番外編 干ばつと魃
これは少し前の、ペルセウスとのゲームが終了した少し後の話である。
「ギフトゲームが全面禁止?この一帯でか?」
「YES!これはちょっとした緊急事態でございますよ!」
もしかして魔王が現れたのだろか?いやそんな雰囲気ではない。そもそも魔王が現れたのなら階層支配者である白夜叉から何らかの報告が出されるはずだ。
それに、何方かと言えば困っているような雰囲気だ。
「ギフトゲームが中止ということは流通が止まるという事だ。一体何が・・・?」
陽明は顎に手を当てて考える。
「魔王程の驚異ではありませんが、実は箱庭の南側からこの東側に向かって干ばつがやってくるそうなのですよ」
「まさか干ばつに手足がはえてえっちらおっちらとやってくるのかしら?」
「Yes。正確には腕が一本、足が一本だそうですけども」
「何それ奇抜」
耀がますます首を傾げる中、十六夜と陽明は干ばつの正体の目星がついたようだ。
「干ばつ・・・旱魃か?」
「魃でもやってくるのか?」
"魃"とは中国の神獣である。恩恵は干ばつを呼び起こすことだが正確にはその子孫だ。魔王"蚩尤"との決戦で穢れを浴び天に帰れなくなった魃。天に帰りたい気持ちは系譜を重ねても変わらず、困った黄帝は魃を箱庭に保護する事にしたのである。
「んで、そいつを追っ払うか倒して換金でもするのか?」
「いや、それは違うだろう」
十六夜の後ろから玉木が声をかけた。
「魃が現れるという事はここら一帯が干ばつに襲われる。水樹がある我々のコミュニティは大丈夫だがここは下層。さて、貯水の恩恵とか持ってるコミュニティは幾つあるのやら・・・そこで、我々が水を売れば備蓄も増えるというわけだ」
「イヤラシい手段ですが・・・我々の身分上、正規の手段ではいきませんから。そこで皆さんには魃の情報を集めてきてほしいのです」
五人は嫌そうな顔をした。干ばつを呼ぶ魃の周りは・・・ものすっごく暑い。いや、熱い。
渋々五人は魃の調査に向かった。
〜1時間後〜
五人は外門付近で黒ウサギ正座させられていた。髪を緋色に変幻させるほど怒っている黒ウサギは怒声を五人に浴びせた。
「い、いいですか⁉︎黒ウサギは干ばつに備えて魃の情報を集めてきてほしいと言ったのですよ⁉︎情報とは行動パターン、巣の位置、大きさの事です!なのに・・・どうして・・・
「「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています。でも後悔はしていない」」」」」
「だまらっしゃい‼︎」
黒ウサギ愛用のハリセンが奔る。
五人は魃を捕まえ、簀巻きにしてある。人間が勝てる相手ではないのだがこの五人は違う。九尾の狐を従える恐らく最強人類、陽明。正体不明の強大ギフトを持つ十六夜。数多を従える飛鳥。幻獣博愛、耀。元魔王の玉木。最強の問題児だった。
「な、何か言い訳はありますか⁉︎」
「諸行無常」
「弱肉強食」
「世道人心」
「天真爛漫」
「天衣無縫」
「せめて一つに絞ってください!」
「「「「「枝葉末節」」」」」
「だまらっしゃい!言い訳になってません!」
捕まえた魃を放置する訳にもいかず、とりあえず換金してもらう事に。
サウンドアイズの支店に魃を降ろす十六夜と陽明。
「か「帰ってください」嫌だ。換金してくれ」
門前払を受けて帰るほど甘くないぞ、この二人。
「門前払いは百も承知!天下に名高きサウンドアイズならこの怪鳥の価値は一目瞭然でございましょ?」
店員が簀巻きの魃に近寄り羽根を一枚剥がし、扇ぐ。すると暖かい風が起こる。
「魃の末裔?まさか最下層のコミュニティにそんな力が?」
「この巨大な怪鳥こそ魃の末裔!キチンと躾ければコミュニティの貴重なエネルギーになりますよ?」
「何、大した事じゃない。干ばつに備えてさ」
「人助は気持ちいいな」
まぁチャンスは逃したが干ばつの心配は無くなった。これでいいのだ。
何故、魃を倒したのか。五人は頑なに話そうとしなかった。
なら、ナレーターの私が話そう。
元々魃は南側に住んでいた。そのせいで近くの清流を住処とするユニコーンの種に大きな影響が出て、半分ほどが死滅した。
通りすがりの術師が魃を追い出したものの、いかんせん被害が大きすぎた。
そこで、ユニコーンの一頭が東側に水のギフトを手に入れるために向かった。無事ギフトを手に入れ帰路に着いた。その途中、仇の魃に出会った。
ユニコーンは頭に血が上った勢いというものだ。冷静になったときには既に時遅しだった。
その時、
五人の問題児が現れ魃を倒し、助けてくれたのだ。
五人はただ単に恥ずかしくてそれが根強く言えなかっただけである。
そしてユニコーンは感動し、"ノーネーム"にユニコーンの角をプレゼントしに来た。その時に黒ウサギたちにばれたので隠した意味はないのだが、それは五人には言えないことである。