グリーと別れた一行に宿舎の上から知った声がかかった。
「あー!誰かと思ったら耀じゃん!もしかしてお前らも収穫祭に「アーシャ、そんな言葉遣いは教えてませんよ」
上を見ると其処には"ウィル・オ・ウィスプ"のアーシャとジャックが手を振っていた。
ジャックはカボチャ頭が窓枠に引っかかって顔が出ず、手だけ出している。
「アーシャも来てたんだ」
「まあねー。こっちも色々あってさ」
アーシャは窓から飛びおりて目の前に降り立つ。
ジャックはカボチャ頭が窓枠から出ないためわざわざ玄関から降りてきた。
「ところで、耀は出場するゲームは決めたか?決めてないなら"ヒッポカンプの騎手"に出ろよ。私も出る予定だしな!」
ヒッポカンプという言葉に首をかしげる耀。コホンと一間入れたジンが簡単に説明する。
「ヒッポカンプとは別名海馬と呼ばれる幻獣で、タテガミの代わりに背びれを持ち、蹄に水搔きを持つ馬です。半馬半漁と言っても間違いではありません。水上や水中を駆ける彼らの背に乗って行われるレースがヒッポカンプの騎手と言うゲームです」
ジンの日頃のお勉強の成果が出た。
その後、貴賓客が止まる宿舎に入った。
中は土壁と木造の宿舎だったが、造りがしっかりしている。
半分が土造りなのに空気も乾燥していない。
水樹の根が常に水気を放出しているせいだろう。
「凄いところだね」
「ええ、北側は建造物が多いのに対して、南側は環境に適して過ごしてるように思えるわ」
「YES!南側は箱庭の都市が建設された時、多くの豊穣神や地母神が訪れたと伝わっています。自然の力が強い地域は、生態系が大きく変化しますから」
「あら?でも水路の水晶は北側の技術でしょう?」
首とウサ耳を傾ける黒ウサギ。
「良く分かりましたねえ。あの水晶は北側の技術ですよ。十年前、魔王襲撃から此処まで復興できたのもその技術を持ち込んだ御方の功績だとか」
「それは初耳でございます。一体何処の御方が?」
「実はアンダーウッドに宿る大精霊ですが、十年前の魔王襲来のときの傷跡が原因でいまだに休眠状態にあるとか。そこで"
「つまり、"
玉木がなるほどと頷く。
「はい。おかげで十年と言う短い月日で再活動の目途が立てられたと聞き及んでおります」
その後、主催者への挨拶のため荷物を宿舎に置きジャックたちと合流して収穫祭本陣へと向かう。
大樹の螺旋状に掘り進められた都市をぐるぐると周りながら登る。
「ジャック、この樹って全長何ⅿ?」
「500ⅿと聞いてますよ。御神木の中では一番大きい部類に入るかと」
「ジン、私達が向かう場所ってどのあたり?」
「えっと、中ほどの位置かと」
即ち、250m。
「よし、そんなところに受付構えてる主催者にお礼参りしてこよう」
「駄目です!おバカ様!」
「ヤホホ!ご心配なく。エレベーターがありますよ」
ジャックの案内で連れられて来られたのは幹の麓だ。
そこには木製のボックスがあった。
「全員乗ったら扉を閉めて傍にあるベルを二回ならして下さい」
「わかった」
全員乗り、縄を二回引っ張ると木製のエレベーターは上がり始めた。
「わっ!」
「上がり始めたわ!」
「反対の空箱に注水して引き上げてるのか」
「ヤホホ!原始的ですが、足で上るよりよほど速いですよ」
収穫祭本陣に付きエレベーターを降りる。
幹の通路を進むと、龍角を持つ鷲獅子の旗印が見えた。
「七枚の旗?七つのコミュニティが主催してるの?」
「残念ながらNOです。"
「連盟?何のために組むの?」
「用途は色々ありますが、一番は魔王への対抗するためですね」
黒ウサギの説明に玉木が補足する。
「連盟加入コミュニティなら魔王のゲームに無条件に介入できる。まぁ実際、介入するかどうかは各コミュニティに委ねられる。介入した例はあまり無いな。気休め程度に考えてくれ」
"一本角"
"二翼"
"三本の尾"
"四本足"
"五爪"
"六本傷"
そして中心が連盟旗、"
エレベーターが中腹につく。ジンは本陣入口の受付で入場届を出す。
「"ウィル・オ・ウィスプ"のジャックとアーシャです」
「"ノーネーム"のジン=ラッセルです」
「はい、"ウィル・オ・ウィスプ"と"ノーネーム"の、あ、もしかして、ノーネームの久遠飛鳥様でしょうか?」
樹霊の少女が飛鳥を見て声を上げる。
飛鳥はその通りだと頷く。
「私、火龍誕生祭に参加していた"アンダーウッド"の樹霊の一人です。飛鳥様には弟を救っていただいたとお聞きしたのですか」
それを聞いて飛鳥はああ、と思い出したように声を上げる。
玉木は自分が知らない間にそんな事をしていたのかと感心する。
「やはりそうでしたか。その節は弟の命を救っていただきありがとうございました。おかげで、コミュニティ一同、一人も欠けることなく帰って来られました」
「そう、それは良かったわ。なら、招待状を送ってくれたのは貴女たちなのかしら?」
「はい。大精霊は今眠っていますので。他には一本角の新頭首にして龍角を持つ鷲獅子の議長でもあらせられる、サラ=ドルトレイクからの招待状と明記しております」
ドルトレイク?北側の階層支配者、サンドラ=ドルトレイクと同じ・・・
「サンドラの姉であるサラ様です。まさか南側に来ていたなんて・・・もしかしたら、北側の技術を流出させたのも」
「流出とは人聞きが悪いな、ジン=ラッセル殿」
聞き覚えのない言葉に驚き一斉に振り向く。
健康そうな褐色の肌、踊り子のような服装、サンドラと同じ赤髪で長髪、サンドラより長く立派に生えた龍角、そして、二枚の炎翼。
そう、彼女こそ、
「久しいな、ジン。会える日を待っていた。後ろの箱庭の貴族殿とは、初対面かな?」
「サ、サラ様!」
階層支配者サンドラ=ドルトレイクの姉にして"一本角"頭首、サラ=ドルトレイクである。