陰陽師の異世界録   作:ザイソン

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決着と九尾

兜を受け取った陽明とジンは白亜の宮殿の階段を駆け上がり、最奥に向かった。

 

最奥には天井はなく、まるで闘技場のように簡素な造りをしている。

 

「陽明さん!ジン坊ちゃん!」

 

二人の姿を確認して、最奥で待っていた黒ウサギは安堵の表情を浮かべる。

 

「あっ!十六夜さんは?」

 

「姿を見られて失格。だから・・・」

 

 

 

白亜の宮殿 内部

 

「テメェら全員吹っ飛べやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「「「ぐっはあぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!」」」」

 

 

 

 

「・・・って、残った騎士で遊んでる」

 

なんというか、自由で乱暴である。騎士たちよ。哀れなり。

 

「ふん、本当に使えない奴らだな。今回の一件でまとめて粛清しないと」

 

闘技場の上空から下卑た声が聞こえてきた。陽明達が見上げると翼のついたブーツ、『ヘルメスの靴』を履いたルイオスの姿がそこにあった。

 

「まあでも?これでこのコミュイティが誰のおかげで存続できているのかわかっただろうからね。自分たちの無能っぷりを省みてもらうにはいいきっかけだったかな」

 

「・・・無能・・・?お前は兜が奪われた後の対処について対策していたか?」

 

「はぁ?するわけないだろ」

 

つまり、あの騎士が探知の恩恵を持っていたのは自らの判断だったということ。

 

「・・・対策で十六夜を出し抜いたあの騎士は凄かったぞ・・・決して無能ではない。それでもなお、無能だと言い張るのなら、」

 

陽明はルイオスに向かって指を差し、

 

「リーダーであるお前が無能だったって事だ」

 

その言動に腹を立てたルイオスは陽明を睨む。だが陽明は全くひるむ様子が見られない。

陽明はルイオスを脅威として見ていないのだ。

 

「フン!まあいい。すぐにそんな減らず口が叩けないようにしてやるからさ。ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう・・・あれ?そういえばこの台詞言うの初めてかも」

 

それは部下がとても優秀だったからだ。それにすら気付かないルイオスはリーダーの資格が無い。

同じ英雄の子孫でも、英雄(ペスセウス)子孫(ルイオス)英雄(安倍晴明)子孫(陽明)は全く違うようだ。

 

ルイオス(無能のボンボン坊ちゃん)はギフトカードから燃え盛る炎の弓を取り出した。

 

「炎の弓?てっきり聖霊殺しの鎌『ハルパー』を使うのかと・・・」

 

ジンはルイオスが予想していた武器を使わないことに疑問を抱いた。

 

「当然でしょ?空が飛べるのに同じ土俵で戦うわけがない」

 

ルイオスは余裕そうに笑みを浮かべて言った。

 

確かに空を飛べるのならば鎌を用いるより遠距離攻撃のできる弓で戦う方が有利。理にはかなっている。

 

「それにメインで戦うのは僕じゃない。僕の敗北がそのまま"ペルセウス"の敗北になるんだから。こいつはそこまでリスクを負うような決闘じゃない」

 

ルイオスにはまともに戦う気などはじめからなかったからだ。

 

ルイオスは首にかけたチョーカーの装飾品を千切り、

 

「目覚めろ・・・"アルゴールの魔王"」

 

地面にその装飾を落とす。地面に接するのと同時に装飾は黒く光り輝き、"アルゴールの魔王"

 

「ra・・・Ra・・・GEEEEEEEYAAAAAAAaaaaaaaa!!!」

 

白亜の宮殿に共鳴するかのような甲高い女の声が響き渡る。だがそれは最早人が理解できる言語ではなかった。

 

一言で言うなら不協和音。その声を聞いた陽明たちは不快感を顕にした。

 

アルゴールは体中に拘束具、捕縛用のベルトをつけており、女性とは思えない乱雑に乱された灰色の髪を逆立てせている。

 

「ra、GYAAAAaaaaaa!!」

 

