグは、サブタイトルに選んだ『未来(あした)予報はいつも晴れ』でもいいんですけどねぇ……。どちらもいい曲なんで、知らない方は調べてみてください。後悔はしないですよ。
 個人的に、『未来(あした)予報は~』は、色々ある特撮EDの中でも十指に入る屈指の名曲だと思います。

 小説を書く上でゼロ魔のキャスティングを改めて見たのですが、配役チョイスが絶妙ですね。(当時の)若手からベテランまでうまくピースにハマってるというか。特にガリア勢はガチハマりというか。だからこそ、動いて喋るイザベラさまが見たかったです。

 活動報告に今回のエピソードのあとがきのような物を書きました。
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