陰陽師の異世界録   作:ザイソン

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陰陽師、安倍陽明
プロローグ


日本 とある廃屋

 

薄暗い部屋の中で、刃物を引き摺るかの様な音が響く。

 

しかし、引き摺っているのは刃物ではなく血が滴る鋭い巨大な爪だ。

それは紅い瞳、長い耳をもち、口が縫い付けられている。怪物は同じ種族と思われる生き物の死骸を頭頂部の牙が付いている器官で咀嚼する。

 

ふと、窓の方を見た。そこには一人の人間の少年がいた。その怪物は、巨大な爪を少年に振り下ろした。

 

その爪が当たれば容易く切り裂かれてしまうだろう。しかし、少年には当たらず、

 

「よっと」

 

逆に少年の持つ刀によって首が落とされた。血飛沫が勢いよく飛ぶが少年に当たる事なく怪物はそこにたおれた。

 

少年は刀を札にしまい、スマホを取り出してクライアントに電話をかけた。

 

「こちら安倍陽明。ミッションコンプリート。報酬は後日振り込んでくれ」

 

それだけ告げて電話を切った。

少年は上は白、袴は黒の和服を着ており、和服には家紋と思われる五芒星が刻まれていた。

 

安倍の性で五芒星が家紋。つまり、安倍陽明は安倍晴明の末裔だ。

 

「さて、この廃屋・・・この妖怪が何処からか持ってきたのか、ファックスとプリンター、パソコンがあるな。ファックスは壊れてるがパソコンとプリンターは貰っていこう」

 

陽明はプリンターとパソコンに札を貼った。するも、札に吸い込まれる様に消えていった。これでしまった事になる。

 

陽明が去ろうとすると、ファックスが動き始めた。

 

「ファックスは壊れている・・・ポルターガイストか?」

 

陽明は白い布を被せたかの様な顔の部分に『無』と書かれた式神を召喚し、後処理を任せる。

その間にファックスから送られてきた文書を見る。

 

『安倍陽明殿へ

 

悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能を試すことを望むならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界のすべてを捨て、

 我らの“箱庭”に来られたし』

 

読み終えた瞬間、景色が変化し、

 

「うお!?」

 

「わっ」

 

「きゃ!」

 

「ヘァッ⁉︎」

 

三人の少年少女と共に空にいた。

落ちる落ちる。そして水の中に落ちる。水面にぶつかる直前に緩衝材の様なものにぶつかり、勢いが殺されたようで、怪我はない。

全員、水から上がりそれぞれ罵詈雑言を吐く。

 

「信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「上に同じく。クソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだ。」

 

「此処・・・何処だろう?」

 

「わからない。分かる事は元の世界じゃ無いことだけだな。」

 

辺りを見回すが不思議空間である事だけは間違い無い。

 

「一応確認しとくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」

 

「そうだけどまずは”お前”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。それで、猫を抱き抱えている貴女は?」

 

「・・・春日部耀。以下同文。」

 

「そう。よろしく春日部さん。そして着物着ている貴方は?」

 

「俺は安倍陽明だ。よく女顔と言われるが本当に女と間違えたら怒る」

「そ、そう。よろしく、陽明君。最後に野蛮で凶暴そうな貴方は?」

 

「見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様。」

 

なんという可笑しな自己紹介だろう。そんな彼らを物陰から見るものがいる。うさ耳を持つこの少女はこの世界の住人、黒ウサギである。

 

(うわぁ・・・なんか問題児ばっかり見たいですねぇ。)

 

黒ウサギはため息をついた。

十六夜は苛立たしげに言う。

 

「で?呼び出されたのはいいけどなんで誰もいねえんだ?説明する奴がいてもおかしく無いはずだ。」

 

「そうね。何の説明も無いとどうしようもないわ。」

 

「・・・この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど。」

 

(全くです。)

 

黒ウサギは心の中でつっこむ。もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだろう。しかし彼らはそんな玉ではない。例えば陽明は裏社会・・・というか裏世界で活動すると時たま奇想天外な事が起こる。つまり、慣れている。

 

(まぁ悩んでも仕方がないです。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか。)

 

しかし、ここで陽明が、

 

「仕方ない。そこの茂みに隠れている奴にでも話を聞くか。どうせみんな気づいてるんだろ?」

 

「なんだ。気づいてたの。」

 

「風上に立たれたら嫌でも分かる。」

 

「・・・へぇ?面白いな。」

 

全員、笑顔で黒ウサギを見るが、笑って無い。

その目には鬼が宿っていた。黒ウサギはやや怯え、ハラハラする。

 

「や、やだなぁ。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んでしまいます。そんな黒ウサギの虚弱な心臓に免じてここはひとつ穏便に「「「「却下‼︎」」」」あっは、とりつくシマも無いですね♪(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。)」

 

黒ウサギはどうやって接するか考えるが・・・

 

「えい!」

 

耀が黒ウサギのうさ耳を力いっぱい引っ張った。

 

「まさか初対面で問答無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは!「へぇ?このうさ耳、本物なのか。」「私も。」ちょ、やめてください!そこの和服の人も助けてくださいよぉ!」

 

「自業自得かな・・・骨は拾ってやる。」

 

あたり一帯に黒ウサギの悲鳴が響き渡った。

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