アルゴールは両腕を拘束するベルトを引きちぎりながら更なる絶叫を上げた。それと同時にアルゴールから褐色の光が放たれる。

 

「石化の光か!」

 

陽明はジンと黒ウサギを庇うように前に出て土行を操って土壁を出して影を作る。

 

「いやあ、飛べない人間っていうのは不便だよね。落下してくる雲もよけれないんだから」

 

「雲!?」

 

黒ウサギは外に目をやった。

 

そして目に映るのは石に変えられた雲が隕石のようになり、降り注がれる光景であった。

 

先程のアルゴールの石化の光はギフトゲームの為に用意された世界全てに対して放たれたようだ。

 

「腐れ野郎・・・ぶっ飛ばしてやる!」

 

陽明は指を鳴らし前に出る。

 

「おや?リーダーはその子だろう?」

 

「フン!お前如きリーダーの手を煩わす事は無い!」

 

「お前一人で何ができる!アルゴールはな、「星一つの力を背負う大悪魔。かつては魔王として名を馳せたが・・・アテナに負けた挙句初代ペスセウスに寝首を掻かれた残念魔王」・・・なんでそんな裏事情に詳しいんだよ!」

 

式神に聞きました。彼女曰く、『笑い話』だそうだ。

 

「あとな・・・いつ俺が一人で戦うと言った?(・・・・・・・・・・)

 

陽明はギフトカードから長さ35cmほどの筆を取り出した。

 

「陽明さん、それは変な格好をした式神を召喚するということですか?」

 

ジンの脳裏にはガルドに刀を突きつけた、陽明は白い布を被せたかの様な顔の部分に『無』と書かれた式神(陽明曰く、紙式神)が浮かぶ。

 

「紙式神か?いや、あれじゃなくて・・・きちんとした式神。先祖代々隷属させてきた式神・・・元魔王である式神(・・・・・・・・)を・・・!」

 

陽明は筆で空中に術式を描いていく

この筆は空中に文字が描ける恩恵のようだ。

 

文字を書き終えた陽明は、詠唱を始める。

 

「傾国と九の尾を持つ妖狐よ。汝に命ず、我が霊力を糧として我に大いなる力を与えよ・・・出でよ白面金毛九尾の妖狐・・・!」

 

空中に描いた術式が一つの印に変わっていく。

 

それは、九つの尾を持つ狐が三分の一に割れた面を着けている。

 

「あれはまさか魔王"傾国九尾"の旗印⁉︎嘘!あの九尾は箱庭から姿を消したはずです!」

 

魔王"傾国九尾"。千年前まで箱庭に魔王として君臨していた九尾の妖狐である。

彼女に近づくもの全てに呪いをかけるの言われる、千年経ってなお知名度の高い魔王である。

 

印が煙を放ち、消えていく。そして、

 

「この馬鹿主人がぁぁぁぁ!」

 

「ぐえっ!」

 

煙から人影が飛び出して陽明に腹パンして吹っ飛ばした。

 

「今の今までいったいどこに居たんですか⁉︎行方不明になってから政府から電話は来るし国連から使者は来るしもう大変で大変で・・・!」

 

陽明を殴った女は金髪で九つの尾を持ち、狐耳である。

 

彼女は陽明の胸ぐらを掴んでブンブン振り回す。

 

「いや玉木、俺が消えたのは俺の責任外だし・・・!今ギフトゲームの真最中だから、説教は後で・・・!」

 

「え?・・・って、ここ箱庭⁉︎」

 

玉木と呼ばれた狐女はハッとした表情で辺りを見回す。

 

「ちなみに、ギフトゲームの内容は、かくかくしかじか」

 

「なるほど。小説は便利ですね」

 

メタ発言はやめてください。

 

「で、私はどっちを相手すればいいんですか?」

 

「アルゴール。ルイオスは・・・私怨で俺がぶっ飛ばしてやる・・・!」

 

陽明は玉木の尻尾を掴んでアルゴールにぶん投げ、

ルイオスに向かって霊力の弾を連射する。

 

空を飛べるルイオスは簡単に避けてしまう。

しかし、ルイオスの視界から陽明はいなくなっていた。

 

