「しかしレティシアも物好きだな。俺たちの話聞いてどうすんだ?」
「用途は色々あるとも。主殿の過去を聞けば弱みの一つでも握れるかもしれない」
「なるほど。しかしそんな謀があらなら言うものじゃないな」
「おっと、今の話は忘れてくださいマイマスター」
三人は農園近くのテーブルに腰を下ろして食事をしていた。
「そういえばレティシアは元魔王だったな。ギフトゲームに負けて隷属されたのか?」
「まさか。私の主は今も昔も十六夜達四人だけだ。私の主催者権限は暴走状態になっていてな、私はゲームクリアで倒されたのではなく、ゲームから切り離されたというのが正しい。切り離された主催者権限はどこかに封印したらしい」
知ったところでレティシアは封印解除はしないだろう。
レティシアはまず十六夜に質問した。レティシアは十六夜の出生について聞きたかったようだ。が、十六夜は養護施設の出身だった。施設から施設、義親から義親にたらい回しにされたという十六夜はゲームを開催したらしい。そこで、金糸雀なる女性と出会い、旅をし、カナリアファミリーホームを作った。そして金糸雀が病死。と言った内容だった。途中からレティシアの顔が青く成っている。
「ーーーーこれで俺の話はおしまいだ。次は陽明だぜ。なんか自分の過去の話とか無いのか?一族の話とか凄く気になるぜ?」
陽明は少し躊躇ったが、話すことにした。
「そうだな・・・一族といってももう俺しか・・・いや、あと一人いたか」
「一人?お前だけじゃないのか」
「生きているのか、死んでるのかすらわからない。だが・・・」
陽明は口を開き過去について話し始めた。
昔々、といってもさほど昔ではなく陽明がまだ幼かった頃の話し。
安倍一族には天才がいた。
彼は幼くして才能を発揮し多くの術を会得し、七つの頃には並みの陰陽師を蹴散らした。
一族の者たちは喜び、一族は安泰だと彼を担いだ。
名を安倍陽明という。
彼には双子の妹がいた。
彼女は兄と比べ劣っていると言われた。非才と言われ、親ですら彼女を腫れもののように扱った。
名を安倍
彼女は懸命に努力した。努力し努力し努力を繰り返しいつしか兄以上の力を手に入れた。
しかし一族の者たちは彼女を認めず居ない者として扱った。
なぜか。彼女は考えた。女だからではない。非才だからではない。
答えは時間だった。時すでに遅く、彼女を見つめる者がいなくなっていたからだった。
彼女は絶望した。彼女は一人だったのだ。誰一人として彼女に近づく者はいなかった。
いや、親が彼女を幽閉したからかもしれない。一族の長たる親は面子を守るために彼女を戸籍から消していたのだ。
それを知った時、彼女は狂ったのかもしれない。
部屋を抜け出し禁書を漁った。会得不可能とまで言われた禁術を会得し、
遂には一人で一族を皆殺しにした。
『認められないのなら世界ごとコワレテシマエバイイ。コワシテ ツクリカエテシマエバイイ』
そうして彼女は姿を消した。
兄は生き残った。どうして生き残ったのかは分からなかった。式神の九尾が助けたわけではない。
運が良かった。ただそれだけだった。
もっと見てあげれば良かった。彼は後悔した。親の態度に唯一異を唱えれたはずなのに、彼女の事を一番よく知っていたはずなのに。
彼は、一人血だまりの中に呆然と立つことしかできなかった。
「俺の世界は妖怪が存在していた。しかし一般大衆に知れ渡るとパニックが起こるから国際的に秘匿とされてきた。俺の一族はそういった裏の事柄を多くしていたから日本政府にはごまかして事件を伝えるしかなかった」
陽明は話を終えた。
「・・・その妹について陽明はどう思っているんだ?」
レティシアが恐る恐る陽明に聞いた。
「あいつは・・・妹がああなったのは妹だけの責任じゃない。双子とにて産まれておきながら何もしてやれなかった俺の責任だ。そして、あいつは俺を諦めない。いつかまた俺を殺しにやってくるはずだ。たとえ、異世界であったとしても」
陽明は確信に近いものを感じていた。
「勝てるか負けるか。それはわからないが、結果がどうあれ俺はそれを受け止め、あいつを認めてやりたい」
そしてあの時してやれなかった事をしてやる。責任をとると陽明はいった。