「おぉ、すげー・・・」
北側に来た陽明は感嘆の声をあげた。
東側と北側では文化様式が随分と違うので新鮮だ。
しかし、その光景をじっくり眺める訳にはいかず、すぐに問題児三人の捜索を開始した。
「・・・北側も随分と様変わりしたものだな」
「そういえば玉木殿が箱庭から去ったのは確か1,000年前だったな」
「1,000年も経てばさすがに変わるか」
玉木は昔を懐かしむ。が、ロクな思い出が出てこなかった。
この思い出はまた次の機会に。
黒ウサギは十六夜を見つけたと言った途端瞬時に走り去った。
それに続くように黒ウサギを追う三人。
「逃げるぞぉ!」
「え、ちょっと」
十六夜は飛鳥をお姫様抱っこで駆けていく。逃げ遅れた耀は黒ウサギに捕まる。
「耀サン、後デタップリ御説教タイムナノデスヨ。御覚悟シテクダサイネ♪」
黒ウサギは耀を近くにいた白夜叉にぶん投げた。
「「怖っ!黒ウサギが暗黒ウサギに⁉︎」」
黒ウサギは暗黒ウサギと化し十六夜と飛鳥を追って行った。
「・・・で、俺たちは取り残されるわけだな」
「私は十六夜達を追うが、二人はどうする?」
「「正直メンドイ」」
陽明と玉木の発言に苦笑いを浮かべたレティシアは空を飛んで行った。
「で、どうする?観光でもするか?・・・あ、北側に腕のいい刀匠とかいないのか?」
「何故ですか?」
「これ見ろよ」
陽明は折れた刀を二本取り出す。十六夜に砕かれたのだ。
「あーーーー!1000年続く名刀がぁぁぁぁ!"霊夢奏"がぁぁぁぁ!」
玉木が叫んだ訳。この陽明の刀は唯のなまくらの刀では無い。安倍家20代目当主のころから受け継がれてきた名刀であり、霊力を流し、陰陽五行の力を付与しやすいという、『霊の夢を奏でる』という意味を持つ刀である。
「二本とも陰打ちだから!陰打ちなら砕けた破片集めてもう一度修理できるから!」
「・・・はぁ、よかった・・・よく無いですよ⁉︎真打ちは⁉︎どこにやったんですか⁉︎」
「・・・俺が親父から譲り受けた直後に
「まさか、あの方にですか⁉︎いつの間に!それは・・・あまりにも危険です!」
「居場所が分からない以上、俺らにはどうにもならない」
アイツとは、ここでは言えない。言えることがあるからば、陽明に憧れて、陽明の最大のライバルで、陽明に笑顔を見せて、陽明の肉親で、陽明を
陰打ちと真打ち。刀ではを注文で作る際、刀匠は貰った金を全て使い作れるだけ刀を作る。そうして作製した一番良い刀を真打ち、それ以外を陰打ちという。
陽明の霊夢奏は陰打ち。簡単に言うと真打ちより劣化版というところ。
「・・・まぁ喚いても仕方ないです。道行く人に腕の良い刀匠を聞いてみます」
玉木は チンピラをゆうわくした!
チンピラは はなのしたを のばした!
玉木は じょうほうを きいた!
チンピラは ペラペラはなした!
玉木の さいみんじゅつ!
チンピラは ねむってしまった!
「・・・チンピラ誘惑して聞く必要あったのか?」
「チンピラは意外となんでも知ってるんですよ」
なるほど。年季が違うらしい。
「最近は"ウィル・オ・ウィスプ"というコミュニティがいいらしいです。道も聴きだして金目の物も少し貰いました」
「貢コース・・・」
玉木の先導で進むと、"ウィル・オ・ウィスプ"の蒼炎の旗印が刻まれた店が見えてきた。壁には『蒼き炎を利用し素晴らしい貴方だけの製品を!』と書かれた紙が貼ってある。
ほこり臭い中に入ると様々な商品が置いてある。
「これはガセネタ掴まらせちゃいましたかね?」
「いや、そうでも無い」
陽明は一つの品を手に取る。それは小さな8角形の形をした道具。
「これはサバイバルにあると便利。炎のレーザーを出せて火力調節すればライター、コンロの代わりにもなる」
中々素晴らしい恩恵である。製作者はかなり腕が立つようだ。
「ヤホホホホ!お目が高い!その炉は貴方の仰る通りのものですよ!」
陽明の後ろには大きなカボチャ頭にボロ衣を纏った人?が立っていた。
「申し遅れました!私、この店の店員のジャック・オー・ランタンと申します!今ならこの商品、値段を下げて金貨3枚ですヨ!」
「あー・・・申し訳無いが、今回は買い物じゃなくて、」
陽明はギフトカードから砕けた霊夢奏とその破片を取り出す。
「コレをなんとかして修理できないかなと思ってきたんだが・・・」
「なるほど。拝見したします」
ジャックは破片と刀をじっくり眺めて、
「難しいですが修理できます!お急ぎなら10分も御時間貰えれば今修理したしますが?」
「おぉ!やった!・・・で、お値段は?」
「破片が全部そろっているので・・・金貨5枚ですね」
「ジャック殿それは・・・」
「えぇ、高いというのは承知ですg「安すぎる!」ヤホ⁉︎」
「あぁ、確かに安い。砕けた名刀直すのがこんなに安いとは思わなかった!ローンは覚悟してたのに!」
言っておくが、陽明と玉木の金銭感覚は狂っていない。
この霊夢奏という刀(陰打ち)は過去に折られた事は何度かある。そのたびに直しているのだが恐ろしく高い金額を取られてしまう。
霊夢奏の素材は純粋な鉄ではなく何かしらの合金で加工が難しいのだ。これが主な理由だが地獄の炎である蒼炎には関係無いようだ。
「ヤホホ、喜んで貰えて幸いです。それで、今すぐ直しますか?」
「あぁ、よろしく頼む」
「ところで、お名前を聴いても?」
「俺は、安倍陽明。後ろが玉木。俺らは東側のコミュニティで、ノーネーム・・・まぁ名無しなんだがジン=ラッセルというリーダーの名前が名刺替わりだ」
「ヤホホ!わかりました!このジャック!全力で修理させていただきます!」
「みぃつけた♬」
陽明と玉木がいる店から少し離れた大きな建物の上。
白髪に真紅の目。小柄なアルビノの少女はそこにいた。
上が黒、下が白の着物を着ている。
「ふっふーん。まさか箱庭に来ていたとはねー。いくら思考を読み取って世界各地を探しても見つからなかったわけだね」
心底楽しそうに呟くこの少女。
彼女が陽明を見る目は慈愛と憎しみに満ちていた。
「いまここで相手してもいいけど・・・あのカボチャお化けの店の中だと手が出せないな。あのコミュニティのリーダー、超強いって噂だしぃ、カボチャお化けは聖人お墨付きの主催者権限持ってるみたいだしぃ、なにより・・・いまから現れる魔王サンの邪魔しちゃだめっしょ」
彼女は建物からジャンプして、
「今は見逃すけど、逃 が さ な い か ら
ね ♬」
建物の闇に消える瞬間、彼女の顔に一瞬月光があたり顔が見える。