「何⁉︎ど、どこに「後ろだ!」なっ!」

 

「いつから俺が飛べないと錯覚していたぁ?」

 

陽明は今までにないほど、黒い笑顔をしていた。

 

それからは一方的な蹂躙だった。

力でねじ伏せ、術で大地に叩きつける。無論、比喩ではない。

 

「この・・・!僕を助けろアルゴール!」

 

しかし、

 

「アルゴールなら既に叩きのめした」

 

玉木がアルゴールの頭を掴んで引き摺って現れた。

 

「いや、こいつの行動で昔は何度も泣き目を見た・・・!」

 

陽明と玉木。どちらも私怨丸出しだった。

 

「あ、ありえない・・・ありえないありえない!!」

 

ルイオスは現実を受け止められず取り乱してしまう。

 

「起きろアルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!奴等を殺せぇぇぇぇぇ!」

 

ルイオスが命令を下すと、応えるようにアルゴールはヨロヨロと立ち上がった。

 

「RaAAaaa!!LaAAAA!!」

 

謳うような不協和音が響き渡る。途端に白亜の宮殿は黒く染まり、壁は生き物のように脈を打つ。

 

宮殿全域に広まった黒い染みから、蛇が出現しジンと黒ウサギを含めた四人に襲いかかる。

 

「玉木、よろしく」

 

「了解。殺生石の術」

 

玉木が両手を胸の前で合わせて、両手を広げると彼女の頭上に赤黒い岩が浮かび上がる。

 

すると、蛇がたちまち死んでいく。

 

「なんだこれは・・・力が抜けていく・・・」

 

ルイオスが多汗をかいて膝を付く。

 

アルゴールは玉木にやられた傷も有り、既に倒れていた。

 

「・・・降参してくれ」

 

「なに・・・⁉︎」

 

玉木がルイオスに向かって呟いた。

 

「これは相手の生命力を奪う術だ!頼むから降参してくれ!」

 

玉木はそう叫んだ。

 

「誰が"名無し"相手に降参するかよ・・・!」

 

「生命力を奪うという事は死に近づく事と同じ!死にたいのか⁉︎」

 

ルイオスは意味が理解できてぎょっときた顔になり、しぶしぶ降参した。

 

 

 

 

「「「「これからよろしくメイドさん」」」」

 

見事に"ペルセウス"とのゲームに勝利し、レティシアを連れ帰って石化を解いた途端、陽明、十六夜、飛鳥、耀の4人は口を揃えて言い放った。

 

「え?」

 

「え?」

 

「・・・え?」

 

あまりにも唐突のできごとに黒ウサギ、ジン、そしてレティシアは呆気にとられてしまったいる。

 

「え?じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって私達だけじゃない?貴方達はホントにくっ付いてきただけだったもの」

 

確かにその通りである。もはやジンと黒ウサギにはぐうの音も出ない。

 

「ふむ、そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んで引き受けようじゃないか」

 

「レ、レティシア様!?」

 

だが当の本人は案外乗り気なようだった

黒ウサギは尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければいけないと言う状況に未だ混乱していた

 

「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。私の家の使用人ったらみんな華も無く可愛げも無い人達ばかりだったんだもの。これからよろしく、レティシア」

 

「それって私も含まれるのか?」

 

「非常に残念だが・・・玉木にはサイズの合う服(主に胸が)が無かった・・・」

 

十六夜は本当に残念そうに告げた。

 

「よろしく、あ、いや、主従なのだから『よろしくお願いします』のほうがいいかな?」

 

「使い勝手がいいのを使えばいい」

 

「そ、そうか。いや、そうですか? んん、そうでございますか?」

 

「黒ウサギの真似はやめとけ」

 

「レティシア殿には似合わないぞ」

 

(はぁ、全くしょうがない問題児様方です・・・それにしても、)

 

黒ウサギは玉木を見て、

 

(玉木さん・・・魔王"傾国九尾"はもっと残虐なイメージがあったのですが・・・違ったようですね)

 

新たなメンバー、玉木にはまだまだ不思議がありそうだ。